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2、パラレルワールド気付いたら、俺の心臓の鼓動しか聞こえなくなっていた。このまま、奴とすれ違ってしまって平気なのか?何故、そんなふうに考えた? 自問自答してる意味がわかんねぇ・・・!何かの本で読んだっけか?パラレルワールド・・・同一時間帯(自分の中では)に別の世界が並列して存在する・・・たしか、そんなだったぞ!・・・そして稀に並列世界が交差する!!(それがどうしたって言うんだ!)俺は結局ビビッてるのか・・・ああでもない、こうでもないと考えているうちにやはり、何も考えて居られない時が来た。奴と俺の肩が並んだのだ!何か特別な状況の変化を覚悟した・・・の・・・だがなにも起こらず二人は交差し、離れてゆく・・・振り向いたら、もうそこには誰も居ないんじゃ・・・気配を感じて横を向くとあきらが俺の目を見ていた。俺は言った。「あきら、お前、俺と同じこと考えてるな」あきらは左の口角を吊り上げて声もなく笑ったが、目は笑ってなかった。俺は足を止めた。「やめとけ、その方がいいような気がする」あきらは、直感でものを言う奴ではない。それだけに、一瞬俺は奴の言葉に従おうとしたが、やめた。つまり、それは、俺が直感でものごとを判断するそういうタイプの人間だってことだ。「勇・・」(勇一 を 『ゆう』と短縮して呼ぶことを認めてるのはあきらだけだ)「よせ、振り返らない方がいいかもしれん。こんな訳のわからん・・・」あきらの言葉をさえぎって俺は言った。「なにがあってもお前のせいにしたことなんか無い」俺は振り返った・・・奴は今ゆっくり歩いている・・・ 良かったらポチください。
2015.03.29
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新連載です。久しぶりに書いてみようなどといった気分に襲われました。今度の小説は一応ジャンルでは、「学園青春小説」ということで始めますが、社会人になっても青春をひきずっている「田村 勇一」と「木島 あきら」の二人を中心に展開する物語となっています。これからどうぞよろしく! ある夏の日に 1 あれ何だ 「あれは何だった?」誰も信じちゃくれないだろうな・・・自室のベッドの上で身体を伸ばし、天井に貼り付けた化粧品のキャンギャルのポスターをいつになく醒めた目で観ながら頭の中でつぶやいた。ほんの30分ほど前に遭遇した、今でも自分の目を疑うあの出来事のせいだ・・・通いなれた通学路を昭(あきら)とシカゴの「長い夜」について「ホーンはあったほうが良いに決まってる派」の俺と「ホーンは要らない派」のあきらとで「お前わかってねえな!」「わかってないのはそっちの方だ!」と持論を至近距離でキャッチボールしながら歩いてた。あきらとは幼稚園からの付き合いで、高2の今までけんかのひとつも無しでつるんでる。他にもダチはいるが、そいつらとは例外なく殴りあいの喧嘩のはてに気を許しあっている。あきらは殴れない。なぜだかは未だに不明だ。けど、お袋は高1の時あきらのフトンセットを用意してくれた。だから奴は自分ちの居心地が悪いときは、俺んちに泊まっていく。我が家から見れば片側一車線の道を隔てた向かいに奴の家があるのにだ。ふいに奴が俺の手を引いた。「なんだよ、おかまか!手でも組もうってのか?」それでも奴は「前から来る奴見てみろ・・・」あきらの奴、急に顔色悪くなって で、顎でそいつらを示した。俺もきっと、今、顔の色が何時もになく白く、目を大きく見開いていて、とても後輩たちには見せられない情けない顔をしてるに違いないそう思わせるに充分すぎるほど、前からこっちへ歩いてくる二人連れの野郎の片方が・・・俺に酷似・・・いやあいつも俺なのかもしれない・・・ 応援ポチをお願いします。励みになりますので♪
2015.03.19
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皆さん、どうですこの曲。音はもちろんクリアで メロディも大好きですが、ジャケット!いいですね~♪ 楽しんでもらえると思います!! Upして頂いた iku takahashiさま、ありがとうございます! 気に入ってもらえたなら、ポチっとお願いします♪
2015.02.06
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※これは12月19日に書いた記事です。PCが不調で、読み辛いかとおもわれます、悪しからず。 ☆楽しく生きていけるのは、当たり前?突然ですが、最近思う事とある友人の伝言を書いてみました。私たちは今、「生活の自由」を謳歌しすぎてはいないでしょうか?(もちろん、自由を謳歌するどころか、厳しい生活を送っている人もいますが)好きな恋愛小説を読む、ゲームだって好きなだけできる。働けばちゃんと美味しい食を得ることができる。グルメ番組やファッション番組を観て、我も我もと高価な食や服飾品を求めて海外にまで出かける。そういう生活が送れていることを『当たり前』のこととして、あるいは意識さえせずに生きている。それって如何なものでしょうか。この動画を観ればわかるはずです。戦争はいけない事、それは当然のこととしたうえでの話しです。けれど日本が第2次世界大戦に突入した理由は侵略戦争ではなかったこと、戦後マッカーサーの米国議会での証言といい、この動画でアジア各国の人々が異口同音に語っていることでわかります。「日本が列国と戦ったお陰で、アジアの国々は欧米列強から独立できました。日本の国土は、自国とアジアを守る戦いにより、主に米軍との戦いによってほとんど焼け野原となりました。そこから国を立て直したのは、当時の日本国民と旧日本軍人のみなさんです」今はもう、帰国した友人は言っています。『私が日本に行った時、日本人みんな優しくしてくれた。けれど不思議に思ったことがある。日本人は何故、祖国を守るために戦った人を許さない?戦犯は連合国が決めたこと、もう69年も昔のこと。なぜ、日本人は自分達の国を、第二次大戦で命がけでこの日本を守ってくれた軍人たちに敬意を示すことをしないのか?なぜ「靖国神社」に参拝するだけで「軍国主義者」のレッテルを貼るのですか。私たちの国では、祖国を守るために命を懸けて戦い、傷つき亡くなった人たちに感謝しています。あのとき彼等が必死でこの国を守る戦いをしてくれた。だから、今私たちは自由な生活を送れる事ができる。多分、日本の若い人たちは、正しい歴史を知らない。知ろうともしない人たちもいると聞いた。インターネットで調べて、公式文書を読むと、歴史教科書、教わったのとかなり違うことわかりますよ。 いつまでも『自虐精神』? あれ良くない。来日前と今、私の日本人にたいするイメージ、少し変わった。何故自分の国に誇りを持てないのですか?日本人もっと自分の国に自信持ってください。私は日本と日本の友達が大好きです』これは、日本に滞在していた時に仲良くなった英国出身の Mat(Mathew)が、滞在中と帰国の際に私に話してくれたことの一部を手紙風に書いてみたものです。では、Matもお奨めの動画を観てください。Upして下さった、ytanpopoさん動画拡散を許して頂き、本当にありがとうございます! 良かったら、ポチをお願いします。
2014.11.25
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<アインシュタインの残した言葉> 過去から学び、 今日のために生き、 未来に対して希望をもつ。 大切なことは、 何も疑問を持たない状態に 陥らないことである。 ※尊く、多くの努力と犠牲の上に、今の日本がある 日本の現状をしっかり見つめる時は今! 『 大切なことは、 何も疑問を持たない状態に 陥らないことである』 心に刻みたい 言葉です。 先祖や、命がけで日本を守ってくれた 多くの 方々が居たから・・・・・
2014.10.27
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<日替わり 音の屋> 今日の好きな曲は、 The Doobie Brothersの「Sweet Maxine」です。 アルバムジャケットの馬に乗った彼らが飛び出してきそう! 最高に爽快! 新宿ロフトでもライブのない日に、よく聴いてた! Up by humanjyukebox1958 Thank you!
