2007年09月18日
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カテゴリ: 映画日記
2005年度アメリカ作品。
監督はニキ・カーロ。
出演はシャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンド。

この作品はアメリカの実話に基づいている。
監督は私は残念ながら未見だが、「くじらの島の少女」の女性監督だ。
そのカーロ監督がプロデューサーと「Stand up」の映画化を思い立ち、2人でキャストを話し合った時、主役のジョージー・エイムズ役はシャーリーズ・セロンにしようと決めた。
その頃、シャーリーズ・セロンも「くじらの島の少女」を観て、ニキ・カーロ監督と一度仕事がしたいと思って、自分のエージェントに「カーロ監督の次回作が何であろうが、一度会いたい。」と頼んでいた。
シャーリーズ・セロンがエージェントにそう頼んでから、なんと5日後にはこの「Stand up」のオファーが来たのだそうだ。

まさに、カーロ監督とシャーリーズ・セロンは、一緒に「Stand up」をする運命にあったとしか言えない偶然。

舞台となる北ミネソタの古い鉱山の町は、冬は零下になる程極寒の土地で、撮影があった冬は特に記録的大寒波だったそうだ。
そんな凍てつく寒さは画面を通してもわかった。
「Stand up」を観ていて、凍てつくのは気候だけではなく、そこに暮らす人々の心も保守的で、冷え冷えとしているように思えた。

鉱山の仕事は昔から男の仕事だと言う慣習からの思い込み。
別に男たちに鉱山の仕事に対するプライドがあるのでもなく、仕事が楽しいわけでもない。
ただその鉱山と言う男の世界に、女が介入して来る事で、男の世界が女に侵される恐れを感じていたのだろうと思う。

男たちになぜ女性が鉱山で働くのが嫌なのかと聞いても、鉱山は男だけの世界だから、女性が入り込んで来るものじゃないとしか答えられないだろう。
とにかく嫌だったんだろう。

当の女たちは、ただ鉱山で働きたいだけだ。

自分たち女も、鉱山で男たちと同じように働けるし、現に働いているのだから、当然の権利を主張したい。
当然の権利は特別な事なんかではない。
働く限り、当然認められなければならない権利だった。
男の世界だから、それすらも認められてなかった。
逆に言えば、認められなくても良かった。
なぜなら鉱山が男の世界だからだ。
男たちはジョージーたちに露骨な嫌がらせをする。
女性たちがこの鉱山から出て行くように、執拗に繰り返し嫌がらせをする。
嫌がらせされるのがいやなら、辞めて出て行けって。

男たちにとって何か理由が明確にあるわけではなくて、とにかく自分たちの職場に女性がいるのが目障りで仕方がないだけなのだ。
つまり男の仕事、男だけの世界に女性が入って来て、自分たちと同じ仕事をしているのが面白くないのだ。
だからいびり出してやろうと言うだけ。

でも女性たちは辞めない。
なぜならその女性たちも鉱山で働いて得る給料で生活している。
ジョージーの友人は病気の主人を養っているから、辞めるわけにはいかない。
ショージーだって暴力夫と別れて、2人の子供を連れて帰郷して、これから2人の子供を育てて行かなくてはならないから、辞めるわけにはいかんかった。

様々な事情を抱えた同僚の女性たちは黙って耐えているだけだった。
下手に行動を起こして、その後嫌がらせが悪化して酷くなったらと思うと、今のまま黙って耐えている方が良いと思っていたのだった。

彼女達にとっても、後から入って来て、事を荒立て騒ぎを起こすジョージーは迷惑な存在でしかない。

その気持ちよくわかる。
この作品を観ていて、ずっと「私ならどうするだろうか?」と考え続けた。
私は小市民的な所があって、人と争う事を好まず、お互いに嫌な気分になるくらいなら、自分が我慢してしまうと思う。

人生平凡でも、私は何より平穏無事が一番いい。

でもジョージーは1人で戦った。
ジョージーは父親が誰だかわからない長男を生み、シングルマザーになった過去を持ち、その後DVの男と結婚して娘を産み離婚して故郷に舞い戻って来た事で、街中の人々から異性間駅の派手な女性と言う噂のあった。
ジョージーと同じ鉱山で働く父親との関係は、昔から冷え冷えとしてコミュニケーションが取れてない。
母親は夫の下へ戻れと言うだけ。
息子はアイスホッケーチームに入っているが、チームメイトから爪弾きにされ、母親のジョージーの事を嫌う。

いよいよ裁判。

私がショックだったのは、鉱山側が雇った弁護士が女性だった事。
この女性弁護士が女性でありながら、女性の職場での待遇改善の裁判で、ジョージーの戦う企業側の弁護士としてあらゆる手だてを講じて来るのだ。

まぁ、自分の弁護士としての職業に性を介在させないと言うのは、プロとして当たり前な事だとは思うけれど、彼女も弁護士をしている中で、きっと今まで自分が女性と言う事で、男性なら味わう事のない嫌な思いもした事があると思うので、ジョージーの待遇改善の裁判にも理解できる部分、共感できる部分があるんじゃないかと思ったりもしたけど、この女性弁護士は最後まで皆無だった。

なんだか女性の敵は女性と言う人間関係を見る思いがした。

結局その裁判の過程で、ジョージーの長男の父親が誰なのか暴かれる。

ジョージーは決して異性関係の派手な女性ではなかった。

ただただ、あんな事で自分が子供を身ごもった事が、あまりにも耐え難い衝撃で、両親にさえ打ち明ける事ができなかったんだと思う。
でもそんな事は関係なく、養子に出す方が生き易いのに、彼女の中の母性がそれを選択せずにシングルマザーの道を選択し、その後結婚したがDV夫とは離婚、その後もローンで一軒家を購入して、子供2人は母親としてちゃんと育てていた。

ジョージーは男前な勇気のある女性だと思うが、何かを変えたいと思うなら、まず自分が一歩足を踏み出しアクションしなくてはならないのだと、ジョージーを通して教えられた。

先の結果を思い煩う前に、まず一歩を踏み出すその勇気を持つ事。

その勇気を持ち足を一歩踏み出さなくては、何も変わらないと言う事だ。

作品の中での裁判の結果や職場での成り行きは、ややご都合主義的のような気がしないではないが、気持ちの良い希望が持てるエンディングで良かった。

この作品のヒロインのジョージーの男前な生き方は、シャーリーズ・セロンと言う人の生き様にも、どこか共通する所があるような気がした。





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最終更新日  2007年09月23日 16時41分09秒
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