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2021年04月08日
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カテゴリ: 過去のエッセイ
「ある夫婦」 (46歳)

 私の母方の祖父母は、仲が悪い夫婦だった。八人の娘達も、沢山の孫達もそう思っていた。もちろん私もそう信じていた。
 祖父は頑固で気が短く、祖母はいつも怒鳴られていた。開拓者として苦労を共にした夫婦であるはずなのに、仲良くにこやかにしている姿は見たことがない。
 私はすぐに怒鳴る祖父が怖くて、母の実家に行くのがイヤだった。しかし、盆と正月にみんなが顔を見せないと、いよいよ祖父の機嫌が悪くなるというので仕方なく母についていくのだった。
 祖母は女腹というのか、女の子ばかりを八人も産んだが、とうとう男の子は授からなかった。それを祖母は引け目に感じているようで、そのせいなのか祖父の言うことには絶対服従しているように見えた。
 そのくせ、祖父のいないところではよく愚痴を言った。つきあいの少ない私でさえ、そんな愚痴を何度も耳にし、少女の私にはそれがとても嫌だった。

 しかし、そんな祖母がこんなことを言うのを聞いたことがある。
「おじいさんは、あげな人やけど、たった一つ有難かったと思うとる。
 私が女ばっかり産みよっても、それだけは怒らんやった…」。
 それを聞いた時、女の一人である私は、その言葉にすらかすかな苛立ちを感じた。

 祖母は87歳で老衰で静かに死んだ。90歳でまだ元気だった祖父は、祖母の枕元で黙って手を合わせていたという。
 それからしばらくして祖父を訪ねた母は、帰宅するなり「おじいさんがボケてきた」と言った。
 囲碁が趣味の祖父が、碁盤の前で一人で石を並べてブツブツ言っていたらしい。何をしているのかと聞くと、「ばあさんと碁並べをしているんじゃ」と答えたそうだ。
「生きていた頃には、そんなことしたことなんてないのにね」と、母は苦笑した。
 祖母が亡くなって一年後、怒鳴る相手がいなくなってすっかりおとなしくなった祖父は、やはり老衰で静かに死んだ。91歳だった。



祖父母が亡くなってから、すでに50年近く経つ。
これを書いた時には知らなかった祖父母のエピソードを、その後法事の時などで聞く機会があった。
何と、祖父は少女の祖母に一目ぼれして結婚を申し込んだらしい。
確かに祖母は、晩年でもきれいな人だった。
少女の頃の写真はないが、さぞかし可愛い美人だっただろう。
二人とも開拓期の北海道に親と一緒に移住してきたので、学校にも行けず(学校がそもそもなかった)文字の読み書きすらできない少年少女の夫婦だったようだ。
祖父は必死で開拓に取り組み、土地を次々と広げ、家族を養うことに必死だったようだ。
祖母は16歳で結婚してから、次々と生まれる娘たちの子育てや家事、そして農家の仕事を細い体でこなし続けた。
私の知っている祖母は、長年の労働のせいか、腰が九の字に折れ曲がっていたが、それでもその体で最後まで自分のできる農作業の手伝いを続けていた。
出産のときも、全員ではないだろうが祖父が取り上げてお産扱いもしたらしい。
思えば私の知っている祖父はとても耳が遠かったので、私には怒鳴り声にしか聞こえなかったが、けっして怒っているわけではなかったのかもしれない。
それに、いたずらなどをした時には確かに怒られてはいたが、祖父が手を上げる姿は見たことがない。
祖父母が仲が悪かったとは私の母も言っていたのだが、ひょっとすると誰もいないところでは祖母に優しい祖父だったのかも。
字数制限で祖母の亡くなった時のことを詳しく書けなかったが、亡くなった祖母の枕辺で「ご苦労さんじゃった。ご苦労さんじゃった」と何度も繰り返していたとも聞いた。
夫婦の関係性というものは、本当のところは本人たち以外にはわからないものなのだろう。





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最終更新日  2021年04月08日 09時58分48秒
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