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アイスランド出身のソングライター、レイヴェイ(1999-)のアルバムを聞く。本名はLaufey Lin Jónsdóttirでアイスランド人と中国人のハーフだそうだ。これは彼女のデビュー第2作のグラミー賞アルバム「Bewitched」に4曲の新曲を追加したデラックスバージョン。一応ジャズ・ポップスというジャンルに分けられているが、典型的なジャズ・ヴォーカルの様なフェイクが聞かれるのはスタンダードのみで、総じてジャズという感じではない。殆どが彼女のオリジナルで、ノスタルジックな衣装をまとった古いポピュラー・ソング集という感じだ。all musicのコメントでは『やや時代錯誤ながらも洗練されたボーカルスタイルで、第二次世界大戦を彷彿とさせるエレガントでわずかに型破りなアダルトポップ』と評されている。8曲目の「Nocturn」のみピアノ・ソロ。多くの曲で共作しているスペンサー・スチュワートは作曲家であり、このアルバムのプロデューサーだそうだ。最初「Dreamer」聞いたときは、そのノスタルジックなサウンドに引き込まれたのだが、強烈な個性があるわけではなく、個人的には映画「Shape Of Water」の作曲家アレクサンドル・デスプラの音楽に近いような感じがした。甘ったるい曲と、時として生の感情が出るヴォーカルは、聴き手には過剰と感じることもある。「Letter To My 13 Year Old Self」や「Bewitched」は傷心の心をそっと癒してくれる、癒しの音楽だろう。特にオーケストラ入りの「Bewitched」はなかなかゴージャスな雰囲気で、映画音楽でも聴いているような気分になる。アルバム全体が変化に乏しいので、通しで聴くのではなく、少しずつ聴くのがいいようだ。ギターとの相性がいいようで、「Second Best」は心温まる歌だった。「Lovesick」は前向きな恋心を歌ったフォークソングで、珍しく爽やかだ。また、ボサノヴァの「From The Start」はリズミックでまずまずだが、肝心のリズムが重い。スタンダードも何曲か歌っている。「Misty」は歌自体は悪くないが、唐突感がある。「It Could Happen To You」はリズミックで、スキャットもあり普通のジャズヴォーカルとして楽しめた。ピアノのぎしぎしというアクションの音が聞こえるトラックが何曲かあり、少し気になる。ということで、彼女の美しいメロディーを作りだす才能は大したものだが、古臭く、筆者には物足りない。録音は透明度が低く、ヴォーカルが歪みっぽく肥大したサウンドで、聴き手を圧迫する。ハイレゾではなくラジオから流れてくるようなレンジの狭い音で聴くと、しっくりくるような気がする。Laufey Bewitched :The Goddess Edition(AWAL LAULP003CDX)24bit 48kHz Flac1.Laufey & Spencer Stewart:Dreamer2.Laufey & Spencer Stewart:Second Best3.Laufey & Spencer Stewart:Haunted4.Laufey, Freddy Wexler & Max Wolfgang:Must Be Love5.Laufey & Spencer Stewart:While You Were Sleeping6.Laufey & Spencer Stewart:Lovesick7.Laufey:California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)8.Laufey:Nocturne (Interlude)9.Laufey & Dan Wilson:Promise10.Laufey & Spencer Stewart:From The Start11.Erroll Garner & Johnny Burke:Misty12.Laufey & Spencer Stewart:Serendipity13.Laufey:Letter To My 13 Year Old Self14.Laufey & Spencer Stewart:Bewitched15.Laufey & Spencer Stewart:Bored16.Laufey, Dan Wilson & Spencer Stewart:Trouble17.Jimmy Van Heusen Johnny Burke:It Could Happen To You18.Laufey:Goddess
2024年04月30日
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昭和ウインド・シンフォニーの新譜が出ていることを知り、昭和音大のウエッブサイトから購入。今回は近作を纏めて4枚購入した。ここの通販は購入枚数が多くなると割引が適用される。4枚の場合は3割引きだ。おまけに、そのうち2枚は1000円で、全部で5000円弱。送料が1000円ほどかかったが、トータルでも6000円、一枚あたり1500円ほどと、お得だ。その中から最新版の「原色のパッサカリア」を取り上げてみたい。アンコールを除く全7曲のうち6曲が日本初演で、期待に応えてくれる選曲だ。このバンドのメンバーは殆どが学生だけだが、技巧的に安定していて、安心して聴くことが出来る。今回は4年ぶりにコーポロンが指揮したコンサートで、コーポロンが6曲、残りの3曲を福本信太郎が指揮している。1曲目は最近耳にする機会が多くなりつつある、フランスの作曲家リリ・ブーランジェ(1893 - 1918)の「春の朝に」。原曲はヴァイオリン・チェロ、ピアノのための曲(1918)で2009年にフランソワ・F.ブランシァールにより吹奏楽に編曲された。ポール・フォーシェの交響曲(1926)のようなウットリするようなフレンチ・サウンドが堪らない。ポール・ドゥーリィ(1983-)の「エリトラ~堅き前翅(まえばね)~」はテンポの速いスピーディな展開で楽しませてくれる。後藤洋氏の解説によると、アメリか海軍バンドの委嘱作品で、戦闘機のテクノロジーからインスピレーションを得た。その後、蛍、テントウムシ、カブトムシらの昆虫の前羽が固くなったものである「前翅(ぜんし)」または鞘翔(さやばね)」にそのメカニズムを見出したとのこと。曲はその虫たちの高速で羽を動かしながら飛ぶさまを表している。中間部では樹の根にもぐりこんだカブトムシが再び飛び立つ前に鳴く様がイメージされている。大変よくできた曲で、終わった後でブラーボーが出ていることも頷ける。ヴェトナム系アメリカ人のヴィエット・クオンの「モクシィ ~不屈の精神~」もなかなか面白い。ブックレットによるとクオンの吹奏楽作品はオーケストラの作品を管・打のアンサンブルに編曲したものが多く、この「モクシィ」もその一つだという。上述のように鍵盤楽器を含むパーカッションが多用されている。最初から高速テンポが持続し、パーカッションが鳴り響くところに管のグリッサンドが繰り返し出てくる。重音や、微分音も含まれていて、東洋的なテイストが感じられる何とも不思議なサウンドが聞かれる。後半には、指を変えずに息の圧力で変化する倍音が連続するフルートが経験したことのないサウンドを聞かせてくれる。