2014.10.22
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危篤状態だった母が意識を取り戻しました。 医師も「奇跡的」と! 母がいつか言ってくれた 「ことば」を書きます。 「恥を知る事は大事。 反省できるようになるからね・・・でも 絶望に陥ることだけは、やめて。 お前が元気でいてくれることが、一番・・・」 母の回復を・・・世界中にありがとう!って言いたい。
2014.10.20
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<アインシュタインの残した言葉> どうして自分を責めるんですか?他人がちゃんと必要な時に責めてくれるんだからいいじゃないですか。 落ち込んだ時に、思い出すことばです。
2014.10.17
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今日の好きな曲は『夏休み』 吉田拓郎☆ です! ひまわり、打ち上げ花火! 川にとび込む少年たち! 私は海辺の町で育ったので、防波堤の上からとび込んで遊んだこと、 鮮やかに蘇る映像に・・・なんだか・・感動です! 昭和の夏休み、定番ですね~☆♪ 共有を許可してくださった 怪傑harimao26様、本当に有難うございます! (ネームの末字は機種依存文字で入力不可でした。ご容赦ください)
2014.10.03
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気付けば、今年もまた 校庭に映る 校舎の影が長くなってきた なぜか笑顔が消える 後輩たちがボールを拾い集める 土に汚れたユニホーム その背中を 夕陽が照らしだす 「オスッ!失礼します」と 自転車が流れるように追い越してゆく 時は、流れても 残る思い出 まぶたに焼き付いて 消えず 色褪せず・・・ 久しぶりに来てみた 母校の校庭が 夏もあとわずかだと教えてくれた
2014.10.01
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今日の好きな曲 EAGLESでホテルカリフォルニア 著作権侵害だそうです。削除しました。 akitugu ochi さまお許しください。
2014.09.29
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急きょ、出張です。 忙しくなります。 また、更新 空くかもです・・・
2014.09.14
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「おけいさん」 歌手の四角佳子さんのことです。以前、お知り合いの方が偶然「チケット、余ってる」とV.S.O.Pのジャズ・ライブに皆さんと共にご一緒させて いただいた折にご挨拶させていただいたのですが、1ファンのボクにも優しく接してくださる素敵な方で、それ以来あつかましくも「おけいさん」と呼ばせていただいているのです。 ボクは、主に「ロック」「ブルース」「ジャズ」を聴きますけれど、心が乾いている時など「おけいさん」の 歌声を聴くとなんだかほっとします。心の中が潤う感じですね。勿論、常富さんの歌声も優しいですよ!というわけで、今日ぼくのお奨めの一曲は、 四角佳子&常富喜雄のお二人で 【地下鉄にのって】 です Upしてくださった「佐賀映像倶楽部」さま遅くなりましたが、共有を許可して頂き、ありがとうございました。
2014.09.10
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今日の「好きな音」は吉田美奈子さまの「午後の恋人」曲は違いますが、70年代後半、赤坂の某Reスタジオの金魚鉢の中で謡う美奈子さまに聴きいって我を忘れたことを思い出します。偶然でした・・・ 目の前にいらしたのです。 動画は所有者の制限により、You Tubeのみでの再生可となっています。視聴をご希望の方は ↓ でご覧ください。 吉田美奈子 「午後の恋人」 http://tinymce.moxiecode.cp/mce_temp_url 気に入られたならポチっとお願いします
2014.09.02
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日替わり「音の屋」発 「今日聴きたかった音」 Upしてくださったvtha sangkulh様、有難うございます。
2014.08.29
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季節はずれですが・・・散文詩です。{再稿} ホワイトバレンタイン/僕の心が雪のように融けた日 雪に気づいたのは 電車のドアが開いた時だった 君のこと思い出し、吊革ばかり見てたから 頭の中で君の声が聞こえて ぼくは立ち止まる 「あなたに腕を絡めてる方が好き・・・」 そう言って君はいつでも 隣りの誰かに 吊革ゆずっていた どうして今頃こんなことを・・・ 君とのこと 心の地下室に閉じ込めよう それから、顔を上げて歩き始める 駅の階段上がるぼくの前に 下りてきたブーツが ゆっくりと止まった それは・・・ 2年前の冬 ぼくが選んだブーツ 「会いに来たの・・・」 湿った声が降りて来た 顔を上げると 潤んだ瞳の衝撃 心の地下室の扉をこじ開けた 何もかも水に流そう・・・ふたりが躓いたこと・・・君のせいだけじゃなかったよ ぼくも少しは大人になったから・・・ 今来た道をひき返そう そして 君をぼくの家に迎えよう ちゃんと伝わったみたいだね コートのポケットの中 二人の手は しっかりと繋がれているのだから 久しぶりに君と歩くこの道・・・ そう言えば、「今日は2月14日・・・」 口にして君を見ると ニット帽が縦に揺れた。
2014.08.06
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Dear昭和 二人だけの国で あれから、マキの実家へ挨拶をしに行った。 そのあとは、誰もが踏むべき手順を経て ぼくらは、二人だけの国を作った。わずか2LDKという狭い空間だが ちゃんと憲法もある、女王であるマキが決めた事なので絶対なのだ。 ぼくはといえば、マキ女王と、やがて生まれてくるであろう王子若しくは 姫君を養い、守るナイトである。・・・それほどカッコのいいものではないが・・・ とにかく、明るい笑い声の絶えない磐石な王国を築いてゆく! という決意を披瀝したところで、この物語は・・・つづくけれども、会えなくなります。 最後まで読んで頂いた方がいらっしゃったならば、心よりお礼を言います。 ありがとうございました! ※次に再開するのは・・・未定ですが、しばらく返信はできないと思います。 最後に、スピッツの「ロビンソン」を聴いてください。 Up主のspitzclipsさまありがとうございます。
2014.07.10
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勝手ながら、しばらくお休みします。
2014.07.06
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Dear昭和 的中以上の展開朝川雄一、つまりマキの父親の話の中身は佑が想像していたとおり・・・いや、それ以上だった。「失礼かもしれないが単刀直入に聞かせてもらいたい。君とマキは、結婚を前提とした交際をしている、そう私は認識しているのだが」朝川とは初対面ではあるが、性格的には気が合いそうだ。俺はそう感じた。「はい、日を改めて直接群馬のお宅へお伺いした時にお願い申し上げますが、お嬢さんのマキさんとの交際は結婚を前提にしたものであることに間違いありません」口元を引き締めて頷いた朝川の視線を受け止めたあと目をマキに移した。彼女は思わず腰を浮かしかけたが何とか思い留まり座りなおした。けれどその顔からは今にも佑に縋りつきたい!そんな想いを読み取ることが出来た。「それを聞いて安心しました・・・マキと日時を決めたら知らせてください。待っていますよ」 このとき朝川は初めて笑顔を浮かべたが、そのきっぱりとした物言いの中に大らかな性格の持ち主であることも感じられて、俺は少なからずも感動し、安心もした。「私の性格は母親ゆずりなの」そうマキは言っていたが、父親のDNAもしっかり受け継いでいる。俺はそう確信した。・・・そろそろラストかな、と思うのです。 吉田美奈子さんの「頬に夜の灯」 、曲も歌声も最高!朝川の父と別れたあと、マキと新宿ロフトへ・・・帰り道、新宿中央公園前に車をちょっとだけ停めた珍しく空が綺麗で、マキの頬に星の灯が・・・^^Up主のkana3353さま、素敵な曲をアップしてくださって本当にありがとうございます♪ ランキングに応援ポチよろしくお願いします♪
2014.06.25
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Dear昭和 話の中身は・・・「構いません、どうぞ」チャーリーは、初対面の人には滅多に見せることのない笑みを浮かべると そのまま佑に目を移し、マキと朝川氏に一番近いテーブルを指さして 「そこに座ってもらったらどうだい?」そう言った。「そ、そうだね・・・こちらのテーブルにどうぞ」俺はダスターで手早くテーブルを拭きながら言った。朝川は頷き、マキを促してイスを引いて「ありがとう」と言ったが、腰を下ろす前にチャーリーと佑を交互に見て 「娘と私の仕事の都合がつかず、勝手を承知ですが一目彼に会っておきたかったのです」そう言うと軽く頭を下げてからイスに腰かけた。今日は普段よりやや地味な格好したマキも父親にならい頭を下げ、ちらっと上目づかいに俺を見て腰を下ろした。朝川の話の中身は、分かっている。たぶん、外れることはないはずだ。 ランキングの応援、よろしくお願いします♪
