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ほの暗い夕暮れ
目を閉じて
私は君を呼ぶ
清(さや)かな
川の命棲む流れ
どこか甘い
水の匂い
さらら さらら
返事が聞こえて
目を開けて
君に目を遣る
モスグリーンのポロシャツ
はかない黄緑の
小さな灯りが点る
君の右肩
「蛍はね
呼吸の速さで恋をするんだよ
人と同じなんだ
光っている時間の間に
愛してるとつぶやいて
光っていない間は
息を止めて答えを待つんだ
だからよく見てみて
最初はお互い探りあいながら
タイミングもずれているけれど
運命の出会いだと気づいたら
光のタイミングがシンクロして
速さを増してひとつになるんだ
食物が摂れない数日の間に
次の命への糸をつなぐ
短いからこそ
光を放ってきれいなのかもしれないね」
昔誰かに聞いた
そんな話を思い出す
もし
私が昆虫なら
君の肩口に止まって
命が短くてもかまわないからと
君を抱きしめて
熱を帯びた
静かなため息をつく
命を燃やす
ちいさな虫
君がいなければ
恋に焦がれて
光ることもない
短い夏の
鳴き声さえ立てぬ
ほたる
2010.6
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