音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2019年08月26日
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カテゴリ: ジャズ

だいぶ遅れてしまったが、ブラッド・メルドーの新作について一言。
HMVのメールでCDのリリースを知り、HDtracksから速攻でダウンロード。
最近、新作がCDとほぼ同じか先行してリリースされることが多くなり、ハイレゾ志向の当ブログとしてはハイレゾがいつ出るか絶えずチェックしする必要ないのは精神衛生的に助かる。
すべてがスタジオ内で完結できる配信のほうが原理的には速くできるはずなのだが、そうもいかない事情があるのかもしれない。
タイトルのガブリエルは、『旧約聖書『ダニエル書』にその名があらわれる天使。ユダヤ教からキリスト教、イスラム教へと引き継がれ、キリスト教ではミカエル、ラファエルと共に三大天使の一人で、キリスト教美術の主題の一つ「受胎告知」などの西洋美術において、彼は優美な青年で描かれる。
最後の審判のときにラッパを鳴らし、死者を甦らせる天使』( wiki )
タイトルからわかるように旧約聖書からインスパイアされた作品で、宗教的な癒しと、現代の最先端のヒップホップやエロクトロニカが融合した作品。
シンセのOB-6とマーク・ジュリアナのドラムから楽曲を得たという。
一聴パット・メセニー・グループのサウンドに近いと思ったが、似ているのはサウンドだけ。
ジャズ色は希薄で、もっと広範囲な領域の音楽を志向しているような感じがする。
ユダヤ教やキリスト教に理解があれば、このアルバムを深く理解できるだろうが、宗教に無縁な当ブログには想像の域を出ないのが悔しい。
「The Prophet Is a Fool」のように子供と大人の会話が入ったプロテスト色の高いナンバーもあるが、全体的には宗教的な清冽な曲が多い。
そこにジャズ、エレクトロニクスなどが混じっていて、トリップ・ミュージックのような妖しい音楽になっている。
当初メルドーとジュリアナのデュオかなと思っていたが、出入りはあるにしても、ミュージシャンが入れ替わり立ち替わり参加しているので、当初の予想とはいい意味でだいぶ違ってしまった。
ヴォイスが参加しているトラック(track 1,3,5,7,8,9)が何ともすさまじい迫力。
迫力だけでなく癒しが感じられるのもヴォーカル入りのトラック。
このアルバムを聴いて以来、この肉声がなぜ癒しに感じられるかを考えている。
楽器の音ではそう思うことはないのに、肉声だと違う。
人間の発する音が余計な居雑物なしに伝わるからかと思うが、現時点では納得のできる結論には至っていない。
ヴォイスの歌うメロディーが賛美歌のような清らかなメロディーなことも、この感想になった一因ではある。
track1,6に参加しているアンブローズ・アキンムシーレのトランペット・ソロも切れる寸前といった感じでかなり説得力がある。
「The Garden」のサックス・ソリも切れる寸前のような凶器が感じられ、かなり危ない世界だ。
「The Prophet Is a Fool」のMichael Thomasのアルト・ソロもほとんど狂気の世界だ。
この中では「Proverb of Ashes」がかなり風変わり。
速いテンポで、Snorts" Malibuが演説のような言葉を発している。
SOIL & PINMPSのアジテータのような感じだ。
後半のメルドーの一人二重唱はスケールが大きく印象に残る。
「Prophet Is a Fool」はホーンが複数入っていて最もジャズ色の濃い作品だが、一風変わっている。
大勢の人たちのシュプレヒコールと子供と大人の会話、続く中近東風の音楽。木管のソリ、プッツンしそうなテナーソロ。
脈絡のないような音楽だが、単調なピアノの和音とせわしないドラムスやホーンの音楽は聴き手の心をざわつかせる。
このアルバム中随一の聞き物だろう。
タイトル・チューンでも冒頭語りが入るが、これはメルドーの声。
このトラックではメルドー単独の演奏。
ヴォイス、ピアノなど9種類のパート(何とドラムスまで!)を担当して、独特の世界を創っている。
技術が発達しているとはいえ、これだけ壮大な世界を単独で創っていることには驚きしかない。
ただしメロディーは月並み。
「Born to Trouble」もメルドー単独の演奏で、コーラスが実に清冽で感動的だ。
短いトラックだが、癒しを感じさせる作品。
「Make it All Go Away」はメルドーとジュリアナのほかにはベッカ・スティーブンスとカート・エリングのヴォイスのみ。
カート・エリングが大きくフィーチャーされている。
穏やかな音楽だが、温くてアルバムの中では平凡な出来。

それにしても、この年代の多くのミュージシャンがそろそろ過去の遺産で食っていこうとしているときに、これほどの挑戦を続けている姿には限りない共感を覚えるものだ。
ある種難解な音楽であり、拒絶反応があることを承知のうえで、是非多くのジャズ・ファンの方にお聞き頂きたい。
ディストリビューターのコピー『コーラスを効果的に使用し繰り広げられる壮大な一大スペクタクル・サウンドがここに!』はちょっと軽い気がするが、あながち大げさではない。

この作品から新曲「​ The Garden ​」のミュージックビデオが公開されている。
アニメ仕立てで青空に雲や車が浮いていて、天使ガブリエルが飛んでいるというなかなかシュールな作品。
最近プロモーションでyoutubeにアップされることが多いが、内容もセッションの風景だけだったり、せいぜいインタビューが追加されるぐらいなものが多い中、ここまでこったものもなかなかない。
ノンサッチの力の入れ具合が分かるというものだ。
ブックレットに全部ではないがトラックごとにインスパイアされた旧約聖書の言葉が書かれているので、参照していただければと思う。

Brad Mehldau:Finding Gabriel

1. The Garden
2. Born to Trouble
3. Striving After Wind
4. O Ephraim
5. St. Mark Is Howling in the City of Night
6. The Prophet Is a Fool
7. Make It All Go Away
8. Deep Water
9. Proverb of Ashes
10. Finding Gabriel

Recorded at Bunker Studios,Brooklyn, between March 2017 and October 2018





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Last updated  2019年08月26日 21時59分58秒
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