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賢司と映画館から出た優美は、携帯電話の電源をONにすると、着信履歴が、24件も入っているので、何事かと思った。兄嫁の幸子から14件、涼子からが9件、そして、夫の陽平からは、1件。皆、どうかしてるのかと思ったが、最初に入っていた幸子の留守電を聞いて、慌てて新宿から、病院に飛んで来た。病室に入ると、何人もの目が一斉に優美を振り返り、一瞬ドキリとした。まずは、里奈を確認すると、頭を包帯でぐるぐる巻きにされ、眠っていた。ベッドの脇で里奈の手を握りながら、青ざめた顔で座っていた幸子が、立ち上がる。「優美ちゃん、ごめんなさい。こんなことになっちゃって」「容態は?」「前頭部の傷からの出血が酷かったらしいの。傷自体は 大したことないって。ただ、頭を打っているから、 入院して検査が必要だ。って。 あと、肩も脱臼しているみたい……」「そう」良かった。さすがに、やっと落ち着き、溜息まじりに安堵した。「あたし……、本当に何て言ったらいいか。 お料理をしている時に、ちょっと、目を離したら……」「お義姉さんが、気にすることじゃないわ。 誰が居たとしても、事故みたいなものなんだから……」優美がそう言うと、幸子は弱々しく笑いながら、「里奈ちゃん、ママが帰って来たわよ」と、優美に席を譲った。……本当に良かった。安堵すると共に、今まで病室の壁と同化していたギャラリー達に、ようやく意識が行く。「みんな、一体、何?」優美の言葉に唖然としている啓太と中澤、そして涼子を代表して、口火を切ったのは、佳奈だ。「一体、何?じゃないでしょう。何やってたのよ」「ええっ?」「今まで、どこでどうしてたのよ!」「……あたしだって、いろいろ忙しいのよ」「お受験で。でしょ?」佳奈は、まっすぐ優美を見据えて、捕らえた獲物を逃す気はないらしい。「……他にも、……色々あるのよ」「だいたいね……」だが佳奈は、眩暈がしたらしく、勢いが途切れた。助かった。自分が獲物だということを自覚していた優美は、そんな佳奈の性格を昔から熟知していた。どう言い訳しようか、何も考えていなかったのだから。「ねぇ、風邪引いたんじゃないの?」涼子が、佳奈を支える。「凄い、熱じゃない。横になった方がいいわ」「僕、先生、呼んできます」中澤が病室を出ようとすると、佳奈が「大したことないから」と引き止めた。佳奈を病室のソファに落ち着かせると、佳奈のピンチヒッターを、涼子が勤める。「優美、里奈ちゃんが、どんな思いでママを待っていたと思っているの? もう少し、考えてあげた方がいいわ」「陽平みたいな言い方するのね。辞めてよ。そういうの」優美は涼子にまで、そんな言い方をされる覚えはないと思った。涼子は、少しびっくりしている。「優美、どうしちゃったの? 昔は、そんなじゃ、なかったよね」「余計なお世話だわ。第一、涼子たちには……、関係ないでしょう」「……」一瞬、気まずい空気が流れる。いくら親友だからって、夫婦や家庭の問題には立ち入って欲しくなかった。遠くから、院内アナウンスや、廊下すれ違う足音、そして雨音が響く。「腹、減ったよな」啓太が誰にともなく、呟いた。……なんで今更、鮎川啓太がここにいるんだろう。 涼子だって、結構うまくやっているじゃない。「そう言えば、お腹、空きましたよねぇ」佳奈を心配そうに寄り添っていた中澤が、無理に笑う。……今度は、年下?佳奈だって、節操がないわ。「もう、お引取り下さって、結構よ。佳奈も具合が、悪そうだし」優美がギャラリーたちに背を向け、里奈の方に姿勢を正すと、病室のドアが派手にガラガラと開いた。「里奈!」宝田陽平が、里奈の傍らに走り寄る。「一体、どういうことなんだ、説明しろよ」陽平の目は言葉以上に、優美に厳しかった。「……ちょっとした事故よ。……大事に至らなくて良かったわ」優美の歯切れは、悪い。でも、陽平より、一歩でも先に病室に来れたことが唯一の救いだった。「お前、側にいなかったのか」「優美ちゃんのせいじゃないの。あたしが……」思わず、幸子が黙っていられなくなり、口を挿む。「仕方ないでしょう。ちょっと目を離した隙だった……」優美が全てを言い終わらないうちに、陽平の手がピシャリと優美の頬を打つ。「仕方ないで済ませるのかよ。お前、母親だろ!」「……」……「母親だろ」ですって?じわじわと頬が熱い。頬を手で抑えながら、優美は今、大嫌いな一言を、大嫌いにならないよう努めている、陽平から、聞いた。……まただわ。涙が出そうだ。でも絶対、泣きたくない。陽平の前だけでは、絶対。……最低ね。「母親だから、仕方ないって言っているのよ。 そう言う貴方は、立派な父親なんですもんね」雨が、もう降ることに飽きたのか、ピタリと止んだ。台風は、峠を越えたらしく、風も穏やかになった。涼子と中澤は佳奈を支えて、病室を出て行き、啓太もそれに続いた。間もなく、幸子も、一度家に帰ると言って、病室を出た。夫婦二人、久しぶりにまともに向き合ってみると、何を話したらいいのかわからない。……あたし達、どうして、こんな風になっちゃったんだろう。それは、今まで優美が、考えることを先送りにして来た、問題だった。なんとなく曖昧にして過ごすことが、一番の解決策だと思っていたからだ。でも、こんな風に言い合ってしまっては、何か新しい結果を出さなければ、いけなくなるではないか。とりあえず、賢司とのことは、バレないで済んでいる。だけど、今までの自由で平穏な日々は、戻らないかもしれない。いろいろな意味で、取り返しの付かない事故となってしまったことを、改めて、優美は、悔やんでいた。 …… See you next time! ……いつも読んでいただいてありがとう♪ランキング参加中です。別ブラウザで開きます。お手数ですが、応援いただけると嬉しいです f^_^; ↓↓↓ 登場人物紹介 人物相関図
2006.09.28

こんにちは。みづきいちえです。いつも<美しき月の夜に>へお越しいただき、「熱砂の霧」を読んでいただいて、本当にありがとうございます。また、ランキングの応援、誠に感謝いたします。なんだかんだと「熱砂の霧」も「ブレイクタイム」も間が空いてしまいました。申し訳ありません。 旦那の両親の接待から、怒濤の15話「意味のある偶然?」を書いたら、少し頭を冷やしたくなり、あちらこちらへネットサーフィン勉強の旅。息抜きにスパイダ ソリティア(パソコンのプログラムに入っているトランプのゲーム)なんかで頭を真っ白にしてみました どうも、一度まったく違う世界に行かないと涼子や佳奈、優美の気持ちをスイッチ出来なくなりつつあります。 少し古いですが、大河ドラマ「新選組!」の脚本を書かれた、三谷幸喜さんなんか尊敬に値します。主人公は1人ですが、7人位のレギュラーの気持ちを行ったり来たりと、さぞ、大変だったのではないかなぁ さて、創作のグチは置いといて、公言していました両親の接待ですが……なんと、こちらも台風で、すべての予定はキャンセル 81歳のお義父さんは、やっぱり長時間歩くのは無理なんですよ。それでも皆の気持ちを汲んで、無理に頑張って歩こうとするから、かわいそうで。天気の悪さを口実に、家でのんびり過ごしていただきました。ま、みづきの家に来る前に、既に今回結婚した従兄弟の父で、お義父さんの弟に当たる、叔父の家に3日程、滞在し、何かと観光に連れ出され、かなりお疲れになってしまっていたのもあったのですが。しかし!家でのんびりとなると、今度は、朝昼晩のご飯の支度とか、却ってみづきにはプレッシャーだったりして ふだん二人分の食事しか作っていないのに、一気に総勢14名のご飯は、一体、何合お米磨いだらええんじゃい(>o
