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2022.12.27
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最近はけっこう高学歴で社会的地位がある人でも言葉を誤用しているのが気になる。たぶんメディアが出版からインターネットに移行して誰でも直接SNSで意見を言うようになって、編集者が言葉遣いを指摘しなくなったので誤用に無自覚なままなのだろう。そんでSNSを見た人も誤用と気づかずに間違った言葉を覚えてしまうのかもしれない。というわけで私が誤用改役として誤用を取り締まることにした。御用だ御用だ!

●よくある誤用

・すべからく
「須らく」は本来は「須らく~べし」として「べし」をつけることで「当然~するべき」という意味になる。ところが「べし」をつけずに「全て」の意味で誤用する人が多い。「全て」という意味を表したいなら普通に「すべて」と言えばいいのに、難しい言葉を使って格好つけようとして「すべからく」と言っちゃうのだろうか。高校で漢文を勉強していなくて漢字の意味を知らないので発音が似ているというだけで誤用するのだろう。

・穿った見方
「穿」という漢字は牙で穴をあけると書くように、「穿つ」は穴をあけたり穴を掘ったりするという意味である。そこから転じて物事を掘り下げて本質をとらえるという意味になったので、「穿った見方」というのは本質を見抜いた見方のことである。これが「疑ってかかる見方」とまったく違う意味で誤用されがちで、「うがった」と「うたがった」の発音が似ているので誤用されるのだろう。

・耳ざわりがいい
「耳障り」は聞いていて不快という意味なので、「耳障りがいい」という言葉は矛盾した意味になる。「目障り」も同様である。たぶん誤用する人は「手触りがいい」「舌触りがいい」というのと似た感じで「耳触りがいい」と言いいたいのだろうけれど、聴覚は触るものではないし、鼓膜を触ったらやかましくて不快に感じると思う。「耳ざわりがいい言葉は言わない」というニュアンスを伝えたいのなら、「おべんちゃらは言わない」とか「お世辞は言わずに本音で言う」とか「もっともらしく聞こえる嘘は言わない」とかの言い回しをすればよいと思う。

・さわり
さわりは元々は義太夫節に他の旋律を取り入れた聞かせどころの箇所のサワリを指した言葉で、音楽や物語の要点という意味でつかわれるけれど、話の最初の部分をさわりと思っている人が多いようで、ちょっと触った程度のニュアンスで誤用してしまうのだろう。ほとんどの人は義太夫節を聞いたことがないだろうし、誤用されやすい「さわり」をあえて使う必然性もないので、「見どころを紹介する」とか他の言葉を使うとよい。

・役不足
「役不足」とは能力に見合わないつまらない仕事をあてがって実力を発揮できないときに使う。例えばレオナルド・ディカプリオに『タイタニック』のモブ乗客の演技をさせるのは役不足である。これを逆に能力が足りない人に大役を与えるという意味でとらえて、ジャニーズの誰かを『タイタニック』の主演に抜擢するようなことを役不足だと誤用する人がいる。そういう場合は役が不足しているのではなくて能力が不足しているので、「力不足」と言えばいいだろう。

・敷居が高い
敷居は和室の障子や襖を取り付けるための溝がついた建材の下の部分で、上の部分は鴨居という。「敷居が高い」は相手に不義理をして敷居をまたいで会いに行くのに気後れして敷居が高く感じる様子を表している。しかし30代以下は「高級な店に入りにくい」という意味で誤用する人が多いそうな。なんで敷居を高級な店と関連付けて誤用するのかわからないけれど、「行きにくい」というニュアンスだけとらえて誤用しているようである。都会はほとんど洋風の戸建てやアパートで日本家屋がないので、そもそも若者は敷居や鴨居を知らないのかもしれない。料亭なら敷居があるだろうけれどレストランに敷居はないので、洋風の建物に対して「敷居が高い」というのもおかしい。高級レストランに対しては「気軽に行きにくい」と言えばいいだろう。
ちなみに襖の標準サイズは170-180センチで、背の高い外国人はしばしば鴨居に頭をぶつけて文句を言っているので、「鴨居が低い」と「敷居が高い」をセットで覚えると敷居が引き戸の下のところを指しているとわかりやすいと思う。

・中抜き
中抜きの本来の意味は卸売りとかの中間業者を介さずにメーカーが消費者と直接取引してコストを減らすことで、中間業者を抜かすので中抜きである。これを中間業者が手数料を抜いて下請けに仕事を丸投げする意味で誤用する人が多い。「中」が中間業者を指すことを知らずに、札束の中から手数料をごっそり抜き取っているイメージで誤用するのだろう。「派遣会社の中抜きを制限しろ」とかの文章なら誤用でも文脈で何が言いたいのかわかるけれど、経済の話題で中抜きと言うと誤用なのか誤用でないのか紛らわしくなる。私は「中間業者による搾取」や「中間搾取」や「仲介手数料ぼったくり」とかの言い方がよいと思う。

