June 8, 2013
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カテゴリ: 読書日記
著者の名前には見覚えがあると思って手に取った本。沖縄の「日本復帰」後、沖縄県知事をつとめたことのある人。1969年に刊行された同名の本の新版で、第4章のみ全面的に書き改めたとある。2000年5月に刊行されている。

教育と学習は、根本的に異なるというより対立する概念である。ある偏見を一方的に押しつけ、非本質的な知識を増やすのが教育だ。一方、何を知らないかを知り、知らなかったことを認めて知らなかった自分を「発見」するのが学習である。学習は、限りなく「哲学すること」に近い。

沖縄については知ったつもりでいた。何度か行ったことがあるし、ニューヨーク・タイムズが「醜悪の極地」と報じた沖縄戦、日本帝国主義が沖縄に対して行ったことについても、観光地としての沖縄にしか興味のないふつうの日本人の数十倍の知識があると自認していた。

しかしこの本は衝撃だった。知らないことばかりだったからだ。その意味では、わたしもまたこの本の著者の言う「醜い日本人」のひとりであったと言わなければならない。

この本はすべての日本人が読むべき告発と弾劾の書であり、沖縄を軸とした歴史と戦争の記録の書でもある。主観的な戦局判断で無用の犠牲を重ねた太平洋戦争末期の緒戦や、中国での侵略と殺戮と同じことを沖縄でも行った旧日本軍の蛮行、その本質についての考察にはあらためて戦慄を禁じ得ない。

天皇の免訴と引き替えに沖縄をアメリカに売り渡した密約については周知となっているが、このことについても筆鋒するどく日米両政府と「無知とエゴイズム」によって政府に加担する「日本人」の責任について追及している。

再刊時に追加された最終章には、沖縄人を差別した上で境界線を北緯29度線に決定して分断・支配したアメリカと、沖縄をアメリカに売り渡したヒロヒトによる「天皇メッセージ」に端的な日本の沖縄差別という二重の差別などが語られている。性格温厚な天皇ヒロヒトが、実はどれほど狡猾で保身しか考えない人間であったか。このことを、すべての日本人は厳粛に受け止める必要がある。

大事なのは、著者が言うように、まず知ることだ。沖縄が強制されてきた歴史的道程についての正確な知識を持つことが最小限必要であり、そこからしか未来の処方箋は得られようがない。それにしては日本人は沖縄について知らないし、知ろうともしない。

「本土」もしくは日本人との「断絶」を思うとき、沖縄は独立した方がいいのではとさえ思う。沖縄だけではない。中央政府を打倒し権力奪取するのではなく、むしろ地方政府が林立し小国家に分裂していく。そんなすばらしい未来の可能性についても考えさせられた。





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最終更新日  June 11, 2013 03:40:23 AM
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