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ある夏の日に Hope-1光と漆黒が、歪みながら膨張と縮小を繰り返す。いつもの道程を行くうちに、勇一は違和感を覚えた。(ん?今、何か見えたような・・・)それは平行世界が稀に交差する分岐点を結ぶ、神出鬼没な連絡線のようなもので。何時、どういう条件の元に生じるのか、まだまだ人知の及ぶ事象ではない。再び違和感を覚えた勇一は、「見えた、俺の田舎だ!」と叫んでいた。ほんの僅かな時間ではあったが、勇一は、確信していた。東京から帰省する度に、飛行機が大きく右に旋回していた。空港の滑走路に対して直進するべくして予め決められたコースなのだろう。勇一は、東京から空路で帰省する時には必ず右主翼のやや後ろの席を予約することにしている。何故なら、右に大きく旋回する飛行機は事前に必ずシートベルト着用の機内アナウンスと共にサインを点灯する。そして大きく右に傾く主翼の下に、勇一が生まれ育った町並みが見えてくる。1万トン級の貨物船が接岸する、町の大きさに不似合いなほど大きくて近代化された港、戦前に日米合同によって建てられた、当時世界一を誇った巨大な煙突と金銀銅の精錬工場。この町の住民なら決して見間違えるはずがない。もう何度となく経験している勇一だったが、その度に心地良い興奮を覚えたものだ。つい今しがた垣間見た景色は、間違いなく故郷の海だと知った。どうやら平行世界には、人間の願望が影響するのか、前の世界に引き戻そうという力が働くようで、勇一は、これまでただ混乱するばかりだった平行世界間の道程のなかで初めて後ろ髪を引かれる想いを感じ、動揺する胸中を隠せないでいる。(男の俺でさえ、こうなんだからヨーコの不安は想像して余りあるな)確かに腕の中に抱きしめているはずのヨーコの顔は、受信感度の極めて弱いテレビ画面のように歪み、その表情を正確に読み取ることは難しい。けれど勇一の身体に回した両手の力強さと、時折見える彼女の瞳が勇一に伝えてくれる。(ヨーコは確かに俺の腕の中にいる)と。いつもながら唐突に接近する新たな平行世界の気配を、経験から感知できるようになった勇一は、ヨーコの身体に回した両手にさらなる力を加え、本能によるものだろうか、上下左右の区別もつかない状況にも係わらず、両方の足を踏ん張った。来た!そう感じた次の瞬間、目の前が白くなり、やがて視界も記憶も閉じられていく。消えていく時と同じく、唐突に開かれる視界。それに比べてまだ整理不能なままの記憶を置き去りにしたままだが、勇一は、ヨーコだけはしっかり抱きしめたまま片膝をつき、そしてゆっくりと腰を下ろした。そのままの姿勢で辺りを見渡す。(ここはどこだ・・・)すぐ目の前にはコインパーキングがあり・・・「いや、なかったぞコインパーキングなんて!」勇一の記憶がよみがえり、現実の存在を否定した!「つい、この間までここには家が建っていた・・・なら!・・・」「勇一!」「よお、気が付いたか」横断歩道を渡ったら、問い詰めてやると決めていたヨーコだったが、「それどころじゃ無いみたいね、また跳んじゃってる・・・」勇一の肩を借りて立ち上がると、そうつぶやいた。「こっちだ」勇一は、ヨーコの手を握り、引き寄せながら言った。ヨーコは、勇一の顔を見上げると、小さく頷き寄り添って歩きだした。左に理容店のある角を右に曲がると2人同時に立ち止まり顔を見合わせて言った。「あった!・・・」「あったね・・・」 今日の好きな曲は、カルメン・マキ「午前一時のスケッチ 」です。 鈴木泰美さま、Up有難うございます。 いつも応援ポチを有難うございます。 今日もよろしくお願いします♪
2016.07.28
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ある夏の日に 並列東京へ 7早く! もっと早く! 勇一の頭の中はヨーコの顔で一杯だ・・・だが頭に浮かぶのは怒っている顔だけ・・・あの時手を放してしまったこと怒っているのだろうな・・・けど、あんな訳のわからない状態で起きたことで俺を責めるのか・・・勇一は、勝手に落ち込んでしまっている。男だけの兄弟の中で育ち、おまけにあの頃近所の同年代に女子は2人きりだった。戦争で男たちが極端に減った地域だった。近所のおばさん達が立ち話で、『ハルちゃんとこまた玉付きだってよ、どうしてかねえ、この辺の赤ちゃんは玉付きばっかりで・・・』その話を耳にしたのは勇一が高校生になる直前、受験に合格して浮かれてた頃だった。(この辺に男ばかり生まれるのは、・・・ひょっとして外地で戦死した男たちの生まれ変わりか?)勇一の想像に科学的根拠は勿論ないが、心情的には理解できなくもない。彼の父親は南太平洋から復員したのだが、祖国から遠く離れた島にいて糧食を断たれ、空き缶を利用して作った手りゅう弾で魚を獲り、オオトカゲ(鶏肉に似ていて島で一番美味だったらしい)をみんなで捕まえては辛うじて空腹を満たしていた話を聞かされていた。だから勇一は、(あり得るかもな?この町出身の戦死して帰れなかった男たちの生まれ変わり、それがこの辺の男たち・・・『そんな馬鹿な』って俺には言えない。もしかしたら俺やイサムも、その生まれ変わりか!・・・そう言えばイサムのやつ初めて家にきた時、親父に対する礼儀正しくさは異常な程だったし、親父も嬉しそうに何度も頷いていたな・・・あの短気な男が親父の前ではあぐらをかくことさえせず、正座のまま、真っすぐに親父の目を見て受け答えしてた。やっぱ俺の奇想天外とも言える仮説、当たってるかもしれないぞ・・・) 勇一は、高校生になるまで、女の子と話すことが苦手だった。漁師町の男たちは、口が荒い。だが本当は照れ屋だったり、優しいここ ろも持ち合わせているのだ。例えば、図書館でリルケの詩集を読んでいるのを後輩に見つかると、外に連れ出し、絶対に口外しないことを固く誓わせる。勇一は、優しい。だが変な奴で、後輩たちは時々首をかしげたものだった。豪進丸が接岸すると、勇一は友夫が船尾に走しるのを待ちかねて舳先から陸へジャンプした!イサムたちを振り返ると、「後でな!」と一声かけて走り出す!目指すはヨーコが待っているだろう我が家!だが、勇一の疾走は港と街を隔てて走る道の手前で止まった。横断歩道の向こうにヨーコが立っている。互いの目が合った。駆け出したい気持ちを行き交う車が邪魔をする。歩行者用のボタンを押した。ヨーコも同時に押していた。やっと白い歯が見えた・と・・・いつものように、唐突に、それは始まった。目が回る!しかし、横断歩道も目の前から消えてしまっても勇一の手は必死にヨーコの手を探り、つかみ、引き寄せた!ヨーコの腕が勇一の身体に巻き付いた。勇一も力強くヨーコを抱きしめる。まるで何年も離れていた恋人たちのように。時空の歪みにも少しだけ慣れた2人は、抱き合い、歯を食いしばって耐えている。しかし、恐怖に顔が歪むことはない。どこかしら、この現象に身を任せる術を体得したようにも見えた。 今日の好きな曲は、ビートルズの Paperback Writer (和訳付き)です。 お楽しみいただけますように♪ Up主のPh4tE92さま、この曲をUpして頂き、本当に有難うございます。 いつも応援ポチを有難うございます!今日もよろしくお願いします♪ Paperback Writerペイパーバック作家拝啓 私の本をお読みくださいますように数年がかりで書きあげたもの どうかご一読を内容はリアという男の小説に基づきます私は一生の職業としてぜひともペイパーバック作家にペイパーバック作家になりたいのですこれは下劣な男の下劣な物語彼にまとわりつく妻は夫を理解せずディリー・メイル紙に勤務する息子はこの安定した職を捨てて ペイパーバック作家にペイパーバック作家になろうと考えていますペイパーバック作家千ページ前後の大作です1-2週間のうちにはもう少し書けるでしょうお望みならばもっと長くもできますし一部書換えも可能ーーなにしろ私はペイパーバック作家にペイパーバック作家になりたいのですお気に召したなら貴社に出版権を差しあげます一夜にして莫大な利益をあげるやもしれませんもしも出版のご意志がなければこの住所にご返送をできれば私にチャンスをいただきたいーーぜひともペイパーバック作家にペイパーバック作家になりたいのですペイパーバック作家 ビートルズ歌詞全集より
2016.07.15
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ある夏の日に 並列東京へ6 「豪進丸」はその名に似て豪快に波を蹴立てて、出てきた漁港へ引き返した。代々漁を生業として今に至る村上家の船の係留場所は、昔から決められた位置にある。「豪進丸」は湾内に入ると一気に減速し、向きを定めるとイサムは古タイヤを張りつけた舳先と護岸に絶妙な間を開けて船を止めると、岸の上に飛び移った。船が波に押されて岸壁に衝突しないのは、イサムが事前に艫(とも:船尾の意)から投げ入れていたアンカー(錨:いかり)が、適度な位置の海底に沈み重しとなって豪進丸を引きとめているからだ。頑丈な杭にロープで船を繋ぎ止め顔を上げたイサムに勇一は親指を立てて見せた。イサムは家に向かって走り去る。30分後、大岩底の海上に「豪進丸」が漂っている。船には後輩の漁師を一人見張らせておいて、勇一とイサムは海中へダイブした。(帰ってきた・・魚たちが驚いて四散した。お!あのウニ、後で頂いとくかな・・・やっぱり海はいいな、俺たちの海だ・・・)イサムが予備の酸素ボンベを大岩底の横穴の入口脇に固定しているのを他人ごとのように眺めながら久しぶりの海中散歩を楽しんでいた。おお!という声がして、そちらを見た。本当は水深10メートルの海の中で声など聞こえるはずがないのだが、勇一は確かに聞いた。(イサムのやつ、テレパシー使えるんじゃ・・・)イサムがこちらを見て手招きしている。イサムの肩に手を置くと、見てみろ!と言わんばかりに大岩底の横穴の中を指差し、勇一から見えるように身体を横にした。(おおー!すげえ~サザエの海底牧場ずら―!)イサムを振り返った勇一の目がそう言ってるように見えた。すべてを獲ることはできなかったが、船の海水槽にいれたサザエの数は・・・・・・なんと・・・37個!後輩の友夫が気を利かせて、炭焼きバーベキューセットを持参していた!波があれば岩場に上がるが、今日はベタ凪ぎだ!コンロの脚をたためば船の上でも大丈夫、さて準備完了!サザエを金網の上に並べる・・・蓋が開いた!そこへバターと醤油を注ぎ込む!醤油の香りとバターの風味が溶け合ってたまらない!止まらない!「美味い!」「美味い!」を連発して船倉で冷やしていたビールを喉に流し込んでいく。「そうだ、ヨーコちゃんにも食わせてやらなきゃな!残しと・・・け・よ」いつの間にか押し黙って目を瞬かせている勇一に気づいたイサムは、「心配するな、まだ30個くらいは残って・・・」「そうじゃねえよ・・・お前、ヨーコに会ったのか?」「え、お前ら一緒に来てたんじゃなかったのか!」「はずれだ!大外れだ、昨日から見失ってしまって・・・まさかここに」「そうだったのか!すまん!」つい、イサムは両手を合わせて詫びた。後輩の友夫は、先輩たちの顔を交互に見やりそわそわしている。何しろ友夫の高校時代、4人集まれば近隣の高校生や多少やんちゃなお兄さん達もよけて通る、そんな4人のうちの2人が目の前で片やあやまり、もう一方はまゆ毛を吊り上げているのだ!勇一は吊り上がっていた眉と怒らせていた肩を下げた。「お前のせいじゃなかったな、すまんが引き返してくれるか」「お、おお!そうだな、友夫!アンカーを上げろ、超特急で港に戻るぞ!」「は、はい!」友夫は返事をすると、足取り素早く船の艫へ向かった。いつもの陽気な友夫に戻っている。大好きだけどおっかない先輩たちの機嫌が直ったからだ。 今日の好きな曲は、The Beatles-IFeel Fine です。 Ph4tE92, Thanks for up! いつも応援ポチを有難うございます。今日もよろしくお願いします♪
2016.06.20
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ある夏の日に 並列東京へ5 「おいおい、やめときなって」 笑みを浮かべたまま、勇一の手を解くと襟のしわを直しながら言った。「忘れたのか?校舎の裏で殴り合って、いくらやってもお互いギブアップしなくてよ・・・」勇一は顔を下げて声を出さずに笑った。顔を上げた時、眉間のしわは消えていた。イサムは声を上げて笑った。「したらよ、丈二のやつが、飛んできて俺らの間に割り込んできてよ・・」その先は勇一が引き取った。「あいつに泣かれて『仕方ねえな』ってかっこつけてたけど・・・」「ああ、内心じゃあ、よく止めてくれたって、丈二にサンキューって言いたい気分だったな・・・」「あの日家に帰って、お袋に泣かれた・・・『こんな顔になって!』」「だいたい、お前がタフすぎるんだ、お前が悪い」「お互いさまだ・・まあいい・・それよりさっきの話・・」今度は、イサムが話の続きをさらった。「安心しろ、お前がいなくなってから行ってねえよ、さすがに一人じゃな。上田さんが、あんな事になって・・・みんな腰が引けてしまったからな」上田とは、勇一やイサムにとって憧れの先輩だった。喧嘩も泳ぎも、右に出る者はなく特に素潜りの腕は海女だった母親の血を受け継ぐと言われ、 勇一の同世代の男で知らない者はなく、尊敬の意味をこめて「河童」と呼ばれていた。海人に河童とは、と違和感を感じ口にする者もいたが、勇一曰く「海で使っても『水中銃』って言うだろうが!問題あるか?」異議を唱える者は、ことごとく、目を尖らせた勇一に反論出来ず頷くしかなかった。上田に憧れる勇一の想いは絶対だった。それだけに上田が大岩底の穴場で溺死したとの知らせはとても受け入れられるものではなかった。翌々日の葬儀場に彼の姿は無かった。あの日その時間、勇一は一升瓶を片手に大岩の頂きにあぐらをかいていた。「上田さん・・兄貴・・俺にとっちゃ、あんたはいつまでも河童です・・」勇一は一升瓶の中身をほとんど大岩の頂きに注ぐと、瓶を持ち上げ頭を下げると、残り約一合弱を一息に飲み干した。 「また思い出してやがる・・・」イサムの声で、勇一は十年前から戻ってきた。「イサム、上田さんは・・やっぱり死んだのか?」目を瞬かせたイサムは、吸いつけたばかりの煙草を落とした。「熱ッ!」 勇一の目を覗き込んだイサムの頭は疑問符で膨れ上がり声がもつれそうになった。 「勇一、お前上田さんのことでふざけたりしねえよな!?」「お互い、こんな話でふざけたりして許せるタイプか?」イサムは髪の中に指を突っ込んでクシャクシャにした。大きく息を吐き出して言った。「お前じゃなかったら、海に放り込んでるところだ。分かるように話せ」勇一は大きく頷いて話し始めた。初めてパラレルワールドに入り込み、ヨーコと共に今まで何度もほとんど変わりは無いが、どこかが違う世界を通ってきた事、記憶のままに語り終えるとイサムの前で姿勢を正した。「イサム、お前に信じてもらえなきゃ、俺、自信が・・・」「やめろ!そんな弱気なお前なんか見たくねえ!」 勇一は、下げかけた顔を上げた。 「パラレルワールドがどうのこうの関係ねえ!お前は昔のまんま、変わってなんかねえ。だったらお前は俺のダチだろうが、違うか!?俺がお前を疑うとでも思ったか、この野郎!」勇一は顔をそらした。ポケットを探すがハンカチはなく・・・イサムに向かって手を差し出した。 「タオル!」 イサムは黙ったまま首にかけてあるタオルを解き、勇一に手渡した。 今日の好きな曲は、以前とは別バージョンの 宇宙の彼方へ by Boston です♪ アップして頂いたMrMoonligttさんの抜群のセンスが光る 映像と音をお楽しみください♪ アップして下さったMrMoonligttさん、感謝致します! いつも応援ポチ有難うございます♪ 今日もよろしくお願いします♪
2016.06.14
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※おことわり:勇は久しぶりの登場です。一部の読者の方から「勇一とまぎらわしい」との感想を頂きました。私も、そうかなと、で、今後はイサムと致します。m(_ _)m ある夏の日に 並列東京へ4操舵室で煙草に火を付け、顔を上げたイサムの目が丸くなり「唖然」を絵に描いたように大きく口が開いた。おまけに煙草は下唇にくっついたままだらしなく垂れさがっている。隣に誰かがいたなら、笑い声が操舵室からあふれていたに違いない。「おい!・・・」飛び出した声が聴き辛く、下唇の違和感で原因を理解した。煙草をはがす時「痛てッ!」と一声漏れた。航行中に吹き付ける風は強く、陸より早く唇を乾燥させる。イサムは操舵室から半身を出したところで海へ投げ 捨てた。「おい!・・・」いつの間にか「豪進丸」に乗り込んでいた密航者は舳先で脚を投げ出したままの格好で白い歯を見せている。イサムの目が再び真ん丸くなった。大きな口も全開だ。「よお、船長。邪魔してるぞ」「なにが邪魔してるだ!この大馬鹿野郎が!」イサムが声を凄ませた。だが目は笑っている。勇一の足元近くにどっかと尻を落としあぐらをかく。「それにしても勇一、お前いったい何時どうやって乗り込んだ?」「俺にもよくわからんが、それよりお前、舵とらなくていいのか?」「心配いらん、オートにしてある・・・いいから種明かししろや」勇一の目が鋭く尖った。(こいつがこの目をした・・・ただ事じゃねえな) イサムの視線が一度落ちてまた上がった。「あとで一杯やりながら聞こうか・・・」勇一が頷くとイサムの目が覗き込んだ。「憶えてるか、大岩底の横穴」勇一の記憶が一瞬で10年前に戻った。大岩の海底で見つけた横穴の事だ大物のサザエが数え切れないほど群れて岩に張り付いたそれこそ「穴場」だ。しかし地元の男たちは知っていても近づこうとしない。何故なら、横穴と言っても磯の岩場の海底と大岩の最下部との間にある隙間のことであり、更にその奥が行き止まりである為、頭から入れば出るには足からとなる。穴の中で折り返すことが不可能なほど狭い。従って常人並の潜水技術と息の長さで横穴を攻略するには、大きな危険が伴う。横穴の天井に背中がくっ付いてしまえば、浮力が邪魔をする。独力で抜け出すのは困難を極めるのだ。「イサム、お前まさか!・・・」勇一は、イサムの目に不敵な笑いが浮かぶのを見て、親友の襟首をつかみ引 き寄せた。 今日の好きな曲は、Billy Joel-Stranger です。久しぶりに聴いて感動! Upして下さった coto.pops music さま、大変有難う御座いました。 いつも応援ポチを有難うございます。 今日もよろしくお願いします♪
