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「そうだ!あの紙だ!あの紙にかいてあることをとなえればいいんだ!」りえは言った。すると、ゆうきが「いまなおしてやる。いいか、うごくなよ・・・。ウェスティマンチィーホハンチィス・・・」「あれっ!」 キツネがさけんだ。「いたくない!・・・なおった、なおった!ありがとう!おれいをするね!えーとおれいは・・・みちあんない!」 二人も、すごくうれしくなった。「ここらへんのはしをわたって、火山のところをぬけて、まっすぐいくと、たからが手に入るよ」 りえは、とびあがってよろこんだ。きつねは、「だけど、いのししがいるんだ。いのししからなげとばされなければいけない。そうするとたからのほうへいける」「なげとばされる、だって?」 ゆうきは、びっくりして聞きかえした。「ああ、そうだよ!まあ、うんがよければのはなしだね」きつねはけろっとして言った。「さっ!いこう!ゆうき!しんぱいしててもはじまらない」 りえがげんきよく言うと、ゆうきもふあんがきえて、二人はまたまえへとすすんでいった。 2時間くらいたった。 あおぞらだったそらは、くもってきた。 ポッ・・・・ポッポッ、ザーーーーッ! 雨がふってきた。二人は走りだし、大きな大きなほらあなに入った。「ハア・・・ハア・・・。ちょっと、おくに入ってみない?」 さやえん童話8へつづく
2006.04.30
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さよならだけが、人生だ。と言ったのは誰だったろう。愛する人との別れ、それはこの世の 三大苦の一つ。(一つは、物質への執着。もう一つは、死の恐怖。)年をとれば とるほど、愛する人との別れが多くなる。そして たとえ 愛していなくても、できるだけ愛して、見送っていかなければならないことがある。それが 介護問題。いくら 精神年齢が若くても、それはれっきとした事実。いくら 大地真央やわたしが、若返りの秘術を知っているとしても。
2006.04.29
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「うう・・・」 りえはじめんにしゃがみこんだ。「そうだ!」 ゆうきはさけんだ。 ゆうきはりえのポケットから、キノコをとりだした。さっき、木の実とべつのポケットに入れておいたのだ。「さっさとしねえときさまらを食うぞ!」 くまは大きな口をあけ、きいろいとがったはをむきだして、こちらへ走ってくる。 ゆうきは力いっぱいキノコをくまの口の中にほうりなげた。「ぐぶっ!」 くまはじめんにたおれた。「さっ!いくぞ!」 ゆうきがさけぶとりえの手をひっぱって、かけ足でまえにすすんだ。ふたりははあはあとあらいいきをはいた。 しばらく歩くと、こんどは、へんな声がする。「ねえねえ」 りえは、こわくなってうごけない。 ゆうきは、うしろをふりむいた。 すると、大きな大きなきつねがまるまっていた。「どうしたの?」 りえがきくと、きつねは言った。「さっきからよんでるじゃないか・・・。けがをしてうごけないんだ、どうにかならないか?」 ゆうきは、だまされていないかと、ようじんした。だが、すぐに両足に、ひっかかれたようなキズがあるのが目にはいった。 まるで、二人がはまべであった、ルルのようだった。 さやえん童話7へつづく
2006.04.28
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「どぉ・ちぃ・らあにぃしよぉかなぁ」 りえがまよっている。その間にゆうきがなにかを見ている。キノコだ。 するとキノコのかげからトカゲが出てきた。どうやらキノコを食べようとしているらしい。 ゆうきはトカゲを見て(ぜったいとくする)と思った。 トカゲがキノコを食べれば、食用のキノコかどうかはんだんできるからだ。 ゆうきはトカゲを見つめ、りえはどちらを食べるかまだまよっている。 ゆうきはりえのほうにかおを向けた。「バカだなぁ・・こわがりのくせに」 しばらく見ていると、やっとトカゲがキノコに食らいついた。「やった・・・ん?」 トカゲのうごきがへんだ・・・。トカゲがうごかなくなった。「きまった!こっちにする!」 りえが声をあげた。「・・・りえ!それはやめろ!!」「なによ!」「おまえそんなにはらへってんのか!?これはドクキノコなんだよ!」「ひいい・・・」 二人は木の実を3コずつポケットに入れて、きいろいみちを歩きはじめた。「とまれ!」 二人がうしろをふりむくと、二人のせより大きなくまが立っていた・・・。「ここはとおさねえぜ・・・!とおるんだったら、ありがたく いのちをいただくぜ!」 さやえん童話6へつづく
2006.04.27
