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マルクス「ヘーゲル弁証法批判」29『偉大な遺産』
10月15日解散、10月27日投票で、総選挙がありました。
このため中座してましたが、あらためて、マルクス「ヘーゲル弁証法批判」学習の再開です。
今回は『偉大な遺産-マルクス遺稿物語』(シュテルン/ヴォルフ著 池田光義訳 大月書店 1983年刊)の紹介をさせていただきます。
社会主義ソ連は、1991年に崩壊しました。
この本の出版は1983年3月ですから、その前に出版されたものです。
私はこの本について、三点を注目しています。
この本はタイトル「偉大な遺産」が示しているのは、マルクスやエンゲルスがなくなってから、その後その遺稿集がたどった歴史を、旧東ドイツのジャーナリストが調べてまとめたものです。遺稿集が、どのように焚書から免れたのかが紹介されています。この経過が第一の注目です。
『経済学哲学手稿』については、P129に出てきます。
「メガ」というのは『マルクス・エンゲルス全集』のことで、当初全42巻の予定で、ソ連で1927年から35年に12冊まで刊行されが中止になった。その後、ロシア語版は1947年の第29巻まで刊行された。そしてさらに、全42巻がドイツで刊行されたとのこと。
今日、私などが目にしている大月書店版『マルクス・エンゲルス全集』は、これがもとになっているようです。
この最初の「メガ」の刊行によって、はじめて『1844年の経済学哲学草稿』、『ドイツ・イデオロギー』、『自然の弁証法』など草稿が、世界に明らかになったとのことです。私などが、学習しつつあるのは、この「メガ」によるものなんですね。
他方、これにたいして、今日、「新メガ」が刊行されつつあるとのことです。世界各国の研究者が協力して、全100巻を予定するとの壮大なもので、草稿なども含めて、二人が執筆したすべてをまとめて、刊行しようとしているのだそうです。そして、今でもその努力が続けれているとのことです。
二つ目に、ここには、一つの時代、東西ドイツ対立の時代の影が刻まれています。
二人の著者は、旧東ドイツのジャーナリストの様で、東西のドイツの時代の論争が記されています。
そこには、ドイツ社会民主党が、ベルンシュタインの主張した改革の積み重ねとの「過程」の道か、それとも社会変革をさぐる道か。この第二インターナショナルの当時の論争が、その後の東西ドイツの社会歴史理論の対立の根底にあったとの指摘です。その観点から、1959年のゴーテスベルグ大会での綱領論争ですが、著者はそこにこそ、その本質があるとみています。
私などは、不勉強でして、今それについての判断はできません。一定の観点から現状を見るのか、それと現状のなかから観点を導きだすのか、こうした問題があるように思えます。詳細は分かりません。
ただ、すくなくともそうした仕方での問題提起が、ベルリンの壁が壊される以前に、この東ドイツのジャーナリストからなされていたこと、そのことは確認しておく次第です。
三つ目です。今現在、どこまで進んでいるのかわかりませんが、「新メガ」の100巻が刊行されつつあるとのこと。自然や社会の各分野での探究が爆発的に広がる、そのことはマルクス・エンゲルスの分野でも同じだと思うんです。細部にわたり研究材料が集められて、さまざまな問題の研究が膨大に広がっていく。それは、一つの前進をはかろうとする努力ではあると思うんですが、しかし、唯物弁証法の方法にたいする認識が大事になると思うんです。
「行動の指針」である、ということです。
二つ目の問題とも関係しますが、
「科学的社会主義かマルクス主義か」。マルクスの言葉を教条として絶対視して追跡するのか、それとも、具体的な諸関係のなかで、そこに生きる指針として、生きた生命力をもつ理論として探るのか。
このへんの、基本的態度の問題が、ここでは問われていると思います。
今回は、たまたま手にした『偉大な遺産』という「マルクス遺稿物語」に関連して感じたことですが。
そのテキストがどのようにして今日に伝えられたのか、この点については、この本がその貴重な歴史的事実の経過を紹介してくれているんです。
しかし、それとともに、それをどの様に、どのような方法をもって、生かさなければならないのか。
「メガ42巻、新メガ100巻」もあります。それに私たちは、どのような態度で、それに接近しなければならないのか。この問題です。
この後者の問題ですが、それは今学習している「ヘーゲル弁証法の批判」の問題とも、問題が重なっている点があると思って、あえて今回紹介させてもらった次第です。
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