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欲求は一瞬のものだ.発したところから常に離れていく.光のようなものだ.であるから,先に欲して手に入らなかったものを後から手に入れようと遅いのだ.同じものは無い.似たものすら皆無に等しい.手に入った頃には既にそれを受け容れようもなくなっている.欲求は人ではなく時に属している.それは時の上を流れない.人は全く同じ欲求を永く持つことは出来ず,光の残滓のみをいつまでも眺める.とりつかれたように.どんな賢者もその光の前では愚者となってしまう.
2009.12.07
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同じものになるには誰か消えるしかない.全く平等になることは不可能.だって一つの体には一つの名前しか認められない.全てのものに序列が振られる.主と副があり,吸収される.それは自然と時間が手配したことで私たちにはどうしようもないことだ.
2009.12.06
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十六年だけ生きた“私”を,自分とは違うと思いながらも別人だと否定できないのはただ一つ彼女が死んだときのことを私が覚えていないからだ.透明な壁で遮られたように,あの冬より前のことは客観的で断片的な記憶でしか思い出せない.彼女は私には出来ないことをたくさんやっていた.能力も指向も全然違う.別人のように思っていたけれど2ヶ月の間,彼女は私たち全てを巻き込んで死んだ.全員が巻き込まれたというのは私たちがまだ分たれてなかった証拠だろう.そうして最も優れていた根っこを失い,“私は誰か”をそれぞれ考える3年が始まる.
2009.12.05
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殺意が一過性のものだったのか,それを毎晩の夢のように一度いちど忘れながらいつのまにか忘れられぬほどに積もっていったのか.それとも笑顔の方が演技で十一の子どもの顔の下に,ずっと殺意を隠して生きていたのか.十六の冬より前の自分のことは他人のようだ.何を考えていたのか全く分からない.あのとき全てが死んだと思うのは錯覚でも願望でもなく十六年生きた”私”にただ一つ言える真実なのだろう.そしてこのことを私は今でも冷静なまま口にできない.
2009.12.04
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不幸を計ることはできない.楽しさを計ることもできない.我々は他者を認識できない.我々は壁と膜で以て,その中のことしか知れぬようにしてしまった.定義されない錯覚ばかりを積み上げる.どうせ全てが母なる地より先に死ぬのだ.そして最後には不可分のものだけが遺る.
2009.12.03
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こんなふうに,どんどんくだらなくなってゆくだけの世界なら私は,いつか死ぬときにも随分と安らかに死ねると惟う.
2009.12.02
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枕元に包丁を置いて寝ていた友人を思い出す.私はあのとき「危ないから止めたら」と言った.今ではその友人の気持ちがよく分かる.恐怖に対峙するときには論理など本当に薄っぺらく何の価値も無いように思えるのだ.
2009.12.01
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