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「んじゃあ たからをさがして売るぞ!」 ゆうきは言った。「ルルーっばいばい!」 りえは手をふった。 すなはまをやっと出たころは、二人はあせだくだった。「ルルはこの一本道を歩けと言ってたな。「よし!いこう!ゆうき!」 二人は長い長いきいろの道を一歩一歩とすすんでいった。「そろそろごはんにしようよ。わたし、ルルに会うまえから おなかペコペコで・・・」「それくらいがまんしろ・・・けど、そうだよな」「キャハハハ!なによ、きゅうにはらの虫がなったでしょ?」「うるさい!」「ま、いいわ。ごはんにしよう。あっちにも、木の実がなってるよ!」 二人は足をとめた。「はあはあ・・歩いてから30分ぐらいはたったな」 ゆうきは、長く走ったかのような息をしている。 うつむいていた二人が 顔をあげると、そこには見たこともない、ものすごく大きなキノコが はえていたのだ。「こ、こんな大きいキノコは見たことないわ!」 ゆうきはまゆをつりあげて言った。「あたりまえだろ!オレたちの家は びんぼうなんだから!」 さやえん童話5へつづく
2006.04.26
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「オレはゆうきだ、こっちの女はりえだ」「ち・・・ちょっと!『こっちの女』ってなによ!」りえはどなった。「ま・・・まあ、けんかはやめようよ。ボク、ケンカはきらいなんだ。ね、レディーのりえさん」「ご・・・ごめんなさい」りえは、なよなよと言った。「あれ、このかみなんだろう」 りえはかみをひろい、ゆっくりひろげると、なにやら、なにかの長いあんごうのような物が書いてあった。「なになに・・・」 ゆうきはかみを手にとるとあんごうをよみはじめた。「ウェスチィユンチィーホハンティス・・・」「あれ!」ルルが言った、うしろをふりむくと、なんとルルのキズがない!「わーいわーいなおったーっ!」 ゆうきがつぶやいた。「きっとこのあんごうはじゅもんだ・・・」「えっ!」 りえはまゆをひそめた。 「じゃあゆうきくんだちがキズをなおしてくれたんだね!」ルルはとびはねながら言った。「う・・・うんそうよ・・・そうだわ!」「じゃあおれいにいいことおしえてあげる! ここのすなはまをまっすぐいったみちをとおってね、くまがいるんだけどがんばって! このさきにはたからがあるよ! そのたからは(オリハルコン)というダイヤよりかたい石なんだ!がんばってね!」 りえは紙をポケットにいれた。 さやえん童話4へつづく
2006.04.25
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りえは、「これ、まんなかがすごくよごれてて見えな・・・」と言った。 ゆうきは、地図を小ビンに入れ、すなはまを出た。 するとなにかがいるけはいがした。ゆうきはあたりを見まわした。 ちかくで、イルカがキューキューと声を上げていた。 りえは、すぐにイルカの方に走っていった。ゆうきが仕方なくついていった。 見ると、イルカは、きずだらけだった。「キーンキーンキューキューいたいよ~~」 りえは、ひめいを上げて、しりもちをついた。「あ・・・あ・・・イルカが・・・しゃべった・・・!」 イルカがこう言った。「この島の動物たちはみなしゃべるよ。どう?おどろいた? なんか青白い光のかたまりがあって、なんだろうと思って見てたら、少し目をはなしたすきに、なんかものすごい音がして・・・後ろを見たら君たちがたおれていたんだよ。 ぼくはびっくりしたよ、あいたたた・・・」 二人はあせびっしょりになった。「な・・・なんでそんなにキズだらけなの?」 イルカは、「ぼくの名はルル。このまえ魚をおっかけていたんだけど、その魚はサメがおいかけていたんだ。 気付いたころにはおそかったんだ。 もうぼくは、その魚にさわっちゃったの、サメはおこってぼくにおそいかかってきたんだ、そしたらキズだらけになっちゃったの・・・」 ゆうきはルルを少しかわいそうだ・・・と思った。りえも同じだ。 ルルは言った。「ねえ・・・キミたちの名前は?」さやえん童話3へつづく
2006.04.24
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あるまちに、ゆうきとりえというこどもがいた。 二人の家はびんぼうだった。 このままではうえじにしてしまうとかんがえた。 そんなある日、としょかんにあそびにいったとき、二人はキラキラ光る本を見つけたのだ。二人は本をひらいた。 とたんに光はつよくなり、本は、とじた。 二人は気をうしなった。 本のうらにはこう書かれてあった。「しにたくなければこの本をひらくべからず」これがすべてのはじまりだった。そして・・・・ ザザーン ザザーン・・・・・ なみの音で二人は目をあけた。 すなはまの上に引き上げられていたのだ。「ここは・・・どこ?」 りえはまゆをひそめた。「・・・・さあ。」 ゆうきが横をふりむくと、小さな小ビンが落ちていた。 ゆうきは小ビンのコルクをぬいて中身を取り出した。するとなにやら、ボロボロの紙が入っていた。 「・・・なんだ?これは」 その紙は、さわっただけで手が真っ黒になるほどきたなかった。 ゆうきは、海水で手をあらった。 りえは、紙を小ビンの中に入れようとした。「まて」 ゆうきが、紙を手にとると広げた。すると・・・「こ・・・これは、地図だ!」 それを見て、りえもまゆをひそめた。 さやえん童話2へつづく
2006.04.23
