音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2024年06月30日
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カテゴリ: ジャズ

全く知らなかったピアニストなのだが、Spotifyで流れていて気にいって、調子にのって5枚ほど入手した中の一枚。
一応ジャズなのだろうが、リリカルなクラシック系統のピアノだ。
抜群のテクニックと強靭な打鍵、エネルギッシュな面も見せる。
タイトルが示すように全編が変奏曲のような構造になっている。
ヤロン・ヘルマン (1985-)ha
イスラエル生まれフランス在住のピアニスト。
最近イスラエル出身のジャズミュージシャンの名前を聞くことが多いが、彼らに共通な音楽を感じることが多い。
簡単にいうと静的な音楽なのだが、彼らが受けた教育が関係しているのだろうか。
ディストリビューターによると『変奏曲のスタイルを採ったユニークなアプローチ、溢れ出る抒情性、攻撃的な激しいピアニズムで聴かせるソロ・ピアノ作品』とのこと。
ガーシュインの「Summertime」が抒情的ではあるが、今まで聞いたことのないような、驚きの展開で、いっぺんに気に入ってしまった。
オスティナートに乗って次第に熱を帯びていくアドリブが見事。
実に素晴らしい演奏だった。
続く3曲が「Summertime」の変奏という位置づけなのだろう。
タイトルがあって括弧書きで第1-3変奏と称されているので、なんだか紛らわしいことは確か。
各々の曲に「Summertime」の変奏がちょろっと入っているというような感じなのだろうか。
フォーレの「レクイエム」の「リベラ・メ」は原曲の前半のみの演奏だが、これも素晴らしくいい。
躊躇いがちに弾かれるメロディーが、何とも言えない抒情を感じさせ実に感動的だ。
聴いていると、クリュイタンス盤のフィッシャー=ディースカウの歌声が聞こえて来そうな演奏で、バスのリズムの強打もかなり印象に残る。
続く3曲も「リベラ・メ」の変奏という位置づけのようだ。
第2変奏の「Eli Eli」はヘブライ語で「神よ、神よ」という意味だ。
作曲者の ダヴィド・ゼハヴィ (1910-1977)はイスラエルの作曲家で、この歌はトラッドとしてユダヤ音楽として親しまれているらしい。
原曲は平易な民謡という感じだが、ヘルマンの手にかかると、鮮烈なロマンを感じさせる曲に変貌している。
エンディングに、フォーレの「レクイエム」の「サンクトゥス」の一節が流れてくるのもなかなかしゃれている。
この「レクイエム」は6曲目から始まる変奏曲でも第4曲の「ピエ・イェス」が使われている。
完全にジャズ化されていて、ビートを強調した野卑な感じ演奏で、メロディーはダイレクトには出てこない。
9曲目の「Ose Shalom」は慰めに満ちたメロディーが聴き手の心を締め付けるようだ。
変奏は2曲だけで、第1変奏はコミカルな曲。
第2変奏は「語り部の時」というタイトルで、パーカッション?入りで宗教的な気分が味わえる。
スティングの「Fragile」はアップテンポのヒップホップ的なごつごつとしたアプローチで、ノリノリのピアノ・プレイが味わえる。
パーカッシブな打鍵にピアノの胴をたたく音も入っている。
おまけに控えめながら声も共演?している。
アルバムの最後はクレア・フィッシャーの「フランシス・ポードラへのオマージュ」。
フランシス・ポードラ (1935–1997)はバド・パウエルとの交友が有名な写真家のこと。
この曲に関する youtubeの解説 によると1997年に自ら命を絶ったポードラを悼んでフィッシャーが作曲したとのこと。
彼らはフィッシャーがフランスに行った時に食事を共にし、後日再訪した時にポードラの自宅に滞在する話まで計画されていたという
印象派風ではあるが、不協和音を伴うハーモニーが、より一層フィッシャーの悲しみを表しているようで、心が痛む。
ということで、初めて聞いたピアニストだったが、抒情的ではあるが表現が平板ではなく、イマジネーションの豊かなピアニストであることが分かった。
今後、残りの音源もじっくりと聞いていきたいと思う。
例によってロスレスを192kHzにアップコンバートしての試聴だが、もともとの録音がとてもよく、音が太く低音が良く出ている。
知らないミュージシャンを聴いたときの喜びが味わえるのは、このような優れたアルバムを聴いたときのためにあるのだろう。

Yaron Herman:Variations -Piano Solo

1.George Gershwin;Summertime
2.Yaron Herman;Blossom (Var. 1)
3.Yaron Herman;Facing Him (Var. 2)
4.Naomi Schemer;Jerusalem of Gold (Var. 3)
5.Gabriel Faure;Libera Me
6.Yaron Herman;Fugue (Var. 1)
7.David Zehavi;Eli Eli (Var. 2)
8.Gabriel Faure;Pie Jesu (Var. 3)
9.Yaron Herman;Ose Shalom
10.Yaron Herman;Drops (Var. 1)
11.Yaron Herman;Le temps du conteur (Var. 2)
12.Sting;Fragile
13.Clare Fischer;Hommage a francis paudras

Yaron Herman(p)





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Last updated  2024年07月01日 22時04分19秒
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