音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2019年08月16日
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カテゴリ: クラシック音楽

ウイントン・マルサリスのヴァイオリンのための作品集が、なんとDECCAからリリースされた。
ヴァイオリンはスコットランド出身の二コラ・ベネディッティで、協奏曲は彼女のために書き下ろされたとのこと。
マルサリスのクラシック作品なんて、びっくりしてしまった。
作曲で後世に名を遺すということを考えているのだろうか。
演奏の記録では百年もたないことを考えると、作曲のほうが残る可能性が高いので、そう考えてもおかしくない。
あくまでも当ブログの推測だが。。。。
ヴァイオリン協奏曲は純粋にクラシックの作品で40分を超す大作。
ところどころにジャズの香りはするが、ビッグバンドに聞かれる粗暴といってもいいような、黒っぽさはあまり感じられない。
他のジャンルの人間が作曲したときに感じられる様式上の違和感や、技術的な未熟さも全く感じられない。
そういう意味では、スタイルは決して新しくはないが、一流作曲家のクラシック作品に引けをとらないし、かなり洗練された作品だと思う。
ヴァイオリン協奏曲の冒頭はコルンゴルドを思わせる濃厚な雰囲気が感じられる。
全体的にはバックは控えめで、多彩なテクニックを交えた、艶やかなヴァイオリンが活躍する趣味のいい作品だ。
マルサリスのジャズ作品の特徴である、ニューオーリンズの香りはあまり強くない。
また、古き良きアメリカの雰囲気が感じられるが、決してノスタルジックには陥らない。
第2楽章はケルトの音楽の濃厚な雰囲気が漂っている。
第3楽章はタイトル通りブルースの気分が濃厚だが、ここでも、どっぷりとブルースに漬かっているいるという気分ではなく、あくまでも爽やか。
時々、トランペットのアップグリスのフレーズが入って、ミンガス風になるところは、ジャズファンなら思わずにゃっとする瞬間だ。
ガーシュインを聴いているような、おしゃれな部分も垣間見られる。
第4楽章の「フーテナニー」は「観客参加型のコンサート」」という意味だそうだ。
「フーテナニー」といえば吹奏楽関係者なら一度は演奏したことのあるのがハロルド・ワルターズの作品。
youtubeで確認したら、いろいろな音楽がごちゃ混ぜになった、アメリカのノスタルジックな気分が味わえる曲だったことを思い出した。
マルサリスの作品は楽しさはあるが、クラシックらしく、節度のあるはじけ方だった。
全体に軽い仕上がりだが、いわゆるライト・クラシックではなく、ヴァイオリンの魅力が詰まった曲で、聞き終えた後は爽快な気分になる。
ウイットにも富んでいる。
バックの涼やかなサウンドも魅力的だ。
難しいところはなく、頭を空っぽにして聞くのがいいと思う。
フィドル・ダンス組曲は無伴奏ヴァイオリンのための5曲からなる組曲。
スコットランドの雰囲気が濃厚で、古くから伝わるフィドル奏法を生かした作品。
ブックレットにはマルサリスの曲目解説が載っていて、それによると第3曲の「Jones' Jig」の「Jones」とはジャズ・ドラマーのエルビン・ジョーンズのことだそうだ。
アイルランドのジグ、アフリカの6/8ベルパターン、ジャズのシャッフル&リズム、などを駆使したエルビンのプレイスタイルにヒントを得た作品。
最後の「Bye Bye Breakdown」は土曜日に行われる納屋の踊りの情景を描いている。
エンディングの足を踏み鳴らして音はダンサーの靴の音だろう。
この組曲全体がリズム的に大変難しい曲のように感じられるが、ベネディッティはそれを全く感じさせず、生き生きとした音楽を作り上げている。
ディストリビューターのコメントでは「ジャズ・ファンにもクラシック・ファンにも新たな世界を提示するクロス・ジャンル、クロス・カルチャーの新作」と持ち上げているが、先入観なしに聞いてほしい。
早急な評価は控えなければならないが、アメリカ人が好きそうな音楽で、グラミー賞を受賞してもおかしくない作品だろう。

Nicola Benedett:WYNTON MARSALIS Violin Concerto & Fiddle Dance Suite

Wynton Marsalis (1961-):
1.Violin Concerto in D Major
  Rhapsody
  Rondo Burlesque
  Blues
  Hootenanny
5.Fiddle Dance Suite
  Sidestep Reel
  As the Wind goes
  Jones' Jig
   Nicola's Strathspey
  Bye-Bye Breakdown

Nicola Benedetti(vn)
Philadelphia Orchestra, Christian Măcelaru(track 1-4)

Recorded: 2017-11-04
Recording Venue: Kimmel Center for the Performing Arts Verizon Hall, Philadelphia(track 1-4)
The Menuhin Hall, Stoke D’Abernon, Surrey, 27 March 2019(Track 5-9)





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Last updated  2019年08月16日 16時05分22秒
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