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あの頃に比べれば 今はマシつらい時には そう唱える10代で 登校拒否ぎみだった頃全部休んだわけではないが月曜日と体育のある日は 必ず休んだ布団の中で弁当を食べた何のやる気もおきずTVゲームをしただけだった無理矢理フリーターになった頃履歴書に貼る写真をとる時に写真館の主は「美人だね」とおだてるけれど「なのになぜ・・・」と嘆いていた男みたいな髪型と 粗末な身なり障子貼り クロス貼りのバイトをした30代以上を募集していたのに若い子が来たとトッチャン坊やのような職人に驚かれ大飯食らいと 驚かれ次第に打ち解けて家によばれあやうく嫁にもらわれそうになる目も覚めるような美しい桃源郷で 水神と仙人と棲んでいた頃我欲と完璧主義のために何も見えなくなり最高の職を失ってしまったこと二度と戻れなくなってしまったこと20代で 弟が死に悲しみと恐怖の中で必死に 覚えている健康術で体を動かしたこと頭をツルツルにして家族と親戚じゅうから心配されたこと内職をしてピンハネされないか心配だったことトラックの荷台に乗ってツルツルの頭に手ぬぐいでほっかむりして一休さんのようにつくり笑いした時かわいいと言ってくれた隣人も今はもう老衰の中夜中に抜け出して沼へ行ったことすべてが夢のようだけど 本当のこと恐ろしい日々があったのだ悲しい日々があったのだあの頃に比べれば、今はまだマシ・・・・
2006.04.22
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自分にかせをきせるのが、あなたのクセと大事な友達は言う。 時に大きすぎる課題に振り回されて、以前も、あるお方から「一つのことにこだわるな。」と何度も言われたものだった。 そう、自らに課題を課して進むのが 私のやり方だから。 納得いくまでやってみることにしている。 少々つらくとも、それがなぜつらいのか、突き詰めてまでやってしまう。 最近は、自分の中で消化できる課題ならかまわないが、人に迷惑をかけてまで やりぬこうとしているようなら、(自分を)放っておいてはいけないと 思うようになってきた。
2006.04.21
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これは 平成18年4月4日ごろの夢です。 伯母(母の姉)は天界でも山に住み、たまに実母を招くこともあるようだ。(人は眠っている時、幽界に帰っているという説がある。だから 死んだ人と天界で会うこともあるし、招かれていくこともあるという。) 楽しんで山に入った双子の弟は、おばにもてなされ、温泉に入り、幼少の思い出を懐かしんだ。(母の実家は、山地だったからだ。) 双子の兄は、同じ山のぼりでも 別の道を行き、殺風景な山だとただ辟易し、いっこうに進まぬ道の先ばかり見つめていた。
2006.04.21
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みぞれまじりの雨。あなたはゴルフを中止して帰ってくるもうひとりの私は隊長を見舞いに病院に行っているあの子は昨夜「ウフフ」と何度も寝言で笑う電子ペットは十代目以上新しいゲームソフトのキャラクターデザインは鳥山氏ふるさとの民話で涙ぐむいつもの銀行の待ち時間過ぎし日の 優しい祖母を思い出す上を見たり 下を見たり心の中で 古代の唄を唄い雨音に合わせ定まらない心をつらつらと捨てられず 拾えずに心が静かになるのを待っているつらつらと書きつらねながら
2006.04.20
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今日は、ブログの内容が少し増えたのでカテゴリ分類を行ないました。(日記の再登録です) まだトップに表示はしていませんが、 日記を一件ずつ(個別に)クリックした時に、左側に「カテゴリ分類」ごとの記事が表示されると、わかりました。
2006.04.19
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図書館から借りた本を音読や書写に使うと、とても返却期限には間に合わないので、何度も繰り返し同じ物を借りるはめになる。 前回借りたシリーズ物の2作目の本は、人気シリーズだけあって、途中で背表紙がボロボロになってしまった。 10年くらい前に書写に使った本は、外国文学だったけど、親戚から譲り受けた文庫本だったので、期間や本の傷みを気にせずにすんだ。 3ケ月くらいで文庫2~3冊だったと思う。 そんなにペースは速くない。 とりあえずボロボロになるまで同じ本を借り続けるのは嫌なので、音読に使う「枕草子」を、書店で買うことにした。 ところが、原文のがなくて田辺聖子の訳文のにした。写真つきでとても豪華だったのでつい・・・。 原文は図書館の本を書写するしかないのか。 きょうびの書店には、古典を書棚に置いてないみたいだ・・・・。 わざわざ注文するのもどうかと思ったが、通販という手もあるか。 というわけで、「枕草子」を書写するために時間がかかってしまうので、図書館から借りた もう一冊の外国文学の本は、すぐに返す可能性が高くなった。
2006.04.19
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ブログのコンセプトに関わる内容なので、フリーページに移しました。
