マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2013.06.13
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 「なめとこ街道」  ≫

 21.2km地点の第3ASで、ペットボトルに塩を入れ、頭から水を被る。気温は20度ほどだが、3時間近く走っているとかなり暑く感じる。膝や腰にも水。少しでも冷やせば、炎症を抑えられるかも知れない。ランナーがかなり疎らになった県道37号線は、歪みながら北上。24.4km地点の第5ASを過ぎると間もなく花巻市。

 やっとここまで来れた。だが市が変わっても農村風景は同じ。ここ数kmの間、あるランナーと同じペースで走っている。帽子はピンクで、パンツもピンク。茶髪なので女性なのだろうが、大柄で肩幅もある。スタート前に女装の男がいると聞いた。また「はるな愛」が出場しているとも聞いた。ひょっとして前を走っているのは「はるな愛」こと「オオニシケンジ」か。そう思って密かに腰の膨らみや胸を観察していたのだ。

 それにしてもなかなかのペースで、フォームが安定している。「○○時間テレビ」で芸能人がわずか数か月のトレーニングで100kmを走るのが恒例行事だが、あんなのはインチキ。数カ月ではフルマラソンでさえ無理。数年前「磐梯山・猪苗代湖ウルトラ」の66kmの部に出た梅宮アンナを見たが、彼女は数人のお伴を連れていた上、最後は父親の車に乗ったもんなあ。

 だが第6ASでスタッフと話す彼女の声を聞いて、完全な女性だと分かった。それに顔が小母ちゃん。この後も彼女の後姿を何度か見かけた。ゴール地点で会った時に話をしたら、86.3km地点の第4関門で捕まった由。間もなく左手に「高村光太郎記念館」の看板。光太郎の別荘があったと言うこの付近は良く覚えている。そして豊沢川を渡る橋が「高村橋」。

 コースは間もなく左折して山に入る。いよいよ「なめとこ街道」だ。徐々に高度が上がりランナーを苦しめる。ここは花巻の温泉郷で、道沿いにずっと温泉が続く。最初が松倉温泉。坂の途中にある志戸平温泉を記念撮影。豊沢川沿いの建物は風格があって私は好き。このホテルは送迎バスが仙台駅まで迎えに来てくれてとても便利なのだ。





志戸平温泉.jpg


                    ≪ 坂の上の「志戸平温泉」 ≫



 次に大沢温泉。次いで山の神温泉に高倉山温泉。だが鉛温泉前のスキー場がなかなか見えて来ない。不整脈の影響と2度の手術で体力が落ち、満足に走れなかったために、すっかり距離感が狂っているのだ。39km地点。右足に違和感を覚え、道端に腰を下ろす。ずっと水を被ったため足のテーピングが取れたのだろう。靴下を脱ぎ、折角のテープを剥いで捨てる。

 一旦走り出したものの、まだ違和感。だがシューズの中に手を入れると、原因が分かった。医療用インソールのカバーが水に濡れて剥がれ、丸まっていたのだ。もし乾燥したままならシリコン製のインソールは摩擦熱が生じるが、濡れた靴下を穿いているので行けるはず。そう判断して再びレースに復帰。100kmの道のりでは途中で何が起こるか分からない。だが冷静に対処して前進するしかないのだ。

 鉛温泉通過。西鉛温泉も通過。新鉛温泉を過ぎると、ようやく雪よけ用のシェルターが見えて来た。トンネル内では警備員がランナーを護っている。急こう配のトンネルを抜けると、目の前に豊沢ダム。ここは43km辺り。既にフルマラソンの距離は走った。今年走った最高は1月末の「寅さん詣り」の44km。「よし、絶対今年の新記録を作るぞ。そして行けるところまで行こう!」。




豊沢ダム.jpg


                        ≪ 豊沢ダム ≫



 わざわざ右に渡って放水の勇壮な景色を見た。ダムを過ぎると小さなトンネルで、中はひんやりとして気持ちが良い。豊沢湖を左手に見ながら山を登ると、目の前を歩くHさん発見。「頑張って50kmまで行きましょう」。そう励ますが、「もうダメだ」と諦めたような声。これが73歳の彼の最後のウルトラレースになるのだろうか。いずれは私も経験する厳しい現実だ。<続く>





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Last updated  2013.06.13 07:12:30
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