・ほぼほぼ
「ほぼほぼ」は「ほぼ」を繰り返して強調した表現である。日本語のオノマトペには「もちもち」や「ふかふか」みたいに同じ言葉を二回繰り返すものが多くて語呂がいいので、「ほぼほぼ」もオノマトペのような感覚で二回言ってしまうのだろう。小説のような書き言葉なら強調のために「ただただ呆れるばかりだった」とか「またまたあいつが現れた」とかのように言葉を繰り返すことはあるけれど、口語で言うと変だし、「ほぼ」だけで十分だし、強調するほど重要な言葉でもないだろう。「ほぼ」が本来の言葉だと理解して「ほぼほぼ」を使っているなら誤用ではないけれど、不自然な言葉遣いをするくらいなら「ほとんど」と言うほうがよい。

・課金する
ソーシャルゲームが出てきてから課金という言葉が頻繁に使われていて、「基本プレイ無料アイテム課金制ゲーム」とかのように使うけれど、誰が誰に金を払うことを課すのかというと、運営者がユーザーに対して金を払うことを課している。「ガチャに〇万円課金した」のようにユーザー側がゲームに金を払うことに対して「課金」を誤用する人が多いけれど、ユーザーが誰かに金を払うことを課しているわけではないのだから、「〇万円分ガチャを回した」のように言えばよい。「課」の意味(義務などを割り当てること)を理解していないので誤用するのだろう。

・税金の無駄遣い
税金を財源だと考えている貨幣プール論の人が「税金の無駄遣い」と言うけれど、税は基本的に徴収するものであって使うものではない。税を歳入と言い換えると「歳入の無駄遣い」という変な意味になる。自治体の歳入は税だけでなく地方債もあるけれど、「地方債の無駄遣い」と言う人はいないし、それと同様に「税金の無駄遣い」と言うのもおかしい。歳入と歳出は別の概念として扱うべきで、「公金の無駄遣いをするな」や「無駄な歳出を削れ」とかの言い方がよいと思う。

・グルメ
グルメ(gourmet)とはフランス語で食通を意味する。例えば海原雄山がグルメである。食い意地が張っている人のことをグルマン(gourmand)という。ところがおいしい食べ物のことをグルメと呼ぶような誤用がされていて、語源のフランス語を知らないので誤用するのだろう。アンジャッシュ渡部のような人をB級グルメと呼ぶなら誤用ではないけれど、おいしいジャンクフードをB級グルメと呼ぶのは誤用である。しかし誤用の方が定着してしまったので気にするほどのことでもないかもしれない。

・社員
社員とは会社法では株式会社の株主のことを指す。しかし「正社員」としてフルタイムの正規雇用の従業員の意味で誤用されているし、「社員証」も株主でなく従業員に発行されている。本来は従業員は期限なしのフルタイムか期限ありのパートタイムかの違いでしかないし株主と違って議決権があるわけでもないのに、正社員に「正」がつくことで何か特権階級めいた偉そうな響きがあるので、従業員という言葉を使わずに正社員という言葉を使いたがるのかもしれない。

●なぜ誤用するのか

いろいろな誤用を見てみると、漢字の意味を理解していない人が発音が似ている別の言葉と混同して誤用しているケースが多いようである。そもそも日本語が難しいと言われているのは漢字のせいで、話し言葉だけならたいして難しくないし、外国人留学生は接客業をするとすぐ日本語がペラペラ話せるようになるけれど漢字が読めなかったりする。じゃあなぜ漢字は難しいのかというと、表意文字の漢字と表音文字のアルファベットでは言語の仕組み自体が違っていて脳の違う部位を使っているからで、英語なら発音を聞けばだいたいのスペルは想像できるし、同様にスペルを見ればだいたいの発音は想像できるけれど、漢字の場合はそうはいかないので、漢字の意味、音読み、訓読みを勉強しないと理解できない。漢字を勉強していない人が漢字の意味を知らずに発音だけで判断して誤用しているのだろうし、ひろゆきのように古文と漢文は勉強しなくていいという人が増えたら誤用はもっと増えていくと思う。
あと「敷居が高い」や「さわり」のように語源を知らなくて感覚的に意味をとらえて誤用しているパターンがあるけれど、言葉が古くなって語源を知らない人が増えるのはしょうがない。格好つけて難しい言葉を使おうとして誤用して無知を晒すのでは本末転倒なので、よく知らない言葉を使おうとせずに普通の言葉遣いをすればよいと思う。
あと短文で即レスするTwitterやしゃべりっぱなしのYouTubeとかがSNSの主流になって個人ブログが廃れて自分の文章を推敲しなくなったり、読書離れして正しい言葉遣いに触れなくなったのも誤用が多くなった原因かもしれない。言葉が軽薄短小になりつつあって、よく考えたり調べたりせずに思い付きをべらべらしゃべる教養のない人がインフルエンサー扱いされてもてはやされているし、おかしな世の中になったものである。





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最終更新日  2023.01.25 20:58:52
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