『少年A 矯正2500日全記録』
著:草薙厚子
神戸児童殺傷事件から六年半。
「少年A」が遂に仮退院した。
元東京少年鑑別所法務教官の著者が初めて明かす「矯正教育」の全容。
酒鬼薔薇の性的サディズムは克服されたのか?
この事件に関連した他の本は読んでないのだけれども、
これを読み終わって感じたことは。。。
あんな残忍な人殺しをした人間に、「矯正」を施し、
許されて世の中で普通の人間として生きる権利が、あるのだろうか…。
幼いまま消されてしまった命は、もう戻ってこないというのに、
それを奪った人間が、再び社会で生きることを許されていいのだろうか…。
身も心も未成熟な「少年犯罪」の原因は、常に大人社会にあるように語られ、
だからこそ、「正しく導いてやらなければならない」のだろうけれども、
ほんの何年か矯正施設にいただけで、
そんな残忍な心が変わるものなのだろうか。
その柔軟性も、少年特有のものなのかもしれないけれども、
幼少の頃に芽生え根付いた根本的なものというのは、
そんなに簡単に取り除かれるものなのだろうか。
このような残忍な殺人事件を引き起こした原因として色々挙げられている中で、
少年Aは、三兄弟の長男で、常に「長男らしくあること」を母に求められ、
母親の愛を十分に知らず、愛されてることを実感せぬまま成長した、
と分析されているけれど、それだけに理由を押し付けることはできないのでは…?
幼い頃に、物理的・精神的に親から離されて成長してきた人なんてゴマンといるし、
そんな人たちも普通の人生を送っているし、犯罪者予備軍というわけでもない。
私も三兄弟の長女で、常に「お姉ちゃんなんだから」と言われて育ってきた。
「お姉ちゃんなんだから」いつも一番最初に怒られ、
「お姉ちゃんなんだから」いつも一番最後に褒められてきた。
「お姉ちゃんなんだから」いつも下2人のお手本になるようにと言われてきた。
スリッパや定規でひっぱたかれることなんてしょっちゅうだったし、
伯母(母の姉)に、「よくあれでグレなかったね~」と言われるほど、
厳しい躾をされてきた。
まぁ、反発するよりも、受け入れたほうがラクだと悟っていた、
可愛げのない覇気のない子供だったのだけれど。
だから、この少年Aが、大人の顔色ばかりを伺い、
どうすれば大人受けするか、ばかりを気にして少年時代を送ってきたか、
というのはとてもよく分かる。
私自身、「どうすれば大人が喜ぶか」を知ってる、
手のかからない、とても「良い子」だったから。
少年Aの両親の教育方針は、
「人に迷惑をかけず、人から後ろ指をさされないこと。
人に優しく、特に小さい子には譲り、いじめないこと」
という、しごく当たり前のことで。
体罰を加えたり、虐待をしてたわけでもない。
特別な親による特別な子育ての結果に生まれた特別な子、
というわけではないのに、なぜこんな事件を起こしてしまったのか…。
結局、これを読んで何を思ったのか、というと。
残虐な心を「押しとどめる力」というのが、なぜ養われてこなかったのか?
それは外的要因云々というより、少年Aの生まれ持った性格ゆえ、じゃないのか?
だとしたら、矯正を施したところで、変わらないのではないのか…?
そんな少年に立ち直って欲しい、罪を認め、罪を背負って生きていって欲しい、
という矯正施設の職員たちの苦悩や葛藤には頭が下がるが、
だからといって、反省しました、矯正しました、もう大丈夫です、といわれても、
関わり合いにはなりたくない、少なくとも、我が子に近づけることは絶対できない、
というのが、正直な気持ち。
つくづく、子供を産み育てるということは、恐ろしいことだと実感した一冊でした。
【参考】
神戸須磨自動連続殺傷事件
-無限回廊
◆「少年A」についての本は→
◆少年犯罪についての本は→
♪本日のBGM
リラックスの素
メイキング・オブ・マッドマックス 怒り… 2015.07.24
『家族の言い訳』 著:森浩美 2015.02.07
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