2014.06.19
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Dear昭和 「準備中」 チャーリーは、店を佑に譲ると決めた翌日から、日頃から綺麗にしてある店内を、さらに念入りに拭きあげ始めた。特にグラスには神経質なほどに磨きをかけている。 もちろん、佑も手伝っている。「NOW ON」の上に掛けられたアルバムジャケットは佑が持ってきたジョージ・ベンソンのブリージンだ。チャーリーも気に入ってくれたらしく、一曲目の頭が始まるとすぐにグラスを拭いていた手を止めて、俺を見た。両の眉を上げて、小麦色の肌に良く似合う白い歯を見せた。彼は「音」に年代を求めないし、有名であるかどうかについても無関心だ。ただ、心に響く音には反応を示す。ある時は、カウンターにひじを乗せ、遠くを見るような顔をして、深く静かに、息を吐き、そして吸う。またある時は演奏と歌声に魅せられているのだろう、嬉しそうに白い歯を見せ、体中を小刻みに震わせて曲と一緒にスウィングしてる。佑はそんなチャーリーの反応を見るのが好きだ。気分良くカウンターを拭いていた時、突然ドアをたたく音がした。表のドアに掛けた看板は[CLOSED]のままのはず・・・ 気付かないのか誰かが入って来ようとしている。突然の客は二人のようで、一人目がマキ!(え!部屋で待ってるって・・・)続いて店内に姿を現したのは!マキのお父さんだった!!「マキ、お前突然すぎ・・・」 言い終える前に「すまない、私がちょうど東京に用があってね、それでマキに連れてきてもらいました。あなたが香川さんですか?」朝川雄一(あさかわゆういち))氏は佑の前に一歩進んで訊ねた。「はい、はじめまして香川 佑と申します・・・」「オープン前なのは表を見て分かっていますが、少しだけお邪魔してもよろしいでしょうか」朝川氏は、チャーリーのいる方へ向きを変えてから言った。 暑い夏でも氷を浮かべたシーバス・リーガルを飲みながら聴くと海の中にいるような気分になる。とにかく美しい曲です。 チャーリーも気に入ってくれました・・・ジョージ・ベンソンの「ブリージン」です。 応援ポチを宜しくお願いします♪
2014.06.01
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「合鍵なら乾杯」 マキは待っている。恋しい男を待っている。 この部屋で聞こえてくるのは、古い柱時計の秒針が刻む「また1秒の時が流れた」音だけ(冷蔵庫の音も、今夜は聞こえてくる) 今夜のマキにとっては、どんなにいい音でも邪魔なだけ。昨日、佑と別れ際にマキのほうから決めたのは 「仕事の話がうまくいったならば、チャイムを押さず合鍵で入ってきて」 僅かな沈黙のあとで佑は言った。 「そっか、夜遅くにチャイムじゃご近所迷惑だな」「それだけじゃないわ。もし私がシャワー使ってたら聞こえないかもしれないじゃない」「・・・問題ないだろ」 佑はジーパンのポケットからマキの部屋の合鍵を取り出して、顔の横で軽く振って見せた。 「なに・・・そっと入ってきて、風呂上りの私を驚かそうとでもいうの?」「何か問題ある?」 それ、やってみようか、などと考えていた佑は視線をはずした。 「今日は有りでしょ、今日は!あんたの知らせの良し悪しで乾杯をあげるかどうかが決まるんじゃやない!」「そ、そうだな・・・わかった」 そういい終えるころには、佑はすでにブーツを履きはじめていた。 「ん?今日はブーツなんだ・・・」 「そう、『チャーリー』の床は分厚いけれど、板だから革靴の方が相性がいいんだ」 「あら、スニーカーの方が音が小さいからいいんじゃないの?」 そう言いながら、マキは佑の隣にきてしゃがみこむ同じ高さで見つめられると、マキを抱きしめてしまいそう・・・だから佑は立ち上がった。 「分かってないなぁ、床板には皮の底が立てる音が合ってるんだよ。それにチャーリーと俺の好みでもあるし・・・」 「はいはい、わかったから行ってらっしゃい」 マキが言いたかったのは・・・音もなく佑の姿が見えたなら、部屋のどこで何をしていても驚いて飛び上がってしまうに違いない。実を言えば、彼女はそのくらい気を張り詰めて彼の帰りを待ち続ける・・・きっとそうなる (あたしにだって弱いところある・・・) でも、『負けん気マキ』は口に出しては言わない。例えそれが佑と二人きりのときであっても 佑に渡してある、この部屋の合鍵で施錠が解かれる音その音で彼の帰りを知り、近づけば気付かれるほど高鳴っているだろうその胸を手で押さえ 「マキ、大丈夫だから、きっと・・・」 そうやって彼女自身を落ち着かせて、佑を迎えたい。だから、テレビもオーディオプレーヤーもオフにしているのだ。 マキの心境と近いと思うのですが、とにかくいい声、いい歌! To Love You More/Celine Dion Up主のjmjbj993000さま、有難うございます! 応援のポチをよろしくお願いします♪
2014.05.07
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「A Day In The Life」を聴き終えたあと、曲の余韻に 浸りながら俺は、チャーリーの目を見て先日の返事をした。 やがて俺を見つめているチャーリーの笑みを浮かべた目じりに 光るものを見つけて、俺は目の前におかれたグラスに目を落とした。 チャーリーはジャック・ダニエルを飲み干すと言った。「佑、そいつを空けてくれないか」 彼は佑のグラスを指差した。佑にも異存はない。グラスを手に取り一息に飲み干した。 それを見届けるとチャーリーの手が伸びてきてグラスをさげた。 「最高に嬉しい気分だよ佑。こんな夜にはゴージャスな歌声を聴きながら ゴージャスなカクテルを飲もうじゃないか」 そう言うとチャーリーは、目の前でシャンパンとビールのカクテルをつくり始めた。ドン・ペリニヨンとギネスを割る? 初めて見るカクテルに俺はつい頭を傾げた。 「ブラック・ベルベットだよ」「それがこのカクテルの名前?」 軽く顎を引いて見せたあと、チャーリーは「まだ、飲むなよ。最高の歌声を聴きながら飲むんだ」 今度は俺が顎を引く番だった。 チャーリーの長い指が一枚のレコードを取り出し、プレーヤーに乗せる やがて昔から大好きな曲が流れてきた。素晴らしい歌声に乗って・・・ チャーリーが唇の前に指を立てて、俺の前にグラスを置き 声もなしにグラスを持ち上げると口の形が「かんぱい」と動いた。(なんてゴージャスなんだ!歌声といい、このカクテルといい!) チャーリーはカウンター内の彼専用のカウンターチェアに腰かけて俺は彼の向かい側でブラック・ベルベットを味合う LOUIS ARMSTRONGの「What a wonderful world 」の歌声と 「ブラック・ベルベット」!これだけでいい!他になにも要らない・・・ 「あとはマキを連れてあの娘の親父さんと話をつけてくる、できるか?」「任しといて、マキに渡す指輪も買ってある」「余計な心配だったようだな」 俺はチャーリーと固い握手を交わし、軽く肩をたたくと外へ出た。この次はマキにもゴージャスな気分を満喫させてやろう。そんなことを考えながら駅に向かった。 LOUISARMSTRONGの「Whata wonderful world 」です! Up主のsunny kimさん有難う! よかったら応援Pをください。お願いします。 ↓
2014.04.30
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「 生命 」 生まれたままではない 若いままではない 元気なままではない 死んだままではない 一日一回の応援ポチをお願いします
2014.04.19
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春とはいえ、この時間になると肌寒い・・・ダンガリーシャツを着て部屋を出たのは正解だった。 「チャーリー」の2枚目のドアは防音用で、ノブを引くと流れてきたのはWes Montgomeryの「A Day In The Life」 佑もチャーリーもこの曲が好きだ。音が店中に流れ、チャーリーと俺の心ん中に流れて酒の味を高めてくれる。チャーリーは飲みかけのグラスをカウンターに置くと彼の前に腰掛けた俺にはいつものようにシーバス・リーガル12年をダブルで注いだグラスを置いてくれる例によって、あの渋い笑顔を浮かべて この曲が終わるまで、そいつを楽しんでいてくれ ということ佑もまったく邪魔する気は無いね とグラスを傾けて 贅沢な「A Day In The Life」に満たされている。なにを話しに来たのか、それさえ忘れて・・・ Up主のbreaks4rm88さん、ありがとう! 応援クリック、お願いします♪
2014.04.03
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いつも応援いただき、ありがとうございます! 新人の育成等のため、(おそらく4月中) 勝手ながら、しばらく更新を休ませて頂きます。
