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2009年06月25日
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カテゴリ: 水滸伝

絶海にあらず(上) 北方謙三 中公文庫
03年から05年までの新聞連載小説だったというから、「水滸伝」とほぼ並行して書かれていた歴史小説だったということになる。心なしか、よく似ている。

時は藤原摂関北家忠平の時代。藤原の傍系純友は、自由に生きる、自分らしく生きる場所と時を探していた。伊予に赴任した彼は「誰のものでもない海」に自分の生きる場所を見つける。だからこそ摂関家が唐物の通商を重視するあまり、海の通商を制限しているのが許せなかった。

北方らしく、当時の経済関係で筆を進め、もともと京からの役人に過ぎなかった純友がいかに力をつけて行ったかを明確に描く。将門との連携説には一顧だにしない。

「水滸伝」で例えるなら梁山泊軍の敵側の 青蓮寺の袁明 の役割を忠平が担っている。彼は別に栄華をもとめるタイプではない。中央主権国家の完成を目指して、執拗に唐物の集中による財力のたくわえを追求しているだけだという風に描かれる。純友もべつに金を求めていたわけではなかった。つまりは、世の中に対する見方の戦いだったという風に描かれている。

終わり方も、北方らしい。藤原純友は大宰府の焼き討ちに成功する。

藤原良平だった。忠平の影のように、大宰府にいた男。
「良平卿は、いきられよ。生きて、海のこわさを、太政大臣に伝えられるがよい。いまここに攻め込んだのは、人ではない。海の怒りが、大波となって押し寄せているのだ」
「私を殺さぬと?」
「良平卿には、おやりにならなければならぬことがある。海の平穏を、その目で見続けていかれることだ」


小説の中では、純友は圧倒的に強い。実際最後は、 殺されずに中国との貿易商人として生き延びることになっている。 (重要なネタバレなので隠します。)NHKの大河ドラマでは、将門を加藤剛、純友を緒方拳がしていたのを覚えている。内容はまったく覚えていない。けれども、あの緒方の人を食ったような明るい純友がこの小説の純友と重なって仕方なかった。

「水滸伝」の続編「楊令伝」がいま九巻までの刊行を数え、もともと10巻完結と言っていたのが、いつの間にやら、しかし予想とおり、15巻完結という風に変わっている。予想とおり、文庫が出てくるまであと2年ほど待たなくてはいけないみたいだ。それまで、少しづづ、北方歴史小説群を読んでいきたい。





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最終更新日  2009年06月26日 00時46分42秒
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