音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2007年01月27日
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カテゴリ: クラシック音楽



 稀代のテクニシャン、アムランのドキュメンタリーとコンサートのDVDがハイペリオンから出ました。副題は『コンポーザー=ピアニストの系譜』とでもつけられるような内容です。彼の音楽に対する考え方と演奏風景を堪能することが出来ます。私はピアノが弾けないのでテクニク的にどうかという話は出来ません。ただ、ピアノを弾く方にとっては、呆気にとられるほどの技術の持ち主であることは、素人目にも分かります。目に付くのは、ピアノを演奏する時の姿勢として、理想的な姿勢ではないかということです。上体は動かず、鍵盤と指の位置が常に同じであることが分かります。




■面白い話満載のドキュメはンタリー

  最初は、アムラン自身の演奏とお話に、作曲家、評論家、レコーディング・エンジニアなどの話が加わります。観客のいないステージに出てくると、いきなりジェフスキーの「「不屈の民」変奏曲が始まります。久しぶりに耳にしましたが、懐かしかったです。最近は弾かれているんでしょうか。この曲は、このドキュメンタリーの最後(このときはライブ)にも出てきて、締めくくられます。昔は全く興味がなかったシューマン、ショパン、シューベルトも最近弾くようになったそうです。このドキュメンタリーでもシューベルトの21番のソナタを弾いています。意外にロマンティックな解釈です。

 メトネルについての話で、メトネルを弾くきっかけになったことを話しています。子供の頃の女性の教師は、スクリャービン、メトネルと交友関係があるアレクサンドル・ラルベリテという人物の弟子でした。彼女は「二つのおとぎ話」作品20の第1を他の子供によく教えていたそうです。
 彼がメトネルに惹かれる理由は、「指にすばらしい感触を与えてくれる」という理由だそうです。残念ながら、こればっかりは、実際に弾いてみないと分かりませんね。また、メトネルの魅力はすぐには伝わってこないという意見には全く賛成です。私は以前からアムランのメトネルソナタ全集に関心があり、今回のDVDを聞いてますます欲しくなってしまいました。

 アムランは1時間20分もかかるというスチーブンソンの「DSCHによるパッサカリア」の僅か500枚しかプレスされなかったレコードを所有していて、それを見せてくれます。また、英国在住のスチーブンソンが登場してインタビューを受けています。その中で、ブゾーニの名前が「フェルッチョ・ダンテ・ミケランジェ
ロ・ベンヴェヌート・ブゾーニ」という冗談のような長い名前であることを初めて知りました。父親が、イタリアの偉人の名前をすべて付けたそうです。何と欲張りな!
 それから、スチーブンソンはジャズ・ピアニストのファッツ・ウォーラーがゴドフスキーのピアノの弟子であったことも話しています。これは知りませんでしたね。

 アムラン自身の作品も演奏されます。「after pergolesi」はロマンティックな曲です。

 ジャズについて語った部分で、「自分はジャズの教育を殆ど受けていない。私がしているのはジャズ風の演奏で、それで満足している。」という言葉が印象的でした。即興については、全く違う能力が必要であることを自覚していて、敢えてそこには踏み込まないという考えがにじみ出ていました。

 このDVDでは時々手がクローズアップされるときがあります。アルカンの「ピアノのための交響曲」では、左手の跳躍が何度も出てきますが、早すぎて見えません。普通に動かすだけでも凄い早さです。全く凄いテクニックです。

 とにかく、ピアノに関する面白い話がごろごろしていて、ピアノ好きにはたまらないDVDです。インタビューを聞いて、アムランは本質的にはロマンティックな曲が好きなんだと言うことが分かりました。ただ、そのロマンティックな曲が他人には演奏困難な曲だったり、あまり知られていない作曲家だったりしただけなのでした。

■リサイタル ~圧巻のゴドフスキー

 後半は、カナダのケベック州シャルルボワで行われたドメーヌ・フォルジェ国際音楽祭のコンサートのライブです。ドビュッシー、ゴドフスキー、リスト、アンコールのシャリアーニ、アンタイルなど、普通のピアノ・リサイタルでは考えられない、プログラムです。曲の合間に、ラヴァル大学の音楽学助教授Marc-Andre Robergeの解説が入ります。

 圧巻はゴドフスキーのショパンの練習曲に基づく練習曲集ですね。特にショパンの作品10の第6を基にした曲がすごかったです。叙情的な旋律が艶やかなアルペジオの衣装をまとっているのですが、それが左手だけで演奏されるところが凄い、凄すぎます。

リストのトランスクリプションはワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」から「愛の死」とヴェルディの「エルナーニ」でした。曲のおもしろさからいって「愛の死」が面白かったです。特に、頻繁に出るトレモロがすごく大変そうでした。アムランの演奏はこれらのトランスクリプション特有の臭みがなく、すっきりとした仕上がりです。