2014.03.24
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佑には、以前から誘われていた仕事があった。京王線のある駅で降りて、徒歩で10分ほど南へ行き、左手に見えてくる郵便ポストを右に曲がる。50メートルほど先に懐かしい明かりが見えてくる。その懐かしさは何度訪れても変わらない。 入り口のドアの上を小さなスポットライトが照らしていて看板を浮かび上がらせている。「Charley」 チャーリークリスチャンを知ってる人なら一目で JAZZを聴かせてくれる店だとわかる。小さな店だけど、オーナーのチャーリーは初老で日米のハーフ。気さくな人だ。店の奥のカウンター越しの壁には渋いブルースからジャズまで、チャーリーと常連たちの好きなレコードが揃っている。 キャパは少ないが、有名なミュージシャンが時々訪れるし、海外からも日本で公演があると必ず訪れるミュージシャンもいる。彼らが「Charley」にやってくる理由は、チャーリーとの旧交を温めることと日本では極わずかな人しか知らない日本人ギタリストの演奏を聴くためだった。 その無名な日本人ギタリストの腕前は、世界でもトップクラスのミュージシャンから「一緒にやらないか」と誘いを受けるほどだが、彼は応じない。もったいないと言う人もいるが、佑は普段目立たない彼が、いざギターを弾き始めると、痺れるように熱い音を奏で、彼と聴衆と共に彼の創り出す音の世界に酔いしれてしまう。 その贅沢な時間は「Charley」でしか味わえない。なぜなら、彼が夢中でコピーしていたギタリストが、若くしてこの世を去った時、嘆く彼を癒してくれたのはチャーリーと「Charley」の常連たちだったから、佑は勝手にそう信じていて・・・だから彼をそっとしていて欲しいのだ、独断は承知のうえで。 そうそう、この店の常連たちは、好きな音を聴きながら、好きな酒を飲み、チャーリーとの会話を心ゆくまで楽しんだあと、煙草のパッケージの中にチップを入れてカウンターに置き「また、来るよ」 チャーリーにそう言ってから勘定を済ませ帰ってゆく。 きっと彼らのチップは、キャパの少ない「Charley」の存続を願ってのこと。佑はそう思い有難いと感じていた。 去年のこと、チャーリーが言った。「俺も歳だな、酒、煙草、食料の買出しや片付けが身体に応えるようになってきた。お前が仕切ってくれればありがたい」 と・・・ 「久しぶりだなぁ・・・」 最近、随分来てないけど・・・と指を折って数えていた佑が顔を上げた。Tシャツ、ジーンズそれにそろそろ草臥れたバッシュで歩く佑の目に懐かしい「Charley」の看板が見えてきた。 彼は今夜、チャーリーが喜んでくれそうな返事を持ってきている。 チャーリークリスチャンの貴重なLive映像です。 SWING TO BOP (1941) by Charlie Christian ブログの応援宜しくお願いいたします♪
2014.03.05
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Dear昭和 マキ、輝く! 二人の将来について、前向きな決意を佑は明らかに示してくれた。マキは、それが嬉しくて仕方がない。毎日、ファッション雑誌の撮影、ポスター撮りなどの仕事に目を輝かせて取り組んでいる。それは、佑と出会う以前の彼女の頑張りをしのぐほどで、顔見知りのスタッフの間からも「マキさん、なんかすごく張り切ってない?」「やっぱあれだろ、噂の彼氏が戻って来たっていう話だし」「へえ、そうなんだ!ま、理由はなんであれ、撮影は順調すぎるほど快調に進んでる。ありがたいことさ」「そういうこと、彼氏様さまってとこだね」撮影現場の休憩時間には、歓迎のコメントがささやかれている。そんな彼らの想像を超えたマキの姿がある。それは、数少ないオフの日、佑とマキの部屋で見られる掃除、洗濯に汗を流す彼女の姿だ。野球帽をつばを後ろにしてかぶり、七分丈のTシャツにコットンパンツという春まだ浅い日にはやや薄手の格好だがせわしく働くマキのノーメイクの額には汗が光っている。 やがて、洗濯し終えた佑の衣類を洗濯カゴにつめて、戸締りをしマキは自分のマンションに戻る。洗濯カゴの中身を乾燥機の中に入れて廻しながら、今度は彼女の部屋の掃除を始めた。スッピンで飾り気のない部屋着のまま、汗をかきながら掃除を続けるマキは、いつのまにか鼻歌を歌っている自分に、まだ気づかないでいる。 ランキングに参加しています。応援をどうぞよろしくお願いします。
2014.02.22
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みなさん、ご無沙汰してました。すいません。 友人は無事退院出来、リハビリに通っています。 お見舞いや、励ましのコメントいただき、ありがとうございました。 しかし・・・友人の退院とほぼ同時に私のPCが再起不能となりまして・・・ 買い替えたのですが、息子が・・・以前にも書いたかも知れませんが、プログラマーであり、初期設定は勿論、HDDも扱えるのですが、忙しくて毎週休二日ではなく・・・やっと昨日、諸々の設定終了しました! とはいえ、ご存知のように、必要なソフトをいくつもダウンロード、インストールしても、更新があり、思うように使えるまでまだ時間を要します。皆さんへの返信、もう少しお待ちください。よろしくお願いいたします。 マトリックスA
2014.02.17
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篠栗町のブロガーの皆さん、いつも応援、有難う御座います! 大分市のブロガーの皆さん、いつも応援、有難う御座います! おかげで「日本ブログ村」で、篠栗町では8番目につけています。 大分市では上から12番目です。 みなさんのお陰です、感謝しています。 ☆マキと佑も ゚・:,。★\(^-^ )♪ありがと♪( ^-^)/★,。・ほら、喜んでいますよ 「マトリックスも、今結構忙しいみたいだから、応援してあげてね」 by マキ♪ 小説、思うように更新できてないけど、頑張ります! これからも応援よろしくお願いします。 よ(^ー^)ろ(^o^)し(^ ^)く(^▽^)ね(^ー^)ノ
2014.02.03
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入院中の友人のこと、彼の高校時代の友達が、毎週とはいかないけれど、 時間を作って、とりあえず今夜と明日の午後、友人のお母さんを手伝ってくれることに! 友人も「お前が倒れたりしたら申し訳ないから」 そう言うので一日半、甘えます。 だから、更新! 「Dear昭和 お前なしに 始まらない!」 目覚めの煙草はやめられない。 窓を少しだけ開けて火をつける。 せわしく行き交う人、車、・・・電車の音も聞こえる 「そんなにのんびりしてて、いい時間なのか?」 そう非難されているように聞こえてくる。 街の建物からさえもね・・・ けど、俺は薄く笑って煙草を美味そうに吸ってみせた 腹はちゃんと括ってある。これからは、マキを泣かす ことはできない。かといって、音を捨てるつもりもない。 今は離れていった仲間たち、あいつらともさよならする つもりなんかない。 あいつらに「こんなのどうだい?」 って言えるような俺になる。必ずだ!そうでなきゃ どこまでも付いてゆくと決めたマキに会わせる顔がない。 そんな思いを定めたら、非難の声も笑ってかわせるものだ。 窓から流れてゆく煙草の煙を、外まで目で追いかけ、 その消えてしまうまでの速さにため息をついていた。 「風は何時だって煙より雲に優しいんだよな・・・」 彼自身にさえ意味不明な感傷が、心の中を吹き抜けて行ったあとに ひとりごちた佑は 「仕事、決めてくる」 パウダールームから出てきたマキを振り返り、彼はそう告げた。 バスローブのベルトを、シュッ!と締めたマキの顔は輝いていた。 煙草をもみ消して少しだけ開けていた窓を閉めた佑は、腰が窓際 の壁にくっつくまで身を引いた。 マキが佑の膝の前まで来て彼の脚を割って入ってきたからだ (おいおい・・・) 両肘を彼の膝の上に置くと、マキはその場に正座した。 そして彼女は喜びを隠し切れない。そんな顔で佑を見上げた。 その目は赤みを帯びていて、潤んでいる。 どんなに待ち侘びたことか! 「お父さんに、会ってくれるんだね!」 「ああ、決まったらすぐに電話する」 堪えきれず、マキは子供のように大きな声で泣き出した。 佑はだた、マキを引き寄せて優しく彼女の頭を撫で続けた 彼女が泣き止むまで、そうしていてあげようと思った。 応援のポチをよろしくお願いします♪
2014.01.24
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●友人が怪我をして入院しました。 一ヶ月ほどで退院できそうですが、問題は母と息子の二人暮らしであること。 おばさんが脚を長年患っていること。 なので、しばらくは買い物に連れて行ったり、友人が入院している病院へ連れて 行ってあげたりすることにしました。 その友人にはボクも困ったとき手を借りたりしていたので「お互い様」です。 毎日というわけにはいきませんが、最低限仕事の帰りには、お惣菜を買って 届けたりと・・・そういう訳で、しばらくみなさんへの返信は休みがちになると思います。 時間を見つけて、応援ポチだけは、させていただくつもりですが、 お約束は出来ません。暫くの間、ごめんなさい。 マトリックスA
