サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.11.04
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 「臣民」である日本国民を恐怖し、であるからこそ、まさしくそれを(必死になって)占領しようとした、とはどういう意味でしょうか?
 「国民主権国家」における「国民」という概念には、怖ろしく危うい要素があると思うのです。早い話、フランス革命直後のフランスというのは、ブルボン王朝が長年形成してきた、いわば「フランス文明」とも言うべき普遍的概念を、その文物・人材・思想まで含めて一切合財根絶やしにしようとしたもので、「国民意識」を形成していく過程には、多かれ少なかれこのような根底的文明的な危うさが伴なうものでした。明治政府も昭和軍閥も、あるいはひょっとして敗戦後の施政者をはじめとする知的エリートたちも、こうした「目覚めた」国民というのをずうっと忌避してきたのではないか?
 「相手を、自分たちと等身大に位置づける」目線というのは、我が身の外部に対する姿勢の改変(上のものは下へ、下のものは上へ)をともなわずして、おこない得ません(特に統治側は、自意識の下降的な局面と対峙しなければなりません)。日本の統治機関やマスコミ・言論を形成してきた人たちは、自分たちの隣に坐っている一般の生活人(農民やサラリーマン、商売人や職人、ばくち打ちやヤクザも含めて)が、自分たちも含んだ等価の存在であるとは、表向きのポーズは別として、たぶん一度たりと考えたことがなかったのでしょう。

 そうした目線がずうっと内心にあるから、裁判員の人品骨相にまで立ち入って、その個別的な判断の優劣をあげつらう、という退屈な議論が繰り返されます。少なくとも毎回の裁判員へのインタビューを聞いているかぎり、露骨ではないにしても、そういう気配がして仕方がない。裁判員はまるで神のごとき聖人君子であらねばならない、という訓戒を(偉そうに)垂れているように聞える。そんなこと言われた日に、誰がこれを引き受けようと思います?(意味不明の世論をバックにしているつもりのマスコミ・言論界の)意に添わぬ判決を出した、さらにその後のインタビューの答え方が(意味不明の世論をバックにしているつもりのマスコミ・言論界の)意に染まなかった場合、たちまちそのインタビューは裁判員に対する「(総括という)人民裁判」になり得る。
 「裁判員裁判」制度とは、そういう意味で現在のマスコミ・言論界の立ち位置(姿勢)に対して、始終ヤスリをかけ続ける制度であり得るのです。ハッキリ言えば、自らの立場を一般の生活人(農民やサラリーマン、商売人や職人、ばくち打ちやヤクザも含めて)と、等価の位置まで(「国民目線」というような、こけおどしの擬態でなく)押し下げることが出来るか?という意味です。

 たとえ、はた目どんな愚かな判決であっても、最悪仮に誤審であっても、それを我が身と等価の代表(代人、代理、名代、身代わり)が「引き受けたこと」、つまり我が身の一部が為したという視点が根底になければ、たぶんこういう制度は成り立たないでしょう。あとで誤審が明らかになったとき、その裁決をした裁判員とどう対峙するのですか?あるいは被害者遺族が、被告を極刑にしなかった裁判員を非難した場合、マスコミ・言論界はそれにどう応答するのですか?
 どういう裁判員がどういう考えで、この判断を下したか?ではなく、肝心なのは我らの仲間(国民)の下した結果を、そのあと「我々(国民)は、どう引き受けるのか?」ということなのです。

 「死刑判決」の是非論も、そういう目線で議論すべき事柄だと思いますが、このたびのインタビューを聞くかぎり、各裁判員の皆さんは聖人君子のような口を利くことを余儀なくされている。これは各人に有形無形のとてつもないプレッシャーが、かかっていることを示しているので、何度も言いますが、これでは誰もする人がいなくなりますよ。仮に制度が残ったとしても、それは裁判長他の専門家の指揮下に入って、例によってカタチだけのものとなるでしょう。
 極論ですが、「被告の顔が気に入らなかった」とか、「私はもともと死刑制度に反対ですから」でも好いじゃないですか(極論ですよ)、自身が本当にそう思っていることであるのなら。裃を着たような受け答えよりはよほどマシで、この人たちの「日本国民としての役回り」は、「本件については、ここまでです(ご苦労さんでした!)、後は我々がやること(引き受けたこと)だから、安心してお引取り下さい」、という発想は、この国では望むべくもないのでしょうか?

― つづく ―





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Last updated  2010.11.04 14:35:34
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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