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今回は最終回です。この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。「ほらほら、トロリがおならをしたわよ」「え・・・?」シントロラは、鼻をつまみました。「失礼じゃな!わしゃ、しとらん」そのとたん、シントロラは急に背が伸び、背骨がまっすぐになりました。顔のしわが伸び、つるんとして、身体じゅうがみずみずしさを取り戻しました。「元に戻った…!」シントロラはすっかり嬉しくなって、手足を広げて見つめながら、叫びました。不自由だった小人の姿から比べたら、本来の自分は、まるで羽根が生えたみたいに軽やかでした。「さあ、お別れのあいさつをしなきゃ」マダム・ポンヌフは優しい顔のまま、言いました。(何だか、誰かに似ているわ…誰だったかしら)シントロラは何となく思いました。「平凡な暮らしを守ることって、決して簡単じゃないのよ。本当は大変な努力が必要なの。 ふわふわと夢を見ているだけじゃいけませんよ。わかった!?」「え、あ、ハイ!」シントロラは背中をしゃきっとさせました。(この言い方…もしかして)「これからは、私とトロリの教えたことをよく胸に刻んで、今の家族を大事にするんですよ。優しいだんなさんに甘えてばかりじゃいけませんよ」「ハイ…おばあちゃん」シントロラは、思わずそう言いました。 マダム・ポンヌフとトロリの二人は、深くうなずくと、次第に輪郭がぼやけ始めました。「ああ…!」「さよなら、シントロラ。わしはお前のじいさん、マックスじゃ」「もう言わなくてもわかってるようだね、私はお婆さんのポピーよ」「森にいた茶色あごひげの小人は、隣の家のミノンじいさんじゃよ!」トロリ、いえ、シントロラのおじいさんのマックスが急いで付け加えました。マダム・ポンヌフとトロリの姿はシントロラの祖父母の姿に変わっていました。けれども、全体が次第にぼやけていくことには、変わりありません。「懐かしい人達にもう一度会えるなんて…奇跡だわ」シントロラは言いましたが、「天国にいる者たちは、心で思うだけで、いつでも側に呼ぶことができるんじゃよ。普通は、姿を見たり聞いたりできないだけじゃ。 そして、いつでも見守り、力を貸すことができる。ただし、本人の自分勝手や甘えのためでは、呼ぶことはできんぞ」「ありがとう、おじいちゃん、お婆ちゃん!」「お前を鍛えるために、やって来たんじゃよーー……」「シントロラ、元気でねーー……」そう言いながら、ポピーとマックスは、春の霞のようにおだやかに、消えていきました。その夜、煮込み料理のいい匂いが、家じゅうに広がっていました。だんなさんと子どもたちは、こんなに美味しそうな匂いを、今まで嗅いだことがありませんでした。「ママーーーー!!」「ママ、ママ、ママ!!」「おかえり」子どもたちは、いつものようにエプロンをつけて台所に立っているシントロラの元へ走ってきて、抱きつきました。だんなさんは、(やれやれ)という顔をしながらも、でも、目をきらきらと潤ませて、子どもたちとシントロラを見つめました。シントロラは涙が溢れて、マダム・ポンヌフいえ、お婆ちゃんのポピーが言った、「平凡な幸せを守る難しさ」について思い出していました。 それから皆で、テーブルに座り、神様に長々と感謝の言葉を捧げました。そしてシントロラの生まれた家に伝わる伝統料理、美味しいつるいもと羊肉の煮込みを、たっぷりと心ゆくまで、味わったのでした。 終わり
2006.12.23
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。「あれっ!」 手袋とぴかぴかした粒の連なる十字架をトロリが拾い上げると、「それじゃ、料理の最後の仕上げをしておいで」マダム・ポンヌフが言いました。 手袋が外れただけで、シントロラはまだ小人の姿のままだったし、背中も曲がったままだったけれど、急いで最後の煮込みに取り掛かりました。 冷蔵庫から新しいシャナガの葉をもう3枚取り出し、火を点け、自分で味見をした後、ちょっぴり調味料を加えました。 窓いっぱいにあかあかした夕陽が広がり、美味しそうな香りが、家じゅうに広がっていきました。「ああ・・・、何てきれいな夕陽なんだろう」「ほら!私に味見をさせるのを忘れとるよ」マダム・ポンヌフが言うと、慌ててシントロラが「やだ、ごめんなさい!」と笑いました。「何だか二人とも、急に優しくなっちゃったから私、てっきり・・・」シントロラは、(二人が家族になっちゃった気がするわ)と思いました。「合格」マダム・ポンヌフは味見を終え、「さあ、自分で魔法を解いてごらん」と言いました。 次の日の日記(最終回)に続きます!