2006.09.28

渋谷駅の渋東シネタワーは、この天候のせいか、若者でごった返していた。金曜日の午後5時半なんて、誰もが待ち合わせをしそうな時間帯だし、台風のせいで皆、表を歩きたくない気持ちは同じだろう。涼子はその2階にある、喫茶店で携帯を手に、佳奈の到着を今か今かと待っていた。大きなガラスが壁の一面を占めている店内のカウンターからは、異様に早く流れる雲がよく見え、激しい雨が、まるで顔に直接掛かるのではないかと思う程、激しさを増していた。会社からここまで幸いにも涼子は、あまり雨に当たることなく、やって来ることが出来た。こういう時、地下鉄から直接アクセス出来る待ち合わせ場所はありがたい。佳奈の携帯から電話が入ったときは、遅刻の言い訳かと思った。突然、男の人の声が聞こえ驚いたが、用件はそれ以上に緊急を要した。中澤から「優美の娘の里奈が、大怪我をして運ばれた」と連絡を受けたのは、頼んだカフェラテに砂糖を入れ、飲もうとした時だった。連絡を受けた涼子は、折角のカフェラテにも手を付けず、何度も優美の携帯に電話をしているが「電波が届かないか、電源が入っていない為、掛かりません」というアナウンスが、虚しく流れるだけだった。……優美、何やっているのよ。そもそも、今日、優美が佳奈の事務所に行くことは、聞いていなかった。3人の間では、昔から、二人の内、どちらかに何か話せば、体外もう一方にも、話は筒抜けになる。取るに足らないことであっても、特に佳奈は、優美がらみで何か聞くと面白おかしく伝えてくれるのだが、今日のことは何も言っていなかった。突発的に予定が入った、可能性が大きい。だいたい優美は、当の里奈ちゃんの受験準備が忙しいとかで、最近、あたし達との付き合いから、遠ざかっていたではないか。……佳奈が来れば、少しは何か、わかるかもしれない。涼子は出入口付近を気にしながら、根気よく優美の携帯の番号をリダイヤルしていた。……佳奈?しばらくそうしていると、見紛う程、頭からびっしょり濡れた姿で、ぐったりと疲れた顔の佳奈が、歩いて来た。「ずぶ濡れじゃない。風邪引いちゃうよ。傘持ってなかったの?」「こう酷くちゃ、傘なんて、ぜんぜん意味ないわ。車、下に待たせてるし……」「……」佳奈は座りもせず、ぼうっと立ち尽くしていたが、必死に電話を掛け続ける涼子の様子に異変が伝わったらしい。「……?」「大変なの。優美のところの里奈ちゃんが救急車で運ばれたって、今、中澤君 から連絡が入ったの。座って温かいものでもって言いたいんだけど……」「ええっ?」涼子は、携帯を片手に、立ち上がって、バックと傘を手にした。「それが、優美に連絡取れないのよ。とにかく病院に行った方がいいよね」「えっ?ちょっと待って。頭働かない。……中澤?」「佳奈の事務所の中澤君よ」「ああ。……えっ?なんで?」「携帯、事務所に忘れたでしょ」「うん。でも、どうして?」「こっちが聞きたいわよ。優美が佳奈の事務所に行ってる筈だって 連絡が入ったんだって。優美のお義姉さんから」「何それ?」「ええっ?佳奈も聞いてないの?とにかく病院行こ!」涼子はそう言うと、一目散にレジに行き、会計を済ませた。エスカレータを1階まで降り、更に地下鉄に向かうエスカレーターを下ろうとする涼子に、佳奈が呼び止める。「病院どこ?」「池尻」「表に車待たせてあるのよ。こっち」「……?」「社長の知り合いなんだけどね、行きがかり上、送ってもらうことになってるの。 恵比寿って言ったけど、彼、この後、暇だって言ってたから、池尻の病院まで、 行ってもらっちゃおうよ」佳奈が目尻に皺を作りながら、得意気に笑った。「ラッキー」涼子は笑顔を佳奈に返し、佳奈の後に続いて、送迎車を目指した。たった1分間で今日の雨がいかに凄まじいか、涼子も思い知った。渋東シネタワーを出て歩道を渡り、路上にハザードを出して停車していた車の、後部座席に乗り込んだ時には、涼子も佳奈程ではないが、かなり濡れていた。「すみません。便乗しちゃって」涼子は、ハンカチで湿った髪の毛を拭いながら、運転席のサングラスの男に声を掛けた。運転手は、涼子の方を振り返ることもせず、無愛想だった。佳奈は、これだけ濡れたら、もう身なりに構っても仕方ないと思っているのか、特に濡れていることなど、気にもせず助手席に座り、「恵比寿って言ってたんですけど、大橋の救急病院に 急用が出来ちゃったんです。お願いしてもいいですか」と、めずらしく下出に言った。運転手は、頷くと黙って車を発進させた。……さすがに、佳奈も気を遣ってるんだわ。 でも、こりじゃ、タクシーと同じね。涼子は、社長の知り合いと聞いて、少し緊張していたが、佳奈らしくない腰の低さが可笑しく、返って気が楽になった。「でもさ、こんな時に優美、何やってるんだろうね。 里奈ちゃん、大したことないといいけど。あ、宝田さんは?」「宝田さんは仕事中みたい。里奈ちゃんはジャングルジムから、落ちたって」振り向いて話しかけてきた佳奈に、涼子は、更に足首を拭きながら答えた。「この嵐の中?」「ママの帰りが、待ちきれなかったんじゃないかって」「もお、優美ったら、だいたい、なんでこんな日に出歩いてるんだろ」「それを佳奈が、知ってると思ったわ」足首を拭き終わると、今度は、持っていたバッグの水滴を拭う。「知るわけないじゃん。知ってたら話してるわよ。 で、里奈ちゃんの怪我は、どうなの?」「命には別状ないって。詳しいことは、あたしもわかんない。 中澤君もよくわからないって言ってたわ。あ、そうそう、中澤君に佳奈に 会ったら、病院に向かうって言ったら、彼、携帯持って来てくれるってよ」涼子は、濡れたハンカチの始末をどうしようか迷った。「あ、アイツ……、あたしの携帯見たんだ」「しょうがないじゃない。こんな時なんだから」涼子は、仕方なくハンカチをバックに押し込み、佳奈を見て笑った。「どうせ、忘れた、あたしが悪いのよね」佳奈は、冗談混じりに口を尖らせ前を向いてしまった。相変わらず雲の流れが速い。東京の台風は、今がピークなのかもしれない。走っている車は皆、どうしても徐行運転になっている。早く到着すればいいが、車はまるでディズニーランドのカリブの海賊のような、乗り心地だった。涼子は、携帯を取り出すと、引き続き優美へ連絡を取ろうと試みた。……やっぱり繋がらない。苛立ちながら何気なく、涼子の目が、バックミラーに行った。何気なく 。「……」「!」……嘘。心臓が凍った。「……ケイ……タ?」運転中の男のサングラスが、バックミラー越しに少し動いたような気がした。「ねえ、……啓太なんでしょう」車が信号で止まると男は、 鮎川啓太は、煙草をくわえ車に装備されているシガーライターを押した。「煙草いい?」「……」「うっそぉ……、あゆちゃんて……」佳奈も驚きを隠せず、ただただ、啓太の横顔を呆然と眺めていた。「優美って、あのHeIZの宝田陽平の奥さんになった人だっけ?」啓太は煙草に火を点けると、煙を吐き出した。「最近の若い母親は、これだからなぁ」啓太は、独り言のように呟くと、雨が吹き込まないよう、ほんの少しだけ運転席側の窓を開けた。信号が青に変わり、車は、ゆっくり走り出す。……なんで、どうして、こんな時に 。突然、啓太に会うの。これも、あの時と同じ「意味のある偶然」なのだろうか。涼子の脳裏に、ふと、この間”VOICE”に寄り道した夜のことが過ぎる。雄二と結婚するまで、あと3ヶ月。それは、突然訪れた、7年交際した元恋人との4年振りの予期せぬ再会だった。 …… See you next time! ……いつも読んでいただいてありがとう♪ランキングが3箇所に増えました m(_ _)m応援いただけると嬉しいです f^_^; ↓↓↓ 登場人物紹介 人物相関図
