再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

『イラク水滸伝』(復… New! Mドングリさん

10/22-2:山形県・山… New! 天地 はるなさん

ベランダだより 202… New! シマクマ君さん

体感治安の悪化 New! 七詩さん

「おすわり」2 New! ポンボさん

カレンダー

2016年06月29日
XML
夕陽妄語.jpg
加藤周一「夕陽妄語3」(ちくま文庫) の中の「また9条」(2004年6月17日朝日掲載)を紹介する。2004年と2016年、状況が非常に似通っていると思うからである。

「2004年現在、世論調査では、日本国民の9条賛否の意見はおよそ二分されている。私は改めて私の意見を整理しておきたい。」
(→私はその文章をさらにコンパクトにまとめる。およそ、人々は長い文章を好まないからである)

9条は戦後日本の安全保障政策に何をもたらしたか。
一方で、非核三原則・武器輸出禁止・軍事予算の制限・海外派兵の禁止などの一連の措置。
他方で、解釈改憲が日米安保条約と連動して、軍備を拡大、軍事力使用の範囲が広げられてきた(新ガイドライン、有事法制、改憲)。

「改憲論は突然天から降ってきたのではなく、戦後史を顧みれば事実上の改憲から法的なそれへの切り替え計画にすぎない」

改憲論者の主な論点の中には「押し付け」論がある。しかし、日本国民の大多数は「抵抗することなく」受け入れたのだ。占領軍により「泣く泣く従った」のではない。また、「今議論されている9条改訂にも(アメリカからの)外圧がないとは言えないだろう」。この議論には一貫性が無い。

「戸じまり」論がある。
軍備はほとんど常に仮想敵との軍備競争を起こす。軍備競争は緊張関係を誘発し、緊張は戦争の確率を高くするだろう。他方、状況によっては軍備が抑止力を強める場合もあり得る。かくして論の当否は、時と場合により、特に戦争を生む効果と抑止する効果との具体的な差し引き計算によるのである。9条は軍事的抑止力を放棄することで緊張緩和から平和に向かう。現在の状況は、こちらの方がはるかに現実的だろう。

9条がなければ、東北アジアで、隣国の不信感を除くことは出来ないだろうし、緊張を緩和することも出来ないだろう。「それは国際協力の道ではなく、国際孤立の道である」

「9条があれば、どうなるか。軍事的行動は制限される。しかし外交的選択の幅は広くなり、対米従属と国際孤立から抜け出して、対米も含めて国際協力の可能性を開くこともできるだろう」

「以上二つの道のどちらかを選ぶのか、それを決めるのは、つまるところこの国の主権を持つ国民である」(204-208p)

2004年6月の文章であるが、まるで今日のために書かれたようではある。
あれから12年、政府は北朝鮮脅威論と中国脅威論をしきりに宣伝する。若い人は知らないだろうし、古い人は思い出して欲しいのであるが、今から30年前は、ソ連脅威論が大きく言われ今にも攻めて来られんばかりに「宣伝」され、テレビのワイドショーの話題をさらっていた。しかし、あの当時は、改憲は現実的日程に登らないばかりか、政府は何度も集団的自衛権の行使容認の「解釈改憲」を否定したのである。

あの頃と何が違うのか、と言えば国際環境ではなく国内環境が変わったのにすぎない。つまり「政府に一貫性が無い」ことに関しては、自民党政府は非常に一貫性があるのである。

「夕陽妄語」は、その時その時の状況において文章を紡いでいるが、その射程の距離の長いこと、未だ測り終えない。ほかの文章もおいおいと紹介していきたい。「夕陽妄語3」は、2007-2008年の単行本未収録文章を含む決定版であった。とっても興味深い文章が多かった。



produced by 「13日の水曜日」碧猫さん

201606241611_4707_iphone.jpg






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016年06月29日 23時34分58秒
コメント(0) | コメントを書く
[読書(ノンフィクション12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…

バックナンバー

・2024年11月
・2024年10月
・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月
・2024年04月

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: