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November 3, 2021
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カテゴリ: 書評

リベラリズム 失われた歴史と現在

ヘレナ・ローゼンブラッド著/三牧聖子、川上洋平訳

利己主義超克の鍵は古代ローマに

時と場合、人によって異なるイメージを喚起させる「リベラリズム」という言葉。この錯綜は、なぜ生まれたのか。著者は、リベラル、リベラリズムという単語の歩みをたどり、この謎に迫る。

古代ローマ時代から 2 千年もの間、リベラルであるとは、本来、公共のことに気を配り、共通善につながる行動を取ることだった。

人格的資質を指すリベラルは、フランス革命を境に、信教・出版の自由を保障する制度や憲法、関税なき自由放任の経済を、擁護する文脈でも使われるように。 20 世紀にはいると、英米仏では産業化による社会問題に対応すべく、独における国民福祉の向上を目指す経済思想を受容。以降、リベラリズムは、自由放任と政府の介入推進という、相反する立場の両方で使われる状況が生まれた。

リベラリズムを今日、個人の権利や利益を基盤とした、米英圏がルーツの思想と見る背景には、特に冷戦期における全体主義の脅威があった。政府の介入を容認する考え方自体が全体主義を招くとの批判を受け、個人主義的側面が強調される一方、道徳的な意味合いは失われていったのだ。

本書では、民主主義やキリスト教神学との関係など、広範な視野からの議論の他、リベラルを辞任する人々が奴隷制度や女性差別、優生思想を主唱した歴史も描かれる。

リベラリズムは、常にその限界と格闘してきた思想なのだろう。共通善の追求という失われた歴史こそリベラリズムが進化する鍵、との見立ても好ましい快作だ。(習)

【読書】聖教新聞 2020.11.11






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Last updated  November 3, 2021 06:01:49 AM
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