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2022.11.26
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse
第43話「うごめく陰謀」

方海市(ホウハイシー)をかばって負傷した方鑑明(ホウカンメイ)。
海市を襲った尼華羅(ジカラ)の副使はかつて鑑明を刺した子供と同じように毒で操られていた。
意識が戻った鑑明は海市の無事を知って安堵したが、副使が死んだと聞くと表情が一変する。
「陳哨子(チンショウシ)…紅木(コウボク)の箱を持って来い!」
方鑑明は重い身体を引きずって皇帝に謁見した。
副使が昭明(ショウメイ)宮で死んだと尼華羅に伝われば挙兵する口実を与えることになるだろう。
「陛下、私の越(エツ)州行きをお許しください」
鑑明は箱を差し出し、この中に雷(ライ)州諸部の弱みや交渉の要点を記してあると伝えた。
雷州との諍いを海市は独りで収めるつもりなのだろう。
鑑明は海市に自分と同じような生き方をさせたくないと訴え、まして自分の役割などもってのほかだと嘆いた。
「愛する者には幸せになって欲しい…」
すると旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は方鑑明から箱を受け取り、越州行きを認めた。
「長旅に耐えられるよう李(リ)侍医の薬を飲んで眠っておけ」
「はい陛下…」

褚仲旭は脇殿に隠れていた淳容(ジュンヨウ)妃を呼んだ。
すでに皇帝から師匠の病状を聞いた海市、これまで師匠に捨てられたとばかり思っていたが、実は守ってくれていたと知る。
しかし師匠の願いを聞いてもなお海市は師匠を救い、万民を戦から守るため、龍尾神を天啓へ連れて来ると決意した。
「急がなくては、直ちに越州へ向かいます」
「方海市、鑑明なら李侍医の薬で数日は目を覚まさぬはずだ」



海市は昭明(ショウメイ)宮に方鑑明を訪ねた。
何も知らずぐっすり眠っている鑑明、海市は愛する人の頬に触れ、大きな手を握りしめる。
「私に同じことをさせたくなかったのね、その苦しみを知っているから…
 あなたは民のため、陛下と国のため身を捧げてきたけれど、誰かがあなたのために動いたことはない
 だからこたびは私があなたのために動く
 あなたを守ってみせるわ、私の幸せはあなたと共にあるのだから…」
すると海市は鑑明にそっと口づけした。

副使の死で都はにわかに騒がしくなった。
皇弟・褚季昶(チョキチョウ)はこれで尼華羅が兵を起こせば、龍尾神の披露も間に合わないと期待する。
しかも方海市は重傷を負ったのか、鳳梧(ホウゴ)宮にこもりきりで護衛が増えていた。
黄泉(コウセン)営では湯乾自(トウカンジ)が張承謙(チョウショウケン)と符義(フギ)に兵5万を与えて都に送ったという。
「はお、符義が率いる兵馬は私のものとなる」

厳戒態勢の愈安(ユアン)宮で思わぬ事件が起きた。
実は淑容(シュクヨウ)妃の薬湯を運んでいた宮女がうっかりこぼしたところ、薬がかかった草が枯れたという。
褚仲旭は緹蘭(テイラン)の安胎薬に毒が入っていたと聞いて愕然となった。
しかし残りの薬にも薬に触れた者たちにも怪しい点は見つからないという。

方鑑明が眠ってから多くの事が起きた。
尼華羅の水軍が西南一帯に達し戦況は一触即発、また天啓には諸部の使者が次々と到着して緊迫している。
しかも宮中では淑容妃と子を害する者まで現れた。
褚仲旭は鑑明の寝顔を眺めながら、目を覚まして方海市を越州に行かせたと知れば鑑明がさぞ怒るだろうとぼやく。
その夜、緹蘭は安全のため皇帝の寝宮に移った。
「緹蘭…幼い頃から私の好んだ物や心を許した人々は皆、私の元から消えて行く…」
「ならば私が陛下の散らぬ朝雲、砕けぬ瑠璃になりましょう」

海市は越州行きを悟られないよう寝宮に自分の替え玉を置いて出発、秘密裏に越州へ到着した。
そこで鮫人の印がある右手を海水に浸けると、やがて海底から琅嬛(ロウケン)が現れる。
琅嬛は海市の手を握り締め、これまでの海市の記憶をたどった。
すると琅嬛は海市と鑑明の深い愛情と悲しみを知り、思わず涙を流す。
「海市、よく耐えてきたわね…あなたと天啓に行くわ
 私が行くことで戦乱を避けられるなら、あなたの力になる意義がある」
感激した海市は琅嬛の恩にどう報いれば良いか分からなかったが、必ず守ってみせると誓った。



注輦(チュウレン)の新たな特使は淑容妃の弟・索蘭(サクラン)だった。
索蘭は叔父・蒲由馬(ホユウバ)が罪を犯した件で謝罪に来たと話し、どう処罰されても注輦は遺恨を残さないという。
すると褚仲旭は緹蘭との再会を引き伸ばすため、初めて来訪した王子のため大臣に各地を案内させると言った。



その夜、褚仲旭は緹蘭に弟が特使として来朝したと教えた。
しかし緹蘭は会いたいような会いたくないような複雑な気持ちだという。
確かに弟とは宮中で仲良く過ごしていたが、それは幼い頃だけのこと、注輦で唯一の後継者である索蘭は多くの物を背負っているはずだ。
父王は索蘭に非常に厳格だったという。
緹蘭は弟と再会して思い出話ができたらと思う反面、今の互いの身分では不都合が生まれることも分かっていた。
「姉として会えばいいのか、使者の引見なのか…失望するくらいなら会わない方がましです」
褚仲旭と緹蘭は共に離れ離れになった弟との難しい関係を共有し、全て杞憂に終わることを願った。

海市の母の家に天啓から兵士がやって来た。
葉夫人の護衛・郭大成(カクタイセイ)は聖旨を見て驚き、慌てて葉夫人に知らせる。
「君命である…斛珠夫人・方海市は被災民救済で功を上げた
 母を思う夫人の心情をおもんばかり、大徴軍を迎えに遣わす、天啓にて再会を果たされよ」
すると兵士はこれからすぐ出発すると急かした。

方鑑明は海市が自分の柏奚(ハクエイ)となり、喀血して倒れる夢を見た。
「海市!」
飛び起きた鑑明は実は李侍医の薬で数日、眠り続けていたと知る。
配下は陳哨子が淳容妃を迎えに行ったと話し、預かっていた密書を差し出した。
「目覚めたらすぐお渡しするようにと…」
一方、海市は琅嬛を連れて帰路に着いた。
皇帝は琅嬛のため海底で集めた黒檀(コクタン)で特製の車を作り、桐油(トウユ)を塗っているおかげで3年間は海水を入れ替えずとも水質が保てるという。
しかし道中、海市は自分たちに付きまとう鷹に気づいた。
「なるべく早く天啓に戻ろう!」

方鑑明は皇帝に謁見、海市を越州に行かせた褚仲旭を非難した。
「志願するように仕向けたのですね?!海市の母を盾にするなんて!」
「何の話だ?」
褚仲旭が困惑すると、鑑明は罠だと気づいた。
「陛下ではないのか…」
すると鑑明は褚仲旭が事情を聞く間も無く、暗影団を連れて皇宮を飛び出した。

つづく


( ゚д゚)索蘭が…何だかマイケ…ゲフンゲフン



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最終更新日  2022.12.04 21:54:59
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