SAC.COM

2023年11月27日
XML
 9月29日、宝塚歌劇団宙組公演「PAGAD(パガド)」幕開け。
 9月30日、宙組所属の有愛きい氏25歳が自宅マンションの敷地内で死亡しているのが発見された。飛び降り自殺と思われた。
 9月30日、宝塚歌劇団は、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)の 宙組公演「PAGAD」について、10月1日から22日まで休止すると発表した。
 10月20日、宝塚歌劇団は、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)の 宙組公演「PAGAD」について、千秋楽(11月5日)までの全公演を中止すると発表した。
     ​
 宝塚歌劇団に危機管理体制ができていないことがみてとれる。
 10月14日、宝塚歌劇団は事件に関連する第三者による調査の報告記者会見を行うが、ここでも世間を騒がせたことに対する記者会見についての不備、準備不足がみてとれた。生徒の死の起因となるパワーハラスメント、いじめの証拠は見つからなかったとする会見内容は、日本の危機管理広報の定石を知らない弁護士が準備したのではと思える形式・内容で、宝塚歌劇団に法的な落ち度はないことを示唆するだけのものだった。事実の調査を続けること、再発防止策の方向性の提示はなかった。
 この記者会見の内容に有愛きい氏の遺族側は強く反発した。
 宝塚歌劇団の現代に合わないモラルが浮き彫りになり、それを管理している阪急グループの人の死に対する冷たい対応が目立つこととなった。
     ​
「上級生をかばう意識が先行」
…理事長「守る伝統ある」
読売新聞 2023年11月14日 22時24分
 宝塚歌劇団の宙そら組に所属する女性(25)が死亡した問題で、歌劇団側が14日、公表した調査報告書は過重業務を認める一方、上級生によるパワーハラスメントやいじめを否定する内容だった。遺族側は「ハラスメントに関する内容は間違いだ。納得できない」と強く反発し、再調査を求めた。
 兵庫県宝塚市内のホテルで行われた歌劇団側の記者会見。歌劇団内の上級生と下級生の関係性に関する質問が相次ぎ、対応した木場こば健之けんし理事長らは「伝統の中で守っていかなければならないものもある」「全てがおかしい、全てが変えないといけないとは思ってない」などの説明に終始した。
 公演をスムーズに運営するため、上級生の下級生に対する強い叱責しっせきを見逃していたのではと問われると、「生徒だけのノウハウの継承という面がある。出演者でないとわからない部分があるので、われわれ事務サイドとしては、詳細な内容までは承知していなかった」と釈明した。
 会見では、 宙組の4人が調査チームの聴取を辞退したことも明らかにされた。木場理事長は全員の話を聞けていないと認めた上で、理由については「ご容赦ください」と述べた。 遺族とはまだ面談できていないとした。
     ​
 「ハラスメントをここまで否定するのか。遺族はとても悔しく思っている。残念であり、やるせない」。遺族側が東京都内で開いた記者会見で、遺族の代理人を務める川人博弁護士は、報告書に対する遺族の心情を代弁した。
 9月末に死亡した女性は生前、上級生から様々なハラスメントを受けていたと家族に相談していた。2021年には上級生からヘアアイロンを額に当てられやけどを負ったほか、今年8月以降の稽古中、別の上級生から「下級生の失敗は全てあんたのせいや」「うそつき野郎」などの暴言も受けた、としていた。
 報告書では、ヘアアイロンでやけどをした事実は認定したが、上級生が故意に当てたのかどうかは「判断困難」とした。川人弁護士は女性が遺族に「上級生が意図的にやけどをさせた」と伝えた内容を無視していると指摘した。
 「うそつき野郎」との暴言について事実と認定しなかったが、女性がうそをついていないか繰り返し聞かれたことは認めた。川人弁護士はそうした行為について「人格を否定するもので、パワハラに該当する」と反論した。
 遺族側は報告書の印象として、「上級生をかばうような意識が先行している」とも分析。女性の死亡前1か月間の「時間外労働」が少なくとも118時間だったと認定した点などは「死亡が業務に起因することを示唆している」と一定の評価をしたが、 「ハラスメントはなく、長時間労働だけ悪かったで終われば、同じことが繰り返される」と述べ、再調査の必要性を訴えた。
  ー  引用終わり  ー
     ​
 遺族側は今回、劇団がいじめやハラスメントを認定しなかったことに反論、再検証を求めた。
