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2015年02月27日
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カテゴリ: 読書


 ピースボートと「承認共同体」幻想
 古市 憲法寿(著)
 本田 由紀(解説と反論)
 光文社新書2010年8月20日




 社会が流動化する「リキッド・モダニティ」の現代、共通の物語を失った社会では「存在論敵不安」がもたらされる。
 希望は「そのままで認めあえる関係」による「存在論的安心」を確保する「承認の共同体」。
 「承認の共同体」がもたらす「共同性」が「目的性」を「冷却」させてしまうのではないかというのが本書の仮説。

 P53
 この本は、日常に閉塞感を抱える若者がピースボートの提供する世界一周クルーズにその「出口」を見出し(4章)、海上で「世界平和」という夢に向かって盛りあがるものの(5章)、帰国後は「世界平和」をあきらめ、友だちと楽しく暮らせるようになる(6章)までの物語である。その準備として2章では旅と若者の歴史を振り返り、3章では「あきらめの舞台」となるピースボートについて説明する。

 P150
 ピースボートの提供する言説は、この「心理学化する社会」にマッチしている。・・・ピースボートは平和や反戦といった運動の目的を「想い」に還元する傾向がある。
 ピースボートが最も大切にするもの、それは「想い」だ。・・・なぜピースボートが船を出すのかと言えば、世界を知り、平和への想いを世界中の人びとと分け合うためである。
 ・・・
 若者たちにとって、ピースボートの掲げる政治的理念と「ポップ心理学」や自己啓発本の提供する言説資源に大きな違いはない。




 P260
 「居場所」でありながら社会を変えるようなプロジェクトの困難性を、ピースボートの事例は示している。

 P264
 この本の発見を気取って書くと以下のようになる。(1)
「共同性」だけを軸にした「目的性」のない共同体が存在すること、(2)その、「ポストモダン・コミュニティ」は社会的統合の基礎にもなり得ないし、社会運動との接続性を担保するものではないこと、(3)それは承認の正義を担保する共同体ではあるものの、「目的性」の「冷却」によって経済的再配分を求める闘争に転化する訳ではないことを、の三点である。

 P273
 社会全体を見ても、運動体規模で見ても、共同体をただの「居場所」だと考えず、「目的性」の達成のためなら冷徹になれ、だけど対外的にはお茶目な「エリート」が、社会を変えていくしかないと思う。




 P293
 そうそう、文体は大事だ。古市君からもらったこの本の原稿を読んでいて、私は何度も吹き出しそうになった。特に何が可笑しかったかって、引用されている学者たちの名前に、いちいち的を射た枕詞がついていることだ。

 P40
 バンド活動に熱心な社会学者の小熊英二(1962)
 P43
 いつも後書きが秀逸な社会学者の樫村愛子(1958)
 P110
 大学時代は囲碁部だった教育社会学者の本田由紀(1964)
 P141
 ブログの更新頻度がすごい評論家の内田樹(1950)
 p145
 『1969』を書きあげて疲労困憊の小熊英二(1962)
 P150
 売れっ子精神科医の斎藤環(1961)
 P191
 文学少年的な風貌を維持する社会学者の北田暁大(1971)
 P210
 最近すっかり「パパ」になってしまった社会学者の宮台真司(1959)
 P263
 高校時代の唯一の反抗が『サザエさん』を立ち読みすることだった本田由紀(1964)
 P265
 資本主義に出家した女・勝間和代(1968)
 P271
 社会学者でありながら優れたマーケターでもある山田昌弘(1957)
 P271
 Hey!Say!JUMPファンの教育学者・荒川葉(?)








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最終更新日  2015年02月27日 21時37分02秒
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