2006.09.23

200×年7月27日 金曜日 午後5時……どうして、寄りによってこんな嵐の日に、頼まれごとなんか しちゃったんだろう。しかも、携帯電話を事務所に忘れた。佳奈は、公衆電話の前で、ずっと話中の受話器に向かって、苛立っていた。……きっと、また社長が、長話しているんだわ。携帯を取りに戻れば、涼子との待ち合わせの時刻に遅れる。せめて、携帯が本当に事務所にあるかどうか確認したかった。佳奈が事務所を出た時点では、木谷は外出していたが、帰ってきたばかりの中澤が、佳奈を見送ってくれたから、まだ居るはずだった。木谷も、間もなく戻ったのだろう。佳奈は、木谷社長から頼まれた水色の封筒を代々木第一体育館に届け、そこの公衆電話から、事務所に何度も電話を掛けながら、木谷の首を絞めてやりたいと本気で思った。事務所の前からタクシーを使って、ここまで来たまでは、良かった。体育館の門前でタクシーを降りると、この台風では傘なんて、何の役にもたたず、関係者出入口に辿り着くまでの5分間に、頭からバケツの水を被ったような有り様だった。ジーンズの下まで通しているのではないかと、思う程びしょ濡れだ。体育館の守衛にも、同情を通り越し「この天気に物好きだ」と言わんばかりの目で見られた。ここ代々木第一体育館では、翌日の人気ロック歌手のコンサートを控え、ゲネプロという本番そっくりのリハーサルが行われていたので、追っかけの女の子が、出演アーティスト会いたさにやって来た、とでも思ったのか。「KIYAプロの井上」と名を告げただけで、それを訂正するような表情で無線を使って連絡を取ってくれた。バスドラムやベースの低音がお腹に響き、時折、派手な旋律のギターやキーボードの高音と混じって、スネアの音が頭に響く。しばらくすると、黒いスタッフTシャツを着た、若い男の子が現れた。「お疲れ様でーす。これ、渡しておきまーす。失礼しまーす。」10代だろうか。どう見ても使い走りで、ことの詳細など何も聞かされておらず、文字通り、封筒を受取ると、さっさと走って行ってしまった。……なにあれ。本当に失礼だわ。この状態見てあれだけ?こうして、ずぶ濡れになった割りには、あっさりと用事は済んだ。「だいたい出演者じゃないんだったら、本人が受け取りに来て、 労いの言葉ぐらい、言うべきでしょう?」木谷の彼女が、ここでどんな仕事をしているのか知らないが、こんなに苦労してやって来たにも関わらず、当の本人に直接会えないことが、妙に腹立たしかった。ゲネプロが終わったのか、ロックの音が止むと、体育館の分厚いガラス張りの扉に突き刺すような勢いで降る、激しい横殴りの雨音がよくわかる。事務所への電話は諦め、携帯に掛けてみたが、3コールで留守電に切り替わった。自分が、そう設定しているのだから無理もない。佳奈は、溜息をついた。扉の向こう側には、またバケツの水が何杯も待っているかと思うと、ものすごく憂鬱だった。涼子の番号さえ、携帯がないとわからない。今日はこのまま渋谷駅で涼子を拾い、恵比寿の佳奈のマンションまでタクシーで直行しようと考えていたが、扉から見える門の向こうは、タクシーがそう簡単には捉らないと、小学生でもわかりそうだ。渋谷駅までは、普通なら歩いて行ったって、15分程度の距離だ。だが、今日はこの嵐が、それを躊躇させる。しばらく佳奈は雨の様子を伺っていたが、ここは覚悟を決めて行くしかないと、重い足を引きずって扉に手を掛けた。「どこまで行くの?」よく響き渡る声に振り向くと、黒いTシャツとジーンズに、白い麻のジャケットを羽織った男が、佳奈の方に向かって、歩いて来た。見たことがあるような気がするが、うっすらと無精に見えるよう丹念に気を遣っていそうな髭にも、黒いサングラスの奥の眼差しにも、心当たりがなかった。「KIYAプロの井上さんでしょ。木谷さんから、ほら、受け取ったから」男はそう言うと、確かに先程、佳奈が若い失礼な男の子に渡した「あゆちゃん」宛ての水色の封筒を、肩の高さで揺らして見せた。「終わったからさ、送るよ」「あの、あゆちゃんて……」「ああ、俺、俺」「てっきり女性だと……」「よくね、間違われるんだよ。この業界、人の名前に なんでも”ちゃん”つけるから」そう言えば、木谷は佳奈のことも「いのちゃん」と呼ぶ。……神様っているもんよね。この際、それが本当に木谷の彼女であれ、彼氏であれ、佳奈にはどうでもよかった。とにかく、この台風の中、タクシーが捉るまで外で待つか、渋谷まで歩くか、という究極の選択から、間逃れることが出来たのだ。「助かります。渋谷までお願いしてもいいですか?」「悪いけどさ、これケツに敷いてくれる?」あゆちゃんは、手に持っていた黒いタオルを投げた。「……?」「シートが汚れるから」佳奈があっけに取られていると、あゆちゃんは踵を返し、体育館の地下駐車場に向かって、歩いて行った。30代だろうか。この男も先程の10代の男の子に負けないくらい、失礼なヤツだと佳奈は思いながら、その男の後に続いた。「出来れば、渋谷でひとり拾って恵比寿まで行って欲しいんですけど」「別にいいよ、このあと暇だから。そんなんじゃ、電車に乗れないか」佳奈は、笑う無精髭を見て「神様と思うのは、辞めよう」と心に誓った。 同日、同時刻、KIYAプロ中澤は、佳奈の携帯を前に、腕を組んで考え込んでいた。佳奈が出掛けて、しばらくすると「宝田優美の姉の佐々木」という人から半狂乱で事務所に「宝田優美はいますか」と電話が入り、なんでもお嬢さんが大怪我をして救急車で運ばれたとかで、大至急、連絡を取りたいと言う。「宝田優美?」中澤は不信に思い、事情を聞くと佳奈の友人で、今日はこの事務所にいるはずだと言う。優美本人の携帯が繋がらず、わざわざ104で調べて、この電話に掛けて来たと、もう、半ベソ状態だ。「自分は留守番だから、よくわからない」と、とっさに大人の対応をしてみた。聞かれるがまま、佳奈の携帯の電話番号を教え、腑に落ちないまま受話器を置いた。……よくわかんないけど、これって、なんだかヤバクナイ?あまり深く考えるのは辞めて、佳奈の携帯に電話を掛けようとすると、今度は、肝心の佳奈の携帯が、ちらかった机の上で雑誌に埋もれて、何度も鳴った。中澤は、佳奈が代々木体育館に行って、そのまま涼子と会うと、この間、言っていたことを思い出した。が、涼子の連絡先は知らない。が、目の前にある、佳奈の携帯電話には、涼子の連絡先が入っているはずだった。……いくらなんでも、人の携帯見ちゃ、ヤバクナイ?じりじりと時間だけが過ぎていく。このまま佳奈が涼子に会ってどこか、携帯の繋がらない地下の店にでも入ったら、アウトだ。こんなことなら、この間、涼子に会った時に携帯の番号を聞いておくのだったと、舌打ちしたが、後の祭りだ。……だけど、それ以上に、この状況、もっとヤバクナイ?中澤は散々悩んだ末、佳奈の携帯を手にアドレス帳を検索し始めた。 …… See you next time! ……お待たせいたしました!無事、旦那の両親の接待は完了(^-^)そのお話は後日、ブレイクタイムで報告しますね♪まずはこちらが先ですよね~(^ ^;)ランキングが3箇所と、たいへんお手数ですが応援いただけると嬉しいです (*^^*) ↓↓↓登場人物紹介 人物相関図