2016.06.07
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ある夏の日に 並列東京へ 3勇一は宇宙の景観に圧倒されていた。広い、などという言葉ではとても言い表せない・・・ここから見える・・あの星まで光の速さでさえ何年かかるのだろうそんなことが勇一の脳裏をよぎったとき、目の前の宇宙が動いた!(そんなことが・・あるのか!?宇宙が全部同時に動くって・・・・・そうか、異なる時空に俺の生まれた世界の常識は当てはまらない・・どの時空でもいい、東京にもどれるなら・・・)ん!?この感覚は・・・振り返ってみた。右も左も、そして上下・・・計り知れない数の星々が勇一の背中を避けて広がっていく!!つまり俺を先頭にしてこの宇宙は進んでいると?!そういえばこの感じ船の舳先(へさき 船の前の部分)で進行方向に背を向けて立つ、あれだあの感覚だ!・・・俺がこの宇宙の先頭に立って移動してんのか!?「大丈夫か俺の頭!もう何が何だかわかんねえよー!」やけになった勇一は、大きく息を吸い、腹をくくった。「何しろ相手は宇宙だ、俺に抗する力も知恵もなにもないし、下手に逆らって外に放り出されたりしたら・・・外は真空の世界、やばいなんてもんじゃない・・・」想像したくもない光景を一瞬想い浮かべてしまった勇一は、ぶるっと全身を震わせ小刻みに頭を振った。何もかもが未曾有でしかも魂まで震わせる出来事が続いた。ここまで見事に耐え抜いた勇一の張りつめた緊張の糸もついに解けていく。膝から力が抜けていくのを感じながら勇一の意識は薄れていった。片方の人差し指で閉じた瞼をこすりながら勇一のもう一方の目が開いた。指を離し両の目を瞬かせて我に返った。「寝てたのか俺は?・・・」空に星の姿は無く、人のわざでは創り出せない天然の色、それは日常の晴天の空であり、確かめるまでもなく勇一の目が眩まない角度の上空に太陽が輝いているのが分かった。それにしても、一体何がどうなってんだ・・・?「ん?」いつ移動を終えたのか? そしていつ横になったのか?これで何度目なのか、もう覚えきれない疑問符・・・三方を海に囲まれた漁師町に生まれた勇一は、潮の匂いに包まれて育った。ならばこそ、我を忘れている今この時も海を渡る風を感じ、潮の匂いを容易く嗅ぎ分ける。浜辺の潮・・・干潮に置き去りにされた磯の岩場の潮溜まりの匂い、そして沖合の潮、違うことなく嗅ぎ分ける。時空の波に翻弄されて、疲れ果てたはずの勇一の目が大きく見開かれ、鼻が瞬時にスッと息を吸った。「この匂い!」勇一は、ここが沖合であり、船の舳先に背をあずけて脚を伸ばしているのだと知った。 今日の好きな曲は、The Fifth Dimension -「Aquarius」です♪ Upして頂いた coto.pops musicさま、本当にありがとうございます。 いつも応援ポチを有難うございます。 今日もよろしくお願いします♪
2016.05.27
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ある夏の日に 並列東京へ 2弾けてからどれくらいの時が流れたのだろう勇一の目が開いた。時空間は、まだ意識が弾ける直前のままどこまでも白く、あきれるほどに広い・・・いつか見た北海道の大地は見渡す限り遮るものはなく・・・違うな・・・記憶によれば、室蘭から札幌に向かう途中の大地は、確かに広大だったけれど真っすぐに続く道を追い越す空と重なって、「点」をつなぎながら何かに遮られるまでは「地平線」といえる有限な存在だった。「なるほど」と独りごちて下方を視野に入れる。これだ、これこそ「見渡す限り」と頭の中で声がした。海と違って、暗闇の底に飲み込まれるような怖さはなかった。つい、泳ぐ真似をしてみたが、自分の力で進んでいるという手応えは全くない。それにしても今度の移動はやけに時間がかかるんだな・・・あ! 白い大気の・・否、初めて見る白い時空間の中を探した。・・・ヨーコがいない! 今頃なのか勇一・・・何をしてた!慌ててヨーコを探しているうち、勇一は目の端に黒っぽい影を捉えた。それは巨大なマント?!そう呼べばいいのだろうか無駄だったことを忘れクロールで時空の白い海を切って進もうとした。ヨーコを見つけるまでは捕らわれるわけにはいかない。逃げるんだ!とにかく振り切るんだ、勇一は高校の記録を更新する勢いで泳いでいる・・・そのはずだった。勇一の中ではマントとの差は広がっていたのだ。けれど気がつくとすでにマントは彼の前に回り込んでいた!愕然とする勇一の目の前に立ちふさがるマントはどんどん大きさを増している。やがて成長を遂げたマントが襲いかかる!勇一は為す術もなくとらわれ包み込まれた!こういう時、危機感に突き動かされるのか、じたばたするのが人間という生き物で、勇一も抵抗を試みる。だがすぐに危機感は去り、勇一は目を見開いて一切の抵抗をやめた。マントには小さな孔が開いていたと不思議に感じていたのだが、それらの孔がことごとく夜空を飾る星々となって白い時空はいつの間にか、無限の宇宙に姿を変えていた。 今日の好きな曲は、Instant Karma - John Lennon です。 Mr.Smog,Thanks for up! いつも応援ポチを有難うございます。 今日もよろしくお願いします♪
2016.05.19
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ある夏の日に 並列東京へいつまで、どこまで落ちてゆくのか?これまでになく続くパラレルの落とし穴。ヨーコは、きっと俺以上に怖い想いを耐えているに違いない。勇一は、繋いだヨーコの手をさらに引き寄せて抱きしめた。「何があっても俺から離れるんじゃないぞ」勇一を見上げて頷くヨーコだが、その目は直ぐに固く閉じられた。いくつもの修羅場を切り抜けてきた経験を持つがゆえに、勇一は辛うじて取り乱さずにいれるのだから、ヨーコの身体が震えているのはごく普通の反応と言える。声をかけて少しでも気を紛らわせてやれたらと「ヨーコ・・」 と声をかけたその時周囲の劇的な変化に気づいた勇一は、かける言葉を失った。それまで半透明だった周りの景色が、光の届かない海の深みに変わったのだ!少年だった頃、素潜りのコツを覚えた勇一は、ほとんど毎日のように海中の景色を楽しんでいた。『ある夏の日』もっと深い海を見てみたい。その欲求に駆られ、いつものダイビングスポットから更に500メートルほど沖へ泳ぎ出ると、周囲に船影の有無を確かめてから海面で仰向けになり息を整えた。(海上で仰向けになると、船からは見えにくい。海で身を守るには欠かせないことである)そのあと立ち泳ぎの姿勢をとり、ゴーグルのガラス面に唾をかけて海水で洗い流す。(唾には「リパーゼ」という脂質を分解する成分があるのでガラス面の油膜を落とすことができる)息を整えたら、海下に向け、頭から上半身、腰から足の順に海面から海中へ急降下するように自分の身体を沈めると、手と足で海水をかいて深みを目指した。そこには今まで海底に見られた岩は無く、白い砂地が広がっていた。初めて目にした砂の海底に魅せられていると少し息苦しさを覚えたので、浮上して仰向けになり息を整える。それから身体を反転し、海下を見ると砂地の海底はわずか後方で終わっていて、真下には深淵とも思える海が広がっていた。(たぶん、仰向けになっているうちに潮に流されたのだろう)勇一はそう判断した。それでも潜ってみた。2ⅿ、3ⅿ・・まだ底は見えない・・・4ⅿ、たぶん5ⅿ・・海底は見えるどころか次第に暗くなり、(これは、この先当分、海底にはたどり着けない!)それは勇一の本能が、ある種の危機を告げたものだと思われた。もうひとつ大事なことは、ゴーグルが「ミシッ」と音を立てたこと。(昔のゴーグルは今ほど丈夫には出来ていなかった)勇一は、頭を上げ海水を蹴るようにして海面を目指した。陽の光を恋しく感じたのは初めての事だった。唐突に、「ある夏の日」の思い出は白く輝いて弾けた!(今はヨーコを抱いている・・・例え死んでも離すものか!ヨーコ!ヨーコ・・・)勇一の呼ぶ声に返事はなかった。そして、勇一とヨーコを追い出した世界と、どこかの世界に通じているであろうこの時空間で、勇一の思念は再び白く輝いて弾けた! 何回目でしょうか?それでもなお、今日の好きな曲は、 Eagles - Hotel California !何度聞いても Great! knabbel3,Thanks for uploading. いつも応援ポチを有難うございます。 今日もよろしくお願いします♪
2016.05.06
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ある夏の日に 探求 2 あまりに突然な時空の変化は思考の時間を与えてはくれず、ヨーコは勇一へ手を伸ばし、勇一もその手をしっかりつかんだ・・・だがしかし、大地の揺れは片方に大きく傾いていく(道の下に落ちる!?)それは考えて得た推測ではない。そんな時間は無かった。何の前ぶれもなく、勇一とヨーコを襲った危機的状況を何とか把握しようとして、 勇一の動物としての本能が必死になって(※1)感知した(※2)現下の状況だった。しかし、非情にもそれは単に大地の揺れでは収まらなかった。傾いたと見えた大地は、ヨーコと勇一が渡りかけた道路の全幅を直径として 円形に切り取られたアスファルトの路面だった。円形路面の傾斜角度は30度を過ぎても止まる気配がない!それはまるであの、紙くずを押し込むと大きく揺れて捨てられたものを取り込んでまた元にもどる屑入のフタの動きに似ていた。屑入の化け物は、二人を飲み込むと、この世界に一つの変化を残すという ミスを犯したものの、99,9%元通りアスファルトの路面に戻った。そこへ飼い主と一緒に散歩を楽しむ子犬がやってきた。先程、人知れずヨーコと勇一を飲み込んだアスファルトの路面で子犬が立ち止まった。 「また、マーキングかい?」と飼い主は言ったが、子犬が何かをじっと見つめている様子に軽い違和感を感じて 子犬の頭越しに覗いてみた。 「何かいるのかな?」 子犬は可愛く首をかしげ、本当に不思議そうに見つめているその前の道端に一本、茎に鋭利な切り口を残して花びらを失ったタンポポが風に吹かれて揺れていた。 (※1) 感覚を通じて気が付くようになる(※2) 瞬間的な現在 今日の好きな曲は、サイモン&ガーファンクルの名曲「Mrs.Robinson」です。映画も良かった! Thanks Simon & GarfunkelVEVO いつも応援ポチを有難うございます。 今日もよろしくお願いします♪
2016.04.27
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ある夏の日に 探求1もう一度碑文を、今度はじっくり読み返してみた。「なるほど、言われてみれば俺たちへの伝言のようにも受け取れるな」「でしょ!」ヨーコの顔が輝くような明るさを取り戻した。ジーパンのポケットに両手の親指の付け根まで差し入れて勇一はヨーコに顔を向けた。「入ってみようか」「そうだね」ヨーコは勇一の左手に(何時からか定着している)右手をからめて言った。石碑の横を通り過ぎ、校門をくぐる。 「ねぇ、門は開いてたけど、大丈夫なのかな?勝手に入ったりして」「俺の母校だぜ、知ってる先公だっているかも知れないし、問題ないさ」(『俺の母校だぜ』って、さっき『卒業して何年経つんだっけなあ、この校舎見覚えないんだよ・・そうか、建て直したんだな、多分』って言ってたのは誰だったかしら・・・)とは口にせず、ヨーコは軽くため息をついた。すると突然、勇一の足が止まった。 「どうしたの?急に・・・」不安そうに見上げるヨーコに気づかないのか、勇一は何かを探る目を校舎と校庭に向け、上下左右に顔を振った。 「おかしい・・・」「何が?」「野球部もサッカー部も来てないんだ」「・・・・・」「野球部の練習が休みだってこともたまにはあるが、そんな日は日頃思うように練習できない、サッカー部が必ず、たとえ休日でも練習にくるはずなんだ」「・・・うちらの学校もそうだった」 よし、と勇一が足を一歩前に踏み出したその時、突然ぐらりと大地がゆれた! 今日の好きな曲は、前にもご紹介したでしょうか?だとしても好きなのでもう一度。Ray Charles - Georgia On My Mind !Upして下さった Eagle Rockさま、有難うございます。 いつも応援ポチを有難うございます。今日もよろしくお願いします♪
2016.04.18
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ある夏の日に 奇跡の海 5ヨーコのつぶやきは、小さく低くて、特に感情を込めたものではなかった。だが、その声は鼓膜の役目を無視した異常な速さで俺の脳を直撃した。考える間も与えられなかった脳は慌てて反応し、俺の手のひらを使って、 ヨーコから見えない方の耳を塞いだ。とにかく何らかの反応を起こさなければならない。そう判断したのだろうか。要するに俺は、一時的なパニックに陥っていたのだ。『また、父さんに会えるもの』繰り返すヨーコの声に頷くと、何故かパニックが収まった。「また、会える・・か」「そんな願い、叶いっこないって思う?」「いや・・・」この異常な世界を体験した者は少ない(多分そうだと思う)そんな彼らに聞かせたら、ヨーコの願いは馬鹿げた空想の産物だろう。だが、この旅の出発点からの同行者である勇一は違う。僅かでも可能性があるのなら、会いたいという思いが『願い』になる。それは勇一には十分理解できることだった。ヨーコの瞳が、勇一の答えの続きを、何かに耐えるように待っている。「お前の願いが叶うまで旅を続けるさ、一緒にな」ヨーコの顔が歪み、眉毛が八の字になった。おれは慌てて彼女の肩を引き寄せ、抱きしめた。俺の顔もヨーコと同じになる寸前だったから・・そんな顔見せるのはゴメンだ。 と、今日の好きな曲は、CCR - TRAVELING BAND(LIVE 1970) です。「古いVTRで音も映像もそれなりです」とUp主のBLUES & ROCK'N ROLL & POPS CHANNELさまはおっしゃっていますがこれぞロックンロールです!^^/ いつも応援ポチを有難うございます。今日もよろしくお願いします♪
2016.04.06
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ある夏の日に 奇跡の海 4 「碑 文」 『約束の大地を 人は忘れているから流れ星に 願いをかける幸せになれますように あのひとに会えますように幸せがすべて叶うのは約束の大地だと 思い出せないから約束の大地を 人は忘れているから流れ星に 願いをかける決められた願いを 思い出せないまま流れ星に願うことはただひとつ約束の大地への行き方を聴くこと今、真実を伝えよう約束の大地は不老不死物語に勝る完全な世界この世のいのちが尽きても死んだままじゃない約束の大地に生まれたら形のない記憶が 姿を結ぶ約束の大地は こわれない世界健やかなる時の姿 永遠に続く』 読み終えた勇一は、首をかしげて言った。「ほんとに変わった碑文だな・・・」だが、ヨーコに同意の言葉はない「この約束の大地、本当にあったら嬉しい」勇一を見上げたヨーコの目が少しだけ潤んでいた。「どうした?ヨーコ」「だって、これが本当のことならまた父さんに会える」こんなの真に受けるのか、と言えなくなって勇一は言葉を探した。 いつも応援ポチを有難うございます。今日もよろしくお願いします♪
2016.03.30
