仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2021.10.10
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カテゴリ: 東北
貞観地震(869年、貞観11)による津波堆積物により、当時の浸水地域が2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)と類似していることがわかっていて、このような地震が長い周期をもって繰り返すと考えられる一つの根拠となっている。

しかし、地層から発見された砂の層がなぜ貞観津波による堆積物と判断できるのか。

これには一つの幸運な手掛かりがある。それは、微量元素組成や鉱物組成の近い珪長質の白い火山灰が、東北各地で分布していることだ。化学的組成が同じということは噴出物の供給源が同じことを意味し、最も厚く堆積しているのが十和田湖周辺である。

秋田県の考古遺跡では、白い火山灰層の中から9世紀後半や10世紀前半の瓦や土器が見つかっている。また、平安末期編纂の『扶桑略記』の延喜15年の条の記載(雨灰の高さ二寸)などから、十和田噴火が915年と特定できる。

十和田噴火は、文献で知られる日本史上で最大級の噴火である。火山灰層から推定される噴出物の総量は途方もなく、明治の磐梯山(1.5km3)や大正の桜島(2.1)をはるかにしのいで、6.5km3である。

現在の十和田湖の一画に半島状の火口痕跡があり、ここが火山灰の噴出源と考えられている。

さて、太平洋側の地層からみつかる分厚い津波堆積物は、915年の十和田火山灰層のすぐ下から見つかっている。そこで、文献史料に記された869年の貞観地震の津波であるとわかるのである。

■参考文献
 加納靖之ほか『歴史のなかの地震・噴火 -過去がしめす未来』東京大学出版会、2021年





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最終更新日  2021.10.10 21:17:14
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