2006.12.22
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。 夢の中に、マダム・ポンヌフが現れました。初めて見た時と同じように、緑の髪の毛、少し曲がった背中、きらきらした目をしていました。 今日は気のせいか、その目が少し潤んで、頬はふっくらと笑みをたたえているように見えました。「よく頑張ったわね、シントロラ。今度の料理は上手くいったようね」 そして、ポケットから、黒い洗濯バサミを取り出して、「これはもう二度と使わないわね」と言って手のひらにのせ、もう一つの手ををパチン、とその上にのせると、次に両手を開いた瞬間には、シントロラを変身させる時に使った道具は、粉々に砕かれていました。 そのとたんにシントロラは目が覚めました。マダム・ポンヌフの隣に、トロリじいさんが立っていました。「ほれ」トロリが手を差し出すと、そこには、ぴかぴか光る宝石のようなものがくっついて、ある形に固まっていました。「あんたが一番好きな形じゃろう」それは、だんなさんのペンダントと同じ、十字架の形をしていました。「受け取るんじゃ」シントロラがおそるおそる十字架をミトン手袋でつかむと、そのとたん・・・、あれほどきつく締まっていた、厚手の手首のひもが急にゆるんで、ぶかぶかした手袋がストン、と床に落ちました。 次の日の日記に続く
2006.12.21
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。「それは、本当にかわいそうなことだったわね・・・。でも、“きれい好き”になるのは、いいことだわ。“家”にとって最高ね」「ヒック」「あら、ごめんなさい・・・。いいえ、おかわりはもう、いいわ。何だかとっても眠いの・・・。掃除三昧で、きっと疲れちゃったのね。ごちそうさま・・・!お話楽しかったわ」「ヒック、おやすみ・・・いい夢を」トロリは目を赤くしたまま、まだ飲み足り無さそうに、テーブルの上に頬づえをついていました。 その晩、シントロラは、ワインの酔いも手伝ってか、今までの一生の中で一番、ぐっすりと眠りました。 次の日トロリから頼まれた仕事は、から拭きでした。前の時と同じように、クルミの殻の入った布袋で、家じゅうをぴかぴかに磨いてまわりました。足にはめるとスケートになるのも前と同じで、とても楽しい作業でした。 つるいもと羊肉は、午前中から煮込み始めました。皮をむいたつるいもと、ていねいに洗った羊肉の上に、冷蔵庫から出した3枚のシャナガの葉と、水を入れました。 一時間ほど煮てからいったん鍋の火を止め、調味料を加え、冷ましながら味がしみるのを待つことにしました。 太陽がポカポカと窓に降り注ぐ午後になると、シントロラはむしょうに眠くなりました。そしてクッションにもたれたまま、眠り込んでしまいました。 次の日の日記に続く
2006.12.20
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。「わしの話を聞いてくれんかのう」出し抜けにトロリが言いました。「えっ?」「酒とツマミを用意してあるでな、ちょっとばかりつきあっとくれ」 シントロラが台所に行くと、料理酒と、うなぎの骨とビーフジャーキーがテーブルに置かれてありました。「トロリさん、これじゃ悪酔いするわよ」 シントロラは料理酒をシンクの下に戻し、戸棚からワインを取り出すと、二つのグラスに注ぎました。「いや、こりゃすまんのう。高級なものをいただけて幸せじゃ。さて、出会いにカンパイ!!」「乾杯!」 シントロラは、グラスを掲げました。「・・・もうすぐ、お別れじゃのう」「ええ、そうね・・・。でも私、何だか楽しかったわ。掃除もお料理も、いい勉強ができたし。 家族と話ができないのは、つらかったけれども・・・」「そこが一番、つらいのう!わしなんか、子供を亡くした時は、そりゃあつらかったさ」「え?お子さんを・・・?それはお気の毒に・・・!」シントロラは、ワインをちびりと飲んで言いました。「でも、一体何故・・・?」トロリはヒック、としゃっくりをして答えました。「ちょっとしたケガが元で、破傷風にかかってな・・・。それ以来、わしはバイ菌が憎くて憎くてたまらんから、人一倍きれい好きになったというわけじゃ」 シントロラは、(そういえば父の上の兄が、子供の時破傷風にかかって死んだ、と聞いたことがあるわ)と思いました。次の日の日記に続く
