ヒット商品応援団日記 No768
(毎週更新) 2020.7,13
コロナ禍から学ぶ(2)
「日常」の取り戻し
危機に現れるヒット商品。
そして、 2
つのテーマ、「観光」と「生活文化」
2ヶ月ほど前にこの危機をとにかく生き延びて欲しいとの思いから、歴史からその知恵を学んで欲しいとブログに書いたことがあった。それは公的支援を受けることは勿論だが、例えば飲食店が店内飲食を中断し、テイクアウトの弁当店を行うこと によって少しでも売り上げの補填をして経営を持続させていくといったことであった。
しかし、こうした「持続」を断念する老舗が数多く出て来た。その象徴が東京歌舞伎座前の弁当店「木挽町辨松(こびきちょうべんまつ)」の廃業であろう。152年の歴史を持つ弁当店で、歌舞伎座や新橋演舞場などの役者さんや観劇用弁当として愛され続けた老舗である。廃業のきっかけは新型コロナウイルスによる売り上げ減少が大きく影響したようだ。大阪でも今年創業100年を迎える「づぼらや」が9月には店を閉じるとの発表があった。大阪の人には馴染みのある店で、復活した新世界のランドマークにもなっている店である。「食い倒れの街大阪」を代表してきた老舗で、安い値段で気ままに、ずぼらにフグを食べてほしいという願いが店名になったと聞いている。この2つの老舗共に、アフターコロナ、つまり「明日」が見えてこなかったということであろう。こうした現象は巣ごもり消費が続く中、先が見えないことからの廃業で、いわゆる経営破綻・倒産としてのそれではなく、ある時を持って店を閉める幕引きである。
ところでやっと新型コロナウイルスとの次なる戦い、「出口」戦略が始まった。新しい「生活様式」という感染を防ぐ一つのガイドラインが提示されているが、そのまま生活に組み込まれることはない。その意味するところは前回書いたように「ロックダウンではなく、セルフダウン」、つまり個々人の「自制」されたライフスタイルとなる。そして、誰もが数ヶ月前の生活とは「どこか違う」ものになるであろうと予感している。それはテレワークと言った単純な「違い」ではない。今テレワークが注目されているのは、業種にもよるが専門職化の辿る道の一つであり、ある意味フリーランス化でもある。いずれ働き方の変化については取り上げてみるつもりである。
そして、この「出口」戦略は周知のようにベトナムとの往来が始まり、7月にはEUや台湾との間でも往来が解禁される見通しとなった。時期尚早との判断もあるが、国内のみならず限定的ではあるが世界との移動が始まっている。
検証すべきコロナ禍4ヶ月間の意味
「出口」戦略とは当然「入り口」があっての出口で、その入り口は大きく言えば外出自粛と休業要請、つまり移動抑制である。マーケティングを専門とする私にとって、「何事」かを実施すれば、必ずその結果が得られ、それは妥当であったかという検証が必要とされる。出口とはその検証に基づいて行われるべきである。
そして、今見極めなければならないと考えていることは、今回のコロナ禍によって、例えば1990年代初頭のバブル崩壊による大きな価値観の変化と同様のことが起きるかどうか、あるいはその後の2008年のリーマンショック、更には2011年3.11東日本大震災後のように、「今まであった生活」を取り戻すような一種の「生活回帰」のようか変化となるのか、その変化が目指す「先」は何であるのかということの見極めである。勿論、後者の場合でも数ヶ月前の生活とは当然変わってくるのだが、前回の未来塾にも書いたがiPS細胞研究所の山中伸弥教授が提言しているような新しい視点「ファクターX」には、この日本人固有のライフスタイルが他国と比較しその致死率や感染率の低さの原因の一つが潜んでいるのではないかという意味も含まれている。例えば、中国武漢での感染を拡大させた原因の一つとして中国武漢での伝統の大宴会にあったと報じられているが、これは中国における直ばしで食べる大皿料理の文化である。少なくとも日本の場合は円卓の場合は少なく、しかも大皿であっても取り箸が用意され、直ばしということはほとんどない。現在、スーパーなどでの惣菜売り場はほとんどが個包装になっており、過剰なまでの売り方となっている。感染のメカニズムが今だに接触・飛沫感染と言った抽象レベルのものであり、例えば飛沫感染の具体的なメカニズム、発症数日前のウイルス量が多いという報告はされているが、その防止策と言えば医師が使うような仰々しいフェースシールドの着用といった具合である。こうした日常生活においてもっと簡便に生かされる「知見」が求められているのだが、やっと「ファクターX」という視点を含めた新型コロナウイルス制圧を目的としたタスクフォースが5月末スタートした。日本における知性が結集し、連帯して戦うということである。