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ある夏の日に 奇跡の海 3 どうなるのか、と思われた自然界の異変は意外なほど直ぐに落ち着いた。落雷による厨房の火災も、いち早く到着した消防隊の消火活動により、類焼することなく鎮火した。けれど、このまま此処に突っ立って居るわけにもいかなそうだ。次々に駆けつけてきた消防・警察の車両と片付け切れていない消防車から伸びたままのホースが、疲れたヘビのように横たわっているし、これから警察と消防による火災などの原因調査が始まるらしい。役所の職員らしき男が拡声器で声を散らして道の向こう側に見える中学校の 校舎を指示してくれている。日曜で部活動中のわずかな生徒しかいないので一時的な避難場所として 体育館を使えることと、負傷した者がいれば近くの病院まで搬送してくれると 告げている。 校門の前まで来て、勇一は記憶にない石碑の前で立ち止まった。「なんだこれ?この石碑は・・・」「何だか、変わった碑文ね。校歌の歌詞でもなさそうだし・・ 詩のようにも・・・わかんない・・何なのこれ?」ヨーコの瞳が俺を覗き込んだ。 「俺にもさっぱりわからないよ」「え!なんで?勇一の母校じゃないの?」「そうだけど、俺はこんな石碑知らない。初めて見たんだ」「じゃあ、勇一が卒業したあとに出来たってことなんじゃない」「いや、それなら同窓会から知らせがあるだろ、一口いくらとか募金も募るだろうし」「それもそうだね・・・あ!待って分かった!」 シー!ヨーコの声が大きく裏返ったので勇一は、口の前に指を立てた。軽く肩をすぼめてみせてヨーコが続けた。「これってもしかしたら、二人でパラレルワールドを行き来してきて初めての、 明らかな変化との遭遇ってことじゃない?」 歓迎したくない遭遇だけど・・・と前置きしたあとで 「そうかもな・・・ん?ヨーコ、これって伝言ぽくないか?」え、伝言?・・・少しだけ読んでみたヨーコが俺を見上げた。「そんな感じだね!そうかも知れない・・・でも、だとしたら誰から誰にあてた伝言なの?これ・・・」「そんなの分かんないけど・・・読んでみるか」「うん!」 さて、二人を悩ます伝言のような「碑文」とは!どんな言葉が書かれているのでしょうか!・・・次回のお楽しみ? 今日の好きな曲は、Deep Purple-Black Nightです。 ”Eagle Rock” Thank you for up this song. いつも応援ポチを有難うございます。 今日もよろしくお願いしますね♪
2016.03.22
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ある夏の日に 奇跡の海 2今日一日の始まりは、半島東側の低い山間から昇る太陽を振り返って拝むことに始まった。当然のことだが二人とも額の辺りに手をかざしていても、指のすき間から差し込む光の一斉放射のせいで、太陽の全景を捉えることは出来なかった。 当たり前の話である。だが特筆すべきこともあった。潮の香りとウミネコの鳴き声を聞き流しながらビールの咽ごしに言葉にならない感嘆符の声を上げ、焼きたてのベーコンエッグに舌鼓を打ったのだ。・・・唐突に勇一は、彼の味覚が消えてしまった事に気付く。原因を模索する間に、今度はウミネコたちがけたたましい鳴き声を上げてどこかへ飛び去って行く。それは窓から見た勇一に強い危機感を募らせた。気づくと、勇一の手にヨーコの手が重ねてあった。勇一は、その手を両手で包み込み彼女の目を見て頷いた。「離れるな!何かが起きようとしている」確かな理由などない、勇一の直感がそう告げていた。ヨーコが口を開きかけたその時、雲が覆い始めた空からいきなり稲光が走り、店の屋根を雷が直撃した!耳をつんざく雷鳴は、地響きと共に店内にいた全員を恐怖のどん底に叩き落した。「何をしている!早くここから出るんだ!」厨房から怒声が聞こえるとすぐさま、弾き出されるように前掛けをつけた男たちが飛び出して来た。男たちの後方に煙が見て取れた。ここから早く出るべきだ、代金はあとでいいさ。勇一がそう断定しヨーコの手をとって立ち上がる。彼は目を瞠った。いつの間にか雨も風も激しさを増していて、おまけに稲光と雷鳴が暗雲を引き裂くように閃き、大気を震わせていたのだ。 今日の好きな曲は、Paul McCartney (& WINGS)のLive And Let Die です。 Catslle,Thanks for up! 応援ぽちいただけたら嬉しいです。
2016.03.08
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ある夏の日に 奇跡の海 1ふいに伸びてきた手が左膝の上に乗せられた。勇一はあぐらをかいたままの姿勢でその手を握り引き寄せた。「今度もちゃんと勇一の田舎に帰れたね」ヨーコだった。無事の様子で安心した。「ああ、何度も奇跡が続いてくれている」ヨーコは勇一の顔を覗いて言った。「『奇跡なんだ』って言ってたよね、こんなことが続くの」「そうに決まっている。願うまま同じ所を何度も往復できるのは、パラレルワールドでは奇跡としか言いようが無い。なんたって似ているようで違う世界なんだ。俺らが出会うことの無い世界だってあるわけだからな」そうは言ってみたものの、この防波堤から見える景色はどこまでも勇一の記憶のまま、そこにある。人の動きを目の端で捉えた勇一は、立ち上がると言った。「ヨーコ、腹へらないか」二人とも今朝は空が白み始めた頃に部屋を出たのだった。勇一に手を引かれて立ち上がったヨーコは前方の一点を指さした。「あのお店に行くの?」言い終わらないうちに沖合から汽笛が聞こえてきた。「あのフェリーが朝一番の便だ。それに合わせてあの店が開く。見た目はあんなだけど、結構旨いファストフードを喰わせてくれる・・・今、何か言ったか?」何でもない、とヨーコは首を振り「あたし、ベーコンエッグ食べたい」 そう言った。「そりゃいい、ここの一押しメニューだよ」「本当に!」「ああ、分厚いベーコンをカリッカリに焼いて卵を二つ落としてくれる」ヨーコは満面の笑みを見せて頷いた。久しぶりに見るいい笑顔だ。 今日の好きな曲は、イーグルスの「Take it easy」! fritz51357,Thank you for the Up! よろしかったらポチっとお願いします(^^♪
2016.02.19
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「ある夏の日に」 遠のいてゆく音 勇一の首に回していた腕を解くと嬉しそうにヨーコは言った。「ありがとう勇一」「身勝手だってことは分かってる。でもどうしてもお父さんに会いたいの!お願いだからあたしの我儘に付き合ってね勇一、もう一度あの時空を通って戻って来れて、それでも生きているお父さんに会えなかったら・・・その時は」勇一はヨーコの言葉を遮った。「ヨーコ、これだけは言っておくよ」「なに?何でも言って」「相手は超常現象だ。なにがどうなるか分からない。例え今より悪い結果になっても、それを受け入れる覚悟が無ければお前を連れて行く訳にはいかない。」勇一は、わざと一息ついてから続けた。「だから、このチャレンジは一度だけだ。俺の言ってる事わかるよな?」ヨーコは、唇を噛みしめて大きく頷いた。翌日、午前四時。二人は笹塚の児童公園の中に足を踏み入れた。人通りはないが念のため、ポケットライトさえ持っていない。けれどいつものブランコの間に向かって歩いていく・・・!空間が歪み、拍子抜けするほど簡単に二人を受け入れてくれた。(この時空の入り口は俺に好意的なのかな・・・)けれど時空の歪みは、気を失うほど二人をもみくちゃにした。なにかが顔に当たる感触に気がついて、勇一は目を開けた。忘れるはずもない空気を吸い込みながら立ち上がるとビュウと唸る風の音と、繰り返し押し寄せては防波堤を叩く波の音は、懐かしい景色に追いやられて・・・遠のいてゆく。 今日の好きな曲は、「吉田美奈子さん/頬に夜の灯」 です。何度もライブ行きましたが、大人っぽくもあり、お茶目なところもあり、ステージトークで楽しませて、歌声で感動の涙を流した。とにかく素晴らしいアーティストです。ごゆっくり浸ってみてください。kana3353さま、Upして頂き心から感謝します。 よろしかったらポチっとお願いしてもいいですか?
2016.02.11
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ある夏の日に ピリオドの前に 「ありがとう、勇一」「まだ何も聞いてないし、答えてもないのに?」「あたしの気持ちを読み取ってくれたんでしょ?」ヨーコの緩んだ頬が再び硬くなった。勇一の口角が右に上がる。左に上がれば不機嫌なんだとヨーコは知っている。ヨーコの背筋が伸びて勇一の顔が5センチ近くなる。勇一は「引かない」ヨーコをがっちり受け止める腹を決めていた。「ヨーコが何をどう決めたとしても、今までどおり俺はヨーコと一緒に動く。ただそれだけのことだ」ヨーコは両手を伸ばして勇一の首に回し、彼の膝にまたがった。勿論勇一もヨーコを力強く抱きしめた。今日の好きな曲は、Fleetwood Mac の Go Your Own Wayです。久しぶりに聴いてみて、やっぱりいい曲だと思った。TheGreatestRockSongs.Thanks for up! よろしかったら、応援ポチもお願いします。
2016.02.02
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ある夏の日に 忘れられないのならヨーコは、父親が骨になった日「一人にしないで」煙突から立ち昇ってゆく煙を見た時、勇一の腕にすがって言った。それはきっと彼女の叔父の願いでもあったはず。勇一にしてもヨーコを一人きりにして眠れる夜など想像出来なかった。そしてヨーコの部屋で暮らし始めた。「ただいま」ヨーコが帰ってきた。ジーパンの後ろポケットに両手を差し入れソファから腰を上げて「おかえり」できるだけ優しい声で言ったつもりだ。ヨーコは瞳の奥に強い光を湛えたまま勇一に歩み寄る息がかかるほどのところで立ち止まり、俯いたが胸の前で腕を組むと、顔を上げて勇一の目を見つめた。下唇をかみ締めている。『あたし、引かないよ』 そういうときの顔だ。勇一は、やや長めな息を吐き、ソファに腰を落とした。隣に座ったヨーコの目は勇一を捉えて離さない。勇一はヨーコに向き直って言った「いいよ、聞くから」 今日の好きな曲は、山下達郎 Ride On Time (アコースティックLive)です。 yamainu2010 さまUpしていただき有難うございました。 よろしかったらポチっとしていただくと嬉しいです。
2016.01.20
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ある夏の日に 4 勇一の仕事は、スタジオミュージシャンであり、バンドMのリーダーでもある先輩、谷川のアシスタントとしてライブのチケット売り、ビラ貼り、1トン~4トンのトラックのドライバーとして楽器、PAの運送、設営 等々だ・・・毎日続けてあれば別だが、これだけでは食べていけない。だが、勇一には特別な副業がある。それはレコーディングが歌手によっては、かなり長引くことがあるということ。作曲家が事前に新曲のレッスンを付けたにも係わらず、録音当日1フレーズ毎に5テイク10テイクで、やっとOKを出せるという歌手もいる。そんな状態が続くと大物作曲家は「やってられない」と呟き始める。(他のスタッフ全員の顔にも『俺だってやってられないよ』と書いてあるが)やがて作曲家はプロデユーサーに「あとは任せる」と一言残し、録音スタッフとミュージシャンに丸投げして出ていく。収録は半端なく長時間に及ぶことになる・・・そんな時、心優しき先輩は電話をくれる。当時先輩の時給は17,500円、「またレコーディング押しちゃってるんだよね、悪いけどヘルプ頼まれてくれない?」その一言で俺は駆けつける。先輩や録音スタッフの為に煙草や弁当、ドリンクをコンビニで調達するのだ。この緊急なバイト代がかなり美味しいのだ。先輩からは1hで2,000円、プロデューサー若しくは何時もお世話になってるレンタルスタジオの社長から煙草や弁当の現物支給があって。先輩たちを疲れさせる仕事ほど、勇一の実入りは良くなる。それだけではない。俺の好きな外タレのライブチケットを頂いたりする。最近、こういうヘルプが増えている。素直に喜んでいいのか・・・歌唱力に乏しい新人が人気者になっていく、いつからこんなふうになったのか・・・勇一は頭を振り、 「今は、そんなこと考えてもしょうがない」こっちの世界にパラレルってからまだ3日。前日のスケジュールボードには今日まではスタジオレンタルの予約しかなかったはずだが、あっちからこっちへ、パラレルった世界とが同じ状況というのは考えにくい。とにかく事務所の電話番号を押す。2コールで繋がった。「おはようございます。確認ですが、今日なんか変化有りですか?」と切り出した。極力リラックスした声だったはず・・・「お、ユーちゃん♪ 今日は大丈夫だよ~♪」電話に出たのは赤坂の若社長だった・・・思い出した。確か昨日、某ラジオ局野球愛好会との試合があったはず。「社長、昨日の試合勝ったみたいですね」「エー、分かるゥ 楽勝だよ、楽勝♪」「やりましたねぇ、今度お話を聞かせてください」「いいよ~、てか明日またヘルプ頼みたいんだけど空いてる?」ここで即答は避ける、けど間を取りすぎるのもいけない。スケジュールを確認するふりだけして一息で受話器に声を送る。「あ・・空いてます♪お世話になります!」「いいねぇ ユーちゃんは謙虚で♪ この世界それが♪一番大事~♪だから。じゃあ、明日8時に赤坂集合、みんなでSスタジオにいきましょう♪」「わかりました!もし時間がとれたら試合のお話も聞かせてください♪」嬉しそうに笑いながら、間違いなく若社長のけぞったよ、声の反響で分かるものだ。「いいよ~明日もK子ちゃんだから、時間はたっぷりあるから♪じゃ明日宜しくね~♪」軽快な声で返事して受話器を置いた。ヨーコの心配している顔が目に浮かんだ。勇一は今置いたばかりの受話器を持ち上げた。 今日の好きな曲は、Doobie Brothersの"Double Dealin' Four Flusher" 雨雲を吹き飛ばしてくれそうにエネルギッシュですねー♪ "robotocho”Thank you been up to this song. いつも応援、有難うございます。今回もポチっとよろしくお願いします(^^♪
2015.11.17
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ある夏の日に 選択3 どれほど悲しくて辛くても、社会人としてやらねばならない事はあって、ヨーコと勇一にとってそれは、大至急職場に連絡を入れることだった。ヨーコの場合、あの忌まわしき災害によって父親が亡くなったことで「娘のヨーコはショックを受けて寝込んでしまっている」叔父は姪に代わって連絡を入れた。所属事務所からは「ご親戚のカメラマン、鈴木氏からも昨夜伺ったところです。お悔やみ申し上げます。落ち着きましたら連絡をと、ご本人にお伝えください」との言葉をもらってセーフ!ヨーコは大きなショックを受けてはいるが、それでも勇一の仕事がどうなるのか気になって仕方がなかった。 勇一の場合あの時、どうして九州に居たのか。なぜ電話の一本も出来なかったのか。問われることは当然だし、言い訳する気はないが、携帯も公衆電話も勇一の家の電話も、東京に繋がることはなかった。勇一が言ってたように、2人がほぼ同時に移動?したと思われる、パラレルワールドと、それまで2人がいた世界とでは、電波の波長に違いが生じるのだろうか?とにかく、何度も試みた発信が通じなかったのは事実なのだが、それを証明できるのが、ヨーコと勇一だけなのが痛い。 家の前で、軽くブレーキを踏む音がした。ヨーコが顔を上げたとき、車のドアの閉まる音も聞こえた。 「九州の俺んとこに電話したらしい。今朝のことだ・・・何故、事前に一言もなく突然帰郷したのか?『理由はなんだ?』と」 「説明のしようがないね・・・」 ヨーコは失望を隠し切れずソファーの上にストンと腰を落とした。 二人きりにしておいてあげようとヨーコの叔父、正樹は廊下に出て窓を開けマルボロに火をつけた。部屋を出ていくときにドアを少しだけ開けたままにしたのは、マナーを知らない訳じゃない。彼としてもヨーコの事を託した以上、勇一の仕事について考えていることがあったからだ。 今日の好きな曲は、玉置浩二さんの「田園」人生の応援歌! 3つのバージョンの素晴らしさは感動的♪ NEW sudaさま、Upして頂き、本当に有難うございます(^^♪ いつも応援有難うございます。今回もよろしくお願いします(^^♪
2015.11.08