2006.12.19
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。 シントロラは、その晩は屋根裏部屋に戻らず、夫の寝室のすみで丸くなっていました。どうせ姿が見えないのだから…、寝顔を見守りたかったのです。シントロラはやはり、自分が側にいるのに声もかけられず、触れ合えないのが寂しかったのです。 シントロラは眠りに落ちただんなさんの頬を、そっと撫でました。けれど、手のひらはいまいましい厚いミトン手袋に覆われていたのです。「もう少しの辛抱だわ…」 シントロラは自分に言い聞かせているのか夫に言っているのかわからずに、つぶやきました。 すると、ポンと音がして、すぐそばにトロリが現れました。「素敵な首飾りじゃな~…」だんなさんの十字架のペンダントを見て言うので、シントロラは仰天しました。「だめ!これはとっても大事なものなのよ」「わかっとる、わはは、冗談じゃよ」シントロラは笑って、ベッドの端に腰掛けました。「あ、あの、食材をありがとう…。もし乾燥いもと塩漬け肉じゃなかったら、きっと失敗だったわ。なぜ、何も言わないのにうちの伝統料理のことが、わかったの?」 シントロラは、何気なく言いました。 一方、子ども達の寝室では、寝たはずの子どもふたりが、ヒソヒソ話し合っていました。「明日の夜、やっとママが帰ってくるんだよ!ああ、早く明日にならないかなぁ」 子どもたちは、占い師の言葉だからではなく、パパの言葉とシントロラを、信じていました。 次の日の日記に続く
2006.12.18
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。 二日目の掃除は、天井のくもの巣はらい、レンジや換気扇の汚れ落とし、電化製品磨き、でした。 シントロラのミトン手袋は、今まで決して外れなかったので、本当なら動きにくいはずだし、汚れや汗でドロドロのはずなのですが、よほど強力な魔法にかかっているのでしょう…、水に触れても決して濡れることがなく、汚れに触れても黒や茶色など、目に見えるしるしがつくことは、まったくなかったのです。 トロリはその日、午前中から出かけたのに、なかなか帰って来ず、やっとお昼を過ぎた頃に、買い物袋をさげて現れました。「さー、こっちは晩メシ用のおかずだ。それから…、こっちがお待ちかね、煮込み用のイモと肉だ」 シントロラは晩ご飯に、新鮮な野菜サラダと、コーンスープ、カツサンドとツナサンドを用意しました。そして…、干してあるつるいもを水に浸し、塩漬けになっている羊肉の塊を、ミルクに漬けました。「ああ…、そうだわ。あれは、保存食の料理だったんだ。おばあちゃんは、生のイモと羊肉じゃなく、乾燥いもと塩漬け肉を使っていたんだわ…。 味の違いは、これだわ!」 伝統料理の下ごしらえは、このようにして、一晩かかる見込みでした。そうすると、料理が出来るのは明日…。「明日は、朝から煮込もう」シントロラは、心に決めました。 やっと、明日(たぶん夜)、元に戻れる…。そう思うと、シントロラは嬉しさで待ちきれない思いでした。次の日の日記に続く
2006.12.17