2006.09.20

こんにちは。みづきいちえです。いつも<美しき月の夜に>へお越しいただき、「熱砂の霧」を読んでいただいて、本当にありがとうございます。また、ランキングの応援、誠に感謝いたします。既にご存知の方も多いと思いますが、この連休、みづきの旦那の両親が長崎から、遠路はるばる泊まりに来る予定です。 これはその旦那の故郷の写真 みづきは神奈川在住なのですが、東京で親戚の結婚式があるんですって いつもこちらから押し掛けてばかりで、お義父さんもお義母さんも、我が家にお泊りするのは、なんと始めて 何十年ぶりかの東京に、タイムリーにも親王が生まれたこともあって、皇居に行きたいとか、靖国も見ておかなきゃだとか、浅草は外せないとか姑以上に4人兄弟の息子、娘、嫁、夫達は大騒ぎです。とにかく81歳と76歳の高齢だし、これは、皆で「はとバス」かいな という展開になりつつあります。旦那の実家に住む長男が、連れ立ってやってくるのですが、みづきの近所に、偶然住んでいる旦那の姉夫婦、弟家族と、日曜日は、どっかの小説のキャラクターじゃないけど、お食事会と相成りました。えっ?これじゃやっぱり「幸子はみづき」という声が上がりそうですが、決定的に違うのは、みづきは「生活の中の美」など追求せず、時間があれば、家事をほったらかして、ブログのメーキングモードに突入してしまう、超ぐ~たら主婦だということ 今週に入って、少しずつ準備してはいたんだけど、天気がずっと悪く やっと本日布団干しやら、クッションのカバー類の洗濯なんかが出来た明日はお掃除や、食材の買い物、下準備等でバタバタになりそうです。という訳で、無事帰郷するまで、きっと、ぜったい、パソコンを開けることすら不可能な状況になりそうです。 よって、「熱砂の霧」の更新は、おそらく来週の中旬以降になるかと思われます。今回13話は緊迫の急展開で、この先3~4話のイメージが、既に明確なので、みづき的にも一気にうわぁ~と書きたいところ 内容を忘れないようにあれこれとメモはしてるけど……忘れたらごめ~ん 嘘!嘘!涼子や、優美や、佳奈が長崎言葉になってないこと祈っていて下さい結局、更新が遅くなりそうな言い訳でした そういえば「熱砂の霧」の登場人物がかなり入り乱れて来たので、人物相関図 なるものを作ってみました。急いで作ったので、完成度はイマイチだけど、よろしかったら、ご参考にどうぞ それでは、これからもどうぞよろしくお願いします。
2006.09.15

200×年7月27日 金曜日 午後4時幸子はフルーツトマトをていねいに洗い終わると、まずはビーフシチューを作ろうと思った。優美の実家では、キッチンで優美の兄嫁、幸子が鼻歌まじりに、今夜の夕食会の準備を始めていた。教室の帰りに、いつも行く八百屋へ里奈と寄ると、新鮮なフルーツトマトが半額で手に入ったのだ。しかも「こんな台風の日に来てくれたんだから、おまけするよ、お姉さん」と、ちょっと好みの若い店員に言われた。まさか、里奈と姉妹に見えるわけでもあるまいとは思うが。「お姉さんだって。一体、あたしのこといくつだと思ってるのかしら」幸子は、笑みが止まらなかった。そもそも今日は、朝からついていたのだ。姑の芳江は、今日は友人のお琴の発表会とやらで朝から外出しているし、里奈をギリギリの時間に、押し付けていく、義妹の優美は、今日は、めずらしく、かなり早く来て、里奈を置いていった。いつもは遅刻するのではないかと、幸子が慌てるのだが、今日は、朝から余裕があった。そしてその教室では、里奈は一度も愚図ることなく機嫌よく授業を聞き、先生にも褒められた。そんなこと、初めてだったので、少し恥ずかしかったけど、誇らしい気持ちにもなり、それはまるで、母親になったような嬉しさだった。里奈は、カウンター越しに折り紙で、今日教わった、紙風船を織っていた。「里奈ちゃんね、これ、さっちゃんに、ぷれぜじぇんと。はい」そう言うと、今、出来たばかりの、ペールピンクの紙風船を幸子に差し出した。「あらっ。ありがと」「あ、ママにも、ぷれぜじぇんとするぅ」幸子がニコニコと紙風船を受け取ると、今度は、紫色の折り紙を選んで、やはり紙風船を折り始めた。「ママ、もうすぐ帰ってくるぅ?」「うーん、そうね。もう少しかなぁ。 それにしても、こんな嵐の日に、ママ達は 揃いも揃って、なんでお出掛けなのかしらねぇ」幸子は、紙風船をエプロンのポケットに仕舞いながら、この家の女達が、とにかく、よく外出したがることに、半ば呆れつつも、関心していた。お陰で、姑問題で悩まされることは、普通の同居している主婦に比べれば、多分皆無に等しい。義母はごく稀に「早く内孫の顔が見たい」というようなことは言うが、悪意がある訳ではなく、どちらかと言えば、幸子に言うより、息子であり、幸子の夫の孝之に対して言っているように感じる。それもこの一年は、里奈がこうして家に訪れることが多くなり、お陰で、緩和されていた。姪を預かるということは、幸子とって、いいことだらけで、ちっとも迷惑なんかじゃない。優美は、多少強引なところはあるものの、世間の小姑のような干渉の仕方は、しないし、嫁としては、楽な方ではないだろうか。今日も、ミニスカートにブーツという抜群のセンスで、嬉しそうに仕事に向かう優美を少しも疎ましいとは、思わなかった。幸子は牛肉を切りながら、ただ、出掛けて歩く主婦の、気が知れないと思った。……専業主婦。これ程、恵まれた職業は、他には、ありえない。「生活の中には、美がある」と幸子は、いつも思う。洗濯物の干し方ひとつとっても、シャツの肩のラインがハンガーからズレないように縫い目に沿って干すことも、ひとつの「美」だ。洗濯物の色をグラデーションさせて、綺麗に干すことも「美」だ。玄関のシューズボックスの上は、幸子にとって、ささやかな我が家のディスプレイだった。季節ごとに花を飾り、この時期なら、小さなガラスのオブジェをイルカやらカニやらで、夏らしくレイアウトを考えながら演出することも「美」。お料理の盛り付けなど、キャンパスに、絵を描く画家になった気分だ。すべては「生活の中の美」なのだ。「生活に中にある美」を追求することこそ、専業主婦としての生きがいだった。出来れば、40歳までに一人ぐらい子供は欲しいが、まだ5年もあるし一応、病院で検査してもらい、特に問題がないことはわかっているから、そう慌てることも無い。幸子は、今この時間も、専業主婦であることを楽しんでいた。「あらしなのにママ、お仕事?」カウンター越しに、里奈が訪ねる。カウンターには、色とりどりの紙風船が、散らばっていた。「そうね。お外は、台風なのに大変よね」「たいふうって、なあに?」幸子は、手を洗って、牛肉に塩コショウをすると、「たくさん雨が降ったり、強い風が吹いたりするの。 さっき、帰ってくる時も、凄かったでしょう」と言って、カウンターに歩み寄り、里奈の横に座ると、さっき貰ったペールピンクの紙風船を、ポケットから出して、ふぅっと膨らませて微笑んだ。「里奈がね、お教室からね、帰るときもね、雨いっぱい降ってたよぉ。 ママ濡れちゃう?」「ママは、お車で帰ってくるから、濡れないわ」「お車、かじぇひいちゃう?」「お車は風邪ひかないわ。大丈夫よ」幸子がそう言って笑うと、里奈はテラスの方へ行き、背伸びして窓から外を伺っている。やっぱり、子供には「母親なんだな」と、幸子は思った。そしてこんなに、思いやりがある子を持つ、優美を、始めて羨ましいと思った。……最初の子は、女の子がいいわね。幸子は、必死に背伸びして外を伺う里奈を尻目に、そろそろ本気で子作りを考える時期なのかもしれないと思った。でも今は、お食事会の支度が優先だ。幸子はキッチンに戻ると、圧力鍋に火を点けキッチンタイマーの時間を20分に指定し、玉ねぎの皮を剥き始めた。幸子は、牛肉を圧力鍋で火に掛けながら、玉ねぎをスライスするとフライパンで炒めていた。台風のせいか、外を走る救急車の音が歪んで聞こえる。でも、とにかく木箆を動かすことが、今の幸子に与えられた使命だった。玉ねぎは、うっかりすると、すぐ焦げ付いてしまうから、気を抜けない。ここで、いかに玉ねぎを上手に炒めるかが、ビーフシチューを美味しく作れるか、否かの分かれ目だった。圧力鍋の錘がくるくると回転して、蒸気がシューツと勢いよく出たので、もう牛肉の加圧は十分だった。右手は忙しく動かしたまま、圧力鍋が掛かっている方の火を、左手で止めた。これで、10分程蒸らせば、お肉は柔らかく仕上がるはずだ。キッチンタイマーの音が、けたたましく鳴り響いた。タイマーはすぐ止まる。でも今は、手も目も、離すことが出来ない。というか、離したくない。……もうちょっとで飴色になる。10分もそうしていると、りっぱな飴色の玉ねぎになった。ここで、いため過ぎると、食感が無くなってしまう。……今!幸子はこのタイミングを待ち、フライパンの火を止めた。……ここまで出来ればあとは、他の野菜と一緒に煮込むだけ。幸子は、ようやく玉ねぎの集中から解き放たれると、喉の渇きを感じた。「里奈ちゃん、オレンジジュース飲む?」冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、幸子が呼びかけた。「里奈ちゃん?」食器棚からコップを二つ出して、リビングの方を見渡すが返事がない。「里奈ちゃん?お手洗い?」幸子はトイレを覗いてみたが、里奈はいない。「里奈ちゃん、お2階なの?」2階の夫婦の寝室や和室にも、見当たらない。突き当たりにある、義母の部屋を、覗くが、やはり気配がない。幸子は、さすがに嫌な予感がしてきた。「……」階段を駆け下り、玄関に行くと、里奈の赤い長靴も、赤い傘もない。「嘘でしょう」急いでキッチンへ戻り、ガスコンロを確認したが、火に掛けているものなど無いことに気付いた。悲しいかな主婦の性だ。「あん、もう、こんな時に、何やってのよ」軽い自己嫌悪に陥りながら、玄関の方へ走ると、チャイムがなった。幸子は溜息をつくと、里奈が帰ってきたんだと思い、すぐにドアを開けた。「もお、里奈ちゃんひとりでお外に……」ドアの向こうにいるのは里奈と信じ、視線を落として声を掛けると、びしょ濡れの男性の太腿だった。……里奈ちゃんに、チャイムが届くわけないじゃない。見上げると、制服に透明のレインコートを着た、警官が立っていた。「お宅に "たからな りな" ちゃんていう3歳位の、 お嬢さんいらっしゃいますか」「りなちゃんに、何かあったんですか?」「お宅は 佐々木さんですよね」「家は、”たからな”ではなく、佐々木です。でも”宝田里奈”なら 預かってますけど、今、見当たらなくて……」幸子は、こんな状況で、そんなことを勝手に説明している、自分の口がおかしいのではないかと、頭の隅で思った。それどころじゃない。「だから、何があったんですか?」「ああ、”たからな”じゃなくて、”たからだ”さんでしたか。 実は、20分ぐらい前にたまたま事故を目撃した通行人から、通報が ありましてね。いや、女の子がすぐそこの公園のジャングルジムから 滑り落ちたんですよ……」「……」「ああ、良かった。すぐにわかって。傘に名前が書いてあったんですが、 字が消えかかってるし、”たから”なんて付く苗字のお宅、この辺に ありませんからね。こうして、ご近所を片っ端から、聞いて歩いてい たんですよ」「良かった」訳ない。幸子は、一瞬眩暈がした。里奈が、頭から血を流し救急車で運ばれたという。……今日は、ついているはずだったのに。圧力鍋の蒸気や、キッチンタイマーのベル、おまけに台風の騒々しさで、里奈が出て行ったことに、迂闊にも気付かなかったのだ。……いいえ。そうじゃない。玉ねぎよ。「さっきの救急車……」幸子は、激しい自己嫌悪に両手で顔を覆うと、その場にしゃがみ込んでしまった。
2006.09.14

東京駅から徒歩2分という絶好のローケーションに位置する、フォーシーズンズホテル丸の内東京、5階のプレミアスイートルームでは、暗闇の中で律動する白い毛布の皺だけが、大きな窓から夜景を浴び、光を放っていた。男と女の熱い吐息が漏れる。どれだけの時間をそうしていたのか、突然、携帯電話の着信音が鳴り響き、その静寂を破った。「……」「……デンワ?」女の方は、その音に一瞬、別世界から引き戻されてしまったらしい。毛布から腹ばいになった男の手が伸び、着信音を止め、何事もなかったように、規則正しい動きを続ける。「……」「……」着信音は鳴リ続けるが、男は動きを止めない。止められない。「タッカラーダさん!…… Oxala! 」「……」女の感極まるイントネーションが、独特だった。男は……宝田陽平は、かまわず目的を果たした。陽平が携帯メールを確認すると、妻の優美からのメールで「明日の優美の実家での食事会は、7時の約束だが、会社から直行出きるのか」という確認だった。陽平は舌打ちして溜息をつくと、サイドテーブルに備えてあるテレビのリモコンを探して、電源のスイッチを入れた。壁掛け式の42型プラズマスクリーンからは、日本代表監督の顔が、アップで映し出されたが、この位置からだと、画面が小さく感じる。陽平は全裸のままベッドから出ると、ゆっくりとバスルームへ行って、蛇口を捻り冷蔵庫からハイネケンを2本取り出し戻ってきた。そして、アッシュブラウンの長い髪の女……ポルトガルからモデルとして日本にやってきた、マリア・デ・ミランダ……に、1本をそれとわかるよう、頬に少しだけ触れさせた。マリアは閉じていた瞳を明けて大きく動かし、小柄な体をくねらせて、「ボアノイテ……」と、ポルトガル語で日本語で言うところの「おやすみなさい」を寝言のように囁くと毛布に包まり、再び眠りについてしまった。テレビでは代表監督の会見が続いていたが、そのブラジル人監督が話すポルトガル語は、ボリュームの低さも手伝って、遠くから微かに伝わる呪文のようしか聞こえない。……わからないから、いいんだよな。陽平は、ハイネケンをサイドテーブルに置き、マリアの横に座ると、その長い髪を撫でた。マリアは外国人にしては、例のブラジル人監督に比べて日常会話くらいは話すことが出来るが、やはり複雑な話や、興奮している時などは、お国言葉になる。普段、陽平との会話は、日本語と英語とポルトガル語が入り混じって、国際色豊かだ。