ヴィオラ奏者兼作曲家のジェシカ・メイヤーの「プレス オン」はパーカッションの活躍するエネルギッシュな作品だが、暴力的な難解な作品で、筆者の好みではない。イントロのティンパニの強打に続く、「ジー」というハムノイズのような音を伴ったサウンドからして不快だ。委嘱元のアメリカ海兵隊バンドの録音もあるようなので聴いて理解を深めたい。メキシコ系アメリカ人のイヴァン・トレヴィーノ(1983-)の「煌めきに駆ける」は二人の打楽器奏者をソリストとする協奏曲。パワフルな曲だが単調で、色彩にも乏しい。録音の抜けが悪いのも印象が良くない原因の一つかもしれない。アルバム・タイトルのドアティ(1954-)の「原色のパッサカリア」は、原曲が「 FIFTEEN-SYMPHONIC FANTASY ON THE ART OF ANDY WARHOL for Orchestra」という長ったらしい名前のオーケストラ曲の第5楽章。ヴァイブ?で提示される聖歌風の主題と30程の変奏からなる。ダイナミックでスケールも程々大きく、ドハティ特有の毒もしっかりと含まれている。拍手の中でコーポランと思しき声が聞こえる。アンコールは2曲で、フリーラーの「トワリング・エイムレスリー」が冗談音楽っぽいコミカルな曲(エンディングの不協和音が効いている!)で気が利いている。ライブ録音だがノイズの聞こえない優れた録音で、ライブのハンデは感じられない。もう少し抜けが良ければいうことがない。ということで、面白い曲が多く、大いに楽しませていただいた。それにしても、このような知られていない曲を探してくるスタッフの方々のご苦労には、頭が下がる。昭和ウインド・シンフォニー:原色のパッサカリア(Brain Music OSBR-40002)16bit 44.1kHz1.L.ブーランジェ(arr.F.ブランシァール):春の朝に2.P.ドゥーリィ:エリトラ~堅き前翅(まえばね)~ 〈日本初演)3.F.ティケリ:月を超えて 〈日本初演〉4.V.クオン(arr.M.シダトール):モクシィ ~不屈の精神~ 〈日本初演〉5.J.メイヤー:プレス オン 〈日本初演〉6.I.トレヴィーノ:煌めきに駆ける 〈日本初演〉 7.M.ドアティ :原色のパッサカリア 〈日本初演〉~アンコール~8.J.フリーラー:トワリング・エイムレスリー/9.T.J.ウェラー:メトロ・ダンス昭和音楽大学吹奏楽団 昭和ウインド・シンフォニー指揮:ユージーン M.コーポロン(track 1-3,6-8)、福本信太郎(track 4,5,9)収録:2023年6月1日-3日,昭和音楽大学[テオトロ・ジーリオ・ショウワ]
2024年04月28日
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少し前に本屋で音楽雑誌を立ち読みしていた時に、オスカー・ピーターソン(1925-2007)のドキュメンタリー映画が公開されていることを知った。既にほとんどの映画館での公開は終わっていたし、地元での公開はなかった。ところがamazonのプライム・ビデオでアマゾンのプライム会員は無料で見ることが出来ることを知り、早速試聴した。この類のドキュメンタリーの例にもれず、関係者のインタビューを中心にした構成。変わっているのはバックで何組かのピアノ・トリオが演奏していることぐらいか。オスカーの演奏も含まれているが、有難いのは彼自身の肉声がたくさん含まれていたこと。オスカーがモデルにしていたのがテディ・ウイルソンとナット・コールで、ナット・コールとのピアノと歌の分業?の約束は有名な話だが、テディ・ウイルソンからはどのような影響を受けたのかは特に言及されていなかった。演奏にショックを受けたというアート・テイタムとの関係も興味深い。ハービー・ハンコックが出てきたことには驚いた。ピーターソンとはどういう関係だったのだろうか。クインシー・ジョーンズ(1933-)との関係も分からないが、クインシーはだいぶ老けてしまっていたのが残念。アンドレ・プレヴィンと対話している場面も出てきたのは嬉しかった。またビリー・ジョエルはオスカーの大ファンで、いつも「この人を聴かないとダメだ!」と言っているそうだ。ピーターソンの歌も流れていたが、ナット・コールによく似た声で大変上手い。なるほど、彼らの約束も納得がいった。4番目の妻ケリーもたびたび出て来て、彼の人となりを詳しく話してくれた。ピーターソンが亡くなる時のことも語ってくれていたのも貴重な証言だ。娘のセリーヌがオスカーが亡くなったことが信じられなかったが、愛犬のブルドックがオスカーの手や顔をなめ、最後に35kgの体重をオスカーに載せたことで、オスカーが亡くなったことをやっと納得したという裏話もリアルだ。オスカーを発見した時のエピソードをノーマン・グランツが語っているのも貴重な証言だ。カナダは黒人に対する差別は少ないが、オスカーがアメリカに渡ってからの差別の様子も描かれていた。彼の愛用したピアノがベーゼンドルファーだったことも新たな発見だった。テレビをアンプにつないで視聴したが、音はあまりよくなかった。ということで、オスカーの人となりや音楽について深く知ることが出来て、筆者にとっては有益な時間を過ごすことが出来たと思う。このドキュメンタリーを観終わってから彼の演奏が聴きたくなって、NASにあったMPS時代のハイレゾ音源を聞いた。記憶とは違って、思ったより音が良くなくて少しがっかりした。
2024年04月26日
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フィンランドのヘルシンキ出身のフランク・カールバーグの新譜を聴く。例によってbandcampからの紹介で知ったアルバム。彼は、いろいろなグループで活動を行い、ニューイングランド音楽院でも教えているそうだ。彼は長年モンクの研究を行っていて、以前も「Monk Dreams, Hallucinations And Nightmares 」(1989)を発表し、ダウンビート誌で5つ星評価を得ている。彼はモンクの大編成での演奏活動に注目し、研究していて、その成果がこの「Elegy for Thelonious」に反映されているそうだ。全曲彼の作編曲だが、かなり実験色の濃いアルバムだ。アルバムは『モンクの楽曲を再構築し、再解釈することで、モンクの音楽の普遍性と革新性を示している」とのこと。モンクの音楽がストレートに出てくるわけではない。なので、聴き手を選ぶアルバムだが、モンクの音楽を良く知っている聴き手には楽しめるアルバムだろう。18人編成で、ヴォーカル(と語り)が二人加わっているのが珍しい。クラリネット族の多用が目立ち、金管のワウワウミュートもなかなかユニーク。タイトルチューンの「Elegy for Thelonious」はピューリッツァー賞を受賞しているアメリカの詩人ユセフ・コムニャカアの詩の一節をクリスティーネ・コレアが朗読している。この言葉で検索するとヒットするのでご興味のある方は参照して頂きたい。簡単にいうとモンクが亡くなった時の詩人の、幾分やけくそ気味になった心情風景を詠ったもののようだ。モンクは1982年2月17日にアメリカのニュージャージー州で亡くなっている。当時の凍てついた灰色の風景が見えるよう気分になる。バス・クラリネットやクラリネットに先導されて曲が始まる。トロンボーンのワウワウミュートのプレイが目立ち、モンクというよりはミンガスを思い起こさせるような混沌とした音楽。モンクの「CrepuscuェWith Nellie」のメロディーが聞こえる。