移動抑制の検証こそが安心産業である観光の一番の担保となる
新型コロナ対策として、旧専門家会議から「8割削減」が提言されてきた。人との接触を8割減らすということで、10のポイントが公表され今日に至っている。この中には周知のテレワークの推進をといったオンラインの活用によってであるが、介護現場のように業種や職種によっては「接触」しないことには先に進めないものも数多くある。
この「8割削減」の延長線で「新たな生活様式」が提言されている。例えば、
・公園はすいた時間、場所を選ぶ
・すれ違うときは距離をとる
・食事は大皿を避けて、料理は個々に
・対面ではなく横並びで座る
・毎朝、家族で検温する
といったものだが、この間4ヶ月半近くにもなるが、この「8割削減」によってどれだけ感染防止に役立ったかその明確な「根拠」は今だに明らかにされてはいない。生活者の多くは季節性インフルエンザの対策の延長線上で自衛するだけとなっている。すでに感染の背景の大きな要素となる移動におけるデータはGoogleやドコモ、あるいは各鉄道会社の乗降データがあり、感染防止の効果がシュミレーションできるはずである。この「8割削減」は欧米のような都市封鎖(ロックダウン)」できない日本をその代わりのものとして目標化されたものであることが後に分かってきている。
ちなみに移動自粛による経済損失については観光バス業界やタクシー業界の苦境は報道されているが、交通産業全体としての損失はほとんど報道されてはいない。専門家の試算の一つでは全国の公共交通事業の損失は年間最小3.5兆円〜最大8.3兆円の減収になると。経営面での医療崩壊が心配されているが、8月には交通崩壊の危機がやってくるという専門家の分析もある。
ところで8月以降観光産業の復興を目的とした「GO TOキャンペーン」が予定されている。これも「出口」戦略の一つであるが、「どれだけの自粛による行動削減」によって、感染が防止されたかと言った数字が必要とされ、その数字を基にした根拠によって、観光という移動における「安心」が担保される。
例えば、大阪のUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)」が段階的にオープンされたが、こうした行動の抑制・自制がどの程度感染抑止効果があったかなど検証する視点を持って再開されたことと思う。旧政府専門家会議ではこうした課題に全く答えていないが、大阪府にも独自な専門家会議がある。今回は詳しくは取り上げないが、第二回の会議の議事録がHP上に公開されている。「大阪の第1波の感染状況と今後の方向性」と「K値による大阪のCOVID-19感染状況の解析」には、「自粛」によって感染がどれだけ防止できたかといった視点で分析がなされている。
つまり、今までなかった視点での「検証」である。その中で多くの移動や休業といった自粛要請は感染防止には効果がなかったと指摘する専門家もいる。「過剰な自粛」は不要であったという指摘である。大阪府民にもわかるように分析されたものだが、是非一読されたらと思う。
ところで観光という行動の広がりと感染の広がりとの関係をぜひ検証して欲しいものである。こうした多くの人が理解できる根拠ある検証が観光という安心産業を再開させ活性化させるものとなる。
そして、この先には何があるかと言えば、USJに即して言うならば行動の広がりは近畿圏となり、更には日本全国へと、そしてかなり先にはなると思うが、世界・インバウンドビジネスも視野に入っていくであろう。こうしたUSJの試みは一つの移動モデル、安心観光モデルとなり東京をはじめとした他の都市観光の良き指標となる。
政府専門家会議が廃止され、新たな組織ができることとなった
