サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.04.17
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 処女性(厳密には処女の血)に込められた聖性と、古代以来の夜這いという婚姻の風習とを、どう折り合いをつけるのか?
 今どきの若い人たちには処女性などという言葉は、ほとんど死語に等しいのかもしれませんが、ほんの十数年前ぐらいまでは、日本でも決してこれによる性的な禁忌が、主として女性の方に作用しなかったわけではありません。今や日本は世界でも、もっとも性的に放縦な社会になってしまったのかも知れず、私が若かった頃、一種憧れをもって語られた北欧型のフリーセックスなど、今では誰も話題にしなくなってしまいました。それがどこから出来したものか、ここでは長くなるのでしませんが、私はやはりネット社会の普及が関係しているのではないか、と思っています。

 ここから先しばらく、しゃべり方に気をつけないと、女性差別だの不道徳だのの謗りを受けかねないのですが、セックスと婚姻の形態というのは、おそらく人類史的な射程で見ていかないと、ややもすると近代的な偏った倫理観で裁断しかねない要素があるのです。もっと言うなら動物行動学的な視点にまで拡げたほうが分かりやすいのかもしれません。
 古代社会の婚姻が、なぜ夜這いとか略奪婚のような形態を取ったのか?以前に少し冗談めかして触れたことがありますが、自然と接触する機会がはるかに多く、さらにはそれらを常に観察していないと、たちまち種族の保存に支障をきたすような社会であれば、彼らの生存に合理的な解決を与えてくれるのもまた、抽象的な思考や呪術ではなく、ごく具体的な周囲を取り巻く自然しかなかったと思うのです。
 彼らの頭の指向は優れて周囲の動きを捉えるのに秀でていたので、毎日の食料はそれなくしては獲得出来ません。それは同時に食料の対象であるべき動植物たちの振るまいへの、細かな観察をともなったはずで、その中には当然サルとかクマのような、群れ社会性を持った動物たちも含まれていたでしょう。それらが基本的にメス中心のコロニーを形成していて、オスはボスとして君臨するだけ、若いオスは群れを離れて、新たに別のコロニーを作る、というのは古代人には種族維持の形態としては、ごく合理的に映ったのではないか?
 まあ人間がサルから進化したのであれば、そんなゴタクを並べなくても、もともと母系的な種族維持の形質を、ヒトは持っていたのかも知れませんが。

 夜這いだの入り婿婚だのという婚姻形態は、やっぱりそうした古代社会のニオイを色濃く引いているので、そこでは先の処女性という要素はほとんど意味を成しません。「古事記」や「万葉集」を見ても、人妻に男=オスが声をかけるのはごくあたりまえで、その相手がときに帝の后であっても、歌にも詠まれ物語に語られるということは、そうした振るまいが必ずしも社会的制裁を受ける事柄ではなかったことを示しています。
 それどころかむしろ宮廷では、そうした相聞歌が酒宴の席で詠われていたらしいのです。

 面白いのは、日本では大陸の制度が本格的に敷かれて三百年経っても、一般どころか宮廷内でも、夜這いが普通に行われていて、しかもそれが社会的制裁の対象になっていないらしいということで、「枕草子」にもそのあたりは詳しいですね。律令制度というのは、本来は儒教的な倫理性とセットで、大陸では宮廷内の役人はすべて去勢(宦官)されたのです(宮廷の女たちは、すべて皇帝一人の所有物なので)。
 しかし日本では大陸の制度や建築のような外見の形は取り入れても、内実は古来からの風習を、さして反省するでもなく維持していたようです(それを非難するような僧侶や文章博士の文献というのを、不勉強な私は知りません)。このあたり、今もって世に出てくる日本人の習性のようなものを垣間見るのですが、まあこれは別の話ですね。

― つづく ―





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Last updated  2010.04.17 11:42:34
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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