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。 トロリの頼みとは、2日間たっぷりかけて、家じゅうをもっと徹底的に掃除しつくすことでした。特に、冷蔵庫やたんす、棚の裏など。そして、おもちゃ箱や、引き出しの中の物を全部整理して、“いらないもの”を集めてくれ、と言うのでした。 確かに、棚の裏からは行方不明になってもう遊ばれなくなったトランプやコマ、額の後ろからは紙ヒコーキ、冷蔵庫の下からは洗濯バサミなどが、ボロボロ出てきました。 雑巾がいくらあっても足りないので、ボロきれを集めるために、シントロラは衣服も整理しました。細い棒にボロ布を巻きつけてあちこちのすき間につっこみ、家じゅうのどこでも、押入や陽のあたらない暗がりの中までも、汚れをかき出してまわりました。 3晩のうちの1晩はもう既に過ぎたので、あと2晩でシントロラが元に戻れる、という占いを自分も信じ、その間に家じゅうをきれいにすればよいのだ、と必死な思いでした。 そして、トロリは、シントロラの集めた“いらないもの”を集めた箱がいっぱいになるたびに現れて、ホクホクしながらまじないを唱え、ガラクタを宝石のようにぴかぴかした“何か”に、形を変えるのでした。「さあ、今日のぶんだよ!」トロリは一体どうやったのか、シントロラが渡したお金とメモで、昼前までに買物を済ませてきました。 けれども一日目は余計な、うなぎの骨とビーフジャーキーを買い込んできていて、肝心のつるいもと羊肉が、買ってありませんでした。 シントロラは身体がくたくたになりながらも、子どもたちが学校から帰ってくる前に、買ってきてもらった新鮮な野菜と魚と肉とで料理を作り、テーブルに置いておきました。 そのため子どもたちもだんなさんも、シントロラはもともと一日のうち何時間かは、家に戻ってきているのだと解釈し、はしゃいで、元気を取り戻しました。 次の日の日記に続く
2006.12.16
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。「今日は何か獲物はないかの?」 とんがり帽子をかぶった、小人のトロリじいさんが姿を現しました。 シントロラはその姿を見慣れたせいか、最初に見た時よりなんだかずっと、優しげな顔に見えました。「あ・・・今日はお料理も、ヘアピンもないわ。ごめんなさい」「なんじゃい」トロリは少しがっかりした様子だった。「お願いがあるの。私が元の姿に戻る他の方法はないかしら・・・。 助けて欲しいの」「ああ、それはマダムが言ったじゃろう。料理を作れと」「やっぱり、それしかないの?でも、もう材料がないの・・・ だんなに頼んでも、ダメなのよ。食材を買うことまるきり、頭にないのよ。 食事も、私のいない間、ずーっとピザの出前や、コンビニのお弁当ですますつもりなんだわ・・・」「そんなら、わしが材料を調達してきてあげるよ。な~に、人間がちょっとよそ見してるすきに・・・」「トロリったら!持ってくるのはいいけど、ううん、仕方がないとしても…、 お代はちゃんと、お店に置いてきて!私が必要なお金を、財布に入れて渡すわ」「ほいほい、わかったよ。それじゃわしの頼みも聞いてくれるな」 トロリが嬉しそうに言うので、シントロラはぎくりとしました。次の日の日記に続く
2006.12.15
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この物語の目次はこちらです。 始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。「悪霊を追い払うためには、家の内側の戸や扉を全部開けておくこと、と出ておるな。 しかし、家の出入り口や窓には鍵をかけておくことじゃ・・・」 占い師がそう言ったので、だんなさんは、部屋と部屋の間の扉や、廊下からの出入り口を全て開け放ちました。 おかげで、シントロラは、家の中の移動がすごく楽になり、ほっとしました。透明人間仕様の自分が、いつ戸や扉が開けられたかを気づかれる心配がなくなったのでした。 “お告げ”を聞いて安心したためか、だんなさんの気持ちはきのうより落ち着いていました。 しかし、子供たちはダメでした。「ねえ!僕たちもっといい子にするから、『早く帰ってきて』ってママに手紙を書いて・・・!うぇ、うえ~~ん!」 子供たちはベッドの上で、体をふるわせて泣き出しました。 「ママは、ここにいるのよ!」 いくら声を出しても、聞えませんでした。 下手に物音をたてたり触れたりすれば、お化けのしわざと思われるにちがいありません。 「もう寝よう。パパも今日は夜更かししないですぐ寝るよ・・・ もうすぐだよ。ふたりとも今日は、いつもよりずっと、いい子だったぞ」 シントロラは涙を流しながら、子供たちの寝室を出ると、トロリじいさんを探しました。「トロリ!どこ?お願い、出てきて!」 次の日の日記に続く