 劇団の次期理事長で、阪急電鉄の取締役でもある村上浩爾氏は「そのように言われているのであれば、証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい」と発言した。村上氏の「証拠を見せろ」との発言で、遺族側対宝塚歌劇団の対立は、遺族側対宝塚歌劇団と阪急グループの官僚的な体質との対立へと拡大したように見受けられる。
 今回のヒアリングの対象となったのは、報告書によると「宙組所属劇団員(62名)、元劇団員(1名)、劇団役職員(理事長含む)7名、阪急電鉄役職員(4名)、故人ご遺族及び同代理人」。
 宙組の俳優4人が聞き取りを辞退したこと、事情聴取を辞退した理由が明らかにされなかったこと、それにもかかわらずパワーハラスメント、いじめがなかったとしている宝塚歌劇団の姿勢について、インターネット上で“炎上”していることが11月17日に報じられた。
 週刊文春の記事によるといじめの主犯格4人は、芹香斗亜(宙組トップ)、松風輝(宙組組長)、花菱りず(宙組娘役)、優希しおん(宙組男役)で、この4人が聞き取りを辞退したとしてネット上で炎上している。事実をできる限り明らかにしようとしている姿勢がみえなかった歌劇団の記者会見の姿勢もあり、ネット上だけでなくマスコミを含めて、あること、ないことが取り沙汰されるようになった。
 11月17日、宝塚歌劇団は宝塚大劇場の雪組公演「ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル」を12月1日から実施すると発表した。劇団員の女性が死亡した問題を受け、同劇場での公演は10月1日以降、全て中止されていた。ことの重大さを徐々に認識しつつある歌劇団側の様子が手に取るように見られる。
     ​
理事長の“微笑み”の謎
…会見を分析した臨床心理士が気づいた3人の幹部の“驚きの心理状態”とは
岡村 美奈
2023/11/18 文春オンライン
 この記者会見を見て、宝塚歌劇団は変わっていくと思えた人は、いったいどれくらいいただろう。有愛きいさん(25)が亡くなった件で、宝塚歌劇団は11月14日に会見を開いたが、ネットの反応は批判一色となった。
  いじめやパワハラを全面否定した姿勢をはじめ、「9月のジャニーズの会見よりもひどい」という声もあがった。それほどの悪印象を与えた理由は何だったのか、そして会見に出席した木場健之理事長(60)らが守ろうとしたものは何だったのか。仕草や表情に表れる、その心理を分析した。
     ​
哀悼でも謝罪でもなかった驚きの「第一声」
  会見冒頭まず驚いたのは、宝塚の理事長・木場健之氏が有愛さんが亡くなった件の調査報告書についていきなり話しはじめたことだ。亡くなった劇団員への哀悼の言葉や、遺族に対する謝罪はなく、事務的に報告書の話からスタートしようとしたのだ。この一言で、彼らにとって重要なのは劇団員が亡くなったことよりも、それをどう釈明するかだったのではないかという印象を与える。
  木場氏は「報告書を受け全力で改善に取り組む」と静かな調子で語った後に、ようやく急逝した劇団員に哀悼の意を表し、遺族に心からお詫びすると述べた。
  だがこの時、木場氏も、その両横に並んで立つ村上浩爾専務理事、井場睦之理事・制作部長の2人も頭を下げず、微動だにしていなかった。
  彼らが頭を下げたのは、その後に宝塚のファンや関係者に深くお詫びすると木場氏が述べてから。これでは、有愛さんやその遺族ではなく、ファンや関係者に対して頭を下げた格好になる。
     ​
目をパチパチさせ、首をひねり…いじめやパワハラを全面否定
  着席すると、今度は井場氏が外部の弁護士によって作成されたという報告書の概要を読み上げる。
  内容は、遺族が主張していた上級生らによるいじめやパワハラを全面否定し、過重労働や過密日程による心理的負荷が原因というもので、到底、世間が納得するようなものではない。
  さらに井場氏の報告書の読み方も、見る側の不信を誘うものだった。緊張していたのかもしれないが、視線を書面に落としたままで、単調なこもった声で早口で字面を読み上げていく。そして時おり、焦点の合わない上目使いをちらっと会場に向け、会場の記者たちの顔色をうかがうような気配を見せる。
  …  (略)  …
「度を越えるルールや体質を目撃したことは」と問われると、木場氏は「度を越えるルール……」とつぶやきながら首を傾げ、しばらく考えるようなそぶりを見せた。そうして、舞台装置の安全面について強い指導があったと回答した。
  しかしここまでの会見の流れを考えれば「度を越えるルール」が安全面の話ではなく、厳しい上下関係やハラスメントの有無を聞いていることは明白である。