……言葉なんて、何もかもわかったら、うっとおしいじゃないか。陽平は、昔から常々そう思っていたが、優美との結婚生活がより一層、その思いを強くさせたと自負している。優美は、知り合った頃からその知的なクールさが、陽平にとって最大の魅力の一つだった。ところがどうだろう。一緒に暮らしてみると、一見クールに写っていたのは、利己的合理主義の表れだし、その割には頑固で、なんでも要求が通らないと気が済まず、十分望み通りにしてやっているつもりでも、その要求は留まる所を知らない。おまけにプライドが高く、元々お嬢様育ちではあるが、まるで女王気取りだ。子供が思い通りにならないことまで、自分のせいにされては溜ったもんじゃない。里奈が今だに「たからだ りな」とは言えず、「たからら りな」と言うことまで。そんなことは、母親のしつけの範疇だろう。……言葉じゃなくて、相手のことが全部わかったら……か。とにかく全ての不幸は、俺のせいだと思っている。俺は、優美の要求を満たす道具なのか。それとも召使か。これ以上、一体何が欲しいと言うのだ。……タッカラーダさんか。マリアとは始めは、ちょっとした浮気心でしかなかった。取引先から接待された時に、麻布のクラブで知り合ったが、その片言で話す懸命さにつき合っているうちに男と女の関係になっていった。最近では、こんなふうにホテルを利用するのではなく、マンションの一つくらい与えてもいいと思っているが、マリア自身、それを好ましいと思わないのか、何度か切り出してみたが、首を縦に振らない。マリアの身になれば、遠い異国の地で結婚している男とつき合っているのだ。よく考えれば、やはり逃げ場を残しておくべきなんだと思った。だが、男として、それに甘んじているような気が、しないでもない。ただ、これが、日本の20代の女性だったら、どうだろう。いくら社会的地位があり、経済的援助を出来たとしても、援交などと呼ばれているそれなりのつき合いになるか、面倒くさい状況になるか、どちらかであろう。自分に妻があることを承知で、果たしてマリアのように何も望ない関係を、2年も保てるだろうか。……こういうのを相性がいいって、言うんだよ。マリアのそれは、普段は少女のようなあどけなさを持ちながら、日本人にはない、大胆な情熱を秘めていた。優美とは、まったく違う。それが、性格なのか、国籍なのか、年齢なのか。もっとも年齢で言えば、優美とマリアは4歳しか変わらないから、そうそう違うとは思えない。結婚前の優美を思い出しても、決してこんな風ではなかった。とにかく、陽平にとってマリアは、今まで知ってるSEXとは、まったく異なる種の感動を与えてくれる女であることは、間違いなかった。それは体だけなのか、それとも、もっと高尚なことなのだろうか。陽平はハイネケンの栓を開け、それを半分程一息に飲むとバスルームに向かった。バスタブに身を沈めると、大きな窓から、東京駅に出入りする列車の青白い光が幾重も交差して見える。しばらくぼうっと眺めていると、自分がその起点となり、全ての列車を動かしているような、気さえしてくる。……ハマってるな。陽平は、眠りそうになる意識を奮い立たせ、バスタブから出て、熱いシャワーを浴びると、急に現実が戻ってきた。明日は、午前中は会議だし、午後は、打ち合わが2件あり、その後は4時から、新しく立ち上げたプロジェクトの、取材に応じなければならない。取材が終わったら、その足で優美の実家に向かう。陽平はそのスケジュールに、つい今しがたまで、あんなに愛おしいと感じたマリアが、一切存在しないことに、何の違和感も感じていない。違和感どころか、そのこと自体にまったく気付かずにいた。 違和感を感じないという点で、この夫婦は、均整がとれているのか。南平台の陽平の自宅では、妻の優美が2階にある里奈の寝室で、里奈の頭を撫でながら、夫からの返信を待っていた。”重要なことはすべてメールで確認”しないと、ここ最近、漏れることがある。今夜が泊まりになるということも、うっかりしていて、陽平からメールが来なければ、もう少しで夕飯の用意をするところだった。”重要なことをメールで確認”するということに対しての違和感は、特にない。明日は、久しぶりに実家での食事会だ。たとえ普段あまり会話の無い夫婦だとしても、そこは、あうんの呼吸で、すぐに普通の夫婦となれる自信はあった。ただ、何事も几帳面で時間にうるさい母は、遅刻を嫌う。それが仕事であれ何であれ、言い訳は通用しない。ましてや、以前から約束された事なら尚更だ。優美はこの暮らしが守れさえすれば、どんな夫婦関係であってもいい、と思う寛大さだか、諦めだかを持ち合わせていたが、ここ一番の時に、守って欲しいことは、夫であれ、譲れなかった。……どうせ、また女と一緒だわ。里奈の寝顔を見ながら、優美は直感していた。でも、優美も明日は、賢司と映画を見る予定なのだ。その間に、メールは出来ない。返事が今夜のうちに来ないと、お互いのスケジュール確認が、出来ないではないか。「困った人ねぇ」優美は、里奈の部屋を出ると、溜息交じりに、呟いた。廊下を歩き始めると、里奈が寝静まってしまった室内では、ざわざわと外の物音が、やけに気になった。……今夜は、風が強いのね。階段の窓から外を覗くと、側道では誰かに投げ捨てられた空き缶が、カラカラと派手な音を立てて、転がっていた。どこからか飛んでくるスーパーの袋も、時折吹く強風に運ばれ、彷徨っている。……明日は、ミニスカートにブーツがいいかしら。優美は、明日の天気と服装のことを考えていた。肩を寄せ合って震えるベニカナメの垣根が、宝田家の敷地内に、それらの入ることを拒んでいるというのに 。 …… See you next time! ……いつも読んでいただいてありがとう♪ランキングが3箇所に増えました m(_ _)m応援いただけると嬉しいです f^_^; ↓↓↓ 登場人物紹介
2006.09.11

日本代表監督が辞任を表明した頃、涼子は雄二と、表参道駅近くのイタリアンレストランで、食後のドルチェ、アフォガードを口にしていた。今日は仕事が忙しく、甘いものが食べたかった。だけど、甘すぎるのは嫌だった。冷たいバニラアイスに、熱いエスプレッソがかかったアフォガードは、イタリア語で”溺れる”という意味のデザートだが、少し違うなと、涼子は思った。”溺れる”というより、”セービング”にふさわしい。バニラアイスが溺れる前に、救済しなければ、溶けて無くなってしまう。それじゃあ、生ぬるいコーヒーフロートと一緒ではないか。いずれにせよ、イタリア人のユーモアが生んだネーミングなのだろう。「そろそろ、結論出してくれたかな?」「……両親のこと?」「やっぱり、式に、来てもらわない訳には、いかないんじゃないか?」「……」ここ1ヶ月程前から、招待客の話になると煮詰まってしまう原因に、涼子の両親を式に呼ぶか、呼ばないかという、普通ならあまり悩まない問題が、二人にはあった。「うーん。どうしても呼ばないと駄目かしら?」「涼子は、やっぱり嫌か?」「……」涼子の両親は、涼子が小学校5年生の時に離婚していた。母が離婚届を置いて家を出ると、そのまま離婚という結果になったのだ。あとから聞いた話では、母は本当は兄の修一と涼子の二人を連れて家を出たかったらしく、落ち着いてから、引き取るつもりだったらしい。だが、父は二人の親権を母に譲ることはしなかった。