2006.12.14
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この物語の目次はこちらです。 始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。 お婆さんの小人の姿をした、けれども人間には見えない、シントロラが小走りにだんなさんの後をついて歩きながら、(ほら、かどのスーパーに入るはずだわ)と思っていると、 だんなさんは食料品店には目もくれず、そこを通り過ぎてしまうと、今度は見慣れない小路に入って行きました。 あたりをキョロキョロ見回し、煙草を取り出すと、その拍子にシントロラの書いた手紙がぽろりと落ち、側溝の中にはまってしまいました。「ああ!困ったわ」 そのままだんなさんは、とある怪しい扉の中へ入っていきました。 シントロラは入口を見て一目でわかったのですが、だんなさんはまだキョロキョロしていました。 そこは、占い師の館でした。「奥さんは、確かにすぐ近くにいますな」男の占い師は、小さな鼻眼鏡の下からキロリとだんなさんを見上げ、付け加えました。「それから、奥さんは悪霊にとり憑かれておる・・・」「ええっ?じゃ、どうすれば?」「う~~む・・・黙って待つのが一番よい、と出ておるな。さよう・・・ 今晩から数えて三晩目に、奥さんは戻ってくる、と出ておる」 考え込みながら、のろのろと歩くだんなさんの後をちょこちょことついて走りながら、シントロラもあわてて、忙しく考えを巡らしていました。(だんなさんが、つるいもと羊肉を買って帰らない・・・もう今夜もだめだわ。別の方法で調達することを考えなくちゃ。 そうだ、トロリに相談してみよう。マダム・ポンヌフの機嫌をとる方法が他にないか、聞いてみた方がいいわ・・・) 次の日の日記に続く
2006.12.13
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(警察に知らせるわけには、いかないな・・・ だって、いなくなってから毎日、手紙だけは家に残してあるわけだから・・・。 警察はきっと、「嫁のイタズラ」だと言って、真面目に取り合ってくれないだろう。「夫婦ゲンカでもしたんですか」と疑われて、痛くもない腹を探られるのも御免だしな・・・。 あと一日、一日だけ待ってみよう。明日は、町を探しに行こう。いや待てよ、それより手っ取り早いのは・・・・・・) だんなさんは、なかなか寝付けない子供たちに本を読んであげてやっと眠らせた後、胸に下げた十字架のペンダントを掲げながら、就寝前の祈りを捧げました。 いつもよりその時間が長いのは、シントロラの無事を祈っているからに違いありません。 その様子をじっと見ていたシントロラは、何だか胸が詰まって、ひっそりと涙を流しました。 翌朝、シントロラははりきりました。「さあ、だんなが料理の材料を買ってきてくれる前に、家の中を片付けて・・・お洗濯もできるわ。 あの子たちに、おやつのクッキーを焼くことができるかしら。 ああ、それよりも野菜サラダと手料理を用意したいわ・・・」 けれども冷蔵庫の中身は、シントロラが姿を消した時から4日目、だんだん乏しくなってきていました。「買い物に行きたいわ・・・だんなにもっと頼めばよかった・・・ そうだわ、こっそり駅まで迎えに行って、ポケットの中に手紙を入れてやろう」 その日の夕方、シントロラはだんなが電車を降りる時間に合わせ、家を出ました。「ああ、歩幅が短すぎるわ。走っていかなきゃ間に合わない」 シントロラは息を切らせ、やっと駅から出てくるだんなさんに追いつき、煙草を入れている胸ポケットに食材をメモした新しい手紙を、うんと背伸びしながら苦労してしのばせました。 次の日の日記に続く
2006.12.12