  それでも木場氏は、質問する記者たちに視線を合わせることなく、「安全指導」の話でお茶を濁そうとしたことになる。これは劇団に受け継がれてきた厳しいルールや指導に言及しないための、話のすり替えとしか考えられない。
 いじめやパワハラは指導という言葉に代わり、いじめによるストレスは故人が過重労働で追い詰められたことによる心理的負荷になったように、言い方を変え、論点をずらし、問題点をぼやかし、見て見ぬふりというより首を傾げて惚けて終わりにする。
     ​
「外部漏らし」という言葉がでると途端に厳しい表情に
 会見の中で、木場氏と村上氏の表情が大きく変わったのが「外部漏らし」という言葉が出た時だった。「外部漏らし」とは、劇団内で起きたことを外部に漏らしてはいけないという宝塚の暗黙のルールを指す。もし内部で起きたことが外に漏れた場合は、徹底的な犯人探しが始まるといわれている。
 そのような空気がある劇団内で行われたヒアリングで、劇団員たちが初めて話す相手に真実を話せるかどうかは疑問がある。しかしそれを問われた木場氏は、戸惑ったような表情を見せながら「かなり(本音が)出ていると思う」と回答。
 それでも外部漏らしという言葉が出ると、木場氏は目を見開くように額をあげて深いシワを寄せ、村上氏も額と眉間にシワを寄せて厳しい表情になった。歌劇団としてあってはならないことに対する不快感と、記者たちに問い詰められることへの嫌悪感や警戒感が見て取れる。
 宝塚の運営側と遺族側との面談がいまだに実現していないことについて、「(遺族側からの)拒否があったのか」と聞かれると、村上氏は慌てて「拒否ということはない」と答え、必死な様子で表情を歪め、大きく頷きながら「まだその時期に至っていない」と続けた。
 だが遺族側は再検証を求めており、歌劇団側が証拠の捏造を繰り返してきたとも主張している。それについての見解を問われると「我々が隠ぺいしているとか、報告することを歪めるとかは一切ございません」と、前のめりになりながら語気を荒げて否定した。
 他の場面では「これですべて終わりとは思っていない」「把握していない、認識していないこともあろうかと」と殊勝な発言も見せていたが、今回の「いじめやパワハラはなかった」という報告書の内容で押し切るつもりということだろう。
  今回の件の責任を取る形で、木場氏は12月1日付で理事長を辞任し、専務理事の村上氏が新しい理事長に内定していることも発表した。会見終了間際に「宝塚は変わると断言できるか」と質問された村上氏は、前を向き「変わらなければならないものは、絶対に変わらなければならないと私は思います。一方で伝統の中で守っていくべきものも間違いなく“ある”と思っています」と、この会見の中で最も強く“ある”という言葉を強調した。
  やはり彼らにとっての最優先事項は、伝統を守ることなのだろう。
  ―  引用終わり  ―
     ​
 11月20日、宝塚歌劇団の俳優の有愛きい氏が死亡した問題で、阪急阪神ホールディングス(HD)会長の角和夫氏が、俳優の養成機関「宝塚音楽学校」の理事長を近く退任することが報じられた。引責辞任ではないとされ、後任は12月1日付で歌劇団の理事長に就任する村上浩爾氏とする方針が明らかになった。
 11月14日の記者会見で哀悼の意を表し、問題の解消に向けて組織風土の改革について取り組む姿勢が示されていれば、世間の阪急グループに対する見方がもう少し良い方向に向いただろう。
     ​
=具体策提言―団員急死で宝塚
時事通信 2023年11月20日
 宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の宙組に所属していた女性団員(25)の急死問題を受け、歌劇団が組織風土の改革策を提言するための「新組織」を年内にも設置することが、20日分かった。
 歌劇団は既に、全団員約400人やスタッフらに対し、各組のプロデューサーらによる聞き取り調査を進めている。運営する阪急電鉄の関係者によると、新組織はこの結果も踏まえ、長時間にわたる業務や厳し過ぎる上下関係、過度な指導といった組織風土の改善に向けた具体策をまとめる。外部の有識者も入れる方向で検討中という。 
  ―  引用終わり  ―
​ 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2023年11月27日 06時00分16秒
コメント(0) | コメントを書く
[組織自壊・ブラック企業] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

Ta152R

Ta152R


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: