マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2008.07.29
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孤高の犬と風に飛んだ帽子

 浜集落を過ぎると間もなく大宜味村(おおぎみそん)に入る。この村は沖縄の中でも特に長寿なことで有名だ。そして喜如嘉(きじょか)集落の中を歩む。しんと静まり返った家の庭にはバナナの葉のような植物。これが芭蕉で、その繊維で紡いだのが国指定重要無形文化財の「芭蕉布」。とても繊細な生地で昔は王朝に納められ、王族の夏服として用いたとか。

 海沿いに「板干瀬」(いたびし)の標識。炭酸カルシュームがセメント化して板状の石になっている珍しい海岸だ。県指定の天然記念物とか。辺土名高校前のバス停でお握りとゼリー状の栄養剤を補給。大兼久集落辺りではついに脚までが痛み出す。名護までの道はまだまだ遠い。昔の人の苦労を考えてみる。食べ物はサツマイモくらいなもの。腰に下げた抱き瓶(だちびん)に入っているのは水だけ。そんな粗末な食料で、テクテク那覇や首里まで歩いたのだと思う。それに比べたら自分は何と贅沢な旅だ。

 涼しい集落の道を行くと、役場と大宜味小学校があった。根路銘(ねろめ)集落でグァバ茶を買う。柿の葉も入っているので体には良さそうだ。まもなく国道脇に「みちの駅おおぎみ」が見えて来た。16時15分。腹が減ったし汁も飲みたいので沖縄ソバでも頼もうと思ったら、麺類は全て売り切れとのこと。仕方なく「味噌汁定食」を注文。沖縄風の味噌汁は味が薄い代わり具沢山で、ご飯付きなのだ。

 味噌汁の具は豚の三枚肉、豆腐、玉子、レタス、ニラだった。それにゴーヤのサラダと山菜の漬物。箸置きは何と芭蕉の葉を折ったもの。「もしかして芭蕉の葉?」と店の女性に訊ねると、彼女は建物の外を指差した。なるほど指の先には1本の芭蕉の樹。そして海風にそよぐ葉が見えた。ここで立て続けに3杯の冷たい水を飲み干し、味噌汁も全て飲んだ。最後に食卓塩を手に取って舐める。そのお陰で意識が鮮明になった。やはり軽い熱中症になっていたのだろう。

 元気を回復して再び歩き出す。海上の遥か遠くに幾つかの島影。伊平屋島と伊是名島は分かるが、その先にも2つの島が離れて見える。あんなところに島があるはずは無いのだが。ほどなく塩屋湾に到着。紺碧の深い海。ここは海神(ウンジャミ)の祭礼が有名と聞いた。塩屋橋をまず渡り、次に宮城橋を渡り終えた時、前方から一匹の犬が橋を渡って宮城島へ歩いて行った。あれは間違いなくトラー(琉球犬)だ。明るい茶色に黒い縦筋が入って、まるで虎のような模様だから直ぐに分かる。野良犬のようだが悠然としたその態度。孤高の犬は静かに視界から消えた。

 もう夕方なのだが陽はまだ高く、しかも暑い。頭から水を掛けながら歩いているのだが、掛けても掛けても蒸発し、直ぐに乾いてしまう。平南橋の上まで来た時、突風が吹いた。慌てて頭を押さえたが帽子が無い。下の河原を覗いても分からない。仕方なくタオルハンカチを頭に載せたが、それでは暑さが凌げるはずもない。遠回りして河原に下りてみる。2組の客がテントを張っていた。しばらく捜してようやく帽子が見つかった。やれやれ。安心して川面を見ると魚が泳いでいる。ひょっとしてあれが幻の琉球アユか。<続く>





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Last updated  2008.07.29 19:08:40
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