マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2011.04.30
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< 小さかったリュック >

 前夜からマラニックの準備はしていた。だが目覚ましはセットしておらず、目が覚めた時に起きてそのまま走りに行く積りだった。目が覚めたのは4時。カーテンを開けると微かに空が白み始めている。自分が考えた時間より遅かったが、それは仕方が無い。前日はニューシューズで走り、楽天のホーム初ゲームを観に行った。それだけでもかなりの疲労。楽天の攻撃中はずっと立っての応援だからだ。

 手早くランニングスタイルに着替え。脱いだものを風呂敷に包み、全てのものを小さめのリュックに押し込んだが入らない。これには驚いた。折角赤の点滅灯2個をピンで留めていたのだが、大きめのリュックに移し替え。それから、ささっと朝食とトイレを済ませ、新聞のスポーツ欄に目を通す。前日の勝利で楽天は2位に浮上していた。

 寝ている妻を起こさないよう静かに玄関を出、愛犬を刺激しないよう裏の垣根を乗り越えて出発。時刻は4時40分。いよいよ冒険の始まりだ。この日の旅は国道48号線の関山トンネルを抜けて、山形県の天童駅までの62.4kmを走る予定。道路が狭い上に、大型のトラックがビュンビュンスピードを上げて走る危険な場所のようだ。

 狭い道に、狭いトンネル内。私が尋ねた走友のほとんどが危険だから止めた方が良いと言う。だが昨年の笹谷峠越えで会った自転車の小父さんは、関山トンネルを通って山形へ抜け、さらに笹谷峠まで越えている。あの小父さんに出来たのだから、自分にも出来ない訳はない。私はそう信じていた。

 楽しみにしていた4月のマラニックは、思わぬ大震災の勃発で中止になった。その代わりチャリティランでフルの距離は走った。5月の予定レースは自分の意思でキャンセルした。距離が60kmに縮まったからだ。大金を掛けて走るような距離ではない。「自分の足で峠越えマラニックを走れば、それに代わることが出来る。意地でも走ってやろう」。私は心の中でそう決意していた。

 それに冒険はもう一つあった。医療用インソールを入れるときつ過ぎて足が痛くなるニューシューズで、この峠越えを敢行することだ。勿論医療用インソールは入れず、シューズ本来のインソールだけ。底が軟らかくクッション性が高いと見ての判断だった。偏平足で邪魔な種子骨が飛びだしたこの足が最後まで持つかどうか。両足の底部にしっかりとテーピングは施した。心配すれば切りはない。何とか粘ってゴールしよう。

 リュックの重さは4kgから5kgの間くらいだと思う。ずっしりと重たいリュックを背負っての長距離走は昨年の8月以来のこと。この重さに慣れ、寒さにも慣れて、何とか無事にトンネルを越えたい。私の願いはそれしかなかった。危険なトンネルなら却って今年の峠越え第1弾に相応しいではないか。

 朝の冷気が身に沁みる。太陽が上がる前が放射冷却現象で一番寒いのだ。それに山に向かって走るのだから、気温が下がるのは当たり前。黄色い半袖Tシャツ、オレンジ色の帽子、そして赤の手袋は良く目立ち、安全確保に役だってくれるはず。茂庭集落から裏道に入ると、リスが小走りに道路を横切って行った。

 6時前、国道286号線と秋保街道の分岐点周辺まで来ると、警視庁機動隊車両が仙台方面に向かって行く。全部で20台を超える大部隊だ。きっと行方不明者の捜索に当たるのだろう。続いて新潟県警のパトカーが錦が丘方面へ向かって行った。どうやら他県からの災害援助隊は秋保温泉に宿泊しているようだ。

 コンビニでトイレ休憩し、お握り4個とスポーツドリンクを購入。代金は598円。田圃の脇に座りメモを記す。6時41分、ポシェットから「酢コンブ」を取り出して、齧りながら走る。これがなかなか美味しく、ミネラル分の補給にも役立つ。新しく出来た吊り橋を渡って秋保の元湯から裏道を西へと向かう。遅咲きの桜が朝空に輝いているコースはとても気持ちが良い。<続く>





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Last updated  2011.05.01 04:21:21
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