途中から賛美歌「Abide With Me」(「Monk's Music」収録)が流れ、その後ジェノヴェーゼのシンセによる奇怪なソロが続く。1曲目の「Spooky Rift We Pat」はスタンダードの「Tea for Two」とモンクの「Skippy」のアナグラムで、音楽もこの2曲が混然となっている。この曲でも最初にインクリスティーネ・コレアの讃美歌のようなヴォーカルが入る。テンポが上がると、下降音型のフレーズが何度も出てくるが、これがジェットコースターのような気分を味合わせてくれる。「Out of Steam」はコミカルなリズムと複雑なハーモニーのイントロに始まり、ヴォーカルのゴスペルのような短いフレーズが、何度も出てくる。このフレーズが陳腐で、おまけに奇怪なシンセの効果音が出て来て、あまり聞きたくない音楽になっているのが理解不能。アルト・サックスのソロは素晴らしいが、バックのため台無しになってしまった。ただ、狂気じみたエンディングは一聴の価値がある。「Wanting More」は1960年に短期間モンク・バンドに参加していたサックスのスティーブ・レイシーに対してモンクがアドバイスした言葉をの一節だそうだ。参考長くなるが、その部分を下に示す。『Don’t play everything (or every time); let some things go by. Some music just imagined. What you don’t play can be more important that what you do.Always leave them wanting more.』(訳)全てを演奏する(またはいつも演奏する)必要はない;何かを通り過ごしてみよう。ある音楽は単に想像されるだけのもの。演奏しないことが、演奏することよりも重要になることがある。常に彼らにもっと欲しがらせておけ。要するに、空間を音で埋めるのではなく、音と音の間を生かすことが重要だと言っている。モンクのピアノ・スタイルそのものを表しているような言葉だ。曲はタイトルから連想されるようなものではなく、ダークな雰囲気の中、トランペット・ソロが延々と続き、そこにいろいろな楽器が絡む。70年代のマイルス・バンドのような雰囲気が感じられる。後半リズムの反復が止むあたりから俄然盛り上がるが、それまでは単調。「Scallop's Scallop」はモンクのオリジナル「Galop's Galop」に因んだ曲。「Wanting More」と同じようなダークな空間にトランペット・ソロが響くフリーフォーム的で混沌とした音楽。5分過ぎからのテュッティでの上昇グリッサンドが狂気じみた凄味を感じさせる。「Wrinkle on Trinkle」は「Trinkle Tinkle」に因んだ曲だろう。無機的な変拍子のリズムが圧倒的な迫力で迫ってきて、モンクの特異性を強調しているように感じられる。最後の「Brake Tune」はモンクの「Brake's Sake」を再構築したもの。原曲の楽し気は雰囲気はまるでなく、すっかり変容してしまっているが、カールバーグの編曲能力の凄さを、まざまざと感じることが出来る。イントロからヘリー・パスのハーモニックス粗野なテナー・サックス・ソロが続く。ソロの途中で入るバックの鋭い一撃が鮮烈だ。その後の原曲の短いフレーズが執拗に繰り返される部分は、もはや狂気の世界だ。後半に入るジェノヴェーゼの奇怪なシンセ・ソロは、入っている理由が分からない。ということで、カールバーグの高度な作編曲能力、強固なアンサンブル、素晴らしいソロと3拍子揃った完成度の高いアルバム。ただ、筆者を含め、聴き手にはハードルが高いと思われる。録音はノイズのない、ビッグバンドらしい厚みとスケールを持ったサウンドが楽しめる。Frank Carlberg:Elegy for Thelonious(SUNNYSIDE RECORDS SSC 1716)24bit 96kHz FlacFrank Carlberg:1.Spooky Rift We Pat2.Out of Steam3.Wanting More4.Elegy for Thelonious5. Scallop's Scallop6.Wrinkle on Trinkle7.Brake TuneFrank Carlberg(cond,composer)Sam Hoyt, John Carlson, David Adewumi, Kirk Knuffke(tp)Brian Drye, Chris Washburne, Tyler Bonilla, Max Seigel(tb)Nathan Reising, Jeremy Udden, Adam Tolker, Hery Paz, Andrew Hadro(woodwinds)Leo Genovese(p,key)Kim Cass(b)Michael Sarin(ds)Christine Correa(vo track 1, 3, 4)Priya Carlberg(vo track 2, 3, 4)All compositions and re-compositions by Frank CarlbergText on Wanting More by Thelonious MonkText on Elegy For Thelonious by Yusef KomunyakaaRecorded at Big Orange Sheep, Brooklyn, on May 10th and 11th, 202
2024年04月24日
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ディストリビューターのコピーによると『ロト&ギュルツェニヒ管のブルックナー真打!作品イメージを覆すほどに圧倒的な第9番。オーケストラの能力をフル開放して巧みに音楽を生成していく驚異の大演奏』なのだそうだ。筆者はこのシリーズ第4番から参戦?している。アプローチが新鮮で従来の重苦しいブルックナー象を払拭してくれているところに注目している。前作の交響曲第3番は初稿版で、注目の第2楽章が不発だったため、あまりまともに聴いていなかった。今回は第9番でロトの芸風から行くと8番と共にあまり合わない曲だと予想していた。一般的な演奏と同じ傾向であれば、あまり面白くないのだろうが、これが聞いたことのないようなアプローチでびっくりした。まず、テンポがかなり速い。そう言ってもヴェンツァーゴのようにびっくりするほど速い、という感じではないので、抵抗感は少ない。因みに第1楽章が約1分、第2楽章が30秒ヴェンツァーゴが速い。第3楽章は逆に10秒ほどヴェンッァーゴが遅いが、20分のうちの10秒なので、違いはあまり感じられない。それにヴェンツァーゴはフレージングが粘っこく、ためを作るところもある。なのでヴェンツァーゴはテンポ以外は従来の解釈の延長線上にあり新鮮味はない。従来の重苦しい演奏はあまり聞きたくない当方としては、ロトの演奏は歓迎すべき方向であるのも確か。速くてもヴェンツァーゴのように、せっつかれる感じがないのもいい。ためは殆どないので、聴き手がここはじっくり歌ってほしいというようなところでは、あっさりとパスされてしまうことがあるのが残念。全体的に引き締まって透明感のあるサウンドが新鮮。第1楽章は出だしのホルンのテーマからして力強いがそれほど重々しくない。