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「きっと疲れているのよ」とあたしは言った。彼は無言。「また試しましょ。今日は星の巡り合わせが悪いのかもしれないし」やはり無言。男にとって屈辱なんだろうなと思った。 最初のデートの夜の様子が ジェイン の言葉によればこんなふうなんです。何だか元気がない、実にアンチクライマックスな展開で小説がはじまります。
「サイゴンに爆弾を落とした?」とあたしは彼に聞いたことがある。 パトリック は嫌な顔をした。だいたいB-52に乗る連中は爆弾という言葉が嫌いだった。爆弾とか爆撃といわないで、荷物とか配達って言う。 パトリック は任務の話はしない。夜になってもその日のコックピットでの数時間のことは言わない。武勇の話は一切なし。下から飛んできたミサイルや高射砲弾やすれちがったミグのことは言わない。子供の頃の話は良く聞いたけど。 パトリック が仕事である爆撃のことを話したがらないのはなぜなのでしょう。それがこの小説では、見落としてはいけないポイントなのです。
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