音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2007年08月18日
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デポール大学ウインド・アンサンブ ルの珍しい作品を集めた最新作。この中で名前を知っている作曲家はデュボア、サリナッハくらいでしたが、なかなか面白い曲が多く、聞くほどに曲の魅力を感じさせるアルバムで存在価値は大変高いと思います。

 最初はピエール・マックス・デュボワ(1930-95)の1分足らずのファンファーレを3つ集めた作品。金管にティンパニが加わった編成で新古典主義らしい明晰な音楽。高音中心の音楽で、演奏の難易度は高いですが、平易な曲なので、演奏される機会が多くあっても良いと思います。

 2曲目は、ベルギー出身の マルコ・プッツ の「クラリネットとウインド・アンサンブルのための協奏曲」。この曲はこのアルバムの演奏者であるデロシェとデポール・ウインド・アンサンブルによる委嘱作品。

 シンフォニックでスケールの大きい1楽章はどこかスパークを思わせます。ドビュッシーの「シランクス」に似た主題を持ち、夜の静けさが支配する第2楽章はクラリネットの無伴奏ソロを前後に配されます。中間部はショスタコービッチのイニシャルDSCHの音を含むフガート風のコラールが金管により強奏されます。ソロの後半にフルート(前半)やサックス(後半)が絡みます。

 第2楽章の最後のラプソディックな旋律を引き継いで、切れ目なく続く3楽章は幾分速いテンポの楽章で、パレード風なウイットとユーモラスな部分もありなかなか面白い楽章です。

 デポール音大助教授のジュリー・デロシェの演奏は上から下までムラのない音と滑らかなレガート、発音のはっきりとした切れの良いスタカートと技術的に申し分ありません。曲の特徴も的確に表現されていたと思います。

 スペインの作曲家 カルロス・サリナッハ (1915-1997)の「Soleriana」は1967年~1967年にアメリカのカーネギー・メロン大学に招聘された時期の作品です。「Soleriana」はアントニオ・ソレルの代表作「チェンバロのためのファンダンゴ」を基にした序奏と7つの変奏曲からなる曲です。スペイン情緒満点ですが、主題に魅力がなく、変奏も平板で驚きに乏しい音楽。

ジョージ・パール (1915-)は音楽学、特にアルバン・ベルクの研究で有名です。作曲では、「フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットのための管楽五重奏曲第4番」で1986年にピューリッツアー賞を受賞しています。「ヴィオラと室内管弦楽のための協奏曲」は古くからの音楽形式「セレナード」の本来の意味に近い「夜の音楽」としての性格がかなり強い作品です。ヴィオラという珍しい楽器を独奏とし、協奏曲としてソロと伴奏が対峙する形式ではなく、ソロにバックが頻繁に楽器を替えながら絡みつくといった趣です。

全体にクールな雰囲気が漂うなかなか洒落た作品です。バックはマスとして鳴らされるのではなく、個々の楽器として独立して扱われます。打楽器の使い方が上手く、曲に効果的なアクセントが付いています。ベルク研究家のせいか、ベルクの響きがそこかしこから聞こえてきます。管は2管編成で弦の音は聞こえません。イスラエル出身のラミ・ソロモノフの独奏ヴィオラは勿論、バックの個々の奏者の技量も大変高いです。

ブラス・エミリオ・アテオルトゥア は1943年コロンビアで生まれた作曲家で、オーケストラから独奏曲、映画音楽までかなりの多作家です。この「コラールと幻想的なオスティナート」1988年に作曲された作品で、4つの部分に分かれています。

ファゴットとバスクラリネットのリズミックなオスティナート(3+2+2+3)にパーカッションが加わるエキゾチックな第1部。木管のクラスターにチャイムの音が響き、木管の不気味なオスティナートにEsクラとトランペットの対話が続く第2部、ローブラスの勇壮なコラールとメシアン風の旋律が印象的な第3部、そして第1部のモチーフの変形(2+3+4)がホルンを主体としてダイナミックに展開される第4部と約6分に色々な要素が凝縮されています。

 聞いたことのない曲ばかりでしたが、さすがにデポール大ウインド・アンサンブルのCDで、殆どの曲に聴きどころがありとても楽しめます。従来の吹奏楽曲を聞き飽きた方、知らない曲を聴きことに興味がある方には是非お薦めしたいと思います。演奏も申し分ありません。

Depaul Wind Ensemble:OSTINATO FANTASTICO (Albany TROY889)
1.Pierre Max Dubois:Trois Preludes en Fanfare(1965)
2.Marco Putz:Concerto for B Flat Clarinet & Wind Ensemble(2004)
3.Carlos Surinach:Soleriana(1972)
4.George Perle:Serenade No. 1 for Viola & Chamber Orchestra(1962)
5.Blas Atehortua:Ostinato Fantastico(1988)

Julie DeRoche (clarinet) on 2
Rami Solomonow (viola) on 4

Depaul Wind Ensemble
Donald Deroche (cond)

Recorded in The Temple Concert Hall Between Jan.2004 and Jun. 2006







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Last updated  2007年08月18日 22時10分29秒
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