サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2011.12.28
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カテゴリ: カーネーション
 と、こう言っているうちに年内最終回が来て、夫、勝の戦死に続いて八重子の夫、泰蔵の戦死も重ねられる。戦争の惨烈さを仮惜なく印象づけるためなのでしょうが、周辺の男を皆殺しにしてしまうというのは、何やらジェンダー論者(さしあたって田嶋先生とか上野千鶴子先生とか)からの拍手喝さいが起こりそうな展開ではあります(「バカな戦争をドンパチやっているのは、結局男やないか」みたいな)。
 糸子の「雄たけび」も、スカーレットのような長口舌じゃなくて、ちょっと興醒め(スカーレットの場合、「生き抜くためなら泥棒もしてやる、人殺しもしてやる!」と吼えた直後に、北軍兵士だったかを射殺するというかたちで、それが現実化しました)。
 しかし、ラストシーンの「さ、お昼にしよけ」という糸子の科白は秀逸!彼女の「地べたリアリズム」というか、生き物は生きている以上、食い物を切らすわけにはいかない。これはまさしく、大阪のオバハンのあつかましいまでの「チョー合理主義」と重ね合わせてあって、他の言いかたでは表現できない舌触りがあるでしょう。

 それにしても、何度も言うように未決着の宿題があまりにも多い。これは作者製作側の意地かとも思いますが、このドラマ全般にわたって「一意的」な解釈を許さない、すべての事柄に「両義性(含み)」を感じてしまうのです。と、いえば、タイトルバックの「カーネーション」の映像も、一意的には「生命力」の象徴なのですが、最後に現れる満開のカーネーションのカタチ、今段階だと何となくキノコ雲にも見えて、おぞましさを感じてしまうのは私だけでしょうか?

 普通のドラマなら、戦死させる前に本人の口ないし手紙か何かで、ことの始末をつけてしまいそうなところ、あえてそうしない。そうすればいかにも芝居じみて、ウソ臭く見えるからでしょう。何度も言うように「現実世界」では、未決着のまま時間だけが通り過ぎて行く、ということはよくあるのです。そこで無理やり整合性をつけようとすれば、非現実的な肌ざわりの、いわゆる「お芝居」が現出してしまうことになります。
 小篠さんのご主人が浮気をし、戦死したことは事実なんだそうですが、かといって、浮気の真相が本当は何であったかなどという事柄は、厳密にプライバシーに属するのであって、であるかぎり、かりに我々がそれを知ったところで、せいぜい週刊誌的な下卑た好奇心を満足させるだけでしょう。肝心なことは、この手の真相など小篠さん自身も、たぶん分からなかったろうということなのです(想像ですよ)。「現実世界」とは、そういうものです。
 もし、これを無理にも掘り返そうとしたら、死者を呼び起こすしかない。安直なドラマでは、これを回想やフラッシュバック、あるいは端的に「甦り」という手法でよくやるのです。

 かといって、勘助や勝が戦死したからといって、彼らが抱えていた「謎」を、そのまま放置してこのドラマが進行していくなら、それもまた「ウソ臭く」なるでしょう。観る人によっては「狡い」と取るはずです。なぜなら、このままでは「観ている側の気分が収まらない」からです。
 かつて、フランスのヌーベルバーグ系の映画で、「現実とは、こういうものだ!」とばかり、事柄を未決着のまま放りっぱなしにして終わるのが流行ったことがありますが、では「現実」をそのまま並べられたのでは、何を愉しみに映画を観に行くのか判然としなくなってしまう、というところがあるのでしょう。「現実世界」が確かに「未決着の事象」に満ち満ちていようと、映画や小説が提示する世界には何らかの「始末」がついていないと、それを享受したあとの「昇華作用(代替の疑似体験による愉悦感)」が生じようがない。
 ヌーベルバーグが急速に廃れたのには、理由があったのでした。

― つづく ―





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Last updated  2011.12.28 11:41:00
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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