6月24日、以上のような発表が政府専門家会議の記者会見と並行して行われ「廃止」が発表された。専門家会議には事前に政府から知らされていたようだが、一番大事な国民へのメッセージであるリスクコミュニケーションがうまくなされていないことが今回の記者会見でも明らかになった。専門家会議の座長は政府との役割分担が明確になされず、危機感から「前のめり」になってしまい政策があたかも専門家によって決定されているかのように見えてしまった」と発言。この発言は、厚労省クラスター班の北大西浦教授の発言である「このままだと42万人が亡くなる」「指数関数的な感染の爆発的広がり」といったショッキングな発言が数多く流されてきた。こうした発言のほとんどがクラスター班と専門家会議両者による記者会見であったことを踏まえてのことであった。つまり多くの感染症の専門家がネット上を含め様々な発言がなされ、特にTVメディアの番組出演を通しこの西浦発言を援用して恐怖を煽るようなことすら生まれた。しかも、こうした発言はことごとく現実とは異なる結果となっていることは周知の通りである。その象徴例が、感染のピークは3月末、4月1日ごろと推定されているにもかかわらず、旧専門家会議の提言を受けての緊急事態宣言の発令は、その後1週間経ってからであった。
欧米のコロナとの戦い、特に病院崩壊が繰り返しTVメディアを通じ放映され、今まで何回も書いてきたが、不安どころか「恐怖」へと向かわせてしまった。しかし、日本における現実は旧専門家会議が提言してきたことの本質にはことごとく異なったものとなってきている。報道するメディア、特にTVメディアの報道が大きかったと思うが、手弁当で提言してきた旧専門家会議だけにその責任を問うことはしないが、「何故、予測がことごとく間違ってしまったのか」「本当に休業自粛は必要であったのか」「外出自粛はどの程度感染防止に効果があったのか」を明確にして欲しかった。接触及び飛沫感染が主たることであることから、「密」という概念で予防を説明してきた功績はあり、国民にとってわかりやすく取り入れられてきた。しかし、今問われているのは「出口」戦略であり、情報公開という意味で大阪の専門家会議とは雲泥の違いとなっている。
出口戦略の最大テーマは、「恐怖イメージ」からの解放である
ロックダウン(都市封鎖)」、つまり移動を極端に制限することが、宿主を次から次へと変えて増殖・感染するウイルスの生命のあり方に対する一つの方法であることは多くの生活者は理解していると思う。勿論、季節性インフルエンザの延長線上の経験値・実感ではあるが、「ウイルスをうつす・罹患」させるのは接触であることは十分理解している。その接触であるが、接触のためには近づく、つまり「移動」が全ての前提となる。
緊急事態宣言の最中話題となったのは、他県を跨がる「移動」であった。例えば、他県ナンバーの車には規制をかけるべきであると移動先の地域住民の声を借りて声高にコメントする「専門家」や「行政」も出てきた。その象徴がパチンコ店に対してであったが、補償を行い自粛した方が良かったと思うが、このパチンコ店で大きなクラスターという感染集団が発生したとの報道は一切ない。同じようにコロナ疎開と呼ばれたように首都圏周辺の観光地は「首都圏のお客様は、今はご遠慮いただきたい」としたコメントが行政から出され、TVメディアを中心に繰り返し報道されてきた。これらはいわゆる「自粛警査」と同じように、主に TVメディアによって創り上げられた「恐怖」イメージが根底にある。
ところが緊急事態宣言が解除され、6月19日以降は他県にまたがる移動は構わないとなっているが、当の観光地や行政は観光を含めた移動の解除=ウエルカムメッセージを出してはいない。地方の学生の帰省を自粛して欲しいと、故郷の産品を送った自治体はその後学生にどうメッセージを送っているのか、明確にすべきことの一つである。繰り返しになるが、それら根底には繰り返し刷り込まれた「恐怖」が今なお残っているということである。その鎖を解き放したのが大阪府でありUSJであった。
観光というより、「楽しみ」を取り戻す、鬱屈した我慢の時間からの解放、自由時間を好きに使えるという「日常回帰」の第一歩である。そのためには大阪府の知事が言うように、感染源を追跡できるシステムと十分な病床の用意という「担保」によって、「安心」へ一歩進むことができるということである。
