音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2007年12月19日
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カテゴリ: その他の音楽



10月に来日したミッシェル・ルグランの来日記念盤として発売された4枚組のサウンドトラック集です。国内版と輸入盤があり国内版は1万円と高いため輸入盤をcaimanから買いました。ところがあとでHMVをチェックしたら5千数百円だったことに気がつき(現在は6千6百円)失敗したことを知ったのでした。

 これは元々は2005年に発売されていて、来日を記念して輸入された物のようです。1959年の「囚人たち」から2000年の「青い自転車」(TV)まで九十数曲が収められています。

私は昔からミッシェル・ルグランの音楽は好きでした。一番好きな映画音楽は「思い出の夏」です。この映画は高校の頃に友達と今ではなくなってしまった市内の映画館で見たことを覚えています。その時は「ベニスに死す」との豪華2本立て!でした。「ベニスに死す」の強烈な印象に比べ、「思い出の夏」は作品としては「ベニスに死す」の敵ではありませんでした。しかし、はかないストーリーと共に、この音楽とジェニファー・オニールの美しさがとても印象に残っています。

 そういえば、ジェニファー・オニールは後にヴィスコンティに「イノセント」で起用されていますので、今から考えると、この2つの映画の組み合わせもなかなか気の利いた組み合わせだったのかもしれません。

■レベルの落差が少ない作品集

 このようなクロノジカルに編集された作品集の場合、優れた作品と全く忘れられた作品の落差が大きいものですが、ルグランの場合はその差が少ないように思います。

また、あまり知られていない曲の中にもハットするほど美しい作品もあります。「思い出の夏」の次に収録されている「雪解け」(1972)の同名曲など哀愁感漂うその佇まいにしびれます。

■ジャズの熱狂と洒落っけ

 ルグランはジャズの影響がかなり強い作曲家ですが、ここに収録されている物ではダバダバ・コーラスの印象が強烈な「ロシュフォールの恋人達」の「キャラバンの到着」や「オーソン・ウエルズのフェイク」の「オーソンズ・テーマ」のほかには数曲しかありません。しかし、その中に感じられる洒落っけと熱狂が堪りません。

 またその他の曲でもバックでピアノなどでのアドリブソロは多く聴かれ、いかにも洒落た感じを生み出しています。

■一筋縄ではいかない構造の複雑さ

 昔ラジオなどで聴いていたときに覚えた曲を今改めて聴いてみるとその構造の複雑さに目を見張ります。その重層的な構造の中から戦慄が浮かび上がってくるその腕の冴えには感心してしまいます。さすがに、才人と歌われただけあり一筋縄ではいきません。

■フランスのエスプリとパリの哀愁

 全体的にフランスのエスプリとパリの哀愁の様な物を強く感じさせる曲が多く、BGMとしてうってつけだと思います。1,2曲を聴くとあまり感じないのですが、このように通して聴くことにより、ルグランの音楽がフランスという土壌に根ざした物であることが強く感じられます。

 もっとも、これを全部聴くのはかなり辛いものがあることは確かで、BGMとして流しておいてその中からお気に入りをピックアップして聴くというのが一番良い聴き方かもしれません。

■アメリカ風の音楽も

 ノーマン・ジェイソン監督の「結婚しない族」(1982)の「How Do You Keep the Music Playing?」を聴いたとたん、トニー・ベネットのデュエット集で、ジョージ・マイケルと歌っていた歌だったことを思い出しました。これがルグランの音楽とは全く気がつきませんでした。あまりルグランらしくない音楽と言うべきでしょうか。感動的な音楽であることは間違いないですが、らしくない気がします。 パティ・オースチンとジェイムズ・イングラムのデュエットは素晴らしいですが、すっかりソウル・ナンバーに変貌しています。

 音はばらつきがあるのは当然ですが、昔の極端に広がりを持たせたために、センターが希薄になっている録音や、楽器を別取りして配置しているために、音場が人工的になっている物など、その時々の録音の変遷も伺うことが出来て大変興味深いです。

 ということで、聴くのにも大分骨が折れる代物ですが、ここには音楽の楽しみがぎゅうっと詰まっていて、聴く度にその喜びを感じることは間違いありません。一家にお一つ如何でしょうか。

Michel Legrand:Le Cinema De Michel Legrand (universal S.A France 982 908 1)

DISC1
1.アメリカ」の裏窓 (1959年): : 囚人たち
2.アメリカの裏窓 (1959年): : 双子のタンゴ
3.ローラ (1960年): :ローラの歌
4.ローラ (1960年): : 夢見るロラン・カサール
5.女は女である (1961年): :アンジェラの歌
6.女は女である (1961年): :ル・ブニャ亭のブルース
7.5時から7時までのクレオ(1961年): : 金髪の歌姫
8,天使の入り江 (1962年): : 愛とゲーム
9.エヴァの匂い (1962年): : メイン・テーマ
10.エプソムの紳士 (1962年): : 競馬のテーマ
11.シェルブールの雨傘 (1963年): : 駅
12.プレイ・ガール陥落す (1963年): : 海で自由になれ
13.ノーマ・ジーンのプラスティック・ドーム(1965年): :ノーマ・ジーンのテーマ
14.城の生活 (1965年): : メイン・テーマ
15.ポリー・マグーお前は誰だ? (1966年): : ポリー・マグーのバラード
16. ロシュフォールの恋人たち (1966年): : キャラバンの到着
17.ロシュフォールの恋人たち (1966年): : 双子姉妹の歌
18.ビュイックの男 (1967年): : 税関のフェルナンデル
19.無実の問題 (1967年): : かわいいポリー
20.大侵略 (1968年): : メイン・テーマ
21.今宵かぎりの恋 (1968年): : 組曲
22.ハッピーエンディング(1968年): : これからの人生
23.ハッピーエンディング(1968年): :コラージュ
24.北極の基地・潜航大作戦 (1968年): : 序曲








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Last updated  2007年12月19日 17時36分51秒
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