テンポが速いため表現が凝縮されて、劇的で緊張感に満ちたものになっている。爆発的なテュッティがいい例だ。第2楽章が独特のアプローチで他の演奏とはまるで違う演奏。金管やティンパニの重く荒々しいアクセントやチューバの思いもかけない強奏など、テンポが速いのと相まって、この楽章がダイナミックな音楽だと初めて思い知らされた気がする。トリオも表情が濃い。第3楽章もテンポは速くテーマも全く粘らないあっさりしたもので、悲壮感の感じられるしみじみとした味わいには不足しているかもしれない。練習番号163からのオーボエやクラリネットの刻みがテヌートで刻まれるところが変わっている。エンディングに向かうところでは、思いもかけず得も言われぬ清々しい気分に浸ることが出来た。ということで、従来のブルックナーを是とする聴き手にはかなり抵抗のある演奏だろうが、従来の重苦しいブルックナーをあまり聞きたくない者としては、こういうアプローチは歓迎したい。ギュルツェニヒ管は金管が突出する場面も少なく、弦とのバランスも良かった。艶のある弦のサウンドが素晴らしい。録音はそれほど透明度は高くないが、重くなく、聴き手にぐいぐいと迫ってくる。François-Xavier Roth Bruckner: Symphony No. 9 (original Version)(Myrios MYR034)24bit 192kHz FlacGürzenich-Orchester KölnFrançois-Xavier RothRecorded: 2022-09-21,Kölner Philharmonie
2024年04月21日
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以前、友人にホルンを譲るために準備をしているという話に触れた。結論から言うと、価格で折り合いがつかず、友人は断念してしまった。友人には楽器屋さんに話を聞いてもらったりして、余計な手数をかけさせてしまった。それが無駄骨となり、今となっては大変申し訳ないと思っている。筆者はというと、楽器を吹いても思うように吹けず、これからトレーニングする気力もなく、結局ウインナ・ホルン共々委託販売をお願いすることにした。最初にフレンチ・ホルンをお願いしたのだが、へこみ等が多数あり、修理代が高くつきそうだった。取りあえず筆者の希望価格を伝え、その価格内でできる修理のみをお願いすることにした。ウインナ・ホルンの方は、別な楽器店にお願いした。理由は、フレンチと同じような面倒なことになりたくかなかったからだ。こちらの方はケースがないというハンデがありながら、楽器の状態が比較的よく、楽器店に写真を見てもらった時よりも高く売れそうで、すんなりと価格が決まった。購入価格はフレンチ・ホルンの1/3なのに、新しいとはいえ委託の値段があまり違わなかったのは、嬉しさも半分という複雑な気分だ。フレンチ・ホルンは友人と親戚に貸してしていたのだが、結局は墓穴を掘ってしまったようだ。自分が使っていた時には、それほどへこみがあるとは思っていなかったので、あとで使った人の扱いが雑だったのだろう。いまさら文句を言うのもどうかと思うし、結局は自分が悪かったと思うしかない。ところで、アレキサンダーが新品で250万、状態の良い中古で150万もする理由を聞いた。理由は3つほどあって、円安、金材料の高騰、運賃の高騰だそうだ。後の二つはウクライナ戦争による影響とのこと。結局工業製品から農業製品まで、戦争の影響を受けない製品など、殆どないのだろう。生活が苦しくなるのも無理はないと今更ながら実感してしまった。もっとも、売り手は少し高く売ることが出来るというメリットもあるのだが。。。その後ウインナ・ホルンが売れたという連絡をもらった。楽器を送ってから1ヶ月と、予想外に早く売れてしまったのに驚いた。しかも、ウインナ・ホルンという好きものしか買わないと思われる楽器なだけに、驚きも一層だ。不景気とはいえ、こういう商品が売れるということは、日本人の購買能力がまだ依然として高いということかもしれない。
2024年04月19日
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昔は殆どビッグバンドなど聴かなかったものだが、何故か最近ビッグバンドのアルバムに触手が動く。年を取ってコンボの小難しい音楽が肌にあわなくなったのかもしれない。というか理解するのがしんどくなってきたのかもしれない。ヴォーカルもよく聴くようになったのも、多分同じ理由だろう。その割にはクラシックは古楽や現代ものなども積極的?に開拓しているので、矛盾しているかもしれない。このアルバムはイスラエル生まれのドラマー、ダン・プガック(Dan Pugach)?(1983-)が率いるビッグ・バンドのアルバム。ダン・プガックは2006年にアメリカ合衆国に移住し、バークリー音楽大学でテリー・リン・キャリントン、ハル・クルック、ジョー・ロバーノから学び、人文学系修士号をニューヨーク市立大学で取得している。現在ニューヨークのブルックリンとコネチカットの両方に在住している。メンバーは全員白人のようだ。エッジの効いたキレキレのアンサンブルと、アタックのビシッと決まった、硬質でありながら素晴らしく鳴るサウンドが実に爽快。パワーにも不足はない。ヴォーカル・ナンバーを除いて、すべて彼のオリジナル。明るくスインギーで、力のこもった作品が揃っていて、とても楽しめる。アレンジがいいのだろう、実によく鳴るサウンドで、ビッグバンド・サウンドを聴く醍醐味が味わえる。「Masa」ではテーマにコーラスが重ねられているのも洒落ている。ソロはだぶりもなく、メンバーが満遍なくフィーチャーされていて、水準も高い。リーダーのドラム・ソロは所々で聞かれるが、短めで押しつけがましさがないのがいい。ニコール・ツレイティスによるヴォーカルのナンバーが2曲(track 6,7)入っている。彼女は先ごろ「How Love Begins」でグラミー賞の最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバムを受賞したばかりだ。スキャットを含むエネルギッシュなヴォーカルは白人とは思えないような圧倒的な迫力で迫ってくる。ただ個人的には全部インスト・ナンバーにしてほしかった。曲はツレイティスのオリジナル「Travel」とヴァン・ヘイレンの「Dreams」(1986)。「Dreams」ではエレキ・ギターの熱のこもったソロもフィーチャーされている。ということで、高度なアンサンブルで、曲も良く、ビッグ・バンドを聴く醍醐味が最高度に発揮された傑作アルバムだ。是非多くの方にお聴きいただきたい。Tolerance Dan Pugach Big Band:Bianca(Outside In Music OUIA24012)24bit 96kHz Flac1.Dan Pugach:Tolerance(Mike Fahie - tb, Patrick Cornelius - as) 2.Dan Pugach:Bianca (Eitan Gofman - ts, Stuart Mack - tp)3.Dan Pugach:Bella the Bear(Jasim Perales - tb) 4.Dan Pugach:Masa(Dave Adewumi - tp, Jeremy Powell - ts, Dan Pugach - ds)5.Dan Pugach:Schleppin’(Sam Weber - b, Nitzan Gavrieli - p, Alan Ferber - tb)6.Nicole Zuraitis:Travel(Jeremy Powell - ts, Nicole Zuraitis - vo, Stuart Mack - tp)7.Van Halen:Dreams(Pete McCann - g)8.Dan Pugach:Discourse This!