2014.01.20
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二人の間に流れるただならない空気にサチとトモミは、しばらく息をすることさえ忘れて立ち尽くしていたが、しかし 「ちょっと用事を思い出しました!今日はこれで失礼します」 とっさに有りもしない用をつくり伝えてサチはマキに頭を下げた。 なんのことか分からずにサチを見上げるトモミの腕を引っ張り 「いいから行くよ、早く」 そんな彼女の後ろ姿に声がかかる 「すまないな、サチ」 マキにはサチの嘘が有り難かったのだ ドアの閉まる音がしたのとほぼ同時に佑は 「とにかく座ろうや」 いつになく決め付けた言い回しでそう言った。 ふん、ここはあたしんちだよ そう言いながらも 佑の座るソファに微妙な距離をおいてマキは腰をおろした。 「さっき言ったとおりだ音楽を捨てるつもりはない、けどな のめり込めないないんだ、今はよ、ちょっとな・・・」 「どうしたって言うんだよ!仕事も決まってない、音もやらないって・・・」 「仕事は直ぐに始める、あては有る、音だってまだ捨てたわけじゃないんだ」 「ああ!わかんねえ!!」 煙草を一本取り出そうとした佑をマキが制止した 「悪いけど、今日は帰ってよ。あたし今、冷静になれない」 佑は煙草を元に戻しポケットにしまい込み立ち上がった 「ああ、そうだな・・・そうするよ」 そう言ってドアへ足を向けマキから離れてゆく、すると 「まさか、あたしまで捨てようってんじゃないだろうね」 さっきまでの勢いを失ったマキの声が背中に弱々しく届き、 佑が振り返る。マキの目は鋭く見えるが すがるような色も浮かべていた。 「それは、無い」 そんなわけないだろう、と佑は重ねてそう言った。 マキは立ち上がると、ドアに手をかけた佑に追いつき 彼を背中から抱きしめた。 「ビール、切れちゃった」 「へえ、それで俺に買って来いってか?」 「買ってきてくれたら、今夜泊めてあげても・・・いい・・・」 佑はマキの手を解きながら頭を軽く振る 「まったく敵わねぇな、お前には・・・」 ドアを閉める前に苦笑いを浮かべて佑はそう言った。 応援ポチ、よろしくお願いします^^
2014.01.08
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みなさん、こんばんは。今年も残すところあと1日となりました。我が家は今年後半、多忙で日帰りのドライブにさえ出かけていません。なので、31日~1月3日までの4日間は温泉にでも浸かってのんびりしようと思います。 今年1年お世話になりました。来年も宜しくお願いいたします。 来る2014年が、みなさまにとって実りある年でありますようお祈りしています。 ー マトリックスA ー Dear昭和 決意よ伝われ!前編 佑とマキが東京に戻ったその日、マキのマンションは一際賑やいだ。後輩のサチの知らせを受けて手の空いている後輩たちが5人駆けつけマキと佑、サチとトモミ、合計9人の楽しい会食の時間を持ったからだ。楽しい時間は非情なほどに早く過ぎてしまう。一人っ子だったせいなのだろうか・・・マキは後輩たちに「またな」と言ったあと、いつも寂しげな顔になる。それは今日だけではない・・・それは多分間違いのないこと、 「惚れた女の表情からそのくらいのことを読み取れないほど鈍感ではない」佑はそう自負している。サチとトモミはキッチンでマキと食事の後片付けをしてくれているそれもあらかた済んだ頃 「マキ、こっちに来てくれ」 わるい、後輩二人にそう言い、タオルで手を拭きながら 「なんだよ、待てないのかよ」 いらだちを抑えたような 言葉を投げるそれにしては、いそいそと佑の隣りに腰を下ろした。佑はマキの目をしっかり見据えておいて 「俺は音楽やめる気はないが、プロデビューにはこだわらない」 「なんだって!」 そう言って立ち上がったマキは目を大きく見開き佑を睨みつけた。怒りと戸惑いが交差するまなざしで! 人気ブログランキングに参加しています。みなさんの投票が 頼みです。よろしくお願いしますね♪
2013.12.28
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☆皆さん、今夜の金スマ ご覧になりましたか?父と娘の感動のストーリー、すごく良かった! それに、すみれさんも歌われてましたダイアナ・ロスの「If We Hold On Together」は偶然にも昨日19日深夜にぼくの自作小説を更新したとき、Youtuveから選んで貼り付けました。ボクの小説の主人公マキは母を亡くし、父親に育てられたもうすぐ最愛の彼を父に会わせることになる。お父さんが大好きだけど彼、佑と1日も離れていたくない。これからのことを思い不安になっていたマキにもこの曲は、勇気を与えてくれたのです。書き手のぼくも「こんな偶然あるのか・・・」感激してもう一度ダイアナ・ロスの歌声を聴きながら読み返してみます。良かったら皆さんも、この素晴らしい歌を聴きながら読んでみませんか。 Dear昭和 スローな秒針 沸き起こる歓声!観客たちが意図せずに織り成す不規則な色彩のうごめきはあたかも命を持つ帯のようにスタンドを埋め尽くしているそれは観る者の視覚を乱し、軽いめまいを感じるほどだ。 複雑多色な帯に囲まれた緑の芝生は、白球とそれを追うプレイヤーの姿を映え立たせている歓声と色の対比が織り重なり、試合は否応なく白熱する。 あ! マキは誰にも聞こえない小さな声を上げた。 スタンドの一点が空白になったからだ。 さらにその一点に数字が浮ぶ。「1970.8.4」 隣りに立ち手をメガホンにして声を張り上げていた男性が急に空いた席を見て座り込み両手で顔を覆った。 見ている間に、同じような光景がランダムにあちこちで展開される マキの目から涙がこぼれ落ちていった・・・ 「最初の数字は母さんの命日だった・・・」あの人たち、みんな死んじゃった人なんだ・・・ え・・・二度目に聞こえない声を立てたのは、まったく別の席にいた少年と少女の姿がそこに残ったままで、彼らの上空で花が連なってゆき、それらが輪となって、現れた年月日がハートのかたちに縁取られて繋がった時だった。 周囲の観客が立ち上がり、彼らを拍手で祝福し始めたではないか! こんどは温かい涙がマキの頬を伝わってゆく・・・ 「おめでとう!・・・」 そして・・・え!これで三度目の聞こえない声がマキの口からこぼれた。 「あれは・・・佑とあたし?」年齢も姿かたちも今とは違っているのに、なぜか彼女はそう感じた。 刹那の時を秒針が刻んだその時マキの目が開かれると同時に彼女の手から缶ビールがすり抜けたが、それを間一髪、佑が掴み取った。彼はマキの目が閉じられた時、声にこそ出さなかったもののどうした?とマキに身を寄せて顔を覗いていたのだ 「夢を見たんだ、あたし・・・」ベンチシートに深ぶかと背をあずけてマキはそう言った。 「夢?・・・あの長めな瞬きのような瞬間に夢を見たって?」 「・・そんなに短かったの?」 「ああ・・・スローな瞬きって感じだったぜ」 マキは、忘れたくないと言ってから、今見たムービーのような夢を録画したビデオを再生するように語り終えた。佑はもう一回とねだり、マキも嫌な顔を見せず繰り返し語り聴かせる。その度に前の席でサチとトモミ(缶ビールをくれた後輩くん)の二人はため息をつきながら 「先輩、その夢最高っすね~・・・」 と感激し、 オーバーだなあ とマキが笑う。 そんなふうに走っているうちに彼らを乗せた車はマキのマンションに着いた。 マキの胸の奥にあった不安が不思議な白昼夢に癒されてボクはダイアナ・ロスのこの歌を思い出したのです。「If We Hold On Together」 Up主の07142463さん、感謝します。 皆さん、ブログランキングに 応援ポチをどうぞ宜しくお願いします。
2013.12.18
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帰 京2週間ぶりの東京は文句なしの空模様だった。(沖縄の空と比較しなければだが) マキもすこぶる上機嫌だトローリーケースを引きながら空港ビルを出た所でマキは立ち止まり何かを探すように180度を見回したがそれでも納得できないようで、今出て来た空港ビルを振り返り「来てない、誰も」不思議だと言いたそうな瞳を佑に向けてマキはそう言った。(おそらく、マキの後輩の女の子たちのことを言ってる)一応、佑もそれらしき人影を探してみたあと、マキを振り返ると彼女は今出て来たばかりの空港ビルに戻ってゆく。 「おいおい・・」佑が追いついたときマキはすでに公衆電話の受話器を取り上げたところだった。呼び出し音が聞こえてきた「・・・・・・・」ガチャ!少しばかり乱暴な音を立てて受話器を元に戻してマキが振り返った。「出ない!」「あの子達だっていつも暇だってことはないんじゃ・・・」「昨日、電話入れといたの!明日帰るからって!」「迎えに来るって・・・」そこで佑のせりふは遮られた 「サチ!・・・やっとかよ」 マキの視線を追うと二人の女の子が、ちょうど開いたばかりのドアにダッシュで駆け込むところだった。「せんぱ~い!」「遅いよ!」「オス!すいません!!」「こんなとこでそんな挨拶してんじゃないよ!いい加減昔を忘れろって!」ってマキ、お前のほうが元ヤンのカラー、そうとう濃いって・・・ しょげかえる後輩二人、背の高いほうがサチという名前らしいマキは彼女に荷物を持たせ駐車場まで案内させると、当たり前のように迎えの車に乗り込んだ。「佑、早く乗って」背の低い子の方が「どうぞ!お乗りください」 と佑の荷物までトランクに詰め込んでくれて助手席に乗り込むと両手に缶ビールを持って振り返った。「これどうぞ、さっき買ったばかりなんでまだ冷えてると思います」「お、気が効いてるじゃん」 とマキ「悪いね」 と俺が言うと「ふん」とマキのその一声で車は走り出した。 (サッちゃん、落ち着いて運転してね・・・背筋そんなに伸ばしちゃって まるで自動車学校の教習生みたいだよ・・・かわいそうに・・・) 良かったら応援ポチお願いします