 アンコールは2曲でイタリアの現代作曲家サルヴァトーレ・シアリーノのAnamorfosis」と、ジョージ・アンタイル(1900~1959)の「ジャズ・ソナタ」です。どちらも短い曲ですが、アンコールにもってこいの華やかな曲です。 シアリーノの「Anamorfosi」はラベルの「水の戯れ」にのって、「雨に歌えば」が出てきます。客席からどよめきが聞こえてきます。 「ジャズ・ソナタ」(1923 '40th))はその名の通り急速調のラグタイムで、何種類ものエピソードがパッチワークのように連なっていて、とても楽しい曲です。

 今回収録されたのはコンサートの後半のようですが、コンサート全部を見たくなるほどのすばらしさですね。 コンサートの前後にドビュッシーの『水の反映』の一部が演奏されています。これも、コンサートの一部のようです。どうせだったら、コンサート全部を収録してほしかったですね。

 付録として、Robert Rimm(The Composer-Pianists:Hamelin and The Eight の著者)、Jay Reise(肉体の中の悪魔の作曲家)、Harvey Wedeen(アムランを教えたピアノ教師)へのインタビューの他に、2001年に収録された、バンスカ=ラハティ交響楽団との共演でブゾーニのピアノ協奏曲の第4楽章「イタリア風に」がフ
ィーチャーされています。タランテラのリズムにのった曲の凄まじさと、アムランのテクニックの凄さ(さすがに大変そうではありましたが)に圧倒されます。惜しむらくは、画質がちょっと悪い(BIS提供の映像で、多分放送用でしょうから、それなりですが)。以前CDをよく聞いていたものですが、あらためてこの曲の途方もないスケールを感じてしまいました。

 時折出てくる、シャルルボアの草原と湖の美しい風景がとても心を和ませてくれます。

Marc-Andre Hemelin:It's About The Music(Hyperion DVDA 68000)

PART I Documentary
Frederic Rzewski(bl938) The People United Wfll Never Be Defeated!
Franz Schubert(1T97-1828) Piano Sonata in B flat major, D960, first movement= Molto moderato
Franz List(1811-1886) Ernani-Paraphrase de Concert, S432 (after Verdi)
Nikolai Medtner(1880-1951) Skazka ('Fairy Tale') in B flat minor, Op 20 No l
Leopold Gdowsky(1870-1938) Study No 13 in E flat minor, after Chopin's Etude, Op 10 No 6
for the left hand alone
Ronald Stevenson(bl928) Passacaglia on DSCH [played by Ronald Stevenson]
Frruccho Busoni(1866-1924) Piano Concerto, Op 39, third movement= Pezzo serioso
Frruccho Busoni(1866-1924) Piano Concerto, Op 39, fourth moverrtent= All' Italiana (Tarantella)
Marc-Andre Hamelin(bl961) 'After Pergolesi', from Con intimissimo sentimento (200O)
(arrangement of the song 'Se tu m'ami')
Paul Dukas(1865-1935) Piano Sonata in E flat minor, third movement= Vivement, avec 1egerete
Isaac Albeniz(1860-1909) 'El puerto' from Iberia
Nicolai Kapustin(bl937) Concert ~tude, Op 40 No 7, Intermezzo:Allegretto
Charles=Valentina Alkan(1813-1888) Symphony for solo piano, Op 39 Nos 4-7, Finale: Presto
Frederic Rsewski(bl938) The People United Will Never Be Defeated!

PART II Recital: Marc-Andr6 Hamelin in Charlevoix, Quebec
Claude Debussy(1862-1918) Reffets dans i"eau, from Images II
Leopold Godowsky(1870-1938) Seven Studies on Chopin's Etudes
No 45 in E major= Nouvelle etude No 2, first version
No 7 in G flat major= Op 10 No 5, first version
No 8 in C major= Op 10 No 5, second version
No 13 in E flat minor= Op 10 No 6, for the left hand alone
No 18 fn F minor: Op IC No 9, second version (imitation of Op 25 No 2)
No 44 in F minor= Nouvelle 6tude No I for the left hand alone
No I in C major= Op 10 No 1, first version
Leopold Godowsky(1870-1938) The Gardens of Buitenzorg, from java Suite ,
Franz List(1811-1886) Isoldens Liebestod, S447 (after Wagner)
Franz List(1811-1886) Ernani-Paraphrase de Concert, S432 (after Verdi)
Salvatore Sciarrino(bl947) Anamorfosi ' f :~;
George Antheil(1900-1959) Piano Sonata No 4 'Jazz Sonata'
Claude Debussy(1862-1918) Reflets dans I'eau, from lmages II







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Last updated  2007年02月03日 22時57分40秒
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