(Dave Smith - tp, Andrew Gould - as, Dan Pugach - ds)Dan Pugach Big Band:ww:Andrew Gould,Patrick Cornelius,Jeremy Powell,Eitan Gofman,Andrew Hadrotp:Sam Hoyt,David Smith,Stuart Mack,Dave Adewumitb:Mike Fahie,Alan Ferber,Jasim Perales,Jen HinkleNicole Zuraitis(vo)Nitzan Gavrieli(p)Pete McCann(g)Sam Weber(b)Dan Pugach(ds)all composed by Dan Pugach(except track6,7)Recorded at The Bunker Studio Brooklyn, NY on February 12&13 2023
2024年04月17日
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香港出身のイギリスの若手作曲家のダニ・ハワード(1993-)の管弦楽曲集を聴く。例によってpresto musicで紹介されていて、spotifyで聞いたところ良かったので、一番安いと思われるHigresaudioからダウンロード。基本的にはポスト・ミニマル・ミュージックなのだろう。ジョン・アダムズのような明快な作風で親しみやすい。さしずめミニ・アダムズ?。管弦楽だが管が優勢なオーケストレーションで、吹奏楽アレンジでもいけそうな気がする。ハーモニーは分厚いが、見通しがよく爽やかで、きびきびとした運動性にも欠けていない。ただ、似たような楽想の曲が多く、すぐ区別がつかないところが難点だろう。トロンボーン協奏曲と最後の「アーチ」は2管編成で他は3管編成の管弦楽。小鳥のさえずりや大自然の脅威を感じさせるような楽想が頻出するのが特徴だろうか。ラテン語で銀の意味の「Argentum」(アルゲントゥム)はイギリスのクラシック専門放送局Classic FM創立25周年の委嘱作品を祝う6分ほどの曲。明るく軽快な曲調だがティンパニや金管の一撃で曲の剛直性が露になる。所々にブリテンなどのイギリス音楽の影響が垣間見られるのが面白い。トロンボーン協奏曲はロンドン交響楽団首席のピーター・ムーアのソロ。明るく豊かなサウンドで、この楽器にしては細かな音符の続く曲を凄まじい勢いで演奏している。第2楽章は小鳥のさえずりや風、雷などの自然の風景を思わせる楽章でトロンボーンが悠然と歌う。またトロンボーンでは珍しい重音奏法が出てくるところも、聴きどころの一つだ。決然とした意志を感じさせるような第3楽章「Illumination」16分音符が連続する困難なパッセージが続くが、ムーアは鮮やかなテクニックで楽々乗り切る。エンディングのダイナミックでエネルギッシュなサウンドは実に興奮させる場面だ。革新的なトロンボーン協奏曲の誕生を思わせる、すぐれた作品。「Arches」は彼女の最初の管弦楽作品。音楽大学卒業当初は管弦楽曲の書き込みの多さから、大規模なオーケストラ作品を手掛けることにしり込みをしていたという。曲は、穏やかな楽想のイントロ後、弦の16音符の刻みに管のモチーフの断片がちりばめられて進行する。やや明るい楽想でドラマチックな表現もあり、あまり深刻にならずに済む。題名は初演されたロンドンのセント・ジョンズ・スミス・スクエアの建物の大胆で広大な「アーチ」に触発されたもの。所々にゆったりとした田園風景を思い起こさせるような部分があり、一息つくことが出来る。鳥の鳴き後を思わせるフルートのフラッター・タンギングも効果的。「Ellipsis」は全曲にわたって刻まれる執拗なリズムに乘って、小鳥のさえずりや大自然の脅威を思わせる凶暴な金管のサウンドが延々と続く。ただ、リズムを刻むのがいろいろな楽器に橋渡しされるので単調さから免れている。中間部でテンポが遅くなり、ハープなどのゆったりとした楽想が流れるところに救われる。また、エンディングの壮大な表現には戦慄を覚える。音楽だけではなく、映像があれば理解が深まるような気がする。「Coalescence」は「複数のものが一つに結合する」ことを意味する言葉で、作曲者は舗装された道路の金属の柵の中で成長する直径1mの木から人間と自然の相互作用についてのインスピレーションを得たという。約12分の音楽で、変化に富んでいて、アルバム中随一の聞き物だろう。この曲では最初のテュッティが終わった後の、静かだが緊迫した場面が印象的だ。いろいろな楽器のサウンドの断片が散りばめられていて、弦のソロも入る。教会の鐘?が鳴ると再び激しいリズムが刻まれる。後半は他の曲と同じようなサウンドで、違いがよく分からなくなる。暴れまくるティンパニやトロンボーンの荒々しいペダルトーンを含むテュッティが出現して突如として終わる。ところでこのアルバムを聞いていたら、気分があまりよくない。ChatGPTでミニマル・ミュージックが原因ではないかと思って調べてみたら、下記のような五つの答えが返ってきた。「単調性」「予測可能性」「感情の不足」「環境への適合性」「個人の好み」まあ、最後の個人の好みには笑ってしまうが、筆者にとって、抽象的で情報量が少ないため、感情的なつながりや表現が不足しているー「感情の不足」が当てはまるような気がする。この結果から、どうやら筆者にとってミニマルミュージックは心理的にあまりよくない影響を与えているようだ。なお、このアルバムのすべての作品は彼女のサイトで聞くことが出来る。Dani Howard Orchestra Works(Rubicon RCD1125)24bit 96kHz Flac1.Argentum(2017)2.Trombone Concerto(2021) I. Realisation II. Rumination III. Illumination5.Ellipsis(2021)6.Coalescence(2019)7.Arches(2015)Peter Moore(tb track 2-4)Royal Liverpool Philharmonic OrchestraMichael Seal(track 1-4)Pablo Urbina(track 5-7)Recording: Liverpool Philharmonic Hall, 14 May 2022 (Argentum, Trombone Concerto) & 11 October 2022 (Ellipsis, Coalescence, Arches)
2024年04月15日