しかも、離婚して半年も経たないうちに、秘書をしていた清美をすぐ家に入れた。これもずいぶん後から知ったことだが、父は涼子が生まれて間もない頃、今の会社を興し10年もの間、清美との関係を絶てずに、ずっと母を欺いていたのだ。高校3年生だった修一には、清美のせいで、母がいなくなったのだという気持ちを捨て去ることが、どうしても出来なかったらしい。それが証拠に修一は、大学受験に失敗し、不合格を告げられると、それを口実に、浪人生活は、一人で勉強がしたいと、家を出てしまった。小学生だった涼子は、どちらかと言えば、母が急に居なくなり、置き去りにされたという気持ちの方が大きかった。「どうしても嫌なら無理することないけど」「……」清美は、特にいじめるようなことをする訳でもないし、気さくな人ではあったが、3人となった設楽家には、どこかよそよそしい”家族ごっこ”が待っていた。当たり前のことだが、父は会社があるから、家を留守にしがちだった。いくら、まだ少女だったとはいえ、清美とは、お互いに違和感があると感じているお互いの気持ちが見え隠れしていた。どんなに仲良く過ごそうと、二人が共に努力しても、そうすればそうするだけ、逆に上滑りしてしまう。たまに在宅している父が、そんな二人に気を遣うのが、清美にも涼子にもわかってしまうことが、虚しいくらいその旋回に、拍車を駆けた。思春期を迎えるにつれ、その傾向は、あからさまになっていった。……もっと別の出会い方をしていれば、いい話し相手くらいには、 なれたかもしれないのに。「涼子の気持ち考えると、わからないでもないからな」「……」雄二が白いデミタスカップを置くと、携帯電話が胸元から音を立てた。「なんだよ。またかよ」「仕事?」「ああ、ちょっと悪い」雄二はそういうと席を離れ、化粧室の方へ歩いていった。アフォガードのアイスクリームは、エスプレッソと同化してスプーンですくうとドロっとした液状となっている。時間を掛けて食べるものではないらしい。……両親へのわだかまりも、溶けて無くなってしまえばいいのに。溺れて息が出来なくなるくらいなら、いっそ溶けてしまえばいい。涼子は、修一が大学を卒業するまでの5年間、”家族ごっこ”をして過ごし、修一の就職が決まるとそれを待っていたように、スピンアウトした。高校2年の時に、学校が遠いからという理由で、父と清美が暮らす、鎌倉市の一戸建ての家から、修一の住む菊名のマンションに移り、やっと新鮮な空気を吸えた気持ちになれた。つまり父と暮らしたのは、高校2年生までであり、義母である清美とは5年間しか生活を共にしていない。その後は余程のことがないと実家にはいかないし、電話で父と話したのだって、雄二と結婚すると、ようやく言ったついこの間が10年ぶりだったのだ。二人とも、呼べば喜んで出席してくれるだろうとは思う。だが、実の母のことを思うと、すんなり招待する気になれない。……お母さん、どうしているんだろう。涼子の母は、鎌倉の家を出てから、しばらくは茅ヶ崎の祖父母の家で暮らしていて修一を経由して連絡を取り合っていたが、涼子が修一の元に身を寄せたこと知らせると間もなく、別の人と再婚し立川で新しい生活を始めたと、祖母から聞かされた。そうなるとやはり、こちらからは連絡しずらくなり、時折母の方から来る、連絡を待つだけの状態が続いた。だが、この何年かは、音信不通になっている。結婚のことを知らせようと、思い切って電話をしてみたが、留守番電話の応答で、さすがにメッセージを残すことは出来なかった。その後、何度電話してもやはり同じだった。……元気にしていればいいけど。「やっとOK出たよ」雄二が電話を終え、戻ってくると席に着いて溜息まじりに言った。「仕事、大変?」「いや、大変って言うか……、なんだろうな」雄二はそう言うと、煙草に火を点けた。「あたし、やっぱり、バージンロードは兄と歩きたいわ」「気持ち、変わらないかぁ。まぁな。涼子の気持ちが、一番だからなぁ」「いいの?」「嫌なもの、無理して呼ぶことないだろ」雄二は、涼子を諭すように言った。やっぱり大人だ。「ごめんなさい。雄二のご両親や親戚の方には、 本当に申し訳ないんけど」「そんなの、なんとかなるよ」涼子はアフォガードの甘さが残っている気がして、グラスの水を一口含んだ。「明日は佳奈ちゃんとこ泊まるんだよな」「うん、せっかく誘いのメール貰ったし、 この間、話しそびれたこともあるって言うから」「南平台の社長婦人は、元気なの?」「優美は最近、里奈ちゃんのお受験で忙しいんだって」「あんな家に住んでるんだもんな。そりゃ、お嬢様は付属の幼稚園か」「あんな家に住みたい……、なあんて、無理なことは言いません」「言ったなぁ。いつか、涼子がびっくりする程、センスのいい家を、 設計して、プレゼントしてやるからな」ようやく二人に笑みがこぼれた。「それより、俺、この後、会社戻らなきゃいけなくなった……」「え?だってOK出たって?」「そうなんだけど、ちょっと気になることあってさ。 新婚旅行の話しは、またな」雄二は、まだ長い煙草をもみ消すと、グラスの水を一気に飲み干した。二人がイタリアンレストランを後にすると、外の空気がじっとりと、また梅雨が戻ったかのように、纏わりついてきた。「ねえ、台風来てるんだっけ?」「そうみたいな」駐車場に向かって歩きながら、空を見上げると、ビルの電光掲示板に『サッカー日本代表1‐0勝利後に監督辞任発表!後任選出は難航する模様』というテロップが、雲の重さと同じくらい、ゆっくりと流れていた。 いつも読んでいただいてありがとう♪ランキング3箇所に増えました m(_ _)m応援いただけると嬉しいです f^_^; ↓↓↓ 登場人物紹介
2006.09.07

「明後日でいいって言ってたじゃなぁい。あゆちゃん、そりゃないよぉ」佳奈と中澤が事務所に戻ると奥の部屋から、社長である木谷の詰る声が聞こえてきた。マンションの1LDKを使用しているKIYAプロは、入ってすぐの18帖で、45インチの液晶テレビ画面から、日本代表の青い戦士たちがそれぞれ笑顔で、ゴール裏のサポーターに挨拶している様子が、写し出されていた。そのテレビのボリュームより、よく通るその声は、廊下まで聞こえそうだ。木谷は日頃から奥の部屋で電話をしているが、本人は密談のつもりでもそれは、公開座談会さながらだ。 「先輩が、トロトロしてるから間に合わなかったじゃないですか」「勝ったみたいだから、いいじゃない。それより、またぁ?」佳奈は、奥の部屋を顎でしゃくった。「いいじゃないですか。いくら47でバツイチって言ったって、 社長だって、独身の男なんだし……。 あ、先輩、それとも社長みたいなタイプ、好みですかぁ?」 当然中澤は「そんな訳ない」と言う答えが帰ってくることを、予測した上で言ってるんだ……。……その位、わかるわよ。あたしにだって。「そうかもね」佳奈は、しれっとした顔で言ってのけた。「……」中澤は一瞬呆然としたが、持っていたコンビニ袋から、打ち合わせ用の大きなテーブルにビールと菓子を並べながら、電話が終わった木谷に向かって叫んでる。「社長、電話終わったなら、ビールありますよぉ」……この勝負、あたしの勝ち。佳奈は、中澤に対して優位に立ったことが嬉しくて、目の前に置かれたビールを開ける。と……、勢いよく、泡が吹き出した。「ひっかかったぁ。……先輩、気をつけなきゃ、ダメじゃないですか」当の中澤は、手がビールだらけになった佳奈を見て、クスクス笑ってる。「もぉ」佳奈が慌ててテーブルにあった、ティッシュペーパーで汚れを拭っていると奥の部屋からサーモンピンクの派手なジャケットの下に、日本代表の青いレプリカを着込んだ木谷が顔を出し、にやにや笑った。「なあんか、俺、お邪魔じゃない?」「あ、やばっ」中澤が、咄嗟に椅子にあったタオルで、佳奈の足元にこぼれたビールを拭きながら、木谷にティッシュボックスを投げた。「それより、見てないで、これで一緒に拭いて下さいよ」「あ、ああ」木谷は頷くと、慌てて一緒になってフローリングの床を拭き始めた。「おい、それ、俺の日本代表のタオルマフラーだぞ」中澤が床を拭いているタオルは、確かに青い。「あ……。洗えばいいじゃないですか」どうやら、3人しか所属しないこのKIYAプロでは、中澤が一番偉いらしい。 騒ぎがひと段落すると、やっと、目的のない、ささやかなパーティがテーブルを囲んで始まり、木谷が申し訳なさそうに佳奈に話しかけてきた。「いのちゃん、明日、なんもないんだよね」「明日は……。一日事務所で電話番の日だけど……。 あ、また、電話で、アリバイ作りか何かでしょう?」佳奈が壁のボードにあるスケジュールを確認しながら、冗談交じりに言うと木谷は更に言い出しずらそうに、「いや、急で悪いんだけどさ、明日、届け物、頼みたいんだよねぇ。 俺、どうしても、からだ空かなくてさぁ」そう言うと、A4サイズの封筒を差し出した。佳奈が受け取ると、写真を送る時によく使う「KIYAプロ」のロゴが入ったクッション封筒で、それ自体に多少厚みがあって、ただ、手にしただけでは一見、中身が何だかわからない。「社長、今の彼女にですか?」ポテトチップスの封を開けながら、中澤がすかさず口を挿んだ。「ああ。ええっ?そんなんじゃないよ!」「またまたぁ」中澤の尋問は、封がなかなか開かないポテトチップの袋同様、執拗だ。「代々木体育館なんだけどさ、 行けばわかるようにしてあるから」木谷も中澤のことをわかってるから、無視して佳奈に言う。中澤の不器用な手先を見ていた佳奈は、ポテトチップスの袋を取り上げ、上手に袋を開けて差し出した。「ああ、やっぱり彼女だぁ!先輩、嫌なら断った方が二人の為かもしれないですよぉ」中澤は確信したらしく、ポテトチップスを満足そうに口に入れると、テレビのチャンネルを、紀伊半島付近に台風が接近して東海地方の海が荒れているという天気予報から、日本代表監督の記者会見の模様を写し出してる、スポーツニュースに合わせた。「だから、違うって」「彼女でも、なんでもいいけど。明日、夕方、友人と会う 予定があるから、その前でいいですか?」佳奈はふと、涼子に明日会おうと言った事を思い出した。「そこまで行く分も、タクシー使って経費で落としていいからさ、頼むよ」 「ラッキー」 明日は天気も悪そうなので、佳奈は、渋谷で涼子を拾い、自宅で一晩じっくり話しを聞こう、と咄嗟に思った。 「うっそぉ!監督辞任するとか言ってる!」 中澤はそう言うと、テレビのボリュームを上げた。「ええっ?!」佳奈も木谷も、思わず声をハモらせた。木谷の彼女のことなんかより、この場にいる3人には、いえ、日本中の大半の人間にとって、そっちの方が一大事だ。 KIYAプロで3人がこのニュースに釘付けになっている同時刻、 何も知らずにレストランで食事をしている男と女、 自宅で娘の寝顔を見守る女、 そして、ベッドでこのニュースを知った、男と女が居た。 今夜、東海地方を通過している今年最初の台風は、関東地方にやって来るのだろうか。・・・・・・ いつも読んでいただいてありがとう♪ランキング3箇所に増えました m(_ _)m応援いただけると嬉しいです f^_^; ↓↓↓ 登場人物紹介
2006.09.04

【 美 し き 月 の 夜 に 】 へお越しいただき、誠にありがとうございます。トップページにも、ご案内させていただきましたが、このブログは、オリジナル小説がメインです。ただ、皆様に、末永く可愛がって頂くために、他にもコンテンツの充実を目指しております。こちらでは、はじめていらしていただいた方にサイトマップをご提示させていただきます。どうぞ、心ゆくまでご満喫下さいませ。 美 月 一 恵 熱 砂 の 霧 このブログのメインコーナー。 現在連載中の 美月一恵 の長編小説です。 ○小説のはじめからご覧いただくには こちらから ○最新版は こちらから 小説を読みやすくするための参照は下記の通りです。 ○前回までのあらすじは こちらから ○目次は こちらから ○登場人物紹介は こちらから ○人物相関図は こちらから 小説以外にもコンテンツがありますので、 ご紹介します。 ○フォトアルバム「 熱 砂 の 霧 」は こちらから 創作中のキーワードを、写真集にまとめてみました。 ○The Music of NESSA!は こちらから 創作中に登場した、音楽の情報です。みづきいちえのブレイクタイム 作者 みづきいちえ の雑談コーナー。 たま~に、素で登場します。 ○はじめからご覧いただくなら こちらから ○最新版は こちらから 作品のイメージとはまったく違う、作者と どうぞ遊んでやって下さい。 Moon Calendar 月の満ち欠けのカレンダー。 トップページにも、日々の月齢を掲載してますが 月のインスピレーションを、より身近に感じてみ ませんか?どうぞ参考になさってみて下さい。 HOME
2006.09.01

こんにちは。みづきいちえです。いつも 美しき月の夜に へお越しいただき、「熱砂の霧」 を読んでいただき、本当にありがとうございます。また、ランキングの応援、重ねて感謝いたしますm(_ _)mえーっと、9話が終わったところで、佳奈が撮った 「一枚の写真」 についてのコメントをたくさん頂きました。ありがとうございます。あくまで、小説がメインのブログなので、本文に挿絵とか写真などの挿入は出来れるだけ避けたいかな…と考えていたのですが、ご要望を頂くのは、本当に嬉しい 可能な限り、ニーズにお答えしていきたい 思案した末、楽天ブログには『フォトアルバム』という、素晴らしい機能があることをやっと思い出しましたこれなら、読んで頂き、見てみたい方が好きなようにご欄いただけるので、Nice! トップページ のサブメニューから入れるようにしてみました。あ、このページをご覧になった方は こちらから 行った方が楽でした(^ ^;) 今後も小説同様、キーワードにちなんだ写真があれば、UPして行く予定です。よろしかったら、時間のある時にでも、お誘い合わせの上(笑) 覗いてみて下さい♪今日は特別に(≧∇≦) 例の佳奈の「一枚の写真」をご用意いたしましたイメージに近いものを探してみましたが…… あとですね……、お陰様で、小説ブログ村1位、人気ブログランキング2位の栄光を頂いておりますこれも皆様のご支援があってのこと。本当に、本当に、ありがとうございますm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mこれからも出来るだけ維持出来るよう、充実した作品にしていきたいと思います どうか、末永くよろしくお願いします<(_ _)>
2006.09.01
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