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2018年07月02日
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テーマ: 本日の1冊(3717)


「古事記外伝ーイズモ・クロニクルー」多羅尾整治 幻冬舎ルネッサンス

荒神谷博物館でこの書を見つけて、後で取り寄せた。島根を舞台にした数少ない古代小説ということで置いていたのだろうとは思う。

「外伝」とついているように、主にはスサノオを辰韓(紀元前2世紀 - 356年)よりやって来た製鉄職人集団の2代目に設定し、スサノオ(スサの森の王)のオロチ退治(オロチ衆との戦い)、出雲の国造り(日向から大和まで)、大国主への代譲り、大国主の国譲りまでを描き、作者の考える文献解釈を試みている。

この時代を描く例があまりにも少ないので、このような長編は出来るだけ読みたいと思っているのだが、結果的には最後まで読むこと能わなかった。小説は、基本的に一つのウソを付くために九つのホントを描かなくてはならない、とわたしは思っている。この小説は大袈裟に言えばその反対、一つのホント、九つのウソだった。

以下、良かった処を少し述べて突っ込みどころの1部分を述べる。

(良い)
・子を作ることを、人々の中の大きな目的にしている。
・地域のムラを「・・の森」という呼び名で、区分けする。
・時間と距離を歩数でカウント。しかし、当時一千以上を数える能力があったかどうかは大きな疑問。二万四千歩(四時間)六千歩(四キロ)
・八重垣の描写「巨木を支柱にして、枝を払った小径木と竹でつくられた、人の高さの倍はある壁。」落とし穴とかの工夫。

(突っ込み処)
・青銅器材料を日本国内で調達している。成分分析ではほぼ外国産のはず。製鉄に関しては、この時代(おそらく弥生末期)から300年間は出雲はおろか、日本国内でも「製鉄」は実現していない。
・砂鉄は鎌倉時代以降に吉田地区で作られた製鉄技術であり、当時ではまだその技術は確立していなかったはず。砂鉄が採れるから製鉄も出来ていたはず、というのは事実を無視した暴論である。
・酒をオロチ衆が知らなかったということは、あり得ない。酒はどの時代でも特別な飲み物だった。
・皆殺しの戦争を迷いながら実行する。それは、復讐を恐れる近代的な発想に依っている。古代は、違う論理があったはずだが、それは構築されない(そもそも古代の神が全然具体化されていない)。「最も力の強いクニの王が全てのクニを制すれば、争いはなくなります」(71p)これは近代の戦争論理であり、しかも過ちではあるが、作者は無批判にその論理を受け入れる。それは戦争を人間の本能と捉えているからだろう。結果平和を実現するために、戦争に明け暮れる小説になってしまった。
・フツシの都造りは安来で行われた。あまりにも意外。同時期、それよりも隔絶した墓を作った出雲の西谷墳墓が無視されているのは如何なものか。
・青銅器祭祀の終りが描かれない。よって、荒神谷遺跡等の大量埋納も描かれない。青銅器職人としては無視出来ない出来事だったはず。

まだまだもっとあると思うけど、省略する。

2018年6月読了





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最終更新日  2018年07月02日 10時10分06秒
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