2006.04.18
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創作ではなく、ブログのコンセプトに関わることなので、フリーページに移しました。
2006.04.17
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天職は文を書いたり絵を書いたりすることだけど、私の適職は他にある。 天職と適職の定義とは、TV番組「オーラの泉」で言っていたことで、「適職」とは、食べるための糧を得るための仕事。 生業(なりわい)。 自分が楽しいかどうかは関係なく、能力を生かして、お金を稼ぐことのできる仕事。(お金を頂くのだから、責任を果たすための苦労はともなう。)「天職」とは、自分の魂が喜んで、人を喜ばせることができる仕事。 こちらは、お金を得ることは難しく、ともすればリスクも負う。 これらは車の両輪のようなもの。どちらが欠けてもうまくいかない。 と言っていた。 私は、なるほどと思った。 日頃から、なぜ好きな仕事ではお金が稼げず、人生がうまくいかないのかと思っていたからだ。 私の本職は公表できないけれど、この日記や物語を続けて読んで下さった方は、おおよその推測はできると思う。 私の天職と思っていることが、もっと充実して、また本来の生業もうまくいくように祈りたい。
2006.04.16
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通信講座の最後の添削課題を出す。あとは修了証書をもらうのみ。けれど 次の特別コースの案内が早々と来た。受講料は手ごろ。とかく不安定なこの頃先生にひっぱっていってもらえるのはありがたい。熱狂的に好きになれる日本の小説家はいない。でも古典は嫌いじゃないと思う。図書館から借りて「枕草子」を毎日音読する予定。筆力を養うためにパソコン模写するための本を選んだ。外国文学の、「地を足につけた」長篇大作に決めた。投稿はまだやらない。失ったものを取り戻そうと、現状の苦しさを打開しようと、根をつめてしまうことがわかっているからだ。占いには従おう。神の声に、自分の体調に従おう・・・・。
2006.04.15
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見守ることが親の仕事だ。手の出しすぎはいけない。だけど、抱きしめてあげられる時は抱きしめ、愛されているという自信を持たせる。励ますのは根気だ。電子ペットは気軽だ。家も汚れないし臭わない。あれは、ファッションだ。本物は、死の悲しみが違う。存在の重さが、まるで違う。一緒に過ごした日々、野を走りまわった日々を思う。きのうの敵は、今日の友。けれど夢を見た翌朝、敵に戻っていることがよくある・・・。友であれ 神であれ崇めたてまつりひれ伏す自分。恐れるものが多い時はいやに耳がいい。どんな小さな物音にも 反応してしまう。せめて聞きなれたメロディーを口ずさむ。半人前の親だから逆に 子供に慰められている自分。せめて子供の 足をもむ。
2006.04.12
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「しょうがないなあ」と男は言った。女は自分の事ばかり考えている。「欲しいものは欲しいとはっきり言えばいい」「・・・だって」「遠慮してほしい時に遠慮せずに、遠慮しなくていい時に遠慮ばかりしている。月に一度は必ず かんしゃくを起こす。それさえ やめてくれたら、もっと色々してあげられるのに」女「お客様は、ずうっと前からいらっしゃってるの。帰っていかれたその日のうちに戻ってくるの。それを、私もあなたも普段は忘れている。 帰るまでに、丁重にもてなさないから、帰る時に、いつも大暴れされてしまう。 あなたこそ、家の中に仕事を持ち込むのはおやめになって。 仕事中に、家のことを言うのもおやめになって」「これは、俺とお前の問題じゃないのか」「お客様とね。それと、あなたの・・・」言いかけて女はやめた。そこから、いつもの 際限のないやりとりが始まるからだ。
2006.04.11
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もうひとりの私が、大変だ。私は歩兵。もうひとりの私は、近衛兵。私はひたすら待機する。クローバーの上に寝そべって・・・。もうひとりの私は、倒れた隊長を見守っている。見守ることと、攻めることの両方をこなさなければならないので、大変だ・・・・。私は、もうひとりの私の代わりにならない。力が弱すぎる。慌てて転んで、すり傷ばかり負う。けれど、いつ 急な出陣を余儀なくされるか、わからないので、ひたすら陣地で 待機する。流れる雲、風の向きを 確かめながら・・・・。
2006.04.10