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「時々家に帰ってこれるなら、なぜオレ達家族に顔を見せない?何か理由があるんじゃなかろうな? まさか、事件に巻き込まれてるわけじゃないだろうな?ただ単に顔を合わせたくなくて家を離れてるんだったら・・・ オレの普段の接し方に何か問題でもあったんだろうか!?いや、そんなはずはないな・・・思いあたるふしがない。 バーバラの番号・・・確かこのノートに書いてあったはず・・・ああ、あった、あった。」 だんなさんは、あまり頻繁に使わないシントロラ個人の電話帳を引き出しの奥からひっぱり出し、 シントロラが今、世話をしているという友達の家の番号を探しました。「もしもし・・・と申しますが・・・シントロラが今そちらに・・・はあ?居ない? おかしいな、もう3日も・・・あ、いえこっちの話ですが。・・・いえ、きっと大丈夫です、 いつもの気まぐれですから・・・・・・。はあ、お手数かけます、また連絡します・・・・」「まったくあいつときたら、困ったもんだ!子供たちをおっぽり出して」 軽い悪態をつきながら、だんなさんは、奥さんが心配になり出しました。 けれど子供たちの前では、取り乱すわけにもいきません。「ねえ・・・、パパ?ママは、いつ帰ってくるの?」「さあ・・・。でも、お利口さんにしてれば、きっともうすぐ帰ってくるよ。さあ、歯を磨いて、もう寝なさい」「ほんとに・・・?」 2人の子供たちは、初めて不安げな表情で、目に涙をためながら、問い返しました。 シントロラはその様子を、廊下からこっそり覗いて、見ていました。「ああ・・・。私はみんなに、ひどい迷惑をかけてしまったわ。どうして、こんなことになっちゃったのかしら・・・・・・。 きっと明日こそ、魔法を解いてもらって、みんなの元へ戻らなくては」 次の日の日記に続く
2006.12.11
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。「ひどいわ、捨てちゃうなんて!」 シントロラは、泣きそうな声をあげました。「いやいや、捨ててなどおらんぞ」 トロリがつぶやいて、鍋の上に身をかがめると、その中から、 黄色い宝石のようなものを3粒とり出しました。「食べ物は、たいていこんな色になる」「きれい・・・」 シントロラは、呆気にとられました。「ま、次は頑張ることさね」 マダム・ポンヌフはそう言うと、嬉しそうにニヤニヤしているトロリじいさんと一緒に、ポンと音をたてて消えてしまいました。 台所から料理の匂いがすっかり消えると、シントロラは気を取り直して また手紙を書き始めました。「あなたへ すみませんが、今日の分のお洗濯をお願いします。 それから、明日、つるいもと羊肉を買っておいて下さい。(他の材料では、ダメなのです) ひまを見て、料理を作りに来ます。 どうかお願いします。面倒なことを頼んで、本当にごめんなさい 」 次の日の日記に続く
2006.12.10
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「これがあなたの生まれた家に伝わる“伝統料理”?」 マダム・ポンヌフは、おたまじゃくしで具をすくい、鼻をフンフンいわせました。「え、ええ。そうですけど・・・」 シントロラは、やっとの思いでつるいもと羊肉の煮込みを深皿に盛り付けると、おずおずと差し出しました。 料理はあつあつで、あたりには鍋の香りが漂っていましたが、家族が帰ってくるとまずいので、シントロラは急いで窓を開け、換気扇の目盛を最大にしました。「おお、寒い!」 マダム・ポンヌフが一口食べてそう言ったので、シントロラはぎくりとしました。「こんなものじゃ、合格には できないね」思った通り、初回は不合格でした。「さあ、トロリじいさーーん!」 マダムが甲高いよく通る声で、収集を仕事にしているとんがり帽子の小人を、呼びました。「へいへい」 トロリがどこからともなく現れ、シントロラの作った料理の鍋をのぞきこむと、「こりゃ、豪勢だね!」と嬉しそうなホクホク顔をしました。「では、遠慮なく」「お、お気に召すかしら」 シントロラがトロリにおたまで料理をすくってあげようとしたとたん、「1・2・3、それ!」 トロリが腕を振り上げ、何かまじないを唱えると、鍋から湯気が消え、それから中身も全てが忽然と消えうせ、空っぽになってしまいました。 次の日の日記に続く