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ある夏の日に 選択2あれから・・・どのくらい経っただろう指折り数えて時間の経過を確かめてみるそんな勇一の姿も、彼が見上げている時計も何もかもが、多分 ヨーコにとって今、ここに存在していないのと同じで、ただ目に映るものを後頭部の視覚を中心とした脳細胞が情報処理したものを認識しているだけ、そういうことなんだろう。俺にはそう見える。そんな「抜け殻」のような状態のまま、ヨーコはソファーに深く腰を沈めて身動き一つしていない。「5時間?」親指から始めて小指で指折りを止めた勇一は、そう言ってこの5時間を振り返った。半ば強引に実家までヨーコを初めは歩かせ、途中からは背中におぶって俺も洋子ももう恥ずかしいとか、そんなことに頭を働かせる余裕など全くなかった。そして・・・ヨーコと父親の対面・・・狂ったようにあいつは泣いた!「返事をしてー!!!」叫ぶように懇願し、父親に縋りついた!いくら待っても返事をしてくれない父の顔をしばらく見ていたが、糸の切れた風船のように、ふわり立ち上がったヨーコは、誰の目にも一切の感情を無くしたように見えた。「この非常時に連絡も取れなくて!」 そう言って彼女を責めていた叔父も、ヨーコが受けた精神的ダメージの大きさと、父を想う愛情の深さを思い知らされたものか、優しい声をヨーコにかけた。 「ヨーコちゃん 、よく帰ってきてくれた・・・きっと兄貴も喜んでいるよ・・・」「兄さん、ヨーコちゃんのことは俺がきっと守るから、頼りになる友達もいてくれてる、だから安心してくれ・・・」 親戚の方々に何事か告げてから、 自分の車で俺とヨーコをアパートまで送ってくれた。 途中、知りたかったことを俺に尋ね、ヨーコが俺を信頼していて俺もヨーコのことを真面目に考えていると分かってくれたようだ。「兄の納骨の日は知らせる・・・ヨーコにもいろんな手続きをしてもらわなきゃならない事があるが、あの状態じゃ・・・」事務手続きなんかだろ、言い辛いよね、だからおれは黙って頷いた。「当分一緒にいてやってくれないか、仕事に支障がない範囲で、どうか宜しく頼みます」深く頭を下げられた。俺はもっと深く頭を下げて誠意を示した。 「ヨーコさんのことは、必ず守ります」 ヨーコの叔父が右手を差し出し、俺はその手を強く握り決意を伝えた。 今日の大好きな曲は、カルメンマキ& Oz の 「私は風」 です。久しぶりに身体の奥が震えた 。 今は、沈み込んでしまったヨーコ。無理もない・・・ 直ぐに元気になれなんて、そんな酷なことは言えない・・けど、いつか この曲を二人して直ぐそばで聴きたい。 この曲をUpしてくださった Tokyobassman さま 本当にありがとうございました! 皆様、いつも応援有難うございます。とても励みになります。 どうぞよろしくお願いします。
2015.10.29
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☆レイバン事件ある年のある日。都内の某○○高等学校正門の前。正門の前にバス停があって、ぼくが通りかかると女子高生たちが、集まって何やらざわざわしてる。 テレビかなんか撮影でもしてるのか?と立ち止まってみた。 そこには、彼女たちの視線を一身に集めてる男が一人。バーバリーのコートをさりげなく着こなし、レイバンかけてそれも決まっていた。 ハードボイルドだ! そうだお前はゴルゴだ! 中野通りも近いことだし、さいとうプロダクションのスタッフが通りかかるかも知れない・・・女子高生たちの熱い?視線を浴びた彼の思考回路は、きっと冷却ファンを必要とするほどにヒートアップしていたのかも知れません、そうに違いない。その爛れそうに熱を帯びた思考が彼をして、何らかのパフォーマンスを見せてあげなければ! それが彼女たちの視線に応えることだ! とでも行き着いてしまったのでしょうか?アイドルでもないのに・・・ 夏でもないのに、 「アンパンマンみたく飛んでみたら?」 などという異常な妄想にとらわれつつあったボクの目の前で、それは 起きてしまった! ボクの妄想が彼に移ったのか? 彼は跳んだ!両手をコートのポケットに入れたまま! そうだ、ゴルゴは、バスなんか待っててはいけないんだ!選択は正しかった・・・でも着地がまずかった!ガードレールは予想外に高かったのだ。彼は、あろうことか顔から着地したのである!! 無残!慌てて起き上がった彼は、愚かにも女子高生たちを振り返った。ぼくは目撃した。 レイバンは片方だけそのままで、真ん中で九の字に折れ曲がり耳からはずれ落ちそうだ。おまけにレンズも無くなっている! 哀れ!!女子高生たちの溜息は、大爆笑に変わった。頬のかすり傷も痛々しいレイバンの男は、丁度通りかかったタクシーに助けを求めた!さらばだニセゴルゴ!お大事に・・・以来、笹塚を中心に「レイバン事件」は長く語り告がれてゆく・・・広めたのは誰だ・・・? いつも応援有難うございます。ポチっとよろしくお願いします。
2015.10.23
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☆女優の連れに同情した話それは私がまだ、すごーく若い頃の話。所は原宿、表参道では有名だった、とある小さなカフェ・レストラン若年ながら、なんとかチーフに認められてオープンカウンターの中、やっとフライパンを振れるようになった頃のことです。場所がら、ときどき有名人もやってきます。ある日のこと、誰でも知ってる綺麗な女優さんが若い男性と二人で来店されました。二人はカウンターの席に座りました。二人でメニューを見てる。(ラッキー!こんな直ぐそばで見られるなんて。なんならオイラがオーダーを・・・)とその時、ホールにいた後輩が二人に近付きオーダーを・・・(余計な事・・・じゃない、彼の仕事だった・・・)「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」「私はスパゲティ・ミートソース、あなたは?」彼が注文する前に、ウェイターが口をはさんだ。「申し訳ありません、当店ではスパゲティはナポリタンのみとなっております」何故か、そうだったんです・・・「じゃあ、ぼくはそれでいいよ。君は?」「あら、ミートソースはないの?」「はい、申し訳ありません」「じゃあ、しょうがないわね。わたしも同じでいいわ。それとジンジャーエールね」この人、ジンジャーエール大好きだと、後で知った。「ぼくもジンジャーエール、もらおうかな」「かしこまりました。ナポリタン2つ、ジンジャーエール2つでございますね」「そうね、お願いするわ」ここまでは、普通。この先の展開、読めた人はぼくの私書箱まで・・・うそです、書きます。ごめんなさい・・・ホールからのオーダーが入る前に、すでにぼくはズンドウにお湯を入れて強火で再沸騰の準備を終え、人参、玉ねぎをきざみ始めていた。やがてナポリタン二皿出来上がり。すでに後輩がトレイを片手に待機している。決まり通り、女性の方から先に皿を置く、そのとき、声がした。いつもTVや映画で聴いていた、あの女優の声とは思えないトーンで・・・「あらっ!ミートソースじゃないの!?」隣で彼氏がバツ悪そうに言った。「さっき、君がこれでいいって・・・」「私は、ミートソースが食べたかったのよ!」と、ぼくを睨みつける。「さきほどご説明申し上げたかと・・・」女優は最後まで言わせてはくれなかった。「じゃあ、ミートソースは置いてないの?」ぼくが返事をする前に連れの彼氏が「もういいから、食べよう。ね!」女優はしぶしぶ、フォークを手に取った。彼氏が済まなそうに小さく頭を下げた。いえいえ、と口に出来ないので彼女に見えないようにこちらも頭を下げた。男なら、同情するしかないお話でした。 いつも応援有難うございます。ポチっとよろしくお願いします。
2015.10.19
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現在、本編とショートショートに一時的な区切りをつけるため溜めてある「ショートショート」作品を全部載せています。読み辛いかもしれませんが、書き手が混乱しそうなので(^^; ごめんなさい m(_ _)m ☆甲州街道、750褒め過ぎ事件 中野区と渋谷区の区境を越えて十号通り商店街を南の方向に進むと甲州街道に出る。その辺りの交差点で起きた笑ってしまうにはかわいそうな実話を一つ。 ☆甲州街道、750褒め過ぎ事件ある日の夕方・・・のちょっと前、ぼくと後輩は(彼はその頃はすでに真面目に働いていましたが元は「パパラッパパラッ!」って賑やかな音たてて、バイクで疾走してた)二人揃って女の子とのデートの予定も無いまま 「たまには映画でも観るか」「オス!自分もつきあいます」ってぼくは「パパラッ」の先輩じゃないのに・・・ 「お前、いい加減、一般世間に染まれよ」「オス!頑張ります!」「だから・・・そのオスは要らないって・・・」「オス!すいま・・せ・ん」だめだこりゃ・・・でもやっと更正したばかりだし、あんまりうるさく言ってもな・・・ぼくは長い目でみてやることにした・・・歩くこと暫し、甲州街道に出た。横断歩道を渡ろうとしたぼくと後輩に声を掛ける複数の声がした。「先輩!先輩!」この場合の先輩とは、ぼくの後輩のことです。「おう!お前か、あれ!?お前買ったの?これ?」 振り返ると、すでに後輩はナナハンから降りて、きちんと挨拶をしている彼の後輩の元へ・・・ま、相手は知らない顔じゃないし、ぼくが一緒だから長引く事も無いだろうと、側まで近づいた。「あ!オス!先輩!久しぶりっす!お元気ですか!」 と、大きな声で(お間違いの無いように申し上げますが、ぼくは「パパラッ」はやってません。彼らは自分達の先輩が親しくしている人間の事も大事にしてくれるというか・・・ま、そんなところです) 後輩「すげえな!お前これ新車じゃない!バイトして買ったのか?」現役「オス!そうすッ!」と嬉しそう。後輩、ナナハンをあちこち撫でるようにしながら、「すげえな!おい!これなら宿まで3分で行けるぜ!」 (久々に後輩に会って、戻りかけている) 現役「3分はちょっと無りっすよ!」後輩、ジロリと、現役を見て一言。「そりゃあ、いちいち信号止まってりゃってハナシだろ!」(すっかり、戻ってる・・・)ぼく「○○、お前顔が昔に戻ってんぞ」後輩、はっとして「す、すいません・・・」ぼく、現役君に「いいねェ、新車は。これならかなりスピードでるな」(ちょっと煽ってないか?) 後輩「出ますよー!180は軽いっすよ!」現役「いやぁー、まだ新車ですから」後輩「新車のうちに飛ばしとかなきゃ、伸びねーぞ!ねェ先輩」とぼくに振る。ぼく「そ、そう言えばそう言うな・・・うん」 現役「いやぁー昨日おろしたばっかなんで」後輩「見たいなあ、こんなピカピカのナナハンが飛んでくとこ!」現役「そ、そうすかあ」後輩「見たいよ、そりゃ。お前ならタッパもあるし似合うだろうなあ、ねェ先輩」 ぼくは、そろそろ周りの目が気になり始めていた。早くこの場を去りたい。ぼく「ああ、似合うだろうな、いい男がピカピカのナナハンで、バーっと行けば」後輩「ほら、先輩もああ言ってるだろ?飛ばしてみせてよ!」現役「そうっすかあ!じゃあ一回だけっすよ!」後輩「そうこなくっちゃ!ほらほら!丁度信号変るぞ!」現役「オス!!」停止線に着く現役、意外にまじめだ・・・緊張してるのか?ブンブン吹かし始めた。青になった!!「Go!!」 吹かし過ぎだろう・・・ピカピカのナナハンはタイヤを焦がし煙吐きながら、スタート!!直後、おお!ウィリー!と思ったら・・・止まらない!ピカピカのナナハンは、円を描いて空を切った! 轟音とタイヤの煙をたてて!スローモーションのように見えた。宙に浮いて路面に落ちるまで、しっかり見届けた・・・ 後輩 「おい!おい!誰もバク転やれって言ってねえぞ!!」 大笑いしてる。ぼくは、なにも言えなかった、可哀相なことを・・・罪の意識が・・・その横で後輩はまだ笑っている・・・この男には再教育が必要だ・・・哀れピカピカだったナナハンは、マフラーを引きずりながら甲州街道を新宿方面へ去ってゆく。現役は一度だけ、けなげにこっちを振り返ってペコッと頭を下げ、疾走して行った・・・許せ!現役!!もうコケないように、気をつけろよ!その夜、ぼくは気になって、後輩に現役の様子を聞いてくるよう頼んだ。幸い、かすり傷だけで済んだと聞いて安心しました。 みなさん、安全運転でご帰宅を!! いつも応援有難うございます。ポチっとよろしくお願いします(^^♪
2015.10.17
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ある夏の日に 選択 1 新横浜駅に着いたら、JR横浜線に乗り換え、菊名駅から東急東横線で武蔵小杉まで・・・そこまで行けたらの話だが・・「実はさあ、勇一・・・」洋子に向き直った俺は彼女の横顔を見せられたまま「さっき、あんたが眠ってる間に父さんの携帯にかけてみたんだ」「そうだったのか・・・で」やっと向いてくれた目に涙が一杯溜まってた「繋がったよ・・・けど・・・」両手で顔を覆って俯いた。勇一は座席の間に腰を落とし、洋子を下から見上げる「なあ・・いい話じゃなかったんだろうけど・・・」頷くと顔を見せてくれた。涙でぐしょぐしょだったが洋子は、健気に歯をくいしばったあと再び口を開いた。「出たのはおじさんだった。母さんの弟の・・・」俺は頷いて聞いてやるしかない。 「で・・今日がァ!・・父さんの葬式だったって!どこで何してた!って!」「なんだそれ!」「だよね!もう、何にも考えられない!・・・」「だな・・・けどとにかくお前、帰らなきゃ・・だろ帰って、顔を見せてやらなきゃ・・・な」「嫌だ、嫌だよ・・・そんなの嫌だ!・・・」こんなこと、信じないっ!! 信じない!と言った洋子の声は激しく震えて、耳に届くより先に俺の胸を突き抜けた。言葉さえかけてやれず、悔しさに拳を握りしめたとき俺の頭の中に、思ってもいなかった考えが浮かんだ。けれどそれは、洋子の口から出てこないうちには、とても言えることじゃなかった。 こんなシーンでも聴ける、いや聴きたくなる名曲ですね。 Upして頂いたjmjbj993000 さま、本当に有難うございました。 いつも応援有難うございます。今回もよろしくお願いします(^^♪
2015.10.10
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戻れるか? 8今、勇一と洋子は同じ車両にいる。新横浜行きの新幹線「光」に二人並んで座っている。だがしかし、この違和感はどういうことなんだろう。一つだけ言えることは、違和感の根っこに時間の誤差が生じている。その認識を、すくなくとも勇一は感じているということだ。時が二人を引き離そうとしているのか、それとも二人のうちどちらかが、時を共有しようとしていないのか・・・・・どっちにしても、違和感を拭えない。勇一は定位置をキープするしかなすすべを知らず、洋子の心は、すでに父親の元へ跳んでいるのでは、と。(会話が繋がらないのは、そういうことか・・・)「光」の中で「時」は、洋子の目が勇一を捉えている、その間だけ同じ速さで流れているように感じる。「そういうのも有り、かもな・・・」勇一はそんなふうにひとりごちた・・・・・「勇一・・・勇一・・・こいつ・・・」なかなか目を覚ましてくれない勇一の耳に洋子は温かい息を吹きかけてやった。勇一は頭をブルっと震わせると同時に肩をすぼめ、シートにもたれていた背中を浮かせて起き上がった。隣で笑いをこらえている洋子に気づき腰を下ろしながら「お前、なんかやったろ俺の耳に・・・」洋子は笑みを消すと、ひじ掛けに乗せた勇一の左手に彼女の右手を乗せ、身体を寄せて囁くように言った。「あんたが、大きな口を開けたまま眠ってて、涎までたらしてみっともなかったからぁ、あたしが吸ってあげたのよ」「う、うそつけ!耳になにかしたん・・・ほんとに涎、吸ってくれたのか?拭いたんじゃなくて・・・」勇一は顔を赤らめていたが、嬉しそうにそう言った。「あら、本気にしちゃったの?するわけないでしょこんなところで・・・」「・・・・・・・・・・・・・・」「バカはそのくらいにして、もうすぐ三島よ。ちゃんと目を覚ましてよね・・・」「お、おう・・なんか喉乾いたな」「新横浜駅で横浜線に乗り換えだから、それまで待って」「そっか、洋子は車内販売のコーヒー好きじゃなかったな」「憶えてくれてたんだね・・・晩御飯おごるわ」「親父さんと一緒にな・・・」洋子は何も言わず、勇一の肩に頭をあずけた。 今日の好きな曲はDoobie Brothers で China Grove です。DoobieBrothersVEVO、 Ilove this song.thank you for Up! いつも応援有難うございます。今回もよろしくお願いします♪
2015.10.02