2013.12.12
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Dear昭和 魅惑の渚に別れ告げるとき海と、素朴で温かい人々、そして錆び付いた習志野ナンバーの2tトラックに別れを告げ佑とマキ、撮影スタッフたちを乗せて飛行機は滑走路を離れ、機首を上げて上昇を続けている。それぞれの胸の内にそれぞれの想いをしっかり抱きかかえた若者たちの熱気が機内に充満していると感じた。平行飛行に移り、シートベルト着用のサインが消えるとマキはハンカチを取り出して何やら書き付けている。「はい、これ持ってて」彼女はすらすらと書き上げたハンカチを佑に渡しながらそう言った。佑はハンカチに書かれた文字をしばらく見つめ、肘掛の上のマキの手に彼の手を重ねた。ハンカチにはこう書かれてあったのだ『忘れらないフライトになるわ、きっと。ありがとう』 ブログランキングに応援をお願いします。
2013.11.23
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魅惑の渚 (5) 短い時間のうちにいくつもの夜が過ぎ去って行ったような二人の時のあと「明日の朝刊の日付が今日と同じならいいのに・・・」佑の腕の中でマキが言った。「俺も同じ思いだよ」「本当に?」「ああ、嘘じゃない」佑の言葉を確かめるかのように彼の目を凝視してからマキが言う「仕事、なんでもいいから決めてくれない?」「俺もそうしたい、けど急にどうした?」「父があんたに会わせろって言うの・・・」来たか!いつかは来る、そう覚悟はしていた佑だったがついにその日はやって来たのである。「分かった。東京に帰ったらすぐに決める」「本当!?」「ああ、だいたい目星はつけてるし、頑張って決めるさ」マキの腕が佑の首を巻き締め、彼を求めた言葉にできないほどの彼女の喜びが佑にも伝わった。マキの思いに応える前に佑は「明日の朝刊の日付はちゃんと替わってなけりゃいけない。俺たちの新しい旅立ちの日だからな」「佑!」Love. Again!今更ながら気に入っている曲です。イーグルスで「駆け足の人生」Up in high quality! by TheRotsenestorさん 応援のポチ、宜しくお願いします
2013.11.17
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魅惑の渚 (4)昔から多くの男たちが克服してきた事とはいえ自分の恋人に胸を焦がした男がいる。男の胸の奥にあった微かだが確かな火種に自らの手で水をかけ見えない炎を消した男がいる。まったく見ず知らずの他人なら「なんか悪いな」などと思うことも無かっただろうに「お先に失礼しまーす」そうやって明るく挨拶をくれながら撮影機材を抱えて砂浜をあとにしてゆくスタッフたちの中に秋穂は居た。昨日までは、大きく明るい声で『佑さん、上がりますよー!』そんなふうに声をかけてくれていたのに今日はみんなと一緒に、しかもやっと聞き取れる声で・・・・・諦めさせた対象の片割れがこの俺だなんて・・・しかし、こんな時でも女は、特にマキは強かった。ただの男友達には軽く手を振って応え、もう一方の手は惚れた男の手に置いて指先を絡めて、さらに男の心を読み取る「仕方ないでしょ、あんたには彼を慰めてあげることなんて出来ない」「わかってるって、そんなことくらい俺にだって・・・」どうかしらね、と言いマキは俺の胸に預けていた頭を起こし振り返った。「あたしがここへやって来たら、そして自分の気持ちに素直になったならあんたに甘えることになる。そしたらこんな事になるかも知れないって分かってて、それでもあんたに会いたくて此処に来た!・・・ 」ああ、マキ!俺は身体を起してマキを後ろから抱きしめた。そして言った。「マキ!もういい!相変わらず鈍感な俺のためにお前が自分を責めることなんてないんだから! ごめんよ!そして有難う、会いに来てくれて!」いつの間にか太陽が海に隠れる準備を始めていて海辺の鮮やで多彩な色は黄金色に染められつつあった。マキが目を閉じているのは、眩しいからだけでは無かった。彼女の幸せそうな表情で、そうだとわかる。再びサングラスをつけると、マキは立ち上がり佑にむけて手を差し出した。ホテルへ戻り、シャワーを浴び、着替えを済ませみんなと共に夕食を摂っている間は普段どおり会話に参加していたマキだったが、食べ終えると唐突に口を開いた。「ごめんなさい、あたしなんだか眠くなっちゃったみたい楽しくおしゃべりしてる時に悪いんだけど、先に部屋に戻るわね。今日はお疲れ様、おやすみなさい」って手を振って、もう歩き出している。「じゃあ、悪い!俺もこの辺で・・・お疲れ様、お先です」と佑も席を立った。「お疲れ様でした~」若干無理した挨拶を受けながら佑はマキを追う今夜、彼の部屋に人の温もりが漂うことはまず無い夜はマキの部屋から更けていった。 秋穂君はこの歌が好きになったそうです。 「少年時代」 井上揚水 Up主はnishiyan000さまです 応援のポチをよろしくお願いします♪
2013.10.25
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ティータイムにしてみませんか?あの頃のマキを思い出して掴まえた散文を読んでやってください。 「こぼれ落ちた星」夕焼けが空と大地を染めた後誰かが この世界に大きな天幕を張ったけれど、天幕は遥か昔からの使い古しらしく近づき過ぎた小さな星たちは 時に天幕のほころびから こぼれ落ちてしまうそんな慌てんぼうの星たちにはせめて流星という名前をつけてあげようもうひとつ流れた星に乾杯すると空になったグラスの中で氷が音をたてたほろ酔い気分のぼくのひとりごとをとなりで笑ってる君は・・・とても贅沢なひとだね 沢田 佳 (マトリックスA) 無粋なお願いで、すいません。
2013.10.17
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魅惑の渚(3) 浜辺でマキに日焼け止めを塗ってあげている間ずっと嬉しそうに笑顔で俺に話しかけるマキ・・・ 波打ち際で子供のように戯れる時も、ずっと俺の手を離そうとしないマキ・・・ 「そんなに俺と一緒に居たかったのか?それほど寂しかったのか?」 いつもなら、マキの返事はクールなのに今日は彼女から俺の腰に腕をまわし、頭を肩に預けて!耳元で囁くように言った。 「そうだよ・・・でもそれだけじゃない。 秋穂君を見て・・・」 振りかえり、秋穂を見つけて気がついた・・・彼はハっとして、俺たちに背中を向けると、スタッフ達の話の輪に混ざっていったのだ。 「そうだったのか・・・秋穂の奴・・・」 「そう」 「だったら、なんでいつも以上にイチャついた?」 「だからあんたは鈍感だって言われるんだよ・・・彼とおなじ年頃のあんた、年上の女に恋ごころを抱いた経験て、なかった?」 ・・・あった、たしかに・・・少年期から青年期へその過渡期だったと思う・・・ 「あいつ、あの頃の俺とおんなじ経験真っ最中なんだな・・・」 「そういうこと、そんな時、相手の女に優しくされたらどうなる?」 今日はやけに?が多いなぁ・・・ 「俺ならますます夢中になってたな、いつも・・・」「そんなに何度もかよ・・・」 そう言って睨みながら、おれの脇をつねった。 「痛!」「聞いてもないこと白状してんじゃないよ」 「・・・・・・」 (きついけど、俺、こいつ好きなんだよなあ・・・) 「だから、この撮影終わる、っても予定じゃ明日だろ?明日までイチャついてていいから、あたしがあんたに夢中だってそう思わせれば諦めてくれるさ、『はしか』のようなものなんだし」 「おまえが俺に夢中だってことは事実だしな・・・」 頬を赤く染めてうつむいてしまったマキの手を引いて浜辺に上がるデッキチェアを座れる角度に起して、俺が座る。 脚を開いて、その間にマキを座らせると、彼女は俺の胸に背中を預けた。眩しいほどの夕陽が二人を影絵にして光の中に浮かばせている 秋穂には、眩しすぎる光景だろう、けど多くの野郎たちが通ってきた道だ きっと奴も乗り越えてくれる・・・そう信じていいよな秋穂・・・ 黄金色したゆうやけの中、マキと佑、ふたつの影絵の頭部が重なった。 秋穂君、恋の痛手は新しい恋で!クロストファー・クロスで「ニューヨークシティ・セレナーデ」Up主は jmjbj993000さまです 応援ポチをよろしくお願いします♪
2013.10.07