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この物語は、↓こちらの序章から始まります。戻ってお読みになりたい方はこちらからどうぞ。<出口を探して>旅人はまだ、謎の洞窟を抜けてはいない。けれど宝物は手に入れた。大事に抱えて、闇の中を光へと戻るつもりだったのに…。なぜか 旅人は、洞窟の中に残った。『愛の実のなる木』を、育てながら。前とは少し、洞窟の中の風景が、変わった。光に包まれた美しい木と暮らすのは、楽しかった。木は、旅人を見て、本当によく笑った。巨人達は、確かに恐ろしかった。…けれど もう、それにもだいぶ慣れた。木には毎日、小さな数粒の実がなった。それを食べると、お腹がいっぱいになった。たまに、幻想のご馳走の中で眠りこける事があった。だが、巨人達は旅人を、殺そうとはしなかった。『愛の実のなる木』が、少しずつ大きくなっていることに気付いたからだった。ネズミ穴もだんだん大きくなり、訪れるネズミの数も、増えてきた。それもそのはず、旅人が時々、松明をつかって、うがっているのだ。まだまだその穴は小さいが、そのうち、旅人自身が通りぬけられるような、地上への近道が 出来あがるかもしれない。松明「おいおい、おれの事を、忘れるなよ。俺はここの案内人だ。そのうち、きっと すごく大きな愛の実がなる。それをみんなで、分けようぜ。できれば、世界全部へ分けられれば…、いいけどな」 終
2006.04.09
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<共に生きる>旅人「…松明。俺が求めてきた宝物は」松明「そうさ」愛の実のなる木は、繰り返した。「私は、ここじゃなきゃ、生きれない」その時 地面のすみで、何かが動いた。ネズミだ。ネズミが何か転がしている。オレンジ色の実…・?見ているうちに、壁の小さな穴に消えた。松明「とにかく 言っておかなくちゃ。ここまでやって来れたのも、巨人を眠らせることができたのも、あんたが初めてだ。今まで誰もできなかった。あんたにしか、できなかったんだよ。このまま、帰るつもりはないだろう?…そのうち、巨人は目を覚ます。そしたらまた、呪文だ。早く決めろよ。この子、いやこの木の 面倒を見ると」旅人「巨人を 倒すことは、殺すことはできないのか?」松明「人を喰らうなんて、本当はうそっぱちさ。だって今まで誰もここまで辿りついてないんだからな。だったら、殺す必要が どこにある?呪文さえ 唱えてりゃ、大人しくなる。ああそうそう、幻にもそのうち慣れる。 」旅人「…さっきの、ネズミが運んでたやつ、あれが『愛の実』か?どんな人にも愛ある笑みをもたらすという!」「いや、あれは… 食べても腹がふくれるだけ。と言っても、数さえ稼げば結構な もうけになるけどな。本物は、もっともっと大きいのさ。それこそ、どんな苦しみからも解き放たれるという、愛の実さ!ネズミが穴から、娑婆へ運び出すことなど、出来やしない。けれど、ネズミを馬鹿にしちゃいけない。あのネズミが運んでくるわずかな土が、この木の栄養分になっているのさ。外の肥沃な世界から、ほんのわずかだけ、体や足にくっついてくる」「ネズミを誰かが、あやつっているのか?」「それは、わからん。ただ、言えるのは、ネズミもこの木も、一人では生きられないってことだ」「巨人はなぜ、この木を踏み潰さないんだ?」「ああ、寄ってくるネズミを食べるためだよ。ネズミは、小さな実だけじゃなく。甘い匂いのするこの木の根っこを、かじろうとするのさ」旅人「…それじゃ、俺が求めてきた、『愛の実』は、一体・・・」
2006.04.09
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<待ちわびて>とうとう二人の巨人は、くずれるようにその場へ倒れこんだ。…本当に眠ってしまったようだ。とどろくようないびきをかきだした。幻は消え去った。「ポン」突然、何かがはじけるような小さな音がした。そのとたん、木の中から、緑色の子供の顔がのぞいた。「会いたかった」「う…うわ」旅人は、ヘナヘナとその場へすわりこんだ。松明「それが、『愛の実のなる木』だ」旅人が思ったより、それはずいぶんと 小さかった。だが、放つ光は大きかった。「旅人さん」「は…、はい」「私は、ずいぶん前から あなたを知ってたわ。あなたが、この洞窟に入ることを決めた時から」「は…!?」「私は、その時 生まれたの。ううん、その時 ここへ宿ったのよ。ずっと待ってたの」そう言うと、愛の実のなる木は 大粒の涙を、ぽろぽろとこぼし出した。「わたし、まだほんの 子供なの。みんながいないと、生きていけない」旅人は、呆然とした。この不思議な生き物は、神じゃなく、ただの幼子だというのか。旅人は、木の根元に手をかけた。松明「そいつを引き抜くことはできない」旅人「なぜだ…? この子は、俺が来るのを待っていたんじゃ、ないのか?」松明「ここでなくては、生きられない」美しい木は、泣きつづける。
2006.04.09
