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『夢よ、甦れ-もう一つの学ぶ道-』を紹介します
おそらく、ほとんど知られていない本ですが、『夢よ、甦れ』(下谷竹三著 近代文芸社 1995年2月刊 1400円)を紹介します。
この中に出てきますが、著者は1931(昭和6)年生まれですから、御年85歳になります。
この本は、1995年に刊行されてますから、著者が教師生活を退職するころに書いたもの。
自身の半生をふり返ってます。
下谷区で生まれて、東京大空襲で焼け出されて、静岡に疎開する。
戦後の混乱期の中で、「パン」を得るのに大変に苦労した様子が語られています。
下ずみの生活から、すごく苦労して這い上がっていく。
そして、30歳近くじゃないでしょうか、
著者は、生活のために苦労していたんですが、一念発起して、教師になろうとします。
そのへんのところでしょうか。
「時間が緩やかに推移する地方の生活、たった一回の生が激動の時代に取り残される。そんな焦燥感が急に悪魔のように騒ぎだした。何よりも体内に誕生したあの学習観、そのAとBとが一つになって新しい知的世界に入り込み、それを人々と学び合い、教え合いたい欲求が高じてしまった。その中で社会に投げたボールが帰って来るのを、更に投げ返すというような、ダイナミックな社会に生きてみたい願いが私を捉えて離さない。」(P75)
なかなか文学的な教育論なんですよ。
私などが中学校の社会科の教師として著者に出会ったのは、そうした経過をへた後だったんですね。もちろん、わんぱく坊主に先生が胸にかかえいてた事情なんて、知る由はなかったんですが。
その授業は、熱血授業でした。
「教え手に教材の深い感動体験があれば、教室全体にそれを共有して欲しいという感情が、自然に生まれてくる。」(P58)
みんなでつくっていく授業で、どこにすすむのか、生徒にはわからないんですが。
どんな意見でも、議論しているうちに、いつの間にか、みんなで正解にたどりつくんです。
ですから生徒の関心を一点に集中させてしまう、そこで展開する、そこでしかしかない授業で、ユニークで楽しい授業だったんです。
準備する先生の方は大変だったと思うんですが、あとからさっすると。
卒業してから、後日同窓会などでも、あんな面白い授業がどうしてできたのか?
他の授業にはないワクワクした気持ちが湧いてくる、いったい何なのか?
みんなにとって謎だったんですが。
私などは教育実践とは無縁なものですから、引き続き多くのことは謎なんですが、
この本をよんで、少しですが、分かるような気がしてきました。
この教育方法には、独特の対話法が駆使されていたんですね。
それが大事な要素だったはずです。
どこで、そうした着想や、技術を身に着けたのかは、やはり謎です。
この本には、教育論だけでなく、さまざまな社会思想の紹介や、
独特の社会批判も含まれているんですよ。
例えば、指導する者は、つねに自分自身がしっかり学ばなければならない。
「彼らの活動へのエネルギー量と仕事ぶりには感心していたが、学習内容のお粗末さ、判断基準が党派性に依存しきっている、この単純さには呆れていた。」(P104)
また、指導性と大衆性の問題。
最近「リスペクト」=相手への敬意ということが強調されますが、ここにも出てきます。
一方では粗雑な宗教批判が大衆の遅れを批判して嘲笑う。それに対して他方の大衆文化の住人は、「前者の世界を敬するか遠避けるかで、両者は表面はともかく、内心は羨望、軽蔑、そして無視している姿だった。それは悲しくもあり、苛立たせるものでもあった。」(P108)
こうした問題が、今から20年も前にですよ、率直に指摘されていたんですね。
もはや、先生の授業を受けることは出来ないのですが、
ここには、その精神と方法が述べられていますから、
「もう一つの学ぶ道」、
この本で、これから探ってみたいと思っています。
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