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いつも応援していただく皆さん、夏風邪が長引いてしまい。 更新遅くなりました。m(_ _)m 戻れるか? 7 キラウエア火山の噴火には到底及ばないが、それなりに熱い夜が過ぎて、迎えた朝。勇一は、目覚めてすぐにシャワーを浴びてフロントに朝食を頼む。その前に目を覚ましていた洋子が、勇一と入れ替わりにバスルームに入るところを呼び止めた。 「朝食はバイキングらしいけど、良かったかい?」 頷いて「任せるわ」と言った洋子は、これまで勇一が知っている中で、一番いい笑顔をしていた。勇一も、今日最初の煙草を気分良く吸えた。朝食を済ませ部屋に戻り、勇一が荷物を持って1階のロビーに降りてくると洋子がチェックアウトを済ませてくれていた。ホテルを出ると直ぐに勇一は言った。「東京に戻ったら直ぐに返すからな」「急がなくていい、仕事のない日はいつだって一緒にいてやるから」そうはいかない、と言いかけて勇一は口を閉じてしまった。洋子の勇一を見る目が今までと違っていたから、今まで尖ってた彼女の目が優しく、風に舞って顔にかかったパールアッシュの髪をかき上げる仕草・・・ゆうべから、勇一が思っていることそれは(女ってこんなに変わるんだ一晩で・・・)ということ。 「ほら、私に見とれていないで、駅行って確かめようよ」「そ、そうだったな、よし行くぞ!」 勇一は照れを隠しながら、洋子は嬉しそうに言った。横断歩道では洋子の手を引っ張って、早足で勇一は歩いた。「勇一、早すぎる。朝の新宿じゃないんだからー」 駅の構内に入ると真っ先に電光掲示板を見上げた。「あった!走ってるんだ新幹線!見てよ勇一!」洋子が勇一の手を引っ張ってゆく「おお!ほんとだ!やったな洋子、帰れるぞー」二人は周りの目も気にせず、手を取り合い歓声を上げた。親友に船を借りるつもりだったことを思い出したけど「連絡もつかなかったことだし、船はいいかこの際」「キャンセルするわけじゃないし、いいんじゃない」 そういうことで勇にだけは『新幹線が動き出したから、急だけど東京に戻るよ、ん、ああ、すまんこの次、帰ったらゆっくり飲もう』そう約束した。勇一が勇と電話で話しているうちに、洋子が東京までの切符を買って戻ってきた。「取れたよ、二人分。新横浜までだけどね」洋子は立っている勇一の所まで駆け寄って、嬉しそうに言った。無理もない。例え新横浜まででも父親に近づけるのだから 「良かったな洋子!親父さんに会えるぞ」「うん!なんてったって親子だもんね・・・・・」 笑みを浮かべて言った洋子だったが、腰に手をあてたまま俯いた。勇一は洋子の顔を覗き込むと、やっぱりなと口には出さずジーパンのポケットからハンカチを出して洋子の涙を拭ってやる。 「馬鹿だなあ、泣くのはまだ早いって、ほら」「ありがとう、勇一・・・」気の短い勇一だが、基本的には優しいのだ。相手が素直であれば、何時だってそうなのである。それから二人は改札口に向かった。 今日の「好きな曲」はPaul SimonとWillie Nelsonで「早く家に帰りたい」です。Daniel Goldenbaum, Thank you for Up! いつも応援有難うございます。今回もよろしくお願いします。
2015.09.24
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戻れるか? 6 部屋の明かりを半分くらいに落とそうとする洋子を勇一が止めた。「今日は、全部見たいな」「何言ってるの、昨日お風呂一緒に入ったでしょ・・・」「いや、さすがに風呂ん中で欲しくなっちゃまずいと思ってちらっとしか見てない・・・」「馬鹿・・・」洋子はちょっとだけ俺を睨んだが、俯いた後すぐに上げた顔が赤かった。すると、壁にあった照明のスイッチから洋子が離れたじゃないか!ダメもとでも言ってみるものだ、俺はそう思ったね。仕方ないって素振りで歩み寄る洋子を見て、期待が意外なほどに叶ったからか俺は何か言わなきゃって、あせったのだ、多分。それでつい、こんな言葉を口走っていた。「それ、さっきの店で買ったんだね」立ち止まり、指先で身に付けたパジャマの端をつまみ、少しだけ横に引っ張って見せる洋子。赤と白のチェック柄が可愛い・・・「このパジャマのこと?」「パジャマ?なんかワイシャツのロングバージョンって感じだけど」「女に男物のワイシャツ着せて喜ぶ男がいるって聞いたことあるけど、勇一もそうなの?」俺は首を振ってみせた。いやいや、ただ聞いてみただけ・・・「呼び名はいくつかあるけど、ワンピースのパジャマってこと。ワイシャツじゃないし、勇一に見せるために買ったんじゃないから」とてもこれから熱くなれそうにない雰囲気を、勇一は洋子に反論しないことで、そして洋子はベッドに横たわることを拒まないことで、これ以上テンションが下がるのを食い止めようとした。ふたりとも、そこそこ大人ではないか・・・隣に身を横たえる洋子。勇一が持つ「理性のダム」の一つ目が決壊した。洋子にキスをした。ちょっと長めなのが決壊したダムから開放された理性の欠けらが押し出す力なのだろう。唇を離すとき、洋子が目を開けた。薄めのエメラルド・グリーンとても綺麗だ。(洋子の父親はアメリカ人、母親は日本人、祖父はノルウェー、祖母がスウェーデン出身。二人はアメリカで知り合い、結ばれて洋子の父親が生まれた。つまり洋子はクウォーターなのだ)そしてフルネームは「洋子ランプランド」という。俺は彼女の艶のある淡いブラウンの髪を撫でながら、右手でパジャマのボタンを外しにかかる。二つ目をはずした。ブラをつけてないのがわかる。三つ目を外すと大き過ぎなく形のいい乳房が、少し弾んで露わになった。全身の肌が白く滑らかなケント紙のようだが、陽焼けしてないその部分は、一際白さが目立った。そして勇一の二つ目の「理性のダム」が決壊!洋子も今この時、父を想う娘ではなく、一人の女として勇一を受け入れていた。次第に強く高く昇りつめ、溶け合った。2度まで昇りつめ、二人は身も心も一つに溶けてしまったようになり、直ぐにはお互いの胸の鼓動にさえ気付かなかった。二人にとって初めての夜ではなかったが、勇一はこの出会いが『遠い過去に決められていた』理由はわからない。けれど確かにそんな不思議で切ない想いを感じたのだった。洋子も同じ想いを抱いていたことを知るのは、もっと先の話になる。 今日聴きたい曲です。 Simon and Garfunkel で「For Emily, Whenever I May Find Her」 vzqk50CL Thank you! for Up! いつも応援、有難うございます。また、よろしくお願い致します♪ ID:qr4o9d
2015.09.08
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※勝手ながら、4の後半を編集しました。+5の更新です。読み辛かったらm(_ _)m 戻れるか?4 後半その夜、「JR東日本」「JR東海」は、ことがことだけに両社揃って報道陣を集めて報告謝罪会見を行った。「ご利用者の皆様、ご迷惑をおかけして誠に申し訳有りません。職員総出で一日も早く復旧をと、自衛隊の皆様のご協力も頂き、昼夜を問わず復旧作業に取り組んでおりますが、現在のところ復旧の目途は立っていません。どうか今しばらくお待ち頂きたく・・・お願い申し上げます」疲れきり、悲痛な面持ちの両社役員、復旧作業の責任担当者たち全員が深々と頭を下げて謝罪する姿を見、報道陣の彼らを見る目は厳しさを消した。何しろ『天災』である。それでも尚、責任を追及した新聞社が1紙だけ有ったが・・・。悪魔のような、そのなにかが激突したとみられる中心地点は、多摩川の水中であり、事前より深くなっているようで、川の水面の色が上流より濃く、濁りもあることから「何かが激突して陥没した可能性が高い」というのが地質学者などの見解である。「近い・・・」と洋子が呟いた。「え、?」と勇一が缶ビールを片手にしたまま、洋子へ顔を向けた。「父さんが、住んでいるの、あそこからそんなに離れてない・・・近いの・・・」テレビの画面に映る多摩川の現場の映像を指差して、洋子が言った。目には涙さえ浮かべている・・・「洋子・・・」名前を呼んだ。それだけであとは・・・勇一は洋子にかける言葉を失ってしまった。 <戻れるか?5>「行こう・・・」 父の安否が気になって仕方なかった洋子には、勇一がなにを言ったのか、言葉だけが通り過ぎてしまって、耳に残らなかった。けど大事な事のように思えた。「今、なんて言ったの?勇一・・・」やっぱ、聞こえて無かったんだな・・・「お前んちに行こうって言ったんだよ」「え、でも新幹線は何時、運転再開するか分かんないんだよ」「誰が新幹線で帰るって言ったよ・・・」心の余裕を失っていた洋子は、つい、声を荒げてしまう。「じゃあ、いったいどうやって東京まで帰るって言うの!車を飛ばそうにも、国道だって高速だってどこも渋滞が酷いって、さっきテレビで言ってたじゃない!」勇一は努めて冷静に洋子を見つめた。それが一時的にしろかえって洋子の感情を逆なですることになることは分かっている。だが二人ともに激高してしまえば、物別れになり、洋子はあたし、一人で帰る!歩いてでも!そうなるのが見えていたからこそ、勇一は気が昂ぶっている洋子に逆らわず、落ち着いた声で言った。「俺の親友の一人が、ここから20分ほど南にある埠頭に持ち船を係留してある。あいつに訳を話して船を出してもらう。それで東京まで・・・新幹線より、車よりはるかに遅いけど渋滞は無いし、駅に停まらない分、イラつくことはないぜ」それまで、洋子の眉間のあたりに寄っていた縦皺が左右に伸た。「あー、確かに!海だったら広くって、若葉マーク貼ったトロくさい車の後ろくっついてイライラしなくて済むしさぁ、いいじゃん、それ!」と、さっきまでと打って変わって声まで高すぎ、大きすぎてる。「いや、声大き過ぎるし、それに『いいじゃん』って、浜っ子かよお前」「うるさいねぇ、小さい事言わないの!それよか本当に船貸してくれんの、あんたの親友?」(洋子、完全復活だな・・・一安心だよ・・・)「あいつもニュースで知って心配してるはずだ、俺の頼みを断りゃあしない。大丈夫だって」勇一は頷き、洋子の顎クイしてキスをした。理由は考えなくていいはず・・・ビンタは返って来ない。セーフだ。「今のは許すけど、船借りんのダメだったら、海ん中突き落とす」恐わ!「で、上手くいったら?」「ン、なに?・・・」勇一は何も言わず、天井見上げ、顎をポリポリかいている「もう・・・そんな気分じゃないけど、あたしも眠れそうにないし、それに勇一、昨日からずっと優しくしてくれた・・・あたしだって勇一のこと・・・好きだから」洋子はベッドを下りると、ドアのそばに行き部屋の明かりを落とした。 今日聴きたいのは、The Doobie Brothers で「 Sweet Maxine」です。humanjukebox1958 . Thank you! for Up! いつも応援、ありがとうございます。今回もよろしくお願い致します♪
2015.08.29
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※予想外に早く続きが書けました! ある夏の日に 戻れるか? 4風呂で汗を流した後、二人はビールを飲みながらテレビに見入っていた。少しずつ何が起きたのか、その状況が明らかにされてゆく。どうやら千葉の方は、震度4弱の地震だったが直ぐに揺れは収まり被害も揺れたわりに少ないようで、二日経過した時点では、負傷者約10名、県内の山中に入っていた男性が数名行方不明となっているのが被害の全容らしく、警察や消防などで行方不明者の探索救助を最優先に、事態の収拾に全力をあげている。問題は東京の方だ。突然襲った激しい揺れは、東京都23区西部地域と多摩川を挟んで東京と隣り合う神奈川県東部の比較的限定された地域で発生したものの人口密度の高い都市部であったため、被害は大きく、生じた亀裂や衝突した多くの車により道路は数十箇所に渡り寸断されている模様で、救助活動も困難を極め、被災者の数も正確には把握されていない。そして目撃者の話によれば、「彗星のような物体がいきなり現れたんだよね!ものすごい速さでさぁ!・・・多摩川丸子橋緑地の辺りに落ちたんだ・・いや落ちたというより・・激突だったよ、あれは!」また、下流にいて目撃した地域住民の話によると、「海を見てたら、突然後ろの方からものすごい音と振動がしたんで、振り返ったらね、川に水柱っていうの?めちゃでかくてね。それがすごい高さに、なんか噴き出したみたいになってて!で、その後すぐに激しく揺れてさぁ!だからね、地震じゃないよあれは!揺れ方が違うし・・・今まで見た事無いよ!あんなの」興奮した口調で、そう語る姿が繰り返し放送されている警察によると、多摩川に架かる丸子橋と東海道新幹線多摩川鉄橋の中間地点の多摩川両岸には三日月のような形状に削り取れた跡が発見されていて、周囲には飛び散ったとみられる土砂が川に面した建物や丸子橋、東海道新幹線とJR横須賀線が併走する多摩川橋梁にも降り注がれていて、2センチほど堆積していた土砂は除去したが、線路の状況を確認整備に取り掛かったばかりで、JR東日本、JR東海、両社は、「ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。復旧のめどは立っていません」と発表している。そのなにかが激突したとみられる中心地点は、多摩川の中であり、事前より深くなっているようで、川の水面の色が上流より濃く、濁りもあることから、「何かが激突して陥没した可能性が高い」というのが大方の学者の見解である。「近い・・・」と洋子が呟いた。「え、?」と勇一が缶ビールを片手にしたまま、洋子へ顔を向けた。「父さんが、住んでいるの、あそこからそんなに離れてない・・・近いの・・・」テレビの画面に映る多摩川の現場の映像を指差して、洋子が言った。目には涙さえ浮かべて・・・「洋子・・・」そう言ったあと、勇一は洋子にかける言葉を失ってしまった。 フォローさせていただいているMoMo太郎009さんのブログにお邪魔して、久しぶりにチャック・ベリーを聴いたら、あの名曲が聴きたくなってYouTubeへ飛んでって、聴き入ってしまった!!!やっぱり素晴らしい!!!・・・元気をいただきました。「Chuck Berry - Johnny B. Goode live」!因みにこの曲は、宇宙船ボイジャー1号・2号に搭載された「地球の音 (The Sounds of Earth)」という地球外知的生命体へ向けたメッセージレコードにロックの代表曲として録音されているそうです。Chuck Berry 1926,10,18生まれ今年89歳!Mr. Joni Helminen, Thank you for Up! いつも応援、有難うございます。今回も どうぞよろしくお願いします♪
2015.08.19
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※予想外に早く続きが書けました! ある夏の日に 戻れるか? 4風呂で汗を流した後、二人はビールを飲みながらテレビに見入っていた。少しずつ何が起きたのか、その状況が明らかにされてゆく。どうやら千葉の方は、震度4弱の地震だったが直ぐに揺れは収まり被害も揺れたわりに少ないようで、二日経過した時点では、負傷者約10名、県内の山中に入っていた男性が数名行方不明となっているのが被害の全容らしく、警察や消防などで行方不明者の探索救助を最優先に、事態の収拾に全力をあげている。問題は東京の方だ。突然襲った激しい揺れは、東京都23区西部地域と多摩川を挟んで東京と隣り合う神奈川県東部の比較的限定された地域で発生したものの人口密度の高い都市部であったため、被害は大きく、生じた亀裂や衝突した多くの車により道路は数十箇所に渡り寸断されている模様で、救助活動も困難を極め、被災者の数も正確には把握されていない。そして目撃者の話によれば、「彗星のような物体がいきなり現れたんだよね!ものすごい速さでさぁ!・・・多摩川丸子橋緑地の辺りに落ちたんだ・・いや落ちたというより・・激突だったよ、あれは!」また、下流にいて目撃した地域住民の話によると、「海を見てたら、突然後ろの方からものすごい音と振動がしたんで、振り返ったらね、川に水柱っていうの?めちゃでかくてね。それがすごい高さに、なんか噴き出したみたいになってて!で、その後すぐに激しく揺れてさぁ!だからね、地震じゃないよあれは!揺れ方が違うし・・・今まで見た事無いよ!あんなの」興奮した口調で、そう語る姿が繰り返し放送されている警察によると、多摩川に架かる丸子橋と東海道新幹線多摩川鉄橋の中間地点の多摩川両岸には三日月のような形状に削り取れた跡が発見されていて、周囲には飛び散ったとみられる土砂が川に面した建物や丸子橋、東海道新幹線とJR横須賀線が併走する多摩川橋梁にも降り注がれていて、2センチほど堆積していた土砂は除去したが、線路の状況を確認整備に取り掛かったばかりという状況。そしてJR東日本、JR東海、両社は「誠にご迷惑を御かけ致しますが、現在のところ復旧の目途は立っておりません」と発表している。そのなにかが激突したとみられる中心地点は、多摩川の中であり、事前より深くなっているようで、川の水面の色が上流より濃く、濁りもあることから、「何かが激突して陥没した可能性が高い」というのが大方の学者の見解である。「近い・・・」と洋子が呟いた。「え、?」と勇一が缶ビールを片手にしたまま、洋子へ顔を向けた。「父さんが、住んでいるの、あそこからそんなに離れてない・・・近いの・・・」テレビの画面に映る多摩川の現場の映像を指差して、洋子が言った。目には涙さえ浮かべて・・・「洋子・・・」そう言ったあと、勇一は洋子にかける言葉を失ってしまった。 フォローさせていただいているMoMo太郎009さんのブログにお邪魔して、久しぶりにチャック・ベリーを聴いたら、あの名曲が聴きたくなってYouTubeへ飛んでって、聴き入ってしまった!!!やっぱり素晴らしい!!!・・・元気をいただきました。「Chuck Berry - Johnny B. Goode live」!因みにこの曲は、宇宙船ボイジャー1号・2号に搭載された「地球の音 (The Sounds of Earth)」という地球外知的生命体へ向けたメッセージレコードにロックの代表曲として録音されているそうです。Chuck Berry 1926,10,18生まれ今年89歳!Mr. Joni Helminen, Thank you for Up! いつも応援、有難うございます! 今回もよろしくお願いします♪ (Thank you my cousin!)
2015.08.17
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ある夏の日に 戻れるか?3勇一は、ホテルの予約出来たようだ。やや明るい顔で軽く手を振りながら足早に洋子の元へ戻って来た。出てきたホテルを指差しておいて「あのホテル予約できたぜ」「そうなの!駅のすぐそばが空いてたなんてラッキーじゃない」「ああ、けどツィンは俺たちで満室らしいし・・・」「ん、ダブルじゃなくて良かったの?」「馬鹿やろう、大人をからかってんじゃねえよ」「なによ、たった一歳上ってだけじゃない。ぶっちゃって」勇一はそれには返事することなく、辺りを見渡す。「あった。ティーシャツとか下着とか買っとこうぜ」そう言って勇一は洋子が背にした街の一角を指差した。「そうだね」洋子の腕がごく自然に勇一に絡んだ。駅前のロータリーを半周して左に曲がると衣料品中心に品揃えした店舗がある。適当に2~3日分の着替えを見繕った勇一の耳にカーテンレールを滑る金具の音が聞こえた。洋子がバッシュを履こうとしている勇一は、カートを押して近づいてゆく。買い物カゴの中身は殆ど洋子の買ったもの(こんなカラフルな布キレ、俺が買ってるって、そんな風に見られてないだろうな・・・)洋子が歩み寄る「お待たせ♪」「いいから早く袋に詰めてもらおうぜ」洋子は、勇一の目線で彼の困惑の原因を理解した。「何?照れてんの?大人なんでしょ、君は」「うるせえよ、早くしないと先に行っちまうぞ」言葉使いはやや乱暴だが、抑揚はなく声にも勢いがない。「はいはい、すぐだからね」(子供扱いしてんじゃねえって・・・)支払いを済ませた洋子に言われるまでもなく店のロゴ入りの買い物を2つ下げて勇一は歩き始めるあとについて来た洋子が嬉しそうに言う「カード、使えた・・・」「使えたのが、そんなに嬉しいのか?」「だって、とうさんが無事でいてくれるって思えて」「ん、?」「このカード」洋子は財布に仕舞わずにいたカードを勇一に見せた「二十歳のお祝いにくれたんだこのカード」「お前の親父さんが、か?」「そう、だから、使えたって・・・それって父さんが元気でいるって、そんなふうに思えたの・・・」勇一は、胸の中に愛おしさがこみ上げてくるのを感じた。買い物袋、2つもなけりゃ・・・ 「明」月は寄り添う、陽は照らす寄り添い照らし、「明」となる陽は去り際まで影を残し月は満ちて陽影を繋ぎ恋人たちの仲を道に映す いつも応援、ありがとうございます♪ 今回もよろしくお願いします。
2015.08.07
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ある夏の日に 戻れるか? 2(暑い!)勇一と洋子は国道沿いのバス停で降りた。特急の停まる駅のそばにめざす銀行は在った。洋子のカードで現金を引き出し、駅に向う。午前10時を少し回っている。地方都市の駅なのだ。混雑する時間帯は過ぎているが、それにしてはこの人混み、なんだ?駅員に何事か問い続けている旅支度をした人、スーツを着ているが、タイをゆるめ、やや疲れぎみに見える出張帰りらしい人、(お土産持っている)みんなそれぞれの予定した時間に「間に合わない!」と、改札口の前に不満が溢れていた。「何なの、何かあったのかしら」真顔で勇一を見上げる洋子。勇一は洋子に首を傾げて見せてから、改札口上の電光掲示板を見上げた。「東海道新幹線不通 東京、千葉方面激震発生東京⇔新大阪間上下運行止め 点検作業実施中」電光文字が繰り返し流れている。「激震発生・・・」二人は、その場に立ち尽くした。思考さえ同様に、呆然と立ち尽くした。洋子は当然だが、東京に暮らすたった一人の家族である父親の安否が知りたい。勇一は洋子の背中を押し、抱えるようにして公衆電話の列に並んだ。しばらくして順番は回って来たが、電話は繋がらなかった。その間、待ち合いロビーのテレビを観ていると、ニュースの続報が入ってきた。この災害の原因は未だ不明であり、現在、警察が自衛隊の協力を得て、陥没した区域を捜索、人命救助を最優先に全力を上げている。と・・・「陥没?・・・」刹那か永遠か、洋子の目に例えようのない不安が宿った。「陥没ってどういうこと?」洋子は勇一の腕にすがり見上げた。「俺にもわからない・・・が、地震かな?」洋子の不安を煽らないようにと、努めて思いやる気持ちを込めた。「そうだよね、分からないよね。警察も人命救助を最優先するって言ってたし・・・」「大阪まで行っとくか?復旧すればすぐ飛んで帰れるし」しかし、洋子は首を横に振った。「ん、なんで?」「今日は土曜日、で明日は連休最後の日曜日だよ」「・・・・・」「鈍い!今日、明日中には帰っておきたいって人多いはずでしょ?移動できないなら、泊まる。大きな都市ほどそういう人たちでどこのホテルも満員が予想されるんじゃない?」「だったら、確実に泊まれそうな地方都市でってことか」「そういうこと、はい分かったら電話かけてみる」「はいはい、洋子さま仰せのとおりに致しましょ」無理して強気を装う洋子の、今は僕になってやることにした。 今日は、Steppenwolf - Born to be wild 1969 クラシック・ロック? って呼ばれてるみたいだけど、新しいとか古いとかどうだっていい。好きなものは好き、それでいい(^-^)よね。 fritz51139.Thank you! for Up! いつも応援ポチ、ありがとうございます。今回もどうぞ宜しくお願い致します♪
2015.07.31
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ある夏の日に 暑い!(戻れるか? 1) 混浴、それも好きな女と、イレクションはするさ、けどここじゃあ、と2階に上がった。風呂上りのビールが効いた~洋子は中瓶1本も空けないうちに、「それと さぁ・・・」なにが言いたかったのか分からないまま仰向けにのびてしまった。夏用のかけ布団をめくり、横たえてやる・・・兄貴の嫁さんの浴衣を借りていて・・・めくれた裾・・・男だもの、欲情はおきるさ、けどいくらなんでも、ね。感心したのは、下着。こっちへ理解不能に飛ばされたあと、俺の田舎だとは知らない(当たり前か)まま、うろうろしてたらとんでもなく遠い所、(電柱に記された住所を見て)九州であることに愕然とし、『カード使えるお店ないみたいだった』正解だけど《今はある》)で、今日帰れるかどうか不安になり、見つけたスーパーで買っておいたらしい。歩きまわって、汗かいただろうから、良かった・・・ 俺も中瓶1本と洋子の残した分飲み干すと、やばいぞ、このままだと気力ふり絞って、洋子にかけ布団かけてやって、俺も浴衣のまんまエアコン入れたまま、明かりもつけたまま、別の布団に、たぶん zzzzzzz翌朝、仕事中だったこと思い出した洋子と慌しく朝食をすませ、「今度はゆっくりお帰りね」とお袋に送り出されてバスターミナルへ向った。途中で勇の職場へ電話をかけてみたが、外出中とのことで、東京からかけ直すことにして伝言残した。「あそこ、勇一が通ったっていう、あの道からだったら東京まで一瞬だったりして・・・どう思う?」「却下」「なぜ、どうして?」「線路もない、空港もない、どこへ飛ばされるかわかんねえのに、試せっての?」「そっか、やっぱそうだよね」 「早く仕事場にもどりたいのはわかるが、新幹線で地道に帰ろうぜ」「うん、わかった・・・」「・・・俺、小銭しか無い」「あたし、カード持ってる・・・都市銀、有る?」「駅前に、三井と住友があるけど」「良かった、あたしの三井のカードだから」「東京戻ったら、返すから・・・」洋子の返事が聞こえなかったのは、嫌な予感を振り払おうと頭を振ったからだ。 暑中お見舞いです♪Creedence Clearwater Revival: Hey, TonightmasterofacdcsuckaS. Thank you! for Up いつも応援有難うございます。 今回もよろしくお願い致します♪
2015.07.23
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「ある夏の日に」 反復記号 10結局、あのあと。「今日は刺身食べたい」という親父のオーダーが通った。「お刺身は何がいいの、お父さん」「う~ん、イカの刺身にしようか、昨日鶏のから揚げだったからな」「残念!今日は買ってこんかった」親父が笑ってる・・・兄貴によると、最近お袋に優しいんだと。(親父も歳相応な優しさを身につけたか・・・)ヨシ!と威勢よく立ち上がった勇一。隣で洋子が少しだけ口を開きぎみに見上げている。「英次んとこならあるだろ。イカ」「『出曲がり』の英次か?」 親父が訊く「知り合いかね?」母も訊いた。「同級生やけど、何、どうかしたんね英次の奴」「なんとのう口の利き方が・・・気にくわん」そう言った親父の歯切れが悪かった。(あいつ、俺等のいない間に調子こくようになったか)「いいよ、おれ行ってくる」「大丈夫ね」「お袋、心配要らん。次ぎからイカは英次から買って、 おれが良く言っとくから」親父もお袋も心配そうに俺を見る。「心配いらん。それよりお代」 勇一の差し出す手の平に 母親は5千円札をのせた。「え!何杯買うんね」(イカの数え方は通常「杯」生きて泳いでいるうちは「匹」)「大きめのを二杯」「たった二杯でそんなする?」「漁協の決まりやから」「英次から直で買えば安くするさ」「そんな、お前・・・」「心配ないって。自転車かりるよ親父さん」「おう、鍵はいつものところや」あいよっと洋子に「すぐ帰るから」勇一が声をかけて自転車にまたがると笑顔で頷き、「うん、待ってる」と洋子が言った。普段5分のところ20分以上経って帰ってきた勇一を案じたのか母が玄関まで飛ぶように迎えにでた。「ただいま~」「遅かったねェ、どうかしたかね?」洋子は軽く手を振ってすぐ台所に引っ込み支度を始めたようだ。「いやね、英次の奴、俺の顔見たら大きく目開いて」「帰ってたんか、勇一・・・」って、 勇一の話が始まる「久しぶりだな、イカの活きのいい奴二杯、分けてくれ」そしたら、あいつ慌てて大きめなのを二杯ナイロン袋に入れて「やるよ、早く持って帰って刺身に・・・」「やるってなんだ。なめてんのか」「そ、そうやないって 同級生やから」勇一の顔が曇って英次に落ち着きがなくなった丁度そのとき車のライトが2つ、まぶしく照らして漁協に入ってきた。この時間、漁協に人はほとんどいない。クラウンが二人の前で停まり、ドアが開いて大男が降りてきた。まぶしいなあ!勇一が迷惑そうに言うと、大男は怪訝そうに車のライトに浮かび上がった二人を見渡して言った。「今、まぶしいって言ったのはどっちや」 抑揚を抑えた低い声で大男が聞いた。「俺だ、早くライト消せよ、勇(いさむ)」大男が嬉そうに笑いながら、「勇一か?」「ああ、・・・ライト」「おっと、そうだな」勇の手が運転席に入ると、すぐにライトは消えた。「久しぶりじゃねえか!勇一!お前も東京から帰ってきたんか?」勇一をハグしそうなくらい嬉しそうに近づいて大男は破顔している。大男は、勇一から2~3歩離れたところでナイロン袋を抱えて所在なさそうに立っている同級生を見つけた。「なんだ、英次じゃねえか。なにしてる、今時分にこんなところで」「ああ、今日は大漁だったから、水揚げに時間かかってな、そしたら」「そこに俺が来て、活きの良いイカを二杯くれって言ったんや」「おう、それで」 勇は勇一の話を聴きながら、英次へ顔を寄せた。思わず一歩下がる英次。「二杯でいいのか?」まるで自分が管理しているように言う。「ああ、刺身で4人前だからな」「けちくさい、もう一杯持ってけ」英次の顔を覗き込むように言った。「3杯、要るか・・・」「おうよ、なあ英次」「う、うん・・・」「じゃあ、もう一杯もらおうか」「ああ、いいよ」あと、勇といろいろ話してたら、この時間・・・「そうかい、あんたら昔から仲良かったもんねぇ」「勇は、元気もんじゃが目上を立てる事を知っとる。感心な奴じゃ」親父と俺とは、お互いに勇と相性が良い。というわけで勇と勇一のガキの頃からの昔話と烏賊で盛り上がった。「今度、会ってみたいわ勇一くんのおともだちに・・・」(おともだち? 普段、「ダチ」なのにやっぱこいつでも、こういう場合、正しい日本語使うんだな・・・)みょうに感心していると、お袋が「あんたら食べ終わったら、風呂入りなさいや」え!と洋子と同時に素っ頓狂な声を立てる勇一「あんたらが風呂に入っとるうちに2階にフトン敷いとく。お父さんらは先に寝るから、そうそう、上の冷蔵庫にビール入れておくから」「父さんらは?風呂・・・」「さっきあんたが勇くんらと長話ししとった間に済ませたがね」「え、そうなん?」洋子を見ると、さすがに顔を赤らめて頷いた。それを見た勇一も、さすがにうろたえる・・・「はよう入らんか、湯が冷めるぞ」言って親父は立ち上がり、寝床へ向う。お袋は一度立ち止まって「勇一、下の電気消し忘れんように。洋子さん、疲れたやろう、ゆっくり休みなさいね」言い残し、隣部屋の襖を閉めた。「はい、すいません。おやすみなさい・・・」二人で初めての実家で一緒に風呂に入れってお袋、強烈・・・「あたしは、後でいいから・・・」 と洋子「いや、それじゃ時間かかる。風呂の音ってけっこう睡眠妨害だからな、さっさと、な・・・」洋子が上目遣いで睨む「なんだかんだ言って、ほんとは・・・」勇一は、ニヤっと笑って応えた。お袋の爆弾発言に感謝? 暑い日に、聴きたくなるこの曲・・・The Guess WhoでAmerican Woman です♪ Upしてくださったtellez66さまありがとう! いつも応援有難うございます。 暑いのに、どうも^^よろしくお願いします♪
2015.07.20
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反復記号 9「ただいま~」帰ってきた。お袋だ!いよいよ、洋子とお袋が対面を済ませたあと、あの話を切り出すのだ・・・「あら、勇一かい、小さい方の履物は、そちらのお嬢さんのだったんやね」洋子は立ち上がり、お袋に頭を下げてから挨拶をした。「こんにちは、初めまして。中井洋子と申します。突然お邪魔していて申し訳ありません」こういう時、誰でも、ちゃんと丁寧な挨拶を交わす。初対面の相手には、それが常識というもの。なのに洋子の服装が気にいらないのか?「はい、こんにちは」の後、しばらく・・・2~3秒だっただろうか、洋子を凝視した。「ちょっと・・・」失礼だろう、と言いかけた俺の言葉を遮り、お袋が言った。「あんたに、ようこんな彼女ができたもんやねェ、まあ、まぐれやろうが」と言った。洋子は肩をすくめ、口に手を当てて俺とお袋を交互に見ている「まぐれって、ひでえな。それと、彼女だなんて言ってねえし!」後半、あせって抗議すると「東京からいっしょに来てもらったんやろうもん」「そ、そうやけど」「なら、ただのお友達ゆうのは不自然やろうもん」ちょっとだけ口を尖らせた俺の前を、横目でちらっと見上げて通り過ぎる洋子は、 笑みを浮かべていて、小声で「不自然だよ~」と言い、お袋が持っている買い物袋に手を伸ばす。「お持ちします」「あら、悪いねえ有難う。じゃあお茶にしようかね」「はい、お手伝いします」と二人してスリッパを履いた。お茶を飲み、茶菓子を食べながら、例の話を切り出してみた。「ところで、季節的に言って、今」辺りを見回しながら、続ける「ストーブなんて、出してないよね?」「・・・・・・・・・・・」×両親。お袋は湯呑をテーブルに置いて、親父はテレビ画面から俺に目を移して (?)って顔してる。 「あれだよ、ほら憶えてないかなぁ。昔、丁度今頃の時季にストーブに火を点けるって ライター持って、2階に上がろうとして煙草吸ってるのばれたことあったから、それ思い出して」「・・・お父さん、憶えてる?」と、お袋が親父の記憶を頼った。親父は、それには答えず首をひねると「憶えておらんが、いつの事なんや?勇一」「高校2年の頃だったと思う・・・」「なに!お前、高校生の分際で煙草なんか吸っておったのか!」勇一が顔色を変えて首をすくめた。洋子は、ここに来る前の勇一の言葉を思い出した。(たしかに、短気そうなお父さんだわ・・・)隣でお茶を飲んでた洋子が勇一の方を向いた。勇一も洋子の目を見つめて「な、言ったとおりだろ」いつも応援有難うございます。今週もよろしくお願いします♪
2015.07.12
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Boston-More Than a Feeling ぼくの好きな曲ベスト10の1つ! ベスト10と言ってもジャンル毎にベスト10有る^^; BostonVEVO. Thank you for Up! 反復記号 8「母さんは買い物に出とる」親父は廊下を歩きながらそう言うと居間に続く引き戸を開けた。俺は親父に続いて居間に入ると、洋子を振り返って言った。「遠慮するな、入れよ」「それは、わしの台詞だったな・・・」親父も洋子を振り返り「勇一の言うとおり、遠慮はいらんから、お入りなさい」そう言ってから親父はテレビを正面にした定位置に腰を下ろした。「失礼します」洋子は、親父に軽く頭を下げ、俺の後からついて来る。久しぶりの帰省だ、祖父母に挨拶をと仏壇の前に座る俺の隣に洋子が正座した。「へえ、正座できるんだ」とたんに太ももをつねられた。できるだけ小声で言ったのにな・・・居間に戻り、洋子を目顔で促し二人でソファに腰を下ろす親父は高めの座椅子に座ってテレビを観ていたが、急に思い出したように二人の方へ首を曲げた。「二人とも、昼飯は食べたのか?」そう言えば・・・洋子を見ると、珍しく少しだけ赤らめた顔を横に振った。「まだ、食べてなかったよ」「そうか、母さんは大村の奥さんと一緒だから遅くなるだろう、何か出前を頼むか?」せっかくだけど思い出したとたん、腹の虫が鳴いた。洋子は朝抜いたから尚更だろう。「いや、お袋が帰るまで待てそうにないから、ラーメンでも作るよ」「そうか、自分でできるな」「ああ、大丈夫。作れるよインスタントだから」インスタントラーメンは、昔から変わらない所にあり、手際良く作り、冷蔵庫にあったハムをのせて超シンプル味噌ラーメン3人前を二人で平らげた。Burp!さて、どういうふうに切り出すか、あの話・・・このあと、帰ってきた母親によって衝撃の展開が!いつも応援ポチ、頂いてます。有難うございます♪今週も何とか週刊に間に合わせました。応援ポチをよろしくお願いします。
2015.07.03
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反復記号 7 勇一は腕時計を見た。 12時20分 昼飯時だ・・・(みんな、家ん中でおとなしく昼飯食っててくれよ。特に同級生!頼むから出てくんなよ~)何しろ、普通の帰省ではない。勇一は見慣れた顔で目立つのだが、連れている洋子は田舎では、刺激的な格好であり垢抜けている。おまけに、関東エリアでは少しは売れた顔・・・!「まずい、急ぐぞ!」勇一に手首を掴まれ、引き立てられて前のめりになりながら慌てて何とか歩調を合わせた洋子が口を尖らせる「痛い!・・・痛いって言ってるだろ!」洋子は持ち前の運動神経を発揮、勇一に腕を取られ乱れた足並みを何とか整えて体勢を立て直すと勇一の手を振り解いた。振り返りながら勇一は、洋子が抗議の声を立て始めるのに気付き、人差し指を口の前に立てて「いいか、洋子。ここはおれの田舎だ。この顔を知ってる人はいっぱい居る・・・」「・・・そっか、目立つと『まずい』・・・な」勇一は、無言で頷いた。「そのベスト、せめて前をとめられないか?」洋子は勇一の指差す先が自分の胸元だと気付いた。目に不満の色を浮かべてはいるが、ボタンを留めていく勇一は大きく息を吐いて、もういちど振り返り進むすぐに三叉路に差し掛かった。左手角から3軒目に懐かしい我が家が見えている高さ1メートルほどの鉄柵の門扉を開く。玄関のドアを開けて三和土に入り、声をかける「ただいま!・・・誰かおるね?」思わず方言が出た勇一斜め後ろで洋子が手を口に当てて笑い声を抑えた。(真横じゃなくて、斜め後ろ・・・そういう躾けはうけてるわけだ。ちょっと感心・・・)「ん!?」奥から声が聞こえた!あれは・・・やっぱり、顔を出したのはおやじ殿!・・・「帰ってきたのか?知らせも無しに・・・」親父の目が洋子を見た。慌てて紹介する勇一「こっちは、中井洋子、さん。」一歩前に出た洋子は、勇一が今まで見たことのない笑みを浮かべて言った。「初めまして。中井洋子と申します。突然お訪ねして申し訳ありません」親父が目を細めて言った!「東京から?」「はい、勇一さんのアパートの近くに住んでいます」「ほう、そうかね・ま、上がりなさい」予想外に好ましい展開だ・・・今のところは・・・ ※今日はロックなら、ジェフ・バクスター。ブルースならこの人!というほど大好きなロイ・ブキャナンさまのLive映像です。 12,6,1977 後楽園ホールで衝撃の遭遇に身体の芯まで震えた、あの日を思い出してます「 Further On Up The Road 」 のあのあまりに刺激的なフレーズをブキャナンさまが 弾かれたあとを キーボードが追っかけてる時、あまりに良くて、つい、イエイ!」と声を張り上げてしまった時、ブキャナンさまが、気のせいではなく確かに(ビール?を片手にしたまま)僕と友人の方を向いて 「Yeah,Nice phrase」って頷いてくれた!!!!! 舞い上がったねぇ・・・ あれ以来、今は亡きブキャナンさまの「LIVE STOCK」をほぼ毎日聴いている。それも当然、「あのジェフ・ベック、クラプトン、 チェット・アトキンス、アル・クーパー、ミック・ジャガー、といった超大物ミュージシャンたちが惚れこんだ、と言っても過言ではない」と言われてる人。今日は僕が後楽園ホール(当時の)で聴いた曲の中から「ROY'S BLUZ」を聴いてください。 ☆zztops003 Thank you very much to Up! This number. 申し訳ありませんが、この映像はフレームの一番下右手にある You Tube をクリックして視聴してください。 よろしかったら応援ポチをお願い致します♪
2015.06.25
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反復記号 6 「あれは、高二の・・・梅雨が明けた頃だったかな?その頃だったと思う・・・」「家族全員揃って夕飯のあと、お袋は自分のと親父の食器を、居間と台所の境にある、作りつけの間仕切りカウンターの上に、俺たち兄弟は自分の食器をそこに置く」へえ、と関心したように洋子が言った。 洋子も俺も歩きはじめていたから、もう石壁はなく、で、彼女は、たまたま積み上げてあったブロックの上に腰を下ろし、膝に肘をついて勇一の話しを聞いている。はい、続きつづき!と洋子が先を促す。思い出せなかったわけじゃなかった。勇一は笑える話を思い出すと、話す端から自分で笑ってしまい、途中で話が中断することも珍しくない。昔から友人に催促されたものだった。「早く!自分で受けてんじゃないよ、続けてよ先を」今も言われてるな・・・う、なんだよ。思い出した者の特権じゃないのか!先に笑えるってさぁ・・・えーっと・・・そう、そう、「居間に戻ったら親父は新聞読んでるし、兄貴はテレビ観てる。で、俺は一服したくなって二階の自分の部屋へ行こうと、その時、上に今無いものを思い出したんだ。何だと思う?」「分かるわけないって・・・」洋子は肩をすくめ、兄妹でも同級生でもないんだからそう言った。たしかに、それはそうだ・・・「ライターだよ、ライター!」洋子はため息をついた「で、見渡したら、兄貴の胸ポケットに見つけたんだよ!だから『兄貴、ちょっと貸して』そう言ってライターを手に二階へ上がろうとした」そしたら、ばかやろう って、兄貴が小さな声で言ったんだ・・・「あの時、もっとはっきり兄貴が言ってくれてたらな、とぼけて返してお終いだったんだけどな・・・」「人のせいにしてんじゃないよ」洋子が言ったけど無視して続ける「そしたら、新聞読んでた親父が急に顔を上げて言ったんだ『ライター、何に使うんだ』って・・・俺、なんであの時、あんな事言ってしまったのかな・・・」なんて言ったの? 気のせいか、笑みを浮かべてるような洋子が言った。「それが・・・『ストーブに火、点ける・・・』さすがに俺、やばいって思ったんだけど、言っちまった・・・」「やばいに決まってるだろー!」 洋子はすでに先を読んで笑みを浮かべて言った。憎らしいよ、ったく・・・仕方ないか・・・だいたい、電池で着火ってのあったろうに、あの頃だって・・・ 「ストーブなんか、この時季、何に使う!?・・・」(俺は固まった・・・誰でもおかしいって思うよな、6月下旬にストーブ点けるって・・・そして親父の感はごく自然にはたらいて)「煙草だな!」(はい、そのとおりです・・・)「10年早いだろうが!!」(もはや、これまで。うな垂れて兄貴にライターを返した)お言葉ですが、あと3年で吸えるように・・・とは言えず・・・無残!おまけに兄貴が、人のこと睨みつけといて「兄弟の中で、煙草吸ってんのバレたのお前だけだ、この馬鹿!」追い討ちかけんなよ、兄貴。・・・言えなかったけど「寅年生まれなんだよ、うちの親父、おっかねえったらないんだよなー・・・」こらえきれずに洋子が吹き出した。「笑ったの、許してやるから憶えといてくれよ、今の話」苦しい、苦しいって、両手で腹を押さえた洋子が言った。「憶えるもなにも、くー!忘れられな・・・ひー!」 くそー!やっぱこの話、止めとくんだったなぁ・・・ 今日、この曲聴きたくなって! Jeff Beck-Scatterbrain! いいですねえ!ちなみにScatterbrainの意味は「粗忽者」(勇一=matrixAのことでもあります^^; でも、やはりJeff Beckはすごいですね! Up主のmarks6338さま、有難うございます。 いつも応援有難うございます。今回の更新にも ポチをいただけると嬉しいです。どうぞ宜しく お願い致します♪
2015.06.18
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反復記号 5 大きく見開いた目で勇一の目を覗きこんでいた洋子は息を吐き、勇一の足元に目をやるとつぶやいた。「面白くない」顔を上げた。「そんな冗談、面白くも何ともない!」「信じられない・よな」「当たり前だろ!『異次元の俺の町』だなんて、ふざけないでよ!」洋子は振り返って後ろに石壁があるのを確かめた。右ひざを曲げ、真新しいバッシュのアウトソールを壁面に押し当て、支えとして背中を預けた。腕を組んでいるのは、ご機嫌斜めということ。「じゃあさ、こうしよう!」何か閃いたわけだ。「どんな作戦が閃いたのさ・・・」勇一の目が大きく見開いた。(テレパスか?) それは置いといて「俺んち、行こう」「え!いいのかよ・・・」洋子の背中は石壁から離れ、組んでた腕も解かれた。「俺の感が当たってりゃ、不自然な事に出くわす」「不自然な事?」「そうだ、今から俺が高二の時にどじった事を教えるから、それを憶えてくれ」「・・・・・・・・?」洋子の首を傾げる仕草、勇一のフェチだが、今は忘れる。「家族なら誰でも憶えてる事だ、その話をして誰も憶えて無かったら・・・変だろ?」「笑える話なの?」「まあな・・・けど笑ったら後悔させてやる」ふん!洋子は鼻を鳴らした。「上等だね、やれるもんならだけど・・・さあ、聞こうか、あんたのドジ話」勇一は顎をなでながら、空を見た。記憶が鮮明に蘇ってくる・・・ いつも応援ポチ、有難うございます。 今回もよろしくお願いします♪
2015.06.11
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反復記号 4「なに・・・?」振り返った洋子の眉間にはシワがよっていた。勇一が大きく踏み出した2歩は、洋子との距離を埋めるには充分過ぎたようで、洋子は大きく顎を上げて勇一を見上げ、勇一は彼女の顔をほぼ真上から覗くように見下ろしている。数こそ少ないが、二人の横を行き交う人や時折笑い声を交えて、八百屋の店先から聞くとも無しに聞こえていた話し声が止み、客と店の者らしき人物が、互いに身体は向き合ったまま、首を左右に振り、怪訝そうにこちらを見ている。「やっぱまずい。あのおばちゃん、俺のこと知ってるはずだ。このままじゃ何人知ってる顔に出くわすことになるか・・・まずいよ」「何?ビビッてんの? ひょっとして、勇はこの町でなんか悪さでもやらかして、東京に逃げたってことじゃないんだろうな・・・」「馬鹿言ってんなよ、そんなんじゃないって!」「絶対おかしいよ、今のあんた。なにか隠し事してる!正直に言いなさいよ!」洋子の混乱をこれ以上強くしちゃいけない!勇一は洋子の手を取り、有無を言わさず来た道を引きかえし商店街を抜けて一つ目の角を曲がった。突き当たりに小さな神社が在る。洋子の手を離し、振り返る。掴まれていた手首をさすって洋子は「痛いなあ、こんな所でなにしようってのさ!」「携帯で東京の誰かを呼び出せ、早く!」「ったく、意味わかんないよ!」言いながら、洋子も勇一の只ならない様子に気付いていた。一番新しい着信履歴を選び、発信した。「・・・!『この電話番号は現在使われていません』だとさ」「やっぱりな!」勇一はジーンズの前ポケットに両手をつっこみ、洋子の目を覗くようにして言った。 「俺たちは今、異次元の俺の町にいるんだ・・・」 洋子は、言葉を失ったまま勇一の目を覗きこんだ。 いつも応援ポチを有難うございます。 今回も宜しくお願いします♪
2015.06.04
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反復記号 3勇一の目が釣り上がった!(おっと、勇ちゃんマジモード突入手前じゃない!)洋子は知っている。それほど長いつきあいではないが、普段どちらかといえば、大人しげに見える勇一だが、意味不明に絡まれたりすると今のように一度目尻が上がる。そのあと、相手の粋がりが続くと上げていた目尻が下がり、気味の悪い笑みを浮かべる。これで勇一はマジモードに突入したことになる。「今すぐ、ガン飛ばすのをやめて消えてくれれば、後を追っかけたりしないでおいてやるけど」落ち着いた声で、しかも笑みさえ浮かべてそう言うそれは、強がって怒声を上げるより、効果的だった。この手を勇一は高2で覚えたという。「勝っても、負けても、殴り合いは痛い。もう飽きた」それが理由だと言った。それを洋子が知ったのは、今から半年ほど前のこと。勇一の友人、彰人の彼女、香美(かみ)とその女友達だった洋子を、たまたまアパートが近いってことで、勇一が送って行った半年前の夜京王線笹塚駅で降り、甲州街道を渡り商店街を抜けた角にあるスナックから出てきたチンピラに絡まれ、勇一のマジモードを目の当たりにした洋子は、そこそこタイプだった彼の印象が+αとなり若い二人は急速に接近し素敵な夜を過ごす仲となったのだ。「ごめん、ごめん。アタシが悪かったよ・・・あ、そうだ!勇一の実家、こっから遠いの?」勇一は洋子に言われて、思い出したように辺りを見回す。「あっちだな・・・」勇一の左手の人差し指が指す方を見た洋子は「ん、じゃあ行こうか・・・」「え!けどよ・・・急に帰って来て女連れってのは」顎の先を指で撫でながら勇一は言った。それに構わず、勇一の前を通りすぎ、歩き始める洋子「おい・・・ちょっと待てって」 いつも応援のポチ、ありがとうございます。 まだまだ、意外な展開が待ち受けていますが 皆さんのポチ、あれば 書き手は自信を持つて書ける。 どうぞ、よろしくお願いします♪
2015.05.28
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反復記号2「洋子・・・洋子なのか!」「そうだよ、一目でわかんだろ!」「俺の田舎に突然、だろ・・・こんなによく似た女がいたかなって・・・」洋子の目が大きく見開かれた!「勇一の田舎?・・・なに寝ぼけたこと言ってんの!あたしはついさっきまで、表参道でポスター撮りやってたんだよ・・・それがなんでこんな田舎に・・」本当にパニクッてるみたいだ。おれの故郷を『こんな田舎』って言ったことは今回だけは大目に見てやろう。なにしろパニックってるのは俺も同じことなんだから・・・けど、俺、パニクッてるけれど、洋子にクギ付けになってる!ジーンズの袖なしベストにヘソ出しジーンズ!ベストの前が全開なのでチューブ・トップも丸見えこんな時なのに、視点を外せない・・・彼女の従兄がそこそこ名の売れたカメラマンなので関東エリアの大手百貨店の季節限定ではあるけど、年に4回、店舗ウインドウや私鉄駅構内のポスターにモデルとしてポーズを決めている・・・と!気付いたら、いつの間にか俺の目の前、それこそスニーカーのトゥの先端がくっ付きそうなほど間近に洋子がいて、その大きな目が俺を見上げ、不快と怒り光線を放っていた!「何、ニヤついてるわけ?こんな時に!」たしかに、この状況は非常事態だった。「いや、その、お前のそのはみ出しそうなおっぱいとヘソ出しジーンズって初めて見る・・あれだ、珍しいしつい・・・」視線を外すことも忘れ、照れかくしのつもりだったのか頭をかいていた勇一はついにスニーカーのトゥを踏まれた!「あ、痛!」顔を歪める勇一を、片方の眉を吊り上げて睨みつけ、洋子は言った。「まったく、男ってやつは!・・・このスケベッ!」・・・・・・・「まあ、いいよ。それよかアタシ朝、ギリで撮影に入ったから腹減ってんだ。ファストフードかファミレスくらい有るんだろこんな田舎町だってさぁ・・・」「田舎、田舎って、さっきから何度も言ってんじゃねえよ!」「・・・あ、傷ついてんだ。悪い、謝るよ。でもじゃあ、ここってほんとにあんたの田舎なんだ・・・悪かったよ、けどあたし、おなか空いちゃってるからさあ、どっか連れっててよ勇ちゃん・・・」こんな時だけ・・・「わかったよ、けど・・・」「なんなの?」「うん・・ここからだと20分は歩くことになる」「エーッ!・・・やっぱ田舎だ・・・」こいつ、本気でおきざりにしてやろうか・・・ 母、おかげで再度復活です! こちらの応援もどうか宜しく お願いします。