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<愛の実のなる木>恐怖で何も見えなくなるところだった。旅人の目に真っ先に飛び込んできたのは、光を放つ美しい一本の木だった。二人の巨人の間で、小さな体で一心に光って揺れている。そう、揺れている。生きもののように。旅人は思わず 松明をとり落とした。あわてて側へ立て掛け、混乱する頭で叫んだ。「ルスクドンオ!」巨人は小さな手風琴をとり出した。(何だ?あの箱は!)とたんに まがまがしい騒音が がなりたった。松明が頭の中に話しかけてきた。「気にするな。巨人達の、一種のおもちゃだ。あれを鳴らしていると、連中は安心する」旅人が近づこうとすると、巨人は大きな手を伸ばしてきた。一つ眼のその顔は、ひどく怒っているように見えた。ぎょろりと血走った目、大きな口、鋭い牙。「ルマヤア、ラタレタコオ! イナワラカサ、テッイトイハ!!」とたんに巨人たちの動きが止まった。そしてなぜかニタニタと笑い出した。(さあさあ、こっちへおいで)とでも言っているかのように。手風琴は何故か、今度は 楽しいメロディーを奏で出した。旅人「惑わされちゃ、いけない!「チモキ、ノャシンカ! キオヤハ、ネヤハ!!」美しい一本の木の放つ光の中から、その映像が浮かびあがった。「…や。よくここまで来たね」初めて見る両親の姿。これが本物なら、どんなにいいか。「ここには みんなそろっているよ!君も仲間に入らないか」まるで 本物の人間のような声で、たくさんの友達が話しかけてきた。旅人は、ひるまなかった。「イナラナ、ニツイケンシ! イナカヅカチ、クベルナ!!イナメタ、…・」旅人は、声を詰まらせた。剣術を教えてくれた かつての 懐かしい師匠が、そこに居たからだ。「なぜここへ来た。…巨人を切ってはならぬぞ」「ここへは、自分の意思で来たんだ!」旅人は幻想を振り払った。「イナメタ、ヲスレトス!! イナシンマガ、ノモイタイク!」そのとたん 旅人の目の前に、見たこともないご馳走の山が現れた。「ああ、そんな場合じゃないのに…!」美味しそうな匂いまで、しはじめた。「これが、最後の呪文だ!!」「ルノイ、ニミカ!!」
2006.04.09
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<巨人のもとへ>旅人は、歩を早めながら呪文を繰り返した。巨人の前に踏み出したら、すぐさま唱えなければならない。忘れないように… 全神経を傾けて、繰り返した。「十の幻があることなど、もう気にしちゃいられない。恐れを振り払えばいいんだ。振り払って、ただひたすらに唱えればいい。」どんな幻が現れるか、松明には大体わかっていた。しかし、話せば 余計に恐怖が増すとわかっていた。…薄闇の中、松明の光が揺れる。松明は、人間を喰らう巨人のもとへ、案内する道具なのだ。たとえ 松明が 俺を騙しているとしても、今は信じるしかない。頼るしかない。…ひと思いに喰われるのを待つだけの運命なら、こんなに複雑なたくさんの呪文を、教えるわけがない。「はふぉ~~~っ!!」巨人の姿が、現れた。二人、いる。緑色の、すさまじく大きな巨人。洞窟の真ん中に、こんな広い巣があるとは。その巣に、とうとう旅人は乗り込んだのだ。
2006.04.08
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<恐怖は幻>旅人「こんな臭いの中で、何も食べる気などしない」松明が「早く」と急かし出した時から、旅人は歩き出していた。巨人の鼻息の音は除々に大きくなり、それに従って、独特の生臭い匂いが鼻をついた。松明「ウソをつくな。さっきから、腹の虫の音が聞こえているぞ。腹ごしらえしておけ。集中しないと、最後まで持たないぞ。『イナシンマガ、ノモイタイク』そら、九つ目の呪文だ。これを唱えれば、臭いが気にならなくなる。食べながら、呪文を覚えろ。…正直言って、ここまで来れたのは、あんたが初めてだよ。あんた、本当に宝物が欲しいのか?命を投げ捨てに行くんじゃ、ないのか?」旅人「…俺にも、はっきりとは、わからん」松明「じゃあ 喰らわれても、いいのか」旅人「それだけは、ごめんだ!俺にだって、生まれてきた意味がある!喰われちまうんなら、のたれ死ぬ方が、マシだ!そうさ、きっと意味があるに違いないんだ。この真っ暗な洞窟だって、狂いそうになる臭いも音も、全ての恐怖の元は、きっと 必要だからここにあるんだ。それが何故かは、俺には、わからないけれど…。」松明「恐怖か。そうだ。全ての幻は、その恐怖から生まれる。そら、最後の呪文だ。忘れるなよ。『ルノイ、ニミカ』 」
2006.04.07
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<巨人を眠らせる方法2>松明「いいか、続けるぞ。巨人が 襲いかかりそうになった時…」「ちょっと待て!巨人を赤子にするための呪文じゃなかったのか?」松明「そりゃそうだが、いくら一つ眼だと言っても、あんたの姿が目に入れば、いやでも飛びかかろうとするさ。呪文は、巨人の目の前に出て、大声で、叫ばなければならない。『ルマヤア、ラタレラコオ』『イナワラカサ、テッイトイハ』 この二つは、動きを止めるのに有効なんだ。そうだな、なるべく先に唱えた方がいい・・・旅人「どのくらいの大きな声を、出せばいいんだ?巨人はそんなに、耳が悪いのか?」松明「ああ、人間の声など、蚊の鳴くようにしか聞こえんよ。そうだ、声を大きくする呪文がある。これを 最初に、唱えればいいよ。『ルスクドンオ』『ルスクドンオ。 ルマヤア、ラタレラコオ。イナワラカサ、テッイトイハチモキ、ノャシンカ。キオヤハ、ネヤハ。イナラナ、ニツシイケンシ。イナカヅカチ、クベルナ。イナメタ、ヲスレトス。』…ああ、まだ二つ残ってる。それより、あんた 腹は減ってねぇか?」