2006.12.09
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素晴らしく大きな夕陽が空いっぱいに広がりましたが、シントロラはもちろん 眺めているひまなどなく、気が気ではありませんでした。 子供たちとだんなさんが 帰ってきてしまう前に、料理を終わらせなくては・・・。 シントロラは急ぎました。 小さな身体で鍋を取り出し、つるいもの皮をむき、羊肉を切り、鍋いっぱいに水を満たして、レンジに載せるのは大変なことでした。 かごからシャナガの葉を3枚たけ取り出して調理台の上にのせ、残りは冷蔵庫にしまいました。「ただいまー!」 下の子が帰ってきて、玄関にカバンを放り投げると、サッカーの練習に出かけていきました。「タッダイマ」 上の子も同じようにやってきて、宿題もやらずに、ピアノのお稽古に行ってしまいました。 いつもならシントロラがあれこれ注意するのですが、今日はそんなわけにもいきません。「あれ?何かヘンな匂いがするな・・・」 上の子が鼻をヒクつかせますが、「ま、いいか!」それきり、気にせずに行ってしまいました。「“変”な匂い・・・?“美味しそうな”じゃなく・・・?」 シントロラは、誰もいない台所で鍋に火がかかっているのを見て、子供がいぶかる、という事態におちいらないかヒヤヒヤしていましたが、ほっとする間もなく、首をかしげました。 「もう少しで、煮えるわ。 マダム・ポンヌフに早く “味見”してもらわなくちゃ」 次の日の日記に続く
2006.12.08
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更新日を土曜日にしているのですが、先週は2日分しか書けなかったので、 今回の土曜日に前の分も書き込もうとしました。そしてやっと7日分更新しました。 「素敵な夕陽の見える家」という地味な長篇ファンタジーを書き終えたら、 楽天日記をひとまず休止しようと思っているのですが(童話講座に専念するため) このファンタジーはなかなか進みません。 これは、最初にテーマとシーンごとのあらすじを考えていたので、 あと14話で終わるはずだったのですが、 詳しく書かないと感情移入ができないため、長くなってしまいました。 なので、あと何話で終わるかわかりません。かなり長くなってしまうかもしれません。 というわけで皆様、続けて購読されている方は、もうしばらくおつき合い下さい。
2006.12.07
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O・D賞の〆切りは12月11日。公募ガイドの発売日は9日だけれど、前日の日記に述べたとおり、童話講座を新たに申し込んだので、来年一年は公募を見送ろうかと思う。他の理由としては、大殺界のこととか、仕事や家庭の事情とか、健康への配慮などです。
2006.12.06
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ユーキャンの通信教育の「立原えりかの童話塾」を修了した人が受講できる、「特別講座」に12月1日申し込み、12月8日に教材が届きました。全部で6回分の添削が受けられます。来年一年間、これで童話の勉強をするつもりです。
2006.12.05
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この物語の目次はこちらです。始めから読みたい人、途中から読みたい人はどうぞ。 シントロラは、かごいっぱいに草を摘むと、出来る限り急いで 山を降りました。 これだけあれば5~6回、いえ10回は、料理に使えそうでした。 暗くなりかけた家路を急ぎながら、シントロラは頭の中で、必死に「つるいもと羊肉の煮込み」の作り方を、思いだそうとしていました。(おばあちゃんが作ってくれたあの時… どれだけの材料をどのくらいの調味料で、何分煮たか… 少しでも間違えたら、美味しい料理にならないに違いないわ…) シントロラは、だんだん不安になってきました。 ※12月8日の日記に続きます。