2015.05.20
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反復記号関東一ラーメンの暖簾を手の甲でかきわけて頭部、身体上部、脚、の順に表へ出る。と同時に、いつもなら(左右の視野確認範囲を補うためと思われるが)わずかに首を左右に振る。それは、誰もが日常、ごく自然に行っている行為だろう。だが、勇一のその動作は、突然の目まいによって急停止した!今日は、なんでこんなふうに反日常的なんだ!そう思うのも無理はない。幸い、目まいはすぐに収まり、商店街の通りが再び彼の目前に広がった・・・だが、しかし「!!!」今、勇一の「大脳左半球」は混乱の真っ只中にあり、論理的思考の結論を見出せず、同じく左半球に有る「言語野」も思考の結論が出るまでは、うかつにコメントを出来ずにいる・・・(何なんだこれ!・・・知ってるよこの商店街、だけど!)そう、だけど・だ・・・今、勇一が見ているのは、もの心ついた時から知っている「本町商店街!!」知っていても我が目を疑うしかない。「カララララッ」という音を、渋谷区笹塚で聴いた。ほんの数秒前のことだ、たしかそのはず・・・なのに、なぜここが・・・「十号通り商店街」じゃないんだ?自分の目さえ信じきれず、一歩足を進めて辺りを見る左手に同級生の父親が経営する内科医院が有り、その向かいには弁当屋、右斜め前方に精肉店、さらにそのはす向かいには書店が・・・昔のままだ・・・さらに交差点の右を向くと「!」高二の、あの遭遇・・・奴とすれ違ったポイントやっぱりあれは気のせいなんかじゃなくて・・・同一時間帯で並列する異なる世界と交差したんだ!もしかしたらと思いながら、流れる年月とともに自分の中で折り合いをつけていた・・・単なる勘違い・・・白昼夢っだったとだけど違ったんだ、あれは現実だった。そしてあの場所は俺にとって、行ったり来たりの 「反復記号・・・」勇一はその場に立ち尽くし、頭を両手で抱え信号柱に背中を預けた・その時 「勇一? あんたなの?」(その声って!?)声のした方へ目をやると、そこに洋子がいた! いつも応援有り難うございます! 今日もポチっとお願いしますね♪
2015.05.10
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違和感・D 「カララララッ」 手入れの行き届いたアルミの引き戸は、こんな音がしたと思う・・・ 「また来るよ・・・」 あんなやっかいそうな人間と関係のある客は歓迎されなくても不思議はないが、それは、俺にとって歓迎できない事態・だ・・・ 「いいだろ、おやっさん・・・」 言ってから、おやじの目をじっと見た。 『これほど俺好みの麺とスープは滅多にありゃしない。今後は二度と、麺が伸びてしまうような長話しはしないから、誓ってもいいよおやじさん・・・』 その想いは、俺の目からおやじの目に伝えきれたと感じた。 「ああ、この次あの手の客が来て、また麺が伸びるような長話ししたら、『出禁』にする。だから安心して来てくれ」 俺は心底安心!のため息を吐きながら、財布を開いた。 「要らないよ!」 おやじの熱い台詞が走った!俺はおやじを見上げ、首をひねってみたがわからず、訊いてみた。 「なんで?スープも残してないぜ」 麺、伸びてたのによ~ あとの台詞は口にしなかったが・・・すると急におやじの目が鋭くなった! 「よしてくれ!あんな伸びきった麺、返してくれていいから。あれを食っちまった客から御代をもらえるわけがない・・・んなことより、そこ開けたままだと冷房効かないから、早く閉めてくれるかい・・・」 いいねェ、おやじさん。辛口だけど・・・なんか心が温まるな・・・けど、わけを知らない客は、目で俺のこと非難してる 「悪い!じゃあまた来るよ」 おやじは、返事のかわりに軽く手をあげて見せ、さっき入った客の注文を受け始めた。 「カララララッ」 いつも応援、有り難うございます。 今日もP!と応援、宜しくお願いします♪ ※お気づきの方もおいででしょうね。 小説の内容とカテゴリーが?です。 「SF小説」(時空系)に訂正します。 これからも宜しくお願い致します。 マトリックスA
2015.05.06
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違和感・C目の前で、男が頭を下げている。つい、この間まで違和感と不快感しか抱けなかった野郎が・・・食欲なくすなぁ・・・おっと!男が顔を上げた。ちょっと目つき鋭くなってるよ~なんだよ!と台詞はく前に男の目と口が笑った・・・声に出して笑ってたら、立ち上がるとこだった。威嚇をこめてね「なんのことだよ、訳わかんねえし・・・」「そ、そうですよね、すいません!・・あの・・」腹へってたし、相手は低姿勢だし・・・「用があんなら、早くしてくれ!麺が伸びちまうだろ」「はい、すいません!あなたさまは、洋子さまの、その・・恋人でいらっしゃると伺いまして、はい・・・」なんだこいつ、洋子って・・・知ってるのかあいつのこと勇一は持っていた割り箸を丼の端にかけて置いた。俺自身、洋子のこと誰かに「恋人」だなんて言ってないし洋子から「好き」だとか、「付き合って」とかも言われたことないぜ・・・「誰から聞いたの?それ」「洋子さま御本人からそのようにお聞きしましたので・・・」そう、なんだ・・・「あ、そう・・・まあ、そういうことかな・・・」頭の中の整理ができないまま、男に向けていた目線を下げる麺、すっかり伸びてるみたいだよ~「もう、いいだろ、早く食っちゃいたいんだけど・・・」「あ、すいません!お食事の邪魔をしてしまいまして!」男は、そう言うと同時に頭を下げ足早にカウンターへ向かいながらサマースーツの上着から財布を取り出した。 「700円」ラーメン屋の主人の方から先に代金を言い渡された。顔を見なくても男の肩から不満を感じ取れるようだった。(おやじ、けっこう腹据わってる・・・)感心半分、可笑しさ半分ってところだ代金を支払って店を出る前に、男が俺に向き直る気配がしたが、無視する。「失礼しました!」返事なんかしてやらないって!男と入れ替わりに入って来る客の話声が聞こえた。それにしても、『洋子さま』って、あんなガラの悪い、おまけに、結構歳上だろう?そんな男に「様」付けで呼ばれる・・・? 洋子の奴、いったい何者なんだ・・・(今日、あとで訊いてみるか・・・)ここでの疑問は一先ず解消。 ふん!と一息吐いた勇一はすっかり伸びてしまった麺をすすった。 お陰様で上位につけています。 今日もポチっと宜しくお願い致します。
2015.04.30
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違和感「関東一ラーメン」まであと数歩のところで立ち止まる。通いなれた銭湯が商店街の切れ目の向こうに見える。冷やしチャーシュー麺を食べたあとで、今日は早めに行こうかと考える・・・そのあと、もし居たら奈美を誘って生ビールでも!知り合って1年になる奈美とは、ひと月前から「いい仲」となりなんとなく長い付き合いになりそうな気がしている。つい、先週の夜のことを思い出し、ニヤついた顔を戻せないままのれんをくぐり、入り口の扉を右横に滑らせた。いた!・・・最近銭湯で良く見かける、背中に我慢を背負ったやつだ。いつも目が合う度に「俺の目を見返せるなら、やってみな」とばかり眉間にシワを寄せて俺から視線を外そうとしない・・・勇一は寸止めなしの実戦空手の黒帯である。中学時代イジメ受けて嫌でたまらず暴力に屈したくないとの想いから始めた。ただ暴力に屈して鬱になったままが嫌だった。(有段者になってから弱いものいじめなど当然一度もしたことがない)勇一は、全日本大会で4位まで勝ち上がった師範代の教えを忘れていない。「空手に先手なし、先制は相手がボクシング経験者や喧嘩慣れした奴の場合、かわされる。悪くすればカウンターを食らうはめになる」と教わった。勇一は尊敬する師範代の言葉を信じた。なぜなら、一度4回戦ボーイを相手に試してみたのだ。あっけなくKO負けしたから以来、キレても相手の攻撃をかわす。自然に相手に肉迫できるから!顔面に近づければ「裏拳」を相手の鼻っ柱に、それが無理な姿勢だと足の甲を踵で潰す、で、怯んだところ(殆ど攻撃が止まる)で一歩下がり、蹴りを入れる。ほぼ、それでKO!ただし、絶対に敵わない相手だと感じ取れたときには、ダッシュで逃げることにしている。だから今も生きていられるのだ。これは、生来の感だろうと思う。勇一が生まれ育ったのは漁師町だったが、「町史」によると江戸の頃、瀬戸内海を荒らしまわっていた海賊たちがいたが、幕府の命令を受けた謀藩の水軍に惨敗したあと徳川幕府の解散命令を受け、漁師を生業として定住するようになったらしい実際、あの街は荒っぽかった。まつりで酒がまわると喧嘩。煙草の火を貸せ、貸さないでまた喧嘩。日常茶飯事でも、会話がこじれて喧嘩。そんな環境で育てば、嫌でも危機感が身につくというものだ。そんな勇一の身の上に、不思議なことが起きようとしている(嫌な野郎に出会った・・・とはいえ俺はこの店の客だいくらあいつが裏社会の関係者であろうと商店街の商売の邪魔をする筈もない)俺は奴に気づかないふりをしてカウンターにすわり、注文をした。「冷やしチャーシュー麺、ください」奴が立ち上がるのを勇一は横目で確認した。奴がこっちに来る!俺はとっさに身構えた!だが、驚いたことに奴は立ち止まると、直立不動の姿勢をとり、もっと驚いたことに深ぶかと頭を下げたのだ。え!勇一の目は大きく開かれていたことだろう。奴の顔ときたら、普段のあのふてぶてしさは微塵もなく意を決した目になり、こう言ったのだ。「今まで、存知あげなかったとはいえ、あのような態度をとり、申し訳ありませんでした!)ええー!なにがどうしたって! ポチっと応援をお願いします、元気の元です♪
2015.04.23
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パラレルワールド 4 俺は白昼夢の中にいたのか?否、あれは18の頃に遭遇した不可思議だが、俺の「大脳皮質」に保存されているはず・・・そうに違いないのだ。 それはまるで・・・S・F映画の 1シーンのような現象だった。科学的な説明など、俺にはとうてい無理だけれど、何度思い出しても、細部までブレることのない画像が脳裏に蘇るのだ。 街も人も、すべてが乳白色の霧に覆われたようになるのだが奴の顔ははっきりと見えた。俺の歩く道の前方約40mの辺りに、見た目は同じに見えるが、まったく別の道が現れ、元の道に割り込む。元の道は一瞬で削除され、現れた新たな道が、上書きされた。(俺には、そんなふうに感じられたのだ)その『現れたばかりの見慣れた道』に突然もう一人の俺が現れ、俺を見つけて歩きだす。やがて奴と俺はすれ違う。それから奴は、ほとんど意味不明な台詞を残して消えて行った・・・ 親友と共に体験した、奇妙な出来事だったが、4年を経過した今でも時折、ふっと蘇えるたびに、「消えてしまえ!」と指を頭髪の中に差し入れて髪をクシャクシャにしてしまう。 それにしても・・・なんで公園で、ブランコになんか、それも・・・腕時計を見る・・・13:25分、こんな時間にひとりで何やってるんだよ、俺・・・ 日曜日だった。「そっか昨日新宿で映画観たあと、ライブハウスで気心知れた常連たち(ミュージシャンの卵がほとんど)とアメリカンハードロックと音楽談義をさかなに美味い酒を飲み・・・始発で朝帰り・・・」で、起きてみると、帰ってきた時のTシャツとジーンズのまま・・それから?何の目的もなく公園まで来ていたのか?そんなはずは無いだろう・・・俺は、俺自身に説明を求めた。(飲み過ぎたかな・・・) すると、俺の正直な腹が「早く何か食わせろ!」とばかり、グーッと鳴った。答えは出たな・・・ 公園の出入り口に立つと、右手はす向かいに「蕎麦屋」があり、左方向に100メートルも歩けば、薄口醤油を鶏がら、昆布、野菜を煮込んだだし汁でのばした、東京にしては、珍しい西日本風のラーメンを食べさせてくれる店がある。どっちにしようか?空を見上げると・・・夏の日差しだ!「冷やしチャーシュー麺」・・・大盛りだな。 ポチっと元気をください
2015.04.16
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パラレルワールド 3 >この状景に驚くことは無くなったということは、奴はこんな場面に何度か遭遇した経験があるってことだ・・・ 「教えてくれ・・・」って頼む? まるで俺な奴にか?他の誰にだって簡単に説明できやしない、この事態だ説明を求めたとして恥じることでもない。だが、その気にはなれない。鏡の中の俺にまじめな顔して教えを乞うような・・・ 「教えてもらったらどうだ?」やはりアキラは背中を押してきた。俺はアキラの顔を見ないまま返事した。「鏡の中の自分にか? 心療内科行きだろ、それじゃあ」アキラは「やっぱりな」と言いたげな息を吐き俯いた。 「俺に訊くのが嫌なら・・・」唐突に奴の方から話しを切り出した。「そのうち、お前もまた今日みたいなことに遭遇するかも知れない。そん時までに知りたいことをメモっとけばいい。じゃあな」言うと奴はいやな笑みを浮かべて背中を向けた。 「おい、ま、待てよ!」少しだけ悔いを含んだ声をあげてみたが奴は、大昔のあのブラウン管の砂嵐のように消えていった。俺は、目まいを感じ、身体のバランスを失った。 落ちていく感覚に襲われた俺は、目を開き咄嗟に目の前にある何か(2本?)に摑まった!それはブランコの鎖だった・・・さらに大きく目を見開き周囲を見渡した。(公園?そうだな公園だ・・・どこの公園だ?)ブランコから降りて、公園の外に出た。(ここは!)間違いないとは思ったが、入り口のポールの横に石柱があり「渋谷区立児童公園」とある。やはり夢だったか?あれがたった今九州で起きたことなら今、笹塚にいるわけない・・・ 皆様のお陰で上位にランクしています♪これからも 応援のポチ、よろしくお願いします。
2015.04.06
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パラレルワールド 2 俺はわざと奴の耳に届くように言った。「あいつ、どこから来たんだろうな」すぐ隣にいるあきらに疑問を投げかける体をよそおって奴の脚を止めてみようと試みたのだ。実際、俺の狙いは当たった。奴は立ち止まると俺たちに半身を向けたのだが、続いて驚くべき言葉を吐いた。「・・・初めてなのか」「何がだ・・・?」奴は両手を広げ、首を左右に振って言った。「今、この時、他の連中に俺たちはどんなふうに見えてると思う・・・」 奴に言われて初めて気付いた!俺たちのまわりは、動画の世界だった。早送りだったり、コマ送りだったり、人の姿と見極め難い砂煙のようだったり・・・「何なんだ、これは・・・」すると奴は満足気に笑みを浮かべた「この街にくるのは、初めてだが・・・」奴は、一歩近づいて俺の目を覗きながら続けた。「この状景に驚くことは無くなった」こんな異常事態の原因を知ってるみたいな奴の口ぶりにむかついたが、正直言って俺は知りたい事が無限に広がったように感じた。 気が向いたら、いや、どうぞポチして下さいまし。
2015.04.04
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