2006.04.06
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<巨人を眠らせる方法1>松明「呪文を唱えるのが早いか、幻が見えるのが早いか」それが、巨人に会った時に必要なことさ。今の呪文を唱える時、恐らく世俗の…悪い習慣さ。けど、あんたには、殊更楽しそうに思える。『さあ、あなたも一緒に!』と誘われるだろう。酒を飲んで騒ぎ、夜を明かす様が見える。あるいは、夜通し何かの画面を見つめる誰かが、楽しげに話しかけてくるかも知れないな」旅人「呪文さえ唱えれば本当に、巨人は大人しくなるのか?」「なるさ。しかしまだ 呪文は八つもあるぞ。残らず覚えないと いけない」『イナラナ、ニツシイケンシ』『イナカヅカチ、クベルナ』『イナメタ、ヲスレトス』…・旅人「ちょっと、待った!どんな幻が見えるか、まだ聞いていないぞ!」松明「わかってる。でも、時間がないんだ。俺は、その燃料が尽きれば、ただの棒きれだ。巨人に向っていったとしても、すぐにへし折られてしまうだろう」旅人「あんただって、元は人間だったじゃないか!そんなに、ヤワなのか?あんた自身が、呪文を唱えりゃ、いいじゃないか!!」松明「言ったろう。これは テレパシーだと。あんたの頭に直接、送ってるんだ。巨人の頭じゃ、テレパシーを受け取るなんざ、そんな複雑なことはできない。単純で、頑固きわまりない。それが、一つ目の巨人たちだ。これは 誰がどうしたって、変えられるわけがないだろう」
2006.04.05
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<後戻りできない>旅人は、真剣だった。食糧も燃料も、限られている。それは、ここにいられる時間を指していた。あとどれくらい、こうしていられる?巨人の鼻息を聞きながら、躊躇しているこの場所には、幸いにも 冷たい水滴は落ちてこないし、風も吹き込んでは、こない。地面も凹凸が少なく、横になるにも楽だ。「早く、はやく。こうしてる場合なんかじゃないんだ」松明は、急かした。旅人は後悔など、していない。<何故、宝探しなどと。>人は言うだろう。<自分の分に応じた暮らし、それが一番幸せなのさ>旅人も、そんな暮らしをした事があった。<何故、無茶なことを。>「忘れてはいないのだろう?娑婆(シャバ)の空気を。あんたは、戻るために 今こうしているのだろう?わかっているさ、そら、次の呪文だ。『キオヤハ、ネヤハ』旅人「…ずいぶんと 短い言葉ばかりだな。本当に効くのか?」松明「簡単だからって、馬鹿にしちゃいけないよ!簡単なこと、当たり前の事にこそ、真理はあるものなのさ。」
2006.04.04
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この物語は、当初は 1話・2話を別サイトに載せておりました。そこで正式にここに載せたいと思います。<1・謎の洞窟> 旅人はこの迷路を知った時、制覇すると決意していた。それが複雑であればあるほど、闘志を燃やす男だった。 旅人は、いつも一人ではなかった。洞窟を照らす松明(たいまつ)が、真っ赤に燃えていた。「そんなに燃えるな」とたしなめると「俺は、太く短くだ」と答える松明だった。 旅人はいつものように右手を壁につけたまま歩き、地形を把握し続けた。迷路には迷路の法則があった。 けれど時折、冷たい水滴が首すじに滴り落ちると、旅人は急に不安になった。 地底湖に出くわす度に、祈った。「神よ、どうか私に力をお与え下さい。私の進むべき道へ、お導き下さい」 奥へ進むほどたいまつは湿り、灯は小さくなった。ともすると消えてしまうたいまつに 再び火を点すのは、大変だった。 宝物を守っているのは、一つ眼の巨人達だった。遠くからうなり声が響き、異臭が鼻をついた。 巨人達が怒り、たけり狂う前に、なだめなくてはならなかった。どうすれば大人しくなるのか、その方法は、皆目見当がつかなかった。 子守歌を唄うことなのだろうか。 美味しい物をちらつかせることなのだろうか。 旅人は、躊躇して来た道を引き返そうとした。だが、たいまつは言った。「あいつらは、元は人間だったのさ」旅人は驚いた。「もう 人間には戻れないと思うよ。宝物で人間をおびきよせ、喰らうようになってからはね」<2・旅の道づれ>松明(たいまつ)は、洞窟の入り口に立てかけてあったものだった。「まさか、君も…?だって、人間の言葉を、話すじゃないか」「これはテレパシーさ。そう、私ももとは人間だったのさ。巨人の手助けをして、宝物のそばまで獲物の案内をする前はね」「私を今まで騙していたんだなっ!」 旅人は、松明を落として後ろへ飛びすさった。「ああ、君は、正直でやさしい人間だ。僕にはわかるよ。引き返すなら、今さ。あきらめて帰るかい?」「私は、天涯孤独のみなしごだ。どこにも帰る場所など、ありはしない」「命を、捨てに行くのかい?」「いや、命がけで取りに行くのさ。愛の実のなる木をね」「金を生むめんどりじゃないぜ?」「わかってる。…それが世界のためなのさ…。」 巨人は吠えるようなうなり声をあげた。「どんな時に巨人は、赤子に戻るっていうんだ?」「そうだね、呪文があるのさ。しかし同時に、恐ろしい目に遭う幻想が見えるのさ。それでも君には、耐えられるのかい?」「恐ろしい目って…?」「まあ、幻想だけどね。けどたいていの人間は、それでまいっちまう。それで呪文の最後の文字を忘れちまうのさ」<3・幻と呪文>松明(たいまつ)は言った。「人間なんて、皆そんなもんさ。あんたは天涯孤独だと言うけど、大抵の人間は、親のありがたみなんかわかっちゃいない。死んだ親に会えるとしたら、どうだ?『こっちへおいで。もう苦労しなくていいんだよ』って。両親は、あんたに一番優しかったころ、あんたが一番幸せだった頃の姿をして、現れる。それが、第一の幻さ。・・・誘惑に負けてみろ、すぐさま死が待っている。さあ、呪文を唱えてみろ。『チモキ、ノャシンカ』さあ、何度も。・・・覚えたか?」次の日の日記に続く
