音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2019年11月09日
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カテゴリ: クラシック音楽

eclassicalの新譜案内で知り、例によってspotifyでチェックして、購入した音源。
聞いたことのない作曲家の作品が多く、そういう意味では、とても貴重な機会を与えていただいた気がする。
ドイツとギリシャの作曲家の作品が集められているが、ご存命の作曲家はいない。
おそらく、このような企画のアルバムは殆どないだろう。
選曲と演奏がよく、知らない作曲家たちを知ることができる絶好のアルバムだ。
全体的にひんやりとした雰囲気、それが何故か心地よい。
ギリシャのアテネ生まれの ファニー・アントネルー (Fanie Antonelou 1979-)は2005年のマリアカラス国際コンクールのオラトリオと歌曲の部門でグランプリを受賞している。
クルレンチスの「フィガロの結婚」でスザンナ役を歌っているのを覚えている方もいるだろう。
現在はシュツットガルト歌劇場を中心に、世界各地で活躍されている。
背景を考えると、今回のアルバムは彼女にふさわしい企画だろう。
声は透明で、大柄で顔もあまり優しそうではないが、可愛い声をしているのが意外。
殆どの曲はお初にお耳にかかるものだった。
独特の雰囲気を持つ世界だが、耳に馴染みやすい曲が多く、楽しめた。
知っているのはドイツ人以外はミトロプーロスのみ。
ミトロプーロスはニューヨーク・フィルのバーンスタインの前任として有名だが、作曲をしているとは知らなかった。
ミトロプーロスは無調に理解を示していた指揮者だが「船員の死」はロマンティックで、バラードのように劇的だ。
「アフロディーテ」は無調だが、冷たくはなく、どこか親しみやすい。
ヤニス・コンスタンティニディスの『ギリシャ人の20の歌』からの抜粋は東洋的なエキゾチックな音楽で、とても興味深い。
マノリス・カロミリス(1883-1962)はオスマン帝国のスミルナに生まれ、後年アテネで活躍した。
ワーグナーとリムスキー=コルサコフの賛美者で、後期ロマン派音楽の作曲家。
豊かな和声法と管弦楽法、複雑な対位法、息の長い東洋的な旋律、ギリシャの民族音楽のリズムの多用が特徴的とのこと。 wiki
「雌ジカ」は冒頭のピアノのアルペジオが不思議な空間を作り出し、東洋的な雰囲気も強い、一風変わった曲。
ピアノが重要な働きをしている。
「妖精」は少しコミカルで、「Rumeliótissa」も平易な楽想で楽しめる。
シェーンベルクは初期と後期の作品が1曲ずつ。
作品2の第1曲「期待」はこのアルバムの中では、さすがに浪漫的で、フーゴー・ウォルフのように聞こえる。
フィリップ・ヤルナッハはフランス生まれで、1920年代にベルリンで働く。
1949年にハンブルク音楽大学を創立し1970年まで教えた。
教え子の中にはクルト・ワイルやベルント・アロイス・ツィンマーマンがいる。 wiki
ドイツの作曲家 アントン・ベーア=ヴァルブルン の「マリアの憧れ」は静かなギリシャの雰囲気が感じられる
オーストリアの作曲家ルートヴィヒ・トゥイレの「3つの女性の歌 Op. 5の第1曲嘆き」は感情ががダイレクトに伝わってくる、なかなかの名品。
ドミトリス・リャリオス はトゥイレの弟子で、ギリシャで初めて近代的な室内楽を作曲したそうだ。
4つの歌 Op. 7 - 第1曲 Es erklingt wie Liebestoneはギリシャの雰囲気が色濃い作品。
ということで、地味なアルバムではあるが、どの曲も味わい深く、秋の夜長にじっくりと耳を傾けるのに相応しいアルバムとしてお勧めする。


ファニー・アントネルー:ギリシャとドイツの芸術にまつわる歌曲集

ヤニス・コンスタンティニディス(1903-1984):
1.「ギリシャ人の20の歌」より
アレクサンダー・ツェムリンスキー(1871-1942):
  5.「乙女の嘆き」
  6.お嬢さん、僕と一緒に踊りに行かないかい?
  7.湖はいま不安にゆれている
8.マノリス・カロミリス(1883-1962):
5つの歌から第4曲 I neraidoparmeni (Enchanted by the Fairies)
アルノルト・シェーンベルク(1874-1951):
  9.4つの歌 Op. 2 - 第1曲 期待
  10.3つの歌 Op. 48 - 第3曲 乙女の歌
ディミトリ・ミトロプーロス(1896-1960):
  11.「船員の死」
  12.「アプロディーテーへ」
クルト・ヴァイル(1900-1950):
  13.「別れの手紙」
  14.「Klops Lied」
15.フィリップ・ヤルナッハ(1892-1982):5つの歌 Op. 15 - 第2曲 子供の不思議な角笛
16.ニコス・スカルコッタス(1904-1949):雌ジカ AK 86
17.アントン・ベーア=ヴァルブルン(1864-1929):アイヒェンドルフの詩による宗教的な歌 Op. 59 - 第5曲 マリアの憧れ
エミリオス・リアディス(1880-1935):
『9 つの短いギリシャの歌』より
  18.「Magissa」
  19.「Missiriotissa」
マノリス・カロミリス
20.妖精
21.Rumeliótissa
22.ルートヴィヒ・トゥイレ(1861-1907):3つの女性の歌 Op. 5 - 第1曲 嘆き
23.ドミトリス・リャリオス(1869-1940):4つの歌 Op. 7 - 第1曲 Es erklingt wie Liebestone

ファニー・アントネルー(s)
ケルスティン・モルク(p)

録音:2017年8月/ライツターデル、ノイマルクト(ドイツ)





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Last updated  2019年11月09日 22時53分00秒
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