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魅惑の渚 (2) 佑は非日常的な状況にあることに気付いた。 マキは佑の腕の中で、かなり小さな面積の水着に覆われているだけの 殆ど裸に近い状態にあり、佑もトランクス系の水着1枚 身につけただけ・・・おまけに太陽は真上にある。 それはつまり、日中の野外にいるということだ。 二人は浜辺の人々の視線さえ忘れ、視覚と触覚によって呼び起こされた 本能的な欲求に流されつつあった! そこに佑が気付いたのは、大脳新皮質が扁桃核や大脳辺緑系の情動を制御し、 感情の暴走を止めようと働いたから? 難しい理屈はどうであれ、佑は蕩けそうになっていたマキの唇を開放し、 彼女を抱きしめていた腕の力を抜き解いた。 マキはやや不満気味だったが、彼女の性格上、甘い言葉を吐くことは無く 「あたし、まだ日焼け止塗ってなかった。佑ちゃん塗ってちょうだいね」 「佑ちゃんって、俺のほうが年上だって・・・」 佑の言葉は、マキの笑い声にかき消されてしまった。 軽く舌打ちした佑をしり目に、マキは砂浜へ向けて泳いでゆく 「あいつめ・・・」 口ではそう言いながら、マキを追って泳ぎだした佑は、 何だか楽しそうにみえる。 マキと二人でいる時間は、佑にとって贅沢なひとときです。そんなとき、彼はまるで「勝利者」の気分を味わう。 応援ぽち宜しくお願いします。
2013.10.02
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第3章 魅惑の渚 (1) 波打ち際から海に駆け込んで、いよいよ海水の抵抗が強くなったところで より深みに届くよう、海砂を蹴り手を伸ばし入水角度を浅めにダイブした 火照った身体が海の中で急速に冷めてゆく それでも佑の胸は熱く燃えていた。 (マキを抱きしめたい!) 珊瑚礁の内海は遠浅だ、50メートルほど泳いで、そっと足を下ろすと そこはまだ佑の胸の深さしかなかった。 振り返ると、マキが予想外なほど自然に波を切ってやってきた。 「マキ!」と声をかけ、手を差し出した。 両手で引き揚げてやると慌てる様子もなく佑の前にマキは立った。 その目からは、突き刺さるような光が消えていて 「あたしのこと、一人ぼっちにしたこと、もう許してあげるよ」 そう言った。それはありがたいが、俺も同じだったよ 「ん、なにが?」 「俺だって一人きりだったんだ」 「何言ってんの、皆といっしょに楽しくやっててなにが一人きりなのよ」 「そうだな、おれも今気付いたんだ。皆といても・・・お前がいなけりゃ独りきりなのと同じだった。そうだったんだよ、マキ」 マキは顎を上げた。いつもは大きなその瞳が細くなった瞼のせいで 3分の1ほど隠れて、おまけに濡れている 「なによぉ、勝手にひとの胸を貫いてくれちゃってぇ・・・ 「痺れてる・・・」 「ん?」 「あたしだって女なんだから、あんたに不意打ちくらって・・・ 痺れちゃってるんだってば! あんたまで歩けないよ・・・」 そんなに? さすがにそれは口には出せずマキの手を取り抱き寄せる 言葉など見つかるわけもなく、俺はマキの唇を塞いだ。 アンチェインド・メロディ エア・サプライ 歌詞入り(作成者jmjbj993000さま) 応援よろしくお願いします
2013.09.25
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誘惑の落陽 (12)送迎のバスに揺られて、と言うほどの距離ではないのだが。道の両側に隙間無く植えられた背の高いさとうきび畑を見て、マキは「すごーい!」と、佑に拗ねてることを忘れてティーンエイジの女の子のような声を上げてしまったり、島の中心部に建つ民宿の傍に円柱状の古い郵便ポストを見つけると「すごッ!懐かしい!」と指差して嬉しそうに白い歯を佑に見せたりしたあとサンゴを積み上げて造られた石垣に並んで咲くブーゲンビリアに心を奪われたように目を細め「きれい・・・」と、ひとりごちて間もなくホテルに着いた。「早く泳ぎたい!」と訴えるマキを、もう11時過ぎてるから「昼飯食ってからにしようよ」「ビーチパラソルも借りなきゃ・・・だろ?」けんめいに説得しつつ、マキのキャリーバッグを引きずりながら部屋へ向う佑それから約1時間後、ランチをかきこむように食べ終えた佑は海パンに穿き替えていて、撮影隊が片付けを終えたその場所に秋穂君に借りたビーチパラソルを立て、デッキチェア(ホテルが用意した物)に日陰を落とすように角度を調整した。それは佑が自発的にやっているわけでは無く、秋穂君のアドバイスだ「今夜、楽しく飲んで過ごすためですから・・・」(そんなにおっかないのか、マキのやつ? ・・・まあ元ヤンの後輩に慕われては、いたな・・・)とそのとき、ホテルの陰からマキが現れた。「よお!こっちだ・・・ょ・・・」語尾が縮小して開いたままの口を慌てて閉じた佑の元へマキは、ごく自然に歩み寄り、デッキに腰を下ろした。けれど彼女は、佑の変化に気付いていた。サングラスの向こうでマキの目が輝く、佑の心の動揺を確信した上にさらにそれを楽しんでいるかに見える悪い娘だ・・・佑は思った(マキはやっぱりモデルだった)キャップを目深にかぶり、サングラスをかけ、長袖のパーカーを着ているが、下は水着だけでショートパンツは穿いてなく、足にはかかとを固定できるビーチサンダルを履いている。どこでも見かける姿だが、マキが着ると特別な輝きを放つようだ。さらにパーカーを脱ぎ、オレンジ色の水着だけになると、真っ直ぐに伸びる、細すぎないが長すぎる脚も、魅力溢れる上半身も、彼女の素肌を知っているはずの佑にとっても眩し過ぎるほどだ。「暑いなあ!俺、ひと泳ぎしてくるよ」そう言ってビーチサンダルをデッキチェアの脇に中腰に置くと両手を頭の後ろにまわして髪を束ねているマキと目が合った。顎を引いてサングラスの上から小悪魔のように佑の目を捉えて言った「なんだか、焦ってるみたいだけど?」「あ、焦ってるって、誰がだよ」誰がだよ のあたりですでに佑は反転して海へ駆けていた。 彼を追う風にマキの声が乗り佑の耳に届いた「カワイイじゃない、そろそろ許してあげようかしらね」 ランキングに参加してます。応援ポチしていただくと嬉しいです。
2013.09.17
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誘惑の落陽 (11)島の空気が変わった。それは俺ひとりだけの思い過ごしなのかもしれない。 それにしたって!わずか5日か? 6日、会わずに・・・電話もしなかったが・・・それだけで「今度、ほったらかしにしたら前歯へし折ってやる!」って「ほう、やれるもんならやってみな」・・・このせりふは最近中身が減りつつあった佑の堪忍袋の中へ落とされてしまった。 マキは佑の顔を見ることなく、彼の胸を両手で押しやり、並んでいる送迎バスの方向へ一歩踏み出して立ち止まり言った。 「あたしたちを乗せてってくれるバスはどれ?」「あたしたちって・・・マキはどこに泊まるんだ?」振り返ったマキを改めて頭から、足元までチェックしてみた。 白いTシャツ、ジーンズのハーフパンツ5分丈、スリッポンスニーカープロのモデルにしては随分シンプルだと感じたが、佑はシンプルな格好が好きだ。おっと、鋭い視線を感じたぞ! 「あんたが嫌じゃなけりゃ、同じホテルに予約してんだけど」 けっこう尖った言い方だなあ・・・けどマキらしくて何だか嬉しい・・・ 「あ、取れたんだ『コンドイ』! ならあのバスだよ!」佑は慌てて『リゾートホテル・コンドイ』と大きく白いペイントで書いてあるマイクロバスを指差し、マキの横顔に笑顔まで浮かべて、伝えた。 「あれね。じゃあそれ持ってきて」と、そのときだけ佑を見て彼女のキャリーバッグを指さした。「はいよ!」佑は、いそいそと大きなキャリーバッグを引き回しながらマキの後を追う (俺は、Mだったのか?・・・)それにしても、どうだあの歩きっぷり!颯爽としてるじゃないか! やはり、マキを迎えて、この島の空気は変わった。 ランキングに参加してます。応援よろしくお願いします♪ どれか一つでもポチっとお願いします ☆
2013.09.09
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※再編集しました^^;3月半ばだというのに、竹島の小さな港の船着場は真夏の漁港のようだ。 石を積み上げてこしらえてあった昔の船着場を拡張したものだが、 やけに白っぽいコンクリートで固めてあるものだ。 そんなふうに見える、 それとも強い日差しを反射しているせいだろうか? まるで白い絵の具を上塗りしたかのようにさえ感じた。 下を向いたまま、軽く首を振った佑の口元から白い歯が見えた (目に映るものを何でも観察していなけりゃ、落ち着けないほどマキのこと待ち焦がれているのか俺は・・・) 顔を上げると、何時の間にかマイクロバスの数が増えていた。 昨日、並んで記念に撮影してもらった水牛車も見える ということは!この島中の民宿やリゾートホテルの送迎バスが 船着場に押し寄せているってことは!! 「プワァ~ン・・・」 佑が気付くと同時に聞こえてきた、あの何とも言えず愛嬌のある 汽笛を鳴らしてこの竹富島へ接近する船影が見えた! 本来、汽笛は船舶同士の「衝突回避」や「追い越し」を知らせるものらしいが、港で待つ者には「今来たよ~」と聞こえる。 やがて接岸のために逆回転をはじめたスクリューによって 海底から巻き上げられた白い珊瑚の砂がエメラルド色の海水 と混ざり、綺麗な「水色」に変わるのを楽しむのだが、今は違う フェリーの甲板を見上げて探している。ただ一人の女を・・・ いた! 厳しさの中に不安を隠しきれない目が俺を探している なんて綺麗なんだろう・・・ その目が俺を見つけた! 立ち止ったマキの目が大きく開いたそしてまた細くなる・・・?・・・ん!なんだ?! マキは日本人にしては珍しく「鳶色の瞳」をしているのだが、 その目が潤んで見えるのは、いつも上がり気味な眉が平行に 並んでいるからか・・・いやいや、マキは歯を食いしばっているぞ! 俺から目を離さずに歩き出し、タラップを降り始めた。 小さなフェリーだから、甲板と船着場のコンクリート面との高低差は あまり無い。 とにかくマキの荷物を持ってやらなきゃ、送迎バスの間をすり抜けて 駆け寄った。 タラップのすぐ手前に立つと、マキはもうすでに船着場に降り立っていた。 「良く来たな」 そう言いながら、マキの手からキャリーバッグを受け取ろうとした俺の手は空を切った。マキが両手を離しバッグを地面に置いたからだ。 もっと驚いたことに、マキの両手が伸びてきて俺の首にしがみついた。 マキの頬を伝う涙が俺の口に伝わってきて・・・それから・・・彼女は 子供のように口を歪めて言った。 「今度、ほったらかしにしたら前歯へし折ってやる!」 いつもと表情は違っているけど、間違いなくマキだ。 昭和の名曲ですね♪ ZARD「息もできない【・・くらい 君に夢中だよ】」 ランキングに参加してます。応援のポチお願いします♪
