サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.06.12
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カテゴリ: 文学
 さて場面は展開して、斎宮のお姿を実際に見止めて、ただならぬ懸想心を抱いていたのは、源氏の腹違いの兄、例の「いとなよびたる」朱雀院でした。

― 院にも、かの、くだり給ひし日、大極殿のいつかしかりし儀式に、ゆゝしきまで見え給ひし御かたちを、忘れがたう思しおきければ、
 「まゐり給ひて、斎院など、御はらからの宮々、おはします類にて、さぶらひ給へ」
と、御息所にも聞こえ給ひき。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 退位された朱雀院は(帝の時代)、例の、伊勢下向の日に際して、大極殿で執り行なわれた暇乞いの儀式で、あまりに美しかった斎宮のお姿を、忘れがたくお思いになっていて、
「こちらにお見えになって、前斎院(朝顔)など、私の姉妹筋の宮様方が、いらっしゃるのと同じようにして、お暮らし下さい」
と、御息所にも仰せられたことがあった。

 対する御息所が、自身の後見の危うさから、宮廷に立ち混じることを躊躇していたところが、彼女が亡くなった今、改めて前斎宮に院への入内の申し入れがあって、源氏も聞き及ぶことになります。これに対する光源氏の対処は、はなはだ政略的にも狡猾で、いささか兄の朱雀院を見くびったところがありますね。そういえば彼は、例の朧月夜の内侍の件でも、当時帝だったこの兄をコケにしたところがあって、だからこそ大后の怒りを買ったのでした。
 彼は今回この件を、藤壺の女院にお伺いを立てる、という形を取ります。

―  おとゞ、聞き給ひて、院より御気色あらむを、ひきたがへ、よこどり給はんを、「かたじけなきこと」と、おぼすに、人の御有様の、いとらうたげに、見放たんは、又、口惜しうて、入道の宮にぞ、聞こえ給ひける。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 源氏の大臣は、このことをお聞きなさって、院からの申し入れに、背いて、横取りなさったりすることは、「恐れ多いこと」とは、思われるが、前斎宮の御様子が、ひどく可愛げで、手放すには、これまた、悔しい気もして、藤壺の入道(女院)に、ご相談なさる。

 なぜ藤壺の女院なのかといえば、以下の話で明らかなように、彼と藤壺は新帝(実は二人の子)の後見として、目的と利害を共有しているからで、さらに女院の内諾を得ることで、いざというとき源氏個人への批判をかわす、という意図があったのです。

― つづく ―





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Last updated  2009.06.12 09:55:56
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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