サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.11.23
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 今回の一連の「尖閣問題」騒ぎの中で、現政権の「弱腰外交」とか「無責任性」を糾す主たる要件として、「中国人船長の超法規的解放」と、その判断をすべて那覇地検と福岡高検に丸投げしたところにあることは、間違いないところでしょう。その批判的な気分の流れに沿ったかたちで、今回のビデオ流出騒ぎが起こったという文脈にすれば、要は「そもそも現政権が、いい加減だからこうなった」、ということに出来るのです。

 この二点をさかんに突いているコメンテイターや評論家のなかで、なぜこの「中国人船長の超法規的解放」が行われたのか、という点に触れた人は少ないように思う。私から見れば、これもまた意識的あるいは無意識の「欲望」がもたらしているような気がするのです。
 簡単に言えば、いちばん言いやすいところだけを突付いて、見たくない、あるいは軽々に論じると、ヤバくなる(責任を問われかねない)部分を避けている節があるのです。

 それが何かと言えば、「中国河北省での、フジタ社員四名拘束事件」のことです。これが「中国人船長立件」に対する対抗処置であることは、誰の目にも明らかで、取引材料として人質を取ったということでしょう。そしてこれらの社員が「旧日本軍が遺棄した化学兵器処理関連工事の現地調査」を行っていた、というところも意味深長です。

 「中国人船長の超法規的解放」が、この恫喝を引き金にして行われたことは間違いないのですが、その弱腰を批判する前に、批判ないし論評をする人たちは、このフジタ社員の解放に関して、何らかの施策対案を持っていたのかどうか?おそらく「だから最初からビデオを公開して、動かぬ証拠を突きつけておけば、こんなことにはならなかった」と言うのでしょうが、それは結果論であるし、仮にそうであったとしても私はそうは思わない。
 中国政府が対抗してきたのは、「船長を日本の国内法で粛々と裁く」という点にあるので、こちらのつもりで動かぬ証拠があろうがなかろうが、対抗処置として同じ挙に出た可能性は限りなく高いのです。
 で、そうなった場合「粛々と裁く」ことを続けた場合、どういう事態が予想されるのか?おそらく双方の裁判のチキンレースとなるわけで、フジタ社員の場合は「スパイ罪」の適用も当然ちらつかせて、日本政府を揺さぶってきたでしょう。

 実を言うと、最初「衝突事件」が発生したとき、前原国交大臣(当時)が言わば海保と一体となって、中国人船長を国内法で裁こうとしたとき、危惧を抱いた役人や政治家がいたのではないか、と私は思っています。自民党政権時代も、同じような領海侵犯・違法操業・衝突事件はあったのですが、彼らはあえて裁くことを避けて来た。そうした場合に相手が何を仕掛けてくるか、(ほとんど北朝鮮並みに)分からない、ということをよく知っていたからです。
 現政権そして前原さんは、レアアース禁輸や反日デモぐらいは、あるいは想定していたのかもしれませんが、この「フジタ社員拘束」の事態で以って、ひょっとすると、これが「砲火を交えない戦争」になっていることに、初めて気づいたのではないか?と私は思う。

 戦争の定義は何か?このブログのはじめのほうで触れた加藤陽子さんの言説に従い、「相手国の国家構造の改変を求める行為」であるとすれば、この「尖閣諸島沖中国漁船衝突事件」の初動時における日本政府の振るまいかたは、中国側からすれば「国家構造の改変を求める行為」であったかもしれないのです。
 「向こうから勝手に入って来て、意図的に衝突させたうえに、『そちらから戦争を仕掛けた』、なんて理不尽じゃないか?」と思われるかもしれませんが、こちらの意図とは関係なく、中国にとってはそれが「自国の国家体制」を揺るがす事態と取った。
 もうすでにさまざまな事柄が起こりすぎて、時系列に並べるのもややこしいほどですが、レアアース禁輸に出たときも、これが小泉政権下の反日デモなどと比べ、じかに経済制裁的な拳に出たというところで、以前と少し相手国の出方に違いがある、と感じた人は少なくなかったでしょう。小泉政権下では「政冷経熱」などといって、大規模な反日デモは繰り返されましたが、経済的部面にまでそれを及ぼすことはなかったのです。
 向こうの外交部ないし政府高官が、繰り返し「国家の根幹的問題では、絶対譲らない」という言辞を、我々は「領土問題」と解釈していましたが、事は向こうではもっとはるかに深刻な日本側からの挑戦と受け取っていたのではないか?

― つづく ―





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Last updated  2010.11.23 14:19:39
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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