マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

2014.08.28
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城域図.jpg

 赤い線の内側が国府多賀城の範囲。地形に起伏があるため歪(いびつ)ではあるが、広さは方8町で約74万平米。標高60mの丘の頂上、つまり枠のほぼ中央に政庁が置かれていた。防備のための西門と東門があり、登城用の南門から政庁までは、直線の石段が築かれていた。国府の周囲は築地塀で囲まれ、湿地に面したわずかな部分は柵が設けられていた。

 昨日は発掘調査が戦前から始まったと書いたが、戦前から始めた発掘は多賀城の瓦を焼いた利府村(現在の利府町)の遺跡であり、多賀城の学術的な調査が始まったのは昭和35年(1960年)で、第1次発掘調査の開始は昭和38年(1963年)であり訂正したい。なお発掘早々に重要な歴史遺産であることが確認され、昭和41年(1966年)に国の特別史跡に指定されている。


多賀15政庁石畳.jpg

 これは政庁前の石畳である。


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 これは政庁の基壇。政庁の建物の変遷は4期ある。つまり3度建て直されたことになる。現在再現しているのは、第2期の基壇。これも3年前の「東日本大震災」で被害を受け、補修してある。


多賀18-2礎石.jpg

 政庁の建物の基礎となった礎石である。最初の建物は蝦夷出身の伊治砦麻呂(これはりのあざまろ)の反乱で焼け落ちた。それは発掘調査で焼けた瓦などが出土したことで証明されている。


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 政庁跡に立つ標識。少し古い時代のもので、この政庁部分だけを多賀城と認識していたのかも知れない。


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 政庁前に設置された金属製の模型。建物は第2期のものだろう。色彩は昨日の2番目の写真を参照されたい。


多賀18階段帰.jpg

 政庁のある丘から下りて、南門跡方面を見たところ。この前方下部に第87次発掘調査の現場がある。この後、私と妻は、ここから約1km東方にある、国府多賀城の付属寺院「多賀城廃寺跡」へと歩いて向かった。


多賀19廃全体.jpg

 <参考資料1:多賀城廃寺復元図>

 私が最初にここを訪れた50年前は、地名を採って「高崎廃寺」と呼ばれていた。その後、多賀城付近から「観音」と墨書された皿が発見されたことから、この寺は多賀城の付属寺院と考えられるようになった。九州の太宰府の付属寺院の名称は「観世音寺」。多賀城も同じような役割を持つ政庁であるため付属寺院があったと推定され、それ以降名称を「多賀城廃寺」に改めたのだ。恐らく正式名称は「観世音寺」だろうが、まだ確証はない。

 多賀城成立以前も大和朝廷の「前進基地」があった。仙台市太白区の郡山遺跡から出土した郡山官衙(かんが:公の建物のこと)がそれだ。数次の発掘調査により、郡山官衙が多賀城以前の国府だと考えられた。そしてここにも付属寺院が置かれたことが判明している。

 また郡山遺跡から西へ2kmほど離れた大野田遺跡からは、官衙の防備に当たった兵士の「隼人の盾」の痕跡が見つかっている。革製の盾は既に腐って存在しないが、紋様が土に転写していたのである。


多賀20廃塔.jpg

 五重塔遺構。多賀城の丘からも見える立派な塔は、恐らく蝦夷の肝を冷やしたに相違ない。国家が建てた寺も神社も、国府多賀城を精神的に防備する砦として、蝦夷の従属に貢献したのである。


多賀20-1廃塔心礎.jpg

 五重塔心礎。この石の上に塔の中心部があった。


多賀21廃金堂.jpg

 金堂遺構。


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 金堂礎石。この石を土台として金堂を建てた。


多賀20-0.jpg

 多賀城廃寺境内に立つ石塔。


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 多賀城廃寺の隣にある多賀神社。ここに政庁を置くことが決まってから、近江国の多賀大社の祭神を勧請したのだろう。「多賀城」の名は、この多賀神社から来てるのは相違ない。そして多賀城市の名称の起源にもなった。

 前述の郡山遺跡と大野田遺跡(仙台市太白区)の西方にも多賀神社がある。これも国府の鎮護と無関係ではないだろう。名取郡に2社しかない式内社の1つであることを思うと、そう考えざるを得ない。古代東北鎮護のため、わざわざ神が近江国から「出張」して来たのである。


多賀23多賀神社.jpg

 多賀神社本殿。この後私と妻は東北歴史博物館へ向かった。私は同館で開催中の特別展『日本発掘』を観覧し、その間、妻は博物館の外で絵を描きながら私を待っていた。


妻3絵.jpg妻2.jpg

 妻と妻が描いた水彩画


博2今野家.jpg

 水彩画の対象となった今野家住宅。北上川の河口付近にあった旧家を、博物館の敷地内に移築したもの。<完>





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Last updated  2014.08.28 10:37:00
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