2006.12.04
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どうやら、赤ら顔の丸い鼻、茶色あごひげの小人は、シントロラを、彼女のお婆さんと見間違えているようなのでした。「おれは、昔から、この草を“採っていい”と許した人間にしか渡さない。 そういやあんた、少し前から、ぱったり来なくなったな? それに何だか、えらく“縮んだ”みたいだな…?」 シントロラは、笑い出したいのをこらえながら、答えました。「ああ、そうさ、ちょっとばかし病気をしてね…」「ちょっと待て、本当にあの婆さんか、確かめないと。1・2・3…」「プーーッ」 小人がシントロラの顔に人さし指をくっつけて、何やら数を数え出したので、シントロラは溜まらずに吹き出しました。「ようし、“しわ”の数が88本。まちがいない。 さあ、草を持っていけ」 シントロラは、こんな深い森の中で、さらに難題を出されたらどうしよう、と思っていただけに、気が抜けて、おかしさで一杯になりました。 と同時に、お婆さんの姿をしていたおかげで、 目的の物を手に入れることができて、本当によかった…、と思いました。 もし、シントロラが他の姿だったら、シャナガの葉っぱを手に入れることが、出来なかったかもしれないのです。 次の日の日記に続く
2006.12.03
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「あ!あったわ」 ハート形で深緑色をした、シャナガの葉っぱの群生を、見覚えのある大きな岩だなの下に見つけた時、「おい」 聞きなれない しわがれ声がして、シントロラは後ろを振り返りました。 するとそこに、長い茶色のあごひげを垂らした、赤ら顔の 丸い鼻の小人が立っていました。「お前・・・」「あ、あの私、シントロラ、と言います」「お前には見覚えがある」「えっ?このしわくちゃ婆さんの小人に?」 シントロラは自分の顔と手足をさすりました。この姿に変わってから、会ったのはマダム・ポンヌフという妖精と、トロリという小人のお爺さんだけのはずでした。「いや、おれは あんたの顔を知っている」 小人は、シントロラの子どもの頃のことを知っている、というのでしょうか。 それが、今とどういう共通点があるのかはわかりませんが。(もしかしたら、小人は、人間とはちがうものの見え方をするのかもしれないわ) シントロラがそう思ったとたん、小人は言いました。「いや、おれは、あんたのその“しわ”の形に、見覚えがある」 次の日の日記に続く
2006.12.02
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森へ行くまでの村の道を通っている間は、小さなお婆さんの小人の姿をしたシントロラは、誰の目にも見えていないようでした。 誰もが忙しそうに家の中を動き回ったり、出かけて行ったりしましたが、 シントロラが うっかりあいさつしても、振り返ることすらありませんでした。 森の中は暗くひんやりしていて、ミトン手袋と長靴で汗ばんだ手足が、ようやく落ち着いて俊敏さを取り戻したかのようでした。 森の空気、匂い、小鳥のさえずりは優しくほがらかで、 シントロラは、幼い頃を懐かしく思い出しました。 おばあちゃんが 珍しい草花の名前を教えながら、食べられる草や、毒草の見分け方を教えてくれたものでした。 シントロラは、もし森の中で日が暮れてしまったら、大変なことになるだろうと感じていました。 道に迷い、獣がうろつき、寒さにこごえるだろうということが、充分に考えられました。 シントロラは、先を急ぎました。 次の日の日記に続く
2006.12.01
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