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ニューヨークを拠点に活動し、グラミー賞に何度もノミネートされたトロンボーン奏者のアラン・ファーバー(1975-)率いる”NONET” による通算 5 枚目の最新作を聴く。ディストリビューターによるとアラン・ファーバーは『リー・コニッツ秋吉敏子ビッグバンド、ロニー・スミスから、ジェラルド・ウィルソン、ザ・ナショナル、ポール・サイモンなどと多岐にわたるグループに参加した』そうだ。編成はフロントが5人、リズム・セクションがギターを含む5人。全体に柔らかなサウンドが特徴で、アメリカ西海岸の都会的な洒落たセンスが感じられる音楽だ。9曲のうち5曲がリーダーのオリジナル。キャッチーなメロディーを持つ曲も多く、親しみやすい。その他の曲はジャズメンのオリジナルなどで、ノラ・ジョーンズとジョニ・ミッチェルの曲が異彩を放っている。ホーンが5人もいるのでビッグバンド並みのサウンドとハーモニーが楽しめる。欲を言うと低音がもう少し欲しいところか。タイトルチューンの「Up High, Down Low」からリラックスした音楽が流れる。リーダーのトロンボーンは、柔らかなサウンドで温かみのある表現が好ましい。「Brimstone Boogaloo」はリズミックでミステリアスなムードの都会的な音楽。ミュート・トランペットやフルートなどのヴォイシングがそのムードを一層助長する。オルガンやフルートのソロもいい感じだ。コンガもいいアクセントになっている。「Ambling」はミディアム・テンポのバウンズ感の感じられるリラクゼーションに満ちた演奏。けだるいムードを感じさせるアルト・ソロがいい。ギターのバッキングが落ち着きをもたらしている。古いスタンダードの「The More I See You」は急速テンポで、スイング感あふれるアレンジが爽快だ。ソロはジョン・ゴードンのアルト、スコット・ウェンドホルトのトランペット、デヴィッド・クックのピアノ、マーク・ファーバーのドラムスの順で、共に快調なソロを展開している。ミディアムテンポの「In Hindsight」ジョニ・ミッチェルの「Cherokee Louise」は凝ったアレンジではなく平凡な出来。原曲の荒涼たる風景を思い起こさせるようなムードは感じられない。なお原曲のソプラノ・サックスのソロはウエイン・ショーターだそうだ。「Violet Soul」はファーバーが20歳代の頃作曲した曲を改題したもので、ジョン・ゴードンのアルト・サックスをフィーチャーしている。後半に出てくるファーバーのワウワウミュートのプレイが異彩を放っている。ノラ・ジョーンズの「Day Breaks」でもイントロにトランペットとトロンボーンのワウワウミュートによるプレイが聞かれるが、これは原曲のギターのワウ・ペダルを使ったプレイをホーンに置き換えたもの。チャールズ・ピローのアルト・ソロはジョン・ゴードンとは異なりアーシーなテイストが持ち味。バス・クラリネットやバリトン・サックスのサウンドもこの曲の持つカントリー・テイストにスンなりとはまっている。最後はクリス・チーク(1968-)の「Ice Fall」。煽り立てるようなドラムスのせいで、原曲のフュージョン系ののんびりムードとは異なる、少し緊迫した雰囲気を感じさせる演奏。後半のラージ・アンサンブルならではの胸のすくようなテュッティが爽快。作曲者のバリトン・サックス・ソロがいい。原曲はソプラノ・サックスだったので変えたのだろうが、バリトン・サックスの重量感のあるサウンドが妙にはまっている。ニア・フェルダーのギター・ソロも悪くない。というわけで、地味な印象のアルバムだが、ラージ・アンサンブルの醍醐味を感じさせるサウンド1が堪能できる。Alan Ferber Nonet:Up,High,Down,Low(Sunnyside SSC 1694)24bit 96kHz Flac1.Alan Ferber :Up High, Down Low2.Alan Ferber, :Brimstone Boogaloo3.Alan Ferber :Ambling4.Harry Warren,Max Gordon:The More I See You5.Alan Ferber :In Hindsight6.Joni Mitchell:Cherokee Louise7.Alan Ferber :Violet Soul8.Norah Jones,Peter Remm:Day Breaks9.Chris Cheek:Ice FallAlan Ferber(tb,arr.)Scott Wendholt(tp.flh)John Ellis (ts)Chris Cheek(br-s)Jon Gordon (as) (tracks: 1, 3-7, 9)Charles Pillow (as, alto fl,cl,bass cl tracks: 2, 8)David Cook (P, Org, Key)Matt Clohesy(b)Mark Ferber(ds,perc.)Nir Felder(g)Daniel Diaz(perc.)Recorded July 5 & 6, 2022 at Big Orange Sheep, Brooklyn, NY
2024年04月13日
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先日叔父の弔問に行って来た。亡くなったのが3/20日で連絡が来たのは次の週の後半。葬式もすでに終わっていた。母の兄弟だが、筆者とは一回りしか違わない。昔大変にお世話になった。弔問に行ったのは筆者の妹と、叔父の兄の家族の叔母さんと従弟三人。それだけ人が集まると、いろいろな話が聞けて大変面白かった。びっくりしたのはビートルズの全録音を集めたボックスがあったこと。筆者も持っているので、音楽とは無縁と思っていた叔父がビートルズを聴いていたことに驚いた。亡くなった叔父の奥さんが言うには、家にはCDが沢山あったが処分したとのこと。そういえば、昔グループ・サウンズにザ・テンプターズというグループがあり、そこのドラマーの大口広司が川口出身で、実家が「貝坂」という屋号の肉屋さんだったことを思い出した。叔父はその店に勤めていて、大口さんのドラムを運んだことがあるという話を聞いたことがある。詳しい話はこちらに書かれている。なので、音楽と無縁だったわけではなかったのだ。母の兄弟には音楽好きの人が結構いて、筆者がクラシックに親しむようになったのも、別な叔父の影響だ。筆者の母も音楽が大好きで、仕事をしながらよく歌を歌っていたことを思い出す。亡き叔父の知らなかった側面を教えてくれた、誠に得難い機会だった。
2024年04月11日