問題なのは「移動先」の施設や観光地である。前々回ブログに書いたようにこれまでの数年はインバウンドバブルであったことを受け止め、観光の原点に今一度立ち返るということだ。良く考えてみればわかるように、国内旅行の需要は既に20兆円を超える産業になっており、インバウンド需要は5兆円弱となっている。まずは足元の国内観光から始めることである。これは飲食でも同じで、「おなじみさん」「御近所さん」に再び来店していただくということである。USJの場合は、年間パスポート顧客で、大阪府民がその対象となっているが、これが「出口」戦略の基本であろう。東京でも6月13日から「はとバス」が再開している。初めの1週間は2階建てのオープンバスを使った1時間ほどの東京観光のみだが、徐々に運行コースを増やしていくとのこと。これも「出口」戦略の基本と言えよう。また、中止となった春のセンバツがこの8月1試合のみではあるが甲子園球場で行われることとなった。選手たちにとって嬉しい復活であるが、高校野球フアンのみならず多くの人にとっても、季節遅れの選抜ではあるが甲子園という「大舞台」のドラマはうれしいいつもの「日常」となる。
「三密」の考え方
「移動自粛」からの解放と共に、もう一つの課題が「三密」である。密閉、密集、密接は、経営の基本である「坪効率」という指標の壁となっており、デフレ時代の経営を更に苦しくさせている。その蜜の根幹にあるのが、「ソーシャルディスタンス」である。飛沫感染を防ぐ距離・空間を必要とするとのことだが、まず経営を成立させる経済性・生産性から言えば、客数を倍もしくは1.5倍ほど必要となる。つまり、従来の「考え方」の延長線上では経営は成立しない。そこで生まれた発想が、飲食店の場合店舗を「調理工場」とする経営で、テイクアウトやチルド化したり、冷凍化してネットを活用とした販売である。既に多くの飲食店はこうした方法を取り始めている。
但し、こうした手法を取り得ない大型飲食店舗、例えばファミリーレストランの場合は店舗を閉鎖して採算の取れる店舗のみの営業となる。つまり、大型店舗に見合うテイクアウト売り上げが望めないという理由からである。その象徴がジョイフルで先日200店舗閉鎖という報道があったが、こうした背景からであろう。但し、ガストのように以前からテイクアウトや宅配を積極的に実践しており、売り上げ減少の歯止めになっていると思われる。また、ファミレスではないが、ドライブスルー業態やテイクアウトを充実させてきた日本マクドナルドなどは逆に大きく売り上げを伸ばし好調である。ちなみに4月のマクドナルド全店の売上高は前年同月比6.7%増。
こうした様々な工夫が採られている中、2つの異なる業態が出てきている。その象徴例が2つの寿司店の生き方である。周知のように寿司は日本を代表する食文化であるが、あの名店「銀座久兵衛」の場合伝統的なお客を前にした「握り」を食べさせるのは店舗内として、少々時間が経っても食べられる巻き寿司やちらし寿司はテイクアウトにするといった2つの作戦をとっている。一方、非接触型業態である回転寿司はどうかというと、結果は同じように苦戦している。ちなみに大手のスシローの4月の売り上げは客単価は増えたものの客数は大きく減少し、既存店売上高は44.4%減、既存店客数54.7%減、既存店客単価22.7%増となった。全店売上高は、42.0%減とのこと。
今、大阪の専門家会議ではこうした接触における「密」と言う概念、「ソーシャルデスタンス」の視点ではなく、問題なのは具体的な密なる感染接点であり、この防疫こそが重要であるという。極論を言えば、一般的な密なる空間・距離を問題にするのではなく、接触するウイルスとの接点、例えば手洗いの励行や飛沫を飛ばさないマスク着用さえすれば十分。つまり、ソーシャルデスタンスなどではなく、感染の接点にこそ注意すべきであるという研究結果が報告されている。ある意味、季節性インフルエンザの自衛と同じように手洗い・マスク、うがいといった習慣と同じであるという説である。こうした仮説が多くの事例で検証されるのであれば、これまで言われてきた2mという「距離を置く」という自衛は過剰であり、不要になるということである。
感染者数の比較は意味がない
更にいうならば、日本全国にあって特に東京における感染者数が極端に多くなっている。今までのPCR検査対象を濃厚接触者から広げ症状のない人を含めたので感染者数が増えたとの説明であるが、その詳細についてはほとんど報道されていない。その象徴例として、夜の街、新宿、歌舞伎町、ホストクラブ、・・・・・こうした陽性者の説明がなされているが、PCR検査数増加についての報道は極めて少ない。おそらく唯一と思うが、読売新聞では次のように報道されている。
第二の創業へ 復活を願って 2022.01.03
未来塾(45) コト起こしを学ぶ(後半) 2021.12.19
未来塾(45) コト起こしを学ぶ(前半) 2021.12.15
PR
Calendar
Freepage List
Keyword Search