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ゴールデンウィークに色々と本を読んでいました。中でもお勧めの本がありましたので、ご紹介。
「ピケティ『21世紀の資本』の衝撃 世界一優しく解説する「今の世界経済」の大問題」
西村克己著 宝島社出版
僕はNHKの『白熱教室』でピケティの講義をやっていた当時、たまたま全回視聴していました。
僕は『累進課税を高めなければお金はお金のある所に集まる』『格差が拡大すると健全な経済成長を阻害するので貿易自由化を促進する場合は格差が拡大しないようにする必要がある』という考えを持っています。
ピケティは僕の考えと似ている非常に珍しい経済学者で、興味がありました。
ピケティ氏の主張は簡単です。
過去の歴史上、先進国では資本収益率は経済成長率を上回っているというものです。
資本主義社会下では先進国は経済成長以上に資本が資本を生み出す。
その為、富める者は益々富み、労働者から富を吸い上げる。
この一連の流れにより格差が拡大し、健全な民主主義社会ではなくなる、という主張です。
ピケティ氏には膨大な裏付データがあるので過去の歴史上では実際に氏の主張通りになっている、ということになります。ピケティ氏の功績の多くの部分はこの膨大な裏付データの収集にあるということも言えます。※経済学者のデータの取り方にはかなりの注意が必要です
要するに、過去多くの経済学者が主張していた『トリクルダウン論』は幻想に過ぎない、というものです。トリクルダウン論とは、まず最初に富裕層が経済活動を通じて利潤を出し、その次にその利潤を使うことで経済が活性化され、国民全体が潤うという理論です。まず富める者から先に富む、という中国の経済国策とも似ています。
日本で今行われている所謂『アベノミクス』は『トリクルダウン政策』の極みですので、効率的な経済成長を阻害する政策という事になります。※日銀が金融政策に力を入れていますが政府は財政政策に力を入れておらず、労働者の格差を拡大させる中で一律消費税を増税。この為に内需が拡大せず資金は金融市場にばかり流入して資産家の持つ金融資産の価値が上昇している
足元の日本を見てみましょう。
アベノミクスでは
1.第一の矢の金融政策は実体経済に対して過大
2.第二の矢の財政政策が実体経済に対して過小
3.一律消費税増税による内需の冷え込みが想定以上に酷い
という事から、内需が拡大せずにコストプッシュ型のインフレで、実質購買換算ではデフレに逆戻り、というストーリーが現実味を帯びてきています。
まぁそもそも少し乱暴に言うと、安部政権下ではデフレ脱却すらしていません。(デフレ脱却の定義によります)
労働者の賃金格差も拡大している中、少子化に伴って格差は拡大し続けています。
※少子化社会では格差は拡大します
繰り返しますが、格差拡大は健全な資本主義社会の成長を阻害するものになります。
資本利益率が経済成長率を大幅に上回り続けて格差が拡大しすぎると、生産性や労働技術の向上が阻害されるようになります。
それではどのようにすれば良いか。
ピケティ氏の主張は乱暴に言うと大きく3つです。
1.累進課税を強化する
2.世界各国で資産の保有と取引を正しく把握する
3.純資産に対して世界各国で課税を強化する
ピケティ氏の対策案は現実的にはかなり困難な政策が必要になります。
累進課税を強化するなどの政策を取れば格差拡大は抑制されますが、それだけでは不十分だというのが氏の主張です。
歴史上、資本収益率は経済成長率よりかなり高い状態が続く為、単純に 収益に対する累進課税だけでは資本主義社会では格差は拡大し続けます
。
世界各国で足並み揃えて純資産に対しての課税を強化しなければいけない、というのが氏の主張です。
これらの氏の主張は特段分かりにくい事はありませんが、ピケティ氏のベストセラー『21世紀の資本』はかなりボリュームのある本です。
しかし、内容は同じようなことを繰り返している部分があります。また当たり前のことを延々書いているだけの部分もあります。根拠が脆弱で賛同できないような事も書かれています。
正直な所、面白味に欠ける構成になっています。(ただし、随所に厳しいことも書かれており、読んでみても損はないと思います。特に後半部)
今回紹介した「ピケティ『21世紀の資本』の衝撃 世界一優しく解説する「今の世界経済」の大問題」のようによくまとめられている本を読めば大筋は理解できる内容になっています。この本は100ページちょっとで文字数も少ないので、1日で十分読めます。
この本は発売されて間もないですが、手に入り易いと思いますのでお勧めです。是非。
余談ですが、ピケティ氏は平均値という概念を嫌っています。
僕も同様に大嫌いです。投資家と平均値という概念は相容れないと思います。