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イタリア生まれのフランチェスカ・デゴ(1989-)によるヴァイオリン協奏曲集を聴く。風呂に入っている時にSpotifyで流していたら、その情熱的な演奏にすっかり参ってしまった。取り敢えずその時は高かったのでグラモフォンで録音していたストラヴィンスキーのアルバムをダウンロードして楽しんでいた。しかし、ある日偶然にもeclassicalで半額で購入できることがわかり、迷うことなくダウンロードしてしまった。調子に乗って、鈴木優人のバッハの平均律第1巻までダウンロードしてしまった。デゴのヴァイオリンは細身だが、とにかく音が素晴らしく美しい。作る音楽も明快で、作為的なところがなく、聴き手の耳にすんなりとはいってくる。難解と思われるブゾーニの音楽もスカッとして精神衛生上まことに良い。速い第3楽章も歯切れがよく、とんでもない速さのエンディングもすいすいと進みしかも爽やかだ。ブラームスは前述のとおり情熱的だが、聴き手の心に沁みわたる演奏だ。表情は濃厚ではないのだが、表現が的確で違和感は全くなし。腑に落ちる演奏とはこういうことを言うのだろうか。速めのテンポの第3楽章もラプソッディックな気分が横溢していて、ワクワクする。ブラームスは第1楽章のカデンツァの前でティンパニがドロドロ鳴って、風景が一変してしまった。びっくりして調べたら、ブゾーニのカデンツァだった。この曲の録音の大半のカデンツァがヨアヒムのもので、例外はクレーメルが使ったレーガーくらいだと思っていたのだが、我々が耳にする機会がないだけでけっこうな数のカデンツァが存在するようだ。こちらによると16種類もある。ここにも書かれているが、それだけこの曲には魅力があるということなのだろう。ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 15の作曲家によるカデンツァ聴きたいが残念ながら廃盤らしい。ブゾーニは初めて聞いた。シゲティが初演したそうだが、大変な難曲のようで、彼のyoutubeの演奏でもそれが感じられる。バックはウクライナ生まれで5歳にフィンランドに移住したというダリア・スタセフスカ(1984-)の指揮するBBC交響楽団もデゴの演奏に倣ったのか、粘らず清々しい。ただ、一部表現が固かったり、響きが整理されていないように感じられるところがあるのが惜しい。スタセフスカの芸風としては、ヒンデミットの剛直な音楽のほうがあっている気がする。ということで、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を買ったのは本当に久しぶりだったが、耳タコの曲のはずなのだが、新鮮な気持ちで聞くことが出来た。ブゾーニもなかなか楽しい曲で、これも爽やかだった。シゲティのブゾーニFrancesca Dego:Brahms & Busoni: Violin Concertos(Chandos CHSA5333)24bit96kHz Flac1.Busoni: Violin Concerto, Op. 35a4.Brahms: Violin Concerto in D major, Op. 77Francesca Dego (violin)BBC Symphony OrchestraDalia StasevskaRecording venue Phoenix Concert Hall, Fairfield Halls, Croydon; 4 and 5 July 2023
2024年04月09日
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ホセ・ジェイムズの新作「1978」を聴く。これは2008年の「The Dreamer」以来12枚目のスタジオアルバムで、自身のレーベルRainbow Blondeからのリリース。普通なら自主製作レーベルだと価格が高くなることが多いが、bandcampのRainbow Blondeではどのアルバムも価格が抑えられていて、とても助かる。リリース元の情報によると今回のアルバムは『ジェームズの深いジャズとヒップホップへの愛情を、R&Bの偉大なヒーローであるクインシー・ジョーンズ、マイケル・ジャクソン、レオン・ウェアへの曲作りやプロダクションのオマージュと融合させた瞬間の名盤』とのこと。名盤と言い切っているところが自信の表れだろうか。近年のレコーディングやツアーでお馴染みの強力なバンド・メンバーに加え、ブラジルのシンガー・ソング・ライター、シェニア・フランサ(1986-)や、コンゴ系ベルギー人のラッパー/映画監督バロジ(1978-)がフィーチャーされている。実際聞いてみると、ジェイムズのあくの強さが薄れ、かなり聴きやすくなっている。音楽そのものはダンス系の音楽だが、かなり完成度が高く、アレンジもヴァラエティに富んでいて、ノリがいい。アルバムの狙いが『自身の誕生年である1978年に因んで、マーヴィン・ゲイ、プリンス、スティーヴィー・ワンダーといった70年代後期のソウル・ミュージックを、ジェイムズなりの現代的解釈で表現したもの』なのも頷ける。また弦が入っている曲はなかなか新鮮だ。6曲目の「Dark Side of The Sun」ではバロジのラップがフィーチャーされている。野太い声でぐいぐいと迫ってくる。バロジと対比すると、ジェイムズの声が上品に聞こえるのも面白い。バックの弦との絡みもなかなかいい。7曲目の「Place of Worship」はフォークロアのようなテイストで、フランサのヴォーカルが力強く美しい。ジェイムズはわざと野卑に歌っているような感じだ。「For Trayvon」は珍しくバラード。トレイボンとは2017年に起きたトレイボン・マーティン射殺事件の被害者のことだろうか。哀しみを帯びたメロディーが胸を打つ。バックで目立っているのはマーカス・マチャドのアコースティック・ギター。ヒップホップ系の音楽でも合うのは意外だった。録音はサーフェイスのイズみたいなサーというノイズが聞こえるのが気になる。また分離もあまりよくなく、お団子状態だ。リバーブもかけすぎでエレキ・ベースの音がうるさい。また「38th & Chicago」は埃っぽい音。他の曲とは別なセッションだったかもしれない。その割にはコンガの音がリアルに響くのが意外。ところで、気になったのは「38th & Chicago」の画像がアルバムの画像と一致していないこと。bandcampからリリースされた他のミュージシャンのアルバムでも、先行リリースされた曲のアートワークがそのままアルバムに残っていることがある。修正できる場合はいいが、そうでない場合、ユーザーにはストレスになるだけだ。そのため、もう少し細かな配慮が欲しかった。José James:1978(Rainbow Blonde BLONDE065C)24bit96kHz Flac1.Talia Billig:Let's Get It2.Isis & Osiris3.Scott Jacoby;Talia Billig:Planet Nine4.José James, Kaveh Rastegar;Talia Billig:Saturday Night (Need You Now)5.Talia Billig:Black Orpheus (Don't Look Back)6.Baloji;Talia Billig:Dark Side of The Sun (feat. Baloji)7.Talia Billig;Xênia França:Place of Worship (feat. Xênia França)8.For Trayvon9.38th & ChicagoJosé James(vo)Jharis Yokley(ds)David Ginyard(e-b)Marcus Machado(g)Chad Selph(synth)Xênia França(vo track7)Pedrito Martinez(congas track 9)Jharis Yokley(ds track 9)David Ginyard(e-b track 9)Marcus Machado(g track 9)Chad Selph(p track 9)Tia Allen(va track 1,8)Francesca Dardani(vn track 1,8)Maria Im(vn track1, 8)