2013.09.04
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誘惑の落陽 (9) 「明日の朝一で羽田を発つから」って そんな情報だけじゃ分かるわけないけど、日航か全日空なのか・・・せめて何便かだけでも教えてくれていたら、石垣空港に大体何時くらいに到着するのかがわかる。 そしたらここまでの連絡船の着時間がわかるというものだろ・・・まったく、東京でもそうだったけどこの南の島でも、マキに振り回されるのか・・・ などと秋穂の前では聴こえるかどうか分からないほどに呟いてみた佑だが (あいつ水着忘れてんじゃないだろうな・・・そしたら一緒に泳げないぞ・・・) 船着場に民宿やリゾートホテルの送迎用マイクロバスが集まり始めるのを見て (もうそろそろかな?) とやっぱり心待ちにしているのだ。 昨日の夕方 「佑さんどうかしました、顔色悪いっすよ」 と秋穂君に気遣いをさせたあと、速達を受け取りに駆け降りた俺を彼は心配そうに見ていてくれた。だから、内容は言わないで、ただ明日、羽田を朝一の便で発ってここへやって来ると、それだけを告げた。 「朝一で飛んでくるんですか、マキさん・・・」 「ああ、・・・そう言ってたな・・・」 「なら、8時半頃に那覇空港でそっから石垣空港に着くのが・・・ちょっと待っててくださいよ、すぐに戻りますから」 秋穂君は航空便から船の定期便まで調べてくれて、 「マキさんがこの島に着くのは、早くて10時半、遅くても11時半ってとこでしょうだから、佑さん、明日は10時まで撮影の準備と後片付けを手伝ってもらえば、あとは、大丈夫ですから。マキさんのこと迎えに行ってあげてください」 気付いたら、俺は秋穂の手を握りしめていた。彼の顔が歪んでいる!力、入りすぎたようだ。 「ご、ごめん、でも本当にそんなんでいいのかい?」 「一応、ここの責任者はボクなんで、それにボクもマキさんの機嫌損ねたくはありませんから」 みんな思いはひとつか・・・ 「ありがとう、じゃあ今日はもう早く寝ることにするよ。明日、寝坊したくないからね」 秋穂は大きく頷いて 「マキさんのからみ酒は、きついですからね」 そう言った。 だから頑張って早起きしたよ。マキ!早く来い! 夏でもあるし、佑の気持ちもきっとこんな感じでしょうか TUBE 「夏を抱きしめて」 応援ポチをお願いします♪
2013.08.21
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誘惑の落陽 (8) 速達 フロントから知らせがあり、降りてゆくとマキからの速達が届いていた・・・ いったい何故?そしていつ書いた?混乱したまま部屋に戻り封を切る。 「 佑・・・あんたの前だと素直に言えないこと、今、言っとく。 あなたに出会うまで いのちがどんなに大切かなんて ほんとにわかっては無かったあたしって・・・あなたを失いたくない そう願うあたしに気付かされた夜こぼれ落ちた涙が 教えてくれたの あなたのいのちが いついつまでもつづきますように そしてあたしのいのちも あなたとおなじだけつづいたなら それだけできっとそれだけでしあわせだと 感じたの あなたのいのちは あたしの宝ものだってあたしを こんなに幸せにしてくれる あたしのいのちも 宝ものなのよあなたのそばにいて 生きてゆけるなら この手紙、記憶して焼くか、そうでなければどこかあたしに見つからないようにしまっておいてよね マキ 」 おしまいの一行はなんだかぼやけて読めない、だから覚えきれない。焼き捨てるなんてできるわけないだろう! 今夜は I'll Be There お聴きください。 応援のクリックをお願いします♪
2013.08.04
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誘惑の落陽 (7) 「電話番号、忘れたのかよ」 このたった一行のメッセージを見て、佑は全身に冷水を浴びたようにぞっとした。人の目には見えなくても、佑は瞬間的にホテルの床から30センチは跳びあがった・・・重力に逆らって彼の身体は床を離れたのだ!その感触さえあったのだ、例え八重山諸島全住民のブーイングを受けようと、彼は「いや!確かに跳んだよ!」と言うつもりだ・・・ (とにかく電話だ、うんそれがいい、しかも直ぐにだ!)カウンターで部屋のキーを受け取り、ダッシュ!決して忘れてたわけではない・・・そう自分に言い聞かせながらホテルの交換にマキの電話番号を告げる、ここはまだ直で市外には繋がらないのだ。 今日がオフなのか?だとしても留守録がある・・・本人に出て欲しいような、そうでないような複雑な気持ちで呼び出し音の回数を頭で数える・・・1・・・2・・・3・・・4・・・5・・・「はい、朝川です。」「あ、マキ?・・・」「・・・・・・・・・・・・」「もしもし、聴こえてる?・・俺だよ」「どちらの俺さまでしょうか・・・」 怒ってる!かなり怒ってる!どおスベエ・・・ 「あの、あれだよ別に電話番号忘れたわけじゃなくて・・・」「言い訳してんじゃねえよ!この唐変木!」「そこまで言うか?仕事で来てんだよ遊びじゃないんだから・・・」「・・・言い訳はそっちで直接聞くから・・・」 佑の心音が明らかに乱れた、跳ねたな、声の高さも同じくらい。 「そっちって、沖縄に来るってことか?」「嫌なのかあたしが行っちゃ」「そ、そんなんじゃ・・・」「なら、心配すんな。最近忙しかったから、骨休みしといでって五日間オフくれた」「そうか・・・それは良かったな」「ふん、どうだかな・・・今度のデルモはかなりの美人だっていう話だからな・・・鼻の下伸ばしてられんのも今のうちだ。明日の朝一で羽田を発つから」 「そんな、俺が鼻の下伸ばしてる・・・・・」切れた・・・受話器を置くと 「佑さんどうかしました、顔色悪いっすよ」カメラマンの秋穂が開け放したドアの前で心配そうな顔して立っていた。 俺、ドア閉めるの忘れてたのか・・・・・・ この曲はマキの想いと同じではないでしょうか 人気ブログランキングに参加中、クリックお願いしますね♪
2013.07.26
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誘惑の落陽 (6)今日は夕焼けも見れない仕方がないか、昨日から宿泊客は俺らだけ、20日過ぎ辺りからは予約で満室らしい。 「今日は三線(さんしん)の音を聴きながら・・・泡盛・・・かな」今朝、星の砂を拾い集めたあと、佑は昨日見かけたはずの店を探した。こんなときは島の狭さが幸いするもので、「ソフトドリンク、貝殻加工」と走り書きした看板を見つけるのに10分もかから無かった。店の前には、「習志野」ナンバーの2tトラックが錆付いたまま放置されていた。ガラスの引き戸を開けながらも気を引かれ、何度も振り返った。女性オーナーが小瓶に星の砂を詰めてくれてる間、トロピカルドリンクを飲みながら俺の興味の的について尋ねてみたら「わたしの嫁入り道具を運んできたの千葉から」 「・・・・・・・?」 彼女は表の動かなくなった2tトラックを一瞥してから俺に目線を戻して言った。「どうしてそこにあれがあるのか知りたい?」俺の思いを読み取ってくれた。うん、うん、と頷く。「地元のマリンスポーツインストラクターと・・・海に惚れて、千葉で廃車寸前のあれを買って、必要なものだけを載せてこの島に引き返して来た。そのまま彼と海と、半分ずつと結婚してこうなったのよ」「なるほど・・・・・」 何がなるほどなのか、 本当はまだ聞きたいことがあって、けれど開きかけた口を閉じてしまった。それは彼女の眼差しの奥に 『それ以上明確な訳などないし、あったとしても言う必要も無いわよね』 そう、明確に読み取れたからだ。 小瓶の首に結んだカラフルな紐を人差し指に引っ掛けたままホテルへ戻る道すがら、一軒の民宿へ立ち寄り今夜の予定を尋ねる。泊り客でもない俺たちに三線を聴かせてくれると言う。じゃあ、泡盛2、3本用意しててください、とお願いした。 ホテルに戻るとメッセージが届いていた。 「電話番号、忘れたのかよ」 ━ マキ 様 ━ 待ちきれない、マキの気持ちは・・・マライア・キャリーのこの曲でしょうか? ブログランキングに参加してます。応援のポチお願いします♪
2013.07.05
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