まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2008.08.03
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カテゴリ: ドラマレビュー!
赤塚不二夫が死んだと知って、
「ウワッ」と声を出しそうになった。

なんというか、
「やっぱり間に合わなかった・・」みたいな感じです。
もっとも、
いつまで生きてたって間に合うわけでもないんだけど、
まだ、もう少しなら、先延ばしできると思ってた。

いつか赤塚不二夫の世界の本質を理解したかったのに、
その前に、本人に先に死なれてしまった。

日本の社会に、あるいは世界に、
赤塚不二夫の表現の核心を理解してる人はいるんだろうか?
今の日本の文化は、
ちゃんと赤塚作品を吸収して、呑み込めているんだろうか?

生前の三島由紀夫は、
熱心に赤塚マンガを読んでいたらしいけど、
三島なら、なにかをつかめていたのかな。
タモリなら、ちゃんと赤塚世界の核心を知ってるかな。



もちろん赤塚不二夫の世界は、
「昭和」であり「ナンセンス」であり「ギャグ」なんだけど、
ただそれで括って終わりにするわけにもいかないと思う。

たんに「昭和」の文化人として傑出していただけじゃないし、
たんに「ナンセンス」において傑出していただけでもない。
ただたんに「ギャグ」として傑出していただけでもない。
もっと違う。
なんだろう。とにかく理解を超えたものがある。

表現が込み入ってるわけでもないし、複雑なわけでもない。
解きほぐすのが困難な作品世界、というわけでもない。
むしろ、いたってシンプル。
いたって単純、明快。
子供のように、産まれたまんま、なのかもしれない。

だから、
その本質は、きっとむき出しになってるはず。

にもかかわらず、それがなんなのか全然わからない。
ちんぷんかんぷん。
通常のあたまじゃ、無理。



赤塚マンガの世界は、
そもそも「ナンセンス」なんだから、
そもそも「意味」なんて無いんだから、
理解ができないのも、当たり前のことかもしれない。
理解しようとすることじたいが、間違いなのかもしれない。

たしかに赤塚マンガには、
まともな物語もないし、たいした意味もない。

もし、かりに赤塚マンガを理解することがあるとすれば、
それは「物語を読む」とか、「解釈する」とかじゃなく、
たぶん、マンガの「構造」を理解する、ということになるんじゃないか。

そういう予感は、少しあります。



たとえば、赤塚マンガの話法。

前のコマと次のコマの接続のしかたが、普通じゃない。

「それで」とか、「ところで」とか、
そういう常識的な接続の仕方じゃなくて、
何といえばいいか、・・
ひとコマひとコマが、そのつど、飛んでます。

すべてのコマが、何ともいえず飛躍的に連結されて、
そのまま、展開が、どんどんどんどん加速していく。
それを追いながら、頭がグルグルした状態のまんま、
必死で読んでいくんだけど、
最終的に、物語があるのかというと、結局なんにもない。

それが、赤塚マンガ。

あれは一体なんなんだろう。
あのコマからコマへの独特の飛び方。
どんどん話が飛躍してるのに、
登場人物たちは、みんな穏やかに笑ってる。
なにか独特な接続の法則性があるのかもしれないけど、
ぜんぜんわかりません。



たとえば、バカボン家の人物構成。

パパがいて、ママがいて、
バカボンがいて、はじめちゃんがいる。

たんに父と、母と、息子2人、
というような家族類型ではなく、
社会とか、あるいは人間存在とかの、
なにか根源的な構造を、それぞれが体現してるように感じる。

悪意と暴力性に満ちたパパ。
良心を備えながらも、
パパの資質を引き継いでいるバカボン。
それに対して、
知性と秩序を担う、ママとはじめちゃん。

パパとバカボンに象徴される暴力性というのは、
人間存在の隠された一面、
あるいは、
その本源的な力を体現してる、と思うんだけど、

ママとはじめちゃんは、
それを理性で統制しているのでもないし、
抑圧しているのでもない。

居間でふたり穏やかに微笑みながら、
パパとバカボンの幼稚な暴力性を、
ただたんに「野放し」にしているだけなんだけど、
それだけで、何もしなくても、調和が保たれている。

けっして懲悪的な世界観ってわけじゃないし、
かといって、
その逆の破壊的な世界観ってわけでもない。

きっと、
ママとはじめちゃんも、
あれは「理性」というようなものじゃなく、
何か、別のベクトルの力を体現してるんだろうと思う。

いずれにしても、
あの一家の調和は一体なんなんだろう。
アナーキーだけど、なぜか調和してる。



昨日、本人は死にましたけど、

わたしはもちろんのこと、
日本社会も、そして日本文化も、
赤塚の世界に到達するのは、まだまだずっと先じゃないでしょうか。

そんな気がします。








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最終更新日  2008.08.03 12:05:45


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