2024年04月07日
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フランスのメゾソプラノのサンドリーヌ・ピオー(1965-)の新作「Reflet」を聴く。彼女のアルバムはアルファからしか出てないので、なかなか手を出しにくい。このアルバムは珍しくeclassicalからもリリースされていたので、ダウンロードした。このサイトでは最近価格決定の基準が変更になり、秒単位で価格を決めているようだ。いわば従量制で決めているようなもので、アルバム単位での値決めをするこの業界においては、他のサイトでは考えられないことだ。この業界での価格破壊のようなもので、このサイトの英断に拍手を送りたい。閑話休題フランスの作曲家たちに何故かブリテンが入っているというプログラム。シャルル・ケクランの歌曲が取り上げられているのが珍しい。ピオーはどの曲でも上手さが際立っていて実に素晴らしい。フランスでは同世代のヴェロニク・ジャンス(1966-)も「Paysage」というアルバムをアルファからリリースしたばかりだ。筆者は以前はジャンスのほうがうまいと思っていたが、この二つのアルバムを比べると、ピオーの柔らかなディクションに比べるとジャンスはちょっときつく、ピオーのほうがフランス歌曲に相応しいと思う。聞いたことのない歌が多いが、その中ではケクランの「エドモン・アロークールによる4つの詩Op.7」からの2曲と「3つの歌 Op. 17」の第3曲 「顕現節」が繊細な伴奏と共にしみじみとした情感を感じさせる。因みに「顕現節」とは、東方の三博士がベツレヘムに誕生したキリストを訪問し、キリストが神の子として公に現れたことを記念する日(顕現日)に対応する時節のことだ。最後のブリテンの「4つのフランスの歌」はタイトル通りフランス風な曲で、他のフランス人作曲家の並んでいても全く違和感がない。微妙なサウンドのグラデーションが美しく、ブリテンの腕の冴えを感じさせる。管弦楽のみの短い曲が2曲入っていたが、ドビュッシーの割には主張が強く、厚ぼったいサウンドなこともあり、あまり面白くない。その中では短いながらも躍動的な「古代のエピグラフ」の第6曲「朝の雨に感謝するために 」が彼らの芸風に合っている。バックの「ヴィクトル・ユーゴー・フランシュ・コンテ管弦楽団」という団体は初めて聞いた。クラリネット奏者でもあるジャン=フランソワ・ヴェルディエは2010年からこの楽団の音楽監督を務めている。フランスらしい軽さと雰囲気が持ち味だが、歌に寄り添うというよりはぐいぐいと迫ってくるような、よく言えば積極的な伴奏で、悪く言うと圧迫感を感じるため好悪が分かれそうだ。ラヴェルの「マラルメの3つの詩」は室内楽編成なので、おしつけがましさがなく、そこはかとなく感じられる東洋趣味とクールな雰囲気が悪くなかった。ピオーの歌はオーケストラに全く負けていないのだが、個人的には、伴奏はもう少し控えめな方が好ましかった。録音は前に出てくるサウンドでこの録音も圧を感じる原因かもしれない。残念なのは、3曲目の2分30秒から2分50秒付近まで、何かが振動しているようなゴーという音が聞こえること。とても容認できるようなレベルではない。私の聞いている音源だけだろうか。とうことで、伴奏について注文を付けてしまったが、アルバム全体としてはかなりハイレベルな仕上がりで、ピオーの歌を堪能できる。年齢的にも最盛期だろうから、今のうちに出来るだけ多くの録音を期待したいところだ。Sandrine Piau:Reflet(Alpha ALPHA1019)24bit96kHz1.Hector Berlioz:Les nuits d'été, H 81: No. 2, Le spectre de la rose2.Henri Duparc:Chanson triste(1868)3.Henri Duparc:L’invitation au voyage(1870)4.Charles Koechlin:4 Poèmes d'Edmond Haraucourt, Op. 7 2, Pleine eau(1897) 4, Aux temps des fées(1896)6.Charles Koechlin:3 Mélodies, Op. 17: No. 3, Epiphanie(1900)7.Debussy, Claude:Suite bergamasque, L. 75: No. 3, Clair de lune8.Morice Ravel:3 Poèmes de Stéphane Mallarmé, M. 64(1913) 1, Soupir 2, Placet futile 3, Surgi de la croupe et du bond11.Debussy, Claude:6 Épigraphes antiques, L. 131: VI. Pour remercier la pluie au matin12.Benjamin Britten:Quatre Chansons françaises (1928) 1, Nuits de juin 2, Sagesse 3, L'enfance 4, Chanson d'automneSandrine Piau (s)Orchestre Victor HugoJean-Francois VerdierRecorded in November 2022 at Auditorium de la Cité des arts, Besançon.
2024年04月05日
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ジャズギタリストの渡辺香津美(1953-)が入院されたことをYoutubeで知った。2月27日に自宅で倒れられたそうだ。意識障害を伴う脳幹出血で重篤な状態のようで、今年いっぱいは活動を休止するとのこと。https://x.com/kw50_kazuminews/status/1774270403567038621?s=61&t=FZ7-4A_MAspdr8yzVzx9RA5月のベーシストの古野光昭の盛岡でのコンサートに、ゲスト出演される予定だった。。ゆっくり療養して、また元気なプレイを見せて欲しいと願っているが、後遺症が心配だ。何事もなく治って欲しい。
2024年04月03日
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先週、ノートパソコンが動かなくなったことをブログに書いた。今日メーカーから連絡があり、再現しないとのこと。ただ自己診断でバッテリーが劣化しているという。バッテリーを外してACで給電しても動作するので、取敢えずそのまま返却してもらうことにした。再現しないというのが1番厄介なのだが、仕方がない。バッテリーの交換の提案をされたが、2万円も取られるし、作業も難しくはないので自分でやることにした。マザーボードの交換でソフトを再インストールしてデータがなくなることを危惧していたが、そうならなくてよかった。この際、心を入れ替えて?OSの更新とバックアップもやろうと思う。めでたしめでたし?
2024年04月01日
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