後編は、12年たって見えてきた「新事実」に迫る。事故対応の責任者、故・吉田昌郎所長を極限の状態まで追い込み、最悪「東日本が壊滅」とまで覚悟させた 2 号機。廃炉作業の過程で浮かび上がったのは、 2 号機の内部で溶け落ちた「核燃料デブリ」の量が、3つの原子炉の中で最も少ないという可能性だ。
このことは、 2号機が最も「深刻な状況にある」と感じていた当事者たちの認識と、実際の事故の様相に大きな〝乖離〟があることを意味する。
一方、当時、2号機に比べ冷却が出来ていたと見られていた3号機からは、2号機を遙かに上回る大量のデブリが見つかった。専門家と詳細に分析すると、核燃料を冷やすために欠かせない「水」が、むしろ事態を悪化させていた可能性が浮かび上がった。日本中が固唾をのんで見守っていた 「消防車による注水」が、むしろメルトダウンを促進していたという衝撃の事実 。
専門家は、事故の際、注水によって、核燃料を冷やすことは、タイミング、量ともに「針の穴を通す」ような、困難なオペレーションが求められると語る。世界を覆うエネルギー危機の中、各国が再び「原発の活用」に舵を切る中で、最新の原発では、「人の判断を介さない、自動的なシステムの導入で周辺住民への影響を最小限に抑える」という潮流も生まれている。
福島の原発事故の最新検証、そして原発を取り巻く現在地を描く。
シリーズ「メルトダウン」File.8 18( 土) 夜10 時&19( 日) 夜9 時 放送 - NHK スペシャル - NHK
福島第一原発事故 12 年目の“ 新事実” | NHK | WEB 特集 | 福島第一原発
からです。 当初、(専門家の)内藤もこのスプレイを継続することでの効果に懐疑的なところもあった。しかし、結果は意外なものだった。水素爆発を引き起こす水素の発生量を減らすことが出来るというのだ。
スプレイを停止した場合の原子炉からの水素の発生量はおよそ 800
キロ、一方でスプレイを継続していた場合水素の発生量はそれより 25
%程度少ない、 600
キロまで抑えられるという解析結果となった。
内藤は「ドライウェルスプレイによって原子炉を外側から冷やすことで、結果として核燃料の温度上昇を抑制する効果がある。すると、高温になることで活性化する 水ジルコニウム反応
が抑えられ、水素の発生量が減るという効果があることが示唆された」と分析する。
さらに、格納容器内にも床から 1
メートル程度水を張ることが出来、メルトスルーした核燃料や格納容器そのものを冷やす効果も期待できるという。
スプレイを継続することは事故の悪化をくいとめる可能性があったのだ。
「原子炉を外側から冷やし、炉心の溶融を少しはマイルドに出来るのではというようなことを期待して、ドライウェルスプレイをちゃんとやるべきだという議論はした。そう考えると、この 東京電力の手順書
は、正しいこと言っていると思う。ドライウェルスプレイによって格納容器の床に水がたまる、そうするとそこでメルトスルーした溶融炉心を冷やし固めることで、広げない役割を果たせる。そう考えると、スプレイを止めてまで、ベントをとにかく早くやるっていう発想はなかなか出てこない」
当初は公開を拒んでいた東電の原発事故時運転操作の手順書
「 3
号機事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)
」の中に、格納容器を冷やし圧力を下げるほかに、もう一つドライウェルスプレイの役割が記されていた。原子炉の下、格納容器の床の部分であるペデスタルと呼ばれる場所に水を注ぐことである。
「 RPV
(原子炉圧力容器)破損が確認された場合は本操作を実施する」と定められている。そして、「ポンプの台数の関係で流量が不足し、(中略)代替注水が平衡操作で行えない場合は以下の優先順位とする。 1
,格納容器 2
,ペデスタル 3
,原子炉」。
メルトダウンが進み、核燃料が原子炉の底を突き破るメルトスルー。そうなると、核燃料は格納容器の床に溶け落ちる。懸念されるのは、その熱による圧力上昇によって格納容器の破壊されること、さらに高温の核燃料が床に広がり格納容器に直接接触することで、格納容器そのものが破壊される「シェルアタック」と言われる現象がおきてしまうことである。
ドライウェルスプレイによって格納容器の床(ペデスタル)に注水することは、メルトスルーした「溶融炉心(デブリ)」の冷却する重要な役割を担っていたのである。
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