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2011年04月16日
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「人は愛するに足り、真心は信じるに足る アフガンとの約束」中村哲 澤地久枝 岩波書店

中村哲さん関係の本を読んだのはこれがはじめてである。講演を聞いたこともない。噂だけは聞いていた。立派な人だ、という噂である。医者なのに、アフガンに行って、人の命を助けるために、井戸を掘るようになった、ということも聞いていた。自衛隊派遣の対極にある人、という印象だった。

2008年8月第一回目のインタビューが終わった直後にに、伊藤青年の死亡事故が起きる。中村医師は、日本人として一人残って用水路堀りの仕事に専念している。

中村医師は、ペシャワール会という600万人の食料を保証するための事業を完成するためのNPO団体を運営するために、表立って発言している。しかし基本的には九州男児、あまりパフォーマンスは嫌いな性質だということがわかった。

澤地久枝という一級のジャーナリストの聞き手を得て、立体的な中村哲像が浮かび上がってきていると思う。

伯父が火野葦平で、彼は戦前に転向して「麦と兵隊」という従軍小説を書く。戦後火野は1931年の港湾ゼネストを背景にした「花と龍」という小説を書く。この中に、実は中村医師の父親勉も参加している。勉は日本共産党の傘下にあった全協に派遣されてその総指揮に当たったのだ。しかし、逮捕されてやはり一時転向した。母方の祖父は玉井金五郎、いわゆる川筋の顔役だった。……「革新」と「任侠」。そして「文学つまり思想」。この三つの系譜をみごとに受け継いだ人物が、中村哲という人物なのではないか。

昨年6月図書館に予約して半年後にやっと読むことが実現できた。本来ならば、少しでも支援するために買ったほうがいいのだろうけど……。

以下印象に残ったところをメモする。

「(北朝鮮の拉致問題について)私はいま、家内の里の大牟田というところにいるんですが、あそこは何百人だか、何千人だか、強制連行で朝鮮人が連れてこられて何百人も死んでいます。そのことは皆、忘れているんですね。拉致という行為そのものは、国家的犯罪ですから、北朝鮮が悪くないなどととうことは一言も言いませんが、それ以上のことを日本はした。大牟田の炭鉱で数百人が死んでいて、一番労働条件の過酷なところに朝鮮人労働者は回されている。その合同葬儀がちようど、横田めぐみさんの拉致などを連日報道しているときにあったのです。在日の知り合いに、意見を聞いたら、「先生、それを言うと日本中から袋叩きにあいますよ」というのです。つまり、彼ら自身も自粛するような、このムード。これは戦時中のムードに近いものじゃないかと感じました。自分の身は、針で刺されても飛び上がるけれども、相手の体は槍で突いても平気だという感覚、これがなくならない限り、駄目ですね 。」

澤地 「人の行動原理を律するという意味で、儒教というのは十分宗教的だとおっしゃいました。ご自身はクリスチャンでいらっしゃる。そのクリスチャンであることと、十分宗教的であるという意味での儒教的なものが、実際にパキスタンや、アフガニスタンで活動をなさるときに、ご自身の中でどのように生きているのか」
中村 「(略)私が馴染まされたのは、陽明学の「論語」です。(略)王陽明が考えるのは、実は、われわれの智識以前に事実があるのだと。その事実を感得するかどうかで、その人の徳の高さが決まるのだというのが、大体われわれが習った論語の読み方です。その「事実」は、イスラム教の中にもあるわけで、(略)だから「キリスト教の仲間だけで通用する言葉でなく、そのあたりを歩いている普通のイスラム教徒にもわかる表現で語ろう」ということも出てきます。」

「マドラッサで学んでいる子供をタリバンというのですが、それはアラビア語です。単数形がタリブ、複数形がタリバンですが、マドラッサで学ぶ子供のタリバンと、政治勢力としてのタリバンは違うのです。その区別も良く分からずに「タリバンが終結している」というので爆撃して「タリバンを80名殺した」と新聞に載る。死んだのは皆、子供だったとかね。タリバン=過激思想の持ち主じゃないんですよ」

澤地 「日本の対アフガン政策のリアクションとして、一部の人にしろ、テロ行為を容認する人たちが、対象攻撃に日本を加える可能性が大きくなっている、既にそうなりつつあると言っていいですか」
中村 「次の世代はそうでしょうね。いま、残っている世代、大人の世代は、それなりの親近感をもってやってきましたけど、次の世代は日本人=欧米人という見方をせざるえないでしょう」

一番多いとき24人の日本人スタッフがいたが、今もこれからもスタッフは一人つまり中村医師一人だと中村氏は言う。
「(あとを引き継げる現地スタッフは)正直言ってこれからも育たないと思います。それは、やはりある人格を中心としたひとつのまとまりなので、どんな優秀な人がやっても、決して代役がきかないのです。」

用水路は日本のそれが誰が作ったのかもわからないようにやがて名前は忘れられるという。
「そうやって人の名前は忘れられる。しかし、そのものは残っていく。」

中村 「首都カブールに行きますと、東京銀座かおまけのきらびやかなアーケードができていて、何か起きないほうがおかしい。あれを見て、普通の正義感のある地元の人が、怒らない筈は無いと思うんですね。」
澤地 「それは石油をもとにした大金持ちがいるということなんですか」
中村 「いやいや、そうじゃないんです。国外からの援助で潤った政治家や商売人たちが、それを作っているんです。かたや餓死者が次々と出ているという状態、かたや、大金持ちが庶民では生涯できないほどの贅沢をしていて、それを外国の軍隊が守るという、この構図。これが崩れないわけがない。そのなかで、テロ特措法だのなんだの、むこうで聞いていると、トンチンカンなものを議論しているという気がしてならないです。」

(国会での証言)


陸上自衛隊の派遣は有害無益、百害あって一利なし、というのが私たちの意見です。





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最終更新日  2011年04月16日 12時29分05秒
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