マックス爺のエッセイ風日記

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2020.08.21
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~出雲神話を考える~

  出雲国風土記

 元明天皇によって編纂を命じられた記紀(古事記と日本書紀)だが、その一環として各国に対して「風土記」の提出が命じられた。出雲国においては出雲国造広島が監修に携わり、和銅6年(713年)~天平5年(733年)の20年間をかけて上下2冊にまとめられて提出された。他国の風土記に対して数倍の詳細さであり、記紀にはない出雲独自の神話が豊富に収載されている。以下に私見などを述べたい。



 根堅洲国(あの世)に須佐之男命(スサノオノミコト)を訪ねた大国主命はスサノオから色んな試練を受ける。その苦難を救ったのがスサノオの娘であるスセリビメ(上)。姫が大国主の正妻となる。さてスサオノオは天津神の代表格で、一方の大国主命は在来の国津神の代表。ところが記紀ではオオクニヌシをスサオノの6世の孫としたり、7世の孫とする説がある。日本書紀では息子との説もある。

 国津神が天津神の子である訳がない。また6世や7世の孫が、6世代前7世代も前の女性と結婚出来るわけがない。天皇家と在来の出雲族を無理に関係づけた矛盾が出たのだろう。



 次に大国主命の2人の妃を紹介しよう。左はヤガミヒメ。出雲の隣国因幡国(鳥取県)八上郡の豪族の娘で美女の誉れが高かった。因幡の白兎伝説では、6人もの兄がウサギに悪いことを教えて通り過ぎた。大国主命は怪我をした白兎に治療法を教えたため、白兎が知恵を授けてたためにヤガミヒメを得ることが出来た。

 右はヌナカワヒメで、越後国(新潟県)糸魚川市の豪族の娘のようだ。糸魚川を流れる姫川は古代から翡翠の産地として有名。当然この地の豪族は勢力を誇っていたことだろう。ここの翡翠は三内丸山遺跡(青森県)や遠く沖縄本島にまで届いていた。彼女も大国主命の妃となる。つまりどちらも出雲との交流の証であり、日本海を通じて協力関係があった証と私は考えている。

    「国引き伝説」の解釈   

 出雲神話の代表格が「国引き伝説」。高い山から眺めて出雲の国土の狭さを嘆いた神が、朝鮮半島、能登半島、隠岐の島などから余った土地を出雲に引っ張って来たと言うとんでもない内容。それを博物館では出雲とそれらの地との交流があった証と考える。まあ先の妃を娶(めと)る話とも通じて妥当な線だ。朝鮮半島はやはり製鉄の先進地だったため。当然九州北部との宗像氏(海部族)との交流も欠かせない。

  島根半島

 さて上の地図は島根半島を含む出雲地方。こうして見ると島根半島が元々「島」だったことが分かる。半島右手下の薄い緑色は砂州が伸びて弓ヶ浜になった証拠。半島左手下の薄い緑色の部分は斐伊川と神戸川の土砂の堆積で平野になったことが良く分かる。地図の薄い緑色はそうした土砂の堆積によって「拡張」された部分。古代の人々が国土が広がったと感じたことが頷ける事実だ。

 出雲大社がある半島左端の付け根は、沖積平野で地盤は軟弱だったはず。出雲大社の古称は杵築大社。これは神社を建てるために先ず境内を杵(きね)で搗き固めた証とも言える。



 次に紹介するのが神話三人男。左端の素戔嗚尊(須佐之男命=すさのおのみこと)は、天照大神と月読大神の弟。天孫族だが地上の国への派遣を前に高天原の姉天照大神に挨拶に行くが、馬の皮を剥いで家に投げ込んだり、大事な田に糞をしたりと大暴れ。根の国に母イザナミノミコトを訪ねた後、出雲の斐伊川上流の八岐大蛇を征伐して、その尾から草薙剣を得た・

 中央は日本武尊。第12代景行天皇の皇子とされるが兄弟の中で一番の暴れ者だったため、九州の熊襲征伐や東国の蝦夷征伐を父から命じられる。熱田神宮にいた叔母から預かった草薙剣で東国の賊を討ち果たした。別名倭建(ヤマトタケル)が出雲建(イズモタケル)を倒したとの説もある。東国からの帰路、伊吹山付近で倒れ、魂が白鳥になって大和に帰ったとの神話が残る。

 右端が大国主命。温和な彼は剣を持たない。しかし天孫族に葦原中国(あしはらなかつきに)を国譲りする。やはり出雲一国を譲ったのではなく、古代日本日本全体を譲り、その代わりに出雲に立派な神殿を建てることを所望する。幾つもの別名があり、和御霊(にぎみたま)と荒御霊(あらみたま)の両面を持つ。ヤマト朝廷にとっては「出雲の祟る神」としてとても厄介な存在だった。それについては次回に述べたい。<続く>





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Last updated  2020.08.21 00:00:11
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