2006.04.03
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「そなたには、人の情が、余りにも 欠けすぎておる。 そちには、あの夫が必要じゃ。そこで、人と関わる修行を、続けるがよい」「は、はい・・・」 村の女は、ひれ伏した。涙がひとすじ、頬を伝って流れ落ちた。「そなたが慕う、かたわれの男も、同じことじゃ。違う地で、同じようでいて 実は全く 違う修行を 積んでおる。 そなたの、現世での夫への情が 余りにも薄いものだから、時々、彼に逢わせてやっておるのじゃ・・・。 これは、神の 情けじゃ。よいか、そなたの罪は、余りにも 重いのであるぞ。 今の夫を、そなたの思う男と重ね合わせて過ごすがよい。よいか、決してひとりに とらわれては ならぬぞ。そち自身が 孤独にとらわれることも、ただ ひとりの人間だけを 愛することも、 全て 傲慢そのものなのだ。 そなたの家族を 愛せ。まわりの人間 全てを愛するよう 努力し、修行を 重ねるのだ・・・。 さすれば、今 そなたが 悩んでいる全ての 冷たい呪縛から、解き放たれるであろう。 わかっておるな。くれぐれも・・・(いや、その先は、言うまい) ・・・そなたの、”かたわれ”にも、感謝するがよいぞ・・・・」 女神は、そう言うと、花びらと光を残して消えた。やがて光も消え、辺りには山里の静けさが戻った。 苔むした芝居小屋の、古びた舞台が、再び光を失って、ただそこにあった。 村の女は、呆然とその場にしゃがみ込んだままだった。 けれど 知らぬ間に 暖かな喜びが体中に満ち満ち、涙が 後からあとから、とめどなくこぼれ落ちた。 (了)
2006.04.02
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光り輝く花びらは、ごうごうと 白い渦となっていっぺんに地に舞い落ち、その後で、やっと穏やかな風になった。 村の女は辺りをよく見回した。自分が立つ地面の温もり、苔むした台地。傍らに咲く小さな白い花。透き通った空の色、真昼の太陽。「そうです・・・。私は、子供を愛しています。その肌の温もり、瞳の輝きに、どれほど癒されてきたか、わかりません。 今まで味わったことのない、喜びです。彼らを守る為なら、どんなことでもしようという、力が湧いてくるのです」「そうであろう。そちの夫も、そなたを思うておるのじゃ。感謝して余りあると思うぞ。 そなたは、そのことを さっぱり思っておらん。そなたを理解しておらんと思うのは、そなたの勝手な思い込みじゃ。 そなたの言う、『草木の言葉、水の匂い、風の色』を解する男ではないが、(とそなたは思っておるが)、 そちの夫は 人の情というものを、いやというほど よく知っておる。それは、あらゆるものを 許す心じゃ。」
2006.04.02
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村の女 「私はとうとう、出逢ったのです。 私と同じ、古き良き時代を懐かしみ、草木の言葉、水の匂い、風の色、それらの意味を誰よりも解する あのお方と。 心の中に 私と同じ風景を持ち、人々に その美しさを分け与えることを惜しまない方なのです。 そして 世俗での役割を忘れず、懸命に生きるあの方に・・・。 どうか、あの方とこれからも ずっと一緒だと、もう 離れることはないと、おっしゃって下さい、女神様」女神は、きっぱりと言い放った。「そなたの 宿命にかけて、決して 肌に触れることのできる相手ではありません」村の女は、わなわなと震えながら、逆らうように言った。「ですが、心は 通い合っています」 女神は 哄笑すると、一陣の風を巻き起こし、渦のように舞った花びらで、一瞬その身を 隠した。「空想家の そなたの、身の回りを よく眺めるがよい。 いたいけな 二人の子供を。 愛してやまないと はっきりと口に出し、そなたの為に身を削ることのできる夫が、そばにおるではないか」「ですが、私は 満たされないのです」「無理もない。それは、全部そなた自身が、行ってきた報いなのだから。 家族(父母兄弟)を捨て、親戚一同を苦難に陥れ、土地を捨て、神からの恵みを全て捨て、 たった一人の 他人と心中するという 罪の重さを、やっとわかりかけてきたのですね。 でも、まだまだ足りませんよ、そなたには」
2006.04.01
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