マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2009.10.23
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 会津魂と自然美 

私の心配をよそに、コースの風景はどんどん変化して行く。スタートから1km辺りで東山ダムが右手に見え、ダム湖が暫く続いた。木々の中には色づき始めたものも多く、都会よりもずっと早く秋を迎えていることが分かる。川の名は湯川。いかにも温泉場らしい名前だ

最初の給水所は4kmほどのところだろうか。スタッフの人が2人、小さな柄杓を手にしていた。私はそれを奪うようにして飲んだ。冷たい山の水が喉に沁みる。帰路にも立ち寄ったところ、何と2個の柄杓は雨だれのように岩から滴る湧き水を受け止め、ほんの僅かしか溜まっていなかった。あれではとても選手の給水に間に合わないだろうと思いつつ、なぜか微笑ましくなった。

「これくらい緩い坂なら楽ですね」。そう言って追い抜いて行ったランナーの背中に、「頂上付近はきっと傾斜が厳しいんじゃないの」と応じる。なおも走って行くと、渓谷に小さな滝が見え出した。「凄いなあ」。驚いているランナー。「これは自然そのもののコースだね」。私も驚く。


どれくらい走った頃か、「救急連絡員」のゼッケンをつけた女性ランナーが目の前に見えた。興味を抱いて話し掛けると、スタッフの人にその役目を頼まれた由。東京からレースに参加したが、地元出身なのだとも。そこで私の質問癖がむくむくと頭をもたげた。「会津の女性の気質はどうなんでしょう」。突然の不躾な問いにも関わらず、暫く考えた後で返って来た答えは「我慢強さでしょうか」。

ふ~む。案内してくれた小父さんは会津人の気質を「素朴さ」と答え、今また女性ランナーからは「会津婦人は我慢強い」との返事。なるほどと思う。きっと素朴で我慢強い会津魂が、かの会津戦争でも幕府に対する忠義心と相俟って、最後まで官軍と戦う道を選択させたのだろう。

「ならぬことはなりません」とは誰の言葉ですか。この質問に対しては、「野口英世のお母さんじゃなかったかな」と彼女。会津若松市内の看板に書かれていた言葉を思い出して尋ねてみたのだ。「駄目なことは駄目」。「人の道に外れたことをしてはいけない」。今時そのような道徳的な言葉を市内の中心部に堂々と掲げている都市が他にあるだろうか。誠実で清廉な会津魂は、やはり今でも健在なようだ。

女性ランナーの名前はEさん。現在お住まいの市を聞いて思い当たる人がいた。「ちっちさんを知っていますか」。「ええ、知っていますよ。良くお宅に伺っています。ご主人のさり~♪さんはお料理が得意なんですよ」。ひゃ~。これは驚いた。同じ市なのでもしやと思って尋ねたのだが、かなりの仲良しだったようだ。

続いてSパパ、星峰さん月峰さんご夫妻、髭カクさんなどの名前を出してみたが、どなたも良くご存知とのこと。その後はSパパが走った「トランスヨーロッパ」の話、国内の著名なウルトラマラソンの大会などの話に花が咲いた。偶然話しかけたことがきっかけで仲間の輪が広がったような気がし、心配事もコースの厳しさもすっかり忘れてしまった私だった。<続く>





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Last updated  2009.10.23 19:18:37
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