サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.08.20
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 要は戦争を被害者意識で見るにせよ、加害者意識で見るにせよ、両者に欠けているのは当事者としての視点であって、戦争というのがどこかの誰かから仕掛けられたとか、仕掛けたという話ではなく、自らの内部にある思考停止状態と、それに密着した破壊衝動、あるいは破滅衝動のようなものが、どこからどのようにして生じてくるものであるのか?それがどのようにして時の組織や大多数を覆う空気として醸成していったのか?ということを冷徹に見つめてはいないのではないか、ということなのです。

 私は戦前の日本の一般人が、大陸侵攻を国家存続の生命線と信じ、また鬼畜米英を唱えていたことについて、敗戦後の今になって、それを「愚かなことだった」と、したり顔に非難するつもりはありません。肝心なのは、どこからそうした空気が生まれ、ほとんどの一般人がそれ以外の選択肢を、どういうプロセスで考えられなくなって行ったか、ということだと思うのです。
 私はしたがって、戦前の日本人一般の空気やものの捉え方を非難する気はないのですが、逆に言えばそれらを敗戦後になってから、十把一絡げにして「政府や軍部にダマされていた」と、簡単に他人のせいにして片づけ、自身の内部に生じた心理的矛盾をキチンと見つめない姿勢には、ずうっと飽き足らないものを感じるのです(これは敗戦後のいわゆる左翼、そしてその反動として生まれた右翼に共通した思考パターンです)。

 確かに後になって、ときの政府の無為無策、あるいは軍部の無謀と暴走を指摘するのはいくらでも出来るのですが、結局それらも根本的にはそれを指示ないし容認する空気が、当時の全般的な日本人のマインドにあったわけで、一つの組織ないし集団が完全に独断的に国家国民を壟断するということはあり得ない。積極的ではないにしても、「これは仕方がない」と消極的でも認知する大多数がいれば、権力というのは容易に暴走するのです。
 というわけで、今度はその反動というわけか、敗戦直後は「一億総懺悔」といった、これまたはなはだナイーブで、なおかつ真の意味での責任論をまるごと回避するような、浮ついた論調も生まれたのでした。

 ときどきの時代の空気を理解するというのは、ひょっとすると戦争中の実体験を聞くことよりも、難しいのかもしれません。しかしそれらは全部ときの政府がしたこと、軍部がすべて仕組んだこととして、自らを反省しないのでは、同じことの再現がいつ起こっても不思議でない。
 げんに戦争ではないにしても、今現在の日本は司馬さんが指摘された長い長い「第二の敗戦」を、もうすでに二十年近く続けているのです(二十年といえば一世代に限りなく近い、このかんに生まれ育った日本の若者が、容易ならぬマインドを醸成したとして、誰が非難できます?彼らは敗戦後の復興も、バブルの好景気も何一つ知らずに、かつての繁栄の残骸だけを見て大きくなった世代ですよ)。

 では戦争の時代を知らない私たちの世代はどうすればよいのか?私がいつも感じるのは、今起こっている事柄、あるいはまた今どきの世間を覆っている空気のようなものは、かつての日本でも同じようにあったのではないか?現象としての今ある風潮を見るのではなく、それらの空気の起こりかた、醸成の仕方の中には戦前の日本人と同じマインドが潜んでいるのではないか?ということなのです。
 同じような思考パターンに陥っているように感じるときが、どんな事柄であれ体験的にいって、私の場合にはどうもいちばん危ない、つまり失敗する時らしいのです。なので、私はいつも自身の内部に起こってくる感覚に、常に自分が生きていなかった(あるいは立ち会えなかった)時代の痕跡を探ります。もしそこにかつての日本人と同じような思考パターンを見い出すならば、おおむねそれはある一つの固着した思考に囚われている、と考える。
 それがどこから来るものなのか?日本人に固有に限定された指向性なのか?あるいはまたおおげさに言えば人類一般、はたまた生き物一般に刻印された指向性なのか?ということなのですが。

― つづく ―





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Last updated  2010.08.20 12:07:13
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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