或る日の“ことのは”2

或る日の“ことのは”2

2011.01.14
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カテゴリ: 読書


年末、

要らない本や漫画をBOOK OFFに送った。

70冊で、しめて1400円也。

これが、高いのか安いのかはさっぱり判らないけれど、

捨てることを思えば、ずっと良い。

この頃、身の回りを色々整理しているのだけれど、

やっぱり捨てることには抵抗がある。

物を買う時は、捨てる時の事を考えるべき、ということかな、


ダンシャリアンへの道は険しい。

***



で、溜め込んだマンガ本を久し振りに取り出して、久し振りに読んじゃったりする。



読んで久々泣けたのが、萩尾望都『マージナル』。



老いて壊れかけた地球、そして病みついた人類、

「外」からの統制によって辛うじて保たれている平和と安定、

誰もが衰亡を感じ、死を意識しながら

希望を持とうと生きる人々。

砂漠の真ん中の「センター」は、科学力で鉄壁の守りを作り、

科学人が地球をコントロールしている。

「センター」の外の人間は、部族制を作り、砂漠の民として素朴な暮らしを守りつつ、

己の理解の届かない、彼らにとって未知なる「センター」の存在を認めている。

彼らは全て男。 

「子供」は、センターに居る聖なる「マザ(聖母)」(唯一の女性)が、宿し、

全ての部族に分け与えるシステムだ。

しかし「マザ」は老い、子供が生まれず、砂漠の民の間では、「高齢化」が進むにつれて、

誰もが明日を憂い、世界を憂い、責任や原因について考えるようになる。

そして「マザ」や、「センター」が、元凶であるとする部族が、「マザ」を暗殺し、

「全人類の母」を失った「世界」は、絶望と、新生マザによる革新の期待に怯えながら、

混沌の渦に巻き込まれてゆく。


***


センターの長官、メイヤードと言う男は

無知な砂漠の民を蔑み、不毛だと嘲りながら、彼らを生かす為、

地球を調律する責任者を務めている。

彼についてネタを明かすと、まんま作品を明かすことになるので書けないが、

最初から、不思議な魅力を持つキャラクターで好きだ。


不毛の地球を捨て、月へ移住し、普遍的な人類としての生活を送りながら、

感情の起伏に乏しい女性が、最後にメイヤードを想い、激情を迸らせて泣くシーンがある。
(地球以外では、女性は存在出来る)

『なぜ彼(メイヤード)に言わなかった愛してると』そう問う男性に対し、

『言ったわよ、足にすがり付いて言ったわよ
彼はオクターヴ家の継承権も財産権もカンパニーも私にくれた
アルファケンタウリもくれると言った それなら私は全部もらうわ!
愛のほかは全部くれると言った!』

そう言って子供のように泣き崩れる女性の姿は

まんま病んだ社会と、どうにもならない人間のシステムや、その関係を表している。

知性や科学が為すすべも無い、悲しい幸せの在り方や、その末路を見るようだ。



私の中で、萩尾氏の作品は、第一から第四期に分けられ、

丁度、この作品は第三期に当たる。

安易な耽美に走らない男性同士の愛、

美しい描画と、発想のオリジナリティ、歌うような、流れるようなことばに、

昔の私は、骨の髄まで染まっていた。



萩尾氏のSFは、やはり絶品と言って良い。

読むと心を揺すぶられる。


・・・今は、それが描けなくなられているんだよなぁ氏は・・・(至極残念)。


これらの本は売れない、処分出来ない。

と、結論付けたところで、

BOOK OFF行きの箱から救出、再び本棚に納めたのだった。(笑)








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最終更新日  2011.01.15 00:06:39
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