サカナ男爵の本とゲームにおぼれて

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2024年06月09日
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カテゴリ: 小説・ノベル
どこの家にも怖いものはいるのご紹介です。
幽霊屋敷シリーズの1作目です。

※本記事はネタバレを含みます。


どこの家にも怖いものはいる/三津田信三【3000円以上送料無料】

【あらすじ】
僕(たぶん三津田さん)は懇意にしている編集者の三間坂秋藏(みまさか しゅうぞう)から5つの怪談を提供されました。
それぞれ人物、時代、内容がバラバラなのに、なぜか別の怪異とは言い切れない共通点がありました。
僕と三間坂は怪異について考察を続けるのですが……


【5つの怪異】
向こうから来る 母親の日記
平成の半ばくらいと思われるお話です。
新築の一軒家に引っ越してきた一家の母親の日記という形式をとっています。
引っ越してきた当初は良い家だと思ったのですが、家のあちこちで妙な音がしたり視線を感じるようになりました。
やがて子どもがおかしなことを言いだしたり、近所の子どもが遊びに来たがらなくなったりして……

終盤に日記の文章がどんどんおかしくなっていくのが不気味ですね。


異次元屋敷 少年の語り
昭和初期ごろのお話です。
森で遊んでいると「割れ女」と呼ばれる者に遭遇してしまいます。
必死になって逃げているうちに晨鶏屋敷と呼ばれる屋敷に逃げ込みました。
そこは気味が悪いほど静まり返っていて……

よく分からない終わり方だったので首をひねっていたのですが、考察を読んで「あっそういうことか」と思わされたお話でした。


幽霊物件 学生の体験
昭和後半のお話です。
体験者は大学に進学し、アパートで一人暮らしをすることになりました。
他の入居者はやや暗い雰囲気の人が多いものの、特に問題なく一人暮らしが始まりました。
ですが屋根の上や隣室から物音がするようになりました。
大家さんに話を聴いてみると「大人には害が無いから大丈夫」と意味深なことを言われます。

ある日隣部屋の物音がうるさく、腹を立てた体験者は隣室に文句を言いに行って怪異体験をします。
ふと部屋の表札を見ると204号室でした。
自分の部屋は203。4は縁起が悪いのか、隣は205のはず。
では目の前にある204号室には何者がいるのか……


光子の家を訪れて 三女の原稿
平成初期のお話です。
体験者の半生を綴った小説の一部です。
体験者の母親は霊能力に目覚め、ローカル宗教団体の教祖のようなことをしていました。
家族は彼女を連れ戻そうとするも、帰って来ませんでした。

体験者は仲の良かった弟だけでも連れ戻そうと、母親の住む家を訪れました。
ですが家には誰もおらず、疲れてしまった体験者は眠ってしまったのですが……
ホラーゲームのような不気味なお話でした。

本書の帯にもある「寝ていると彼女がまぶたをこじ開ける」ってパワーワードですね。


或る狂女(くるいめ)のこと 老人の記録
明治末期から昭和初期にかけての、とある老人の手記です。
手記を書いている老人が、幼い頃に祖母から聴いた話です。

地元の有力者の娘は奇矯な振る舞いが多く、時折ポツリと漏らす予言が必ず当たるため村人から気味悪がられていました。
不吉な出来事を孕んだ一族の顛末とは……



【驚異の考察】
本作はエピソードの合間に「幕間」と、最後に「終章」があり、僕と三間坂が怪異について考察しています。
この考察がとても鋭くて味わいが深いです。
ちょっとした言葉や記述の端々から手がかりを探り当てる嗅覚はすさまじいと思いました。

「ここも近畿と言えば、まぁ近畿ですわ」というセリフについて、言葉本来の意味にこだわる人のコメントなので、一般的な近畿ではないのではないかという考察がすごいなと思いました。

また各怪異の舞台がバラバラなのですが、記述した人が場所を明示することに抵抗があるので、わざと違う場所を書いたりぼかしたりしているのではないかという考察もありそうだと思いました。


こうして導き出された衝撃の結末は! とまではっきりした結末にはなりませんでした。
ほぼほぼこれだよねという結論で終わりになっています。
煮え切らない感が無いわけではないのですが、とことんまで追求するとこの本が出版できないような事態になりかねないので、ここで引いておいたのは正解なのだろうなあと思いました。

怪を語れば怪至る。
本書でも警告されていますが、みなさんもくれぐれもこの怪異の場所を突き止めようとしないようにお願いします。

吾輩は本書を読んでいる時、屋根の上からパラパラと音がしたような気がしたのですが、気のせいだよね、うん。



